55 / 96
第五章 リュータと異国の塔
第五十五話 リュータの帰還と新たな力
しおりを挟む
目が覚めると、そこは見知った天井だった。
木目が美しい木張りの天井。歴史を感じさせる木の朴訥さに、じっちゃん家へ帰ってきたと錯覚した。
「いや、違うな」
じっちゃん家の布団は、いわゆるせんべい布団、中の綿が少なくてガッチガチに固いヤツだ。まかり間違っても今俺の体にかけられているような羽毛布団ではない。
「じゃぁ、どこなんだ?」
体を起こして見渡してみる。
ん?
「あれ? 体が痛くない?」
直前まで死にかけていたはずなのに、俺の手はツヤッツヤのいつもの手だった。ほほを触っても、うん、いつもの俺だ。
まるで狐に化かされたようだ・・・。
「おや、起きたのかぇ」
「シルちゃん!?」
見慣れた金髪巫女巫女エルフことシルちゃんが部屋の入口から俺に声をかけてきた。
その姿を見て、俺は目から汁が止まらなかった。
「お、おお? 大丈夫じゃ、大丈夫じゃ」
俺はシルちゃんに抱きしめられ、彼女の柔らかで優しく懐かしい匂いに、また泣いた。
もう二度と会えないかと思っていた。
「ぶっ、ぶべぇぇぇぇぇぇ!!」
「ぬお!? リュータは泣き方がちょいとブサイクなんじゃのぉ・・・」
その感想はショックなんですけど!?
***
散々に泣いた後で、シルちゃんと話をしてみたが、どうにも俺の記憶とは異なる様子に俺もシルちゃんも戸惑った。
「お主はワシらが転移してから三十分遅れたのじゃ。その事は玄武から少し聞いておったが、三か月は経っておらぬよ」
「そうなんだね。うーん」
俺の記憶では確かにカールビン皇国で奴隷生活を三か月送ったはずなのに、こちらでは三十分しか経っていない。今はアベリア王国を出立してからまだ一時間しか経っていないようだ。
って、そうか!
「『ステータス』!」
・・・え?
『ステータス』を見たら、確かにシルちゃんの言う通りだった。そして覚えたはずの『罠解除』『罠感知』『罠解析』の三つのスキルがない!?
「どうなってるんだ・・・」
「おお、リュータは目覚めましたか」
「ミレイさん? そのお腹は、もしかして?」
呆然としていたらお腹の大きなミレイさんが現れた。
「久しぶり、リュータ。ええ、そうよ、この子はケントと私の子供なの」
そう言って愛おしそうにお腹を撫でるミレイさんは、何と言うか、今までのような焦りを感じる事はなかった。
って、なにゆえにミレイさんは俺の頭をわしづかみにしておられるのでしょうか?
「久しぶりの再会に良からぬことを考えた子にはお仕置きが必要でしょ?」
「いや、そんな事考えてませんし、それはダメです、ダメですってーーー!!」
頭蓋骨が割れちゃうぅぅぅぅ!!!!
***
あの後、みんなが集まって俺の無事の確認が行われた。
なお、頭以外は大丈夫だと言われた。特に中は手の施しようがないのだとか。
ヲイ。
「んで、一体何があったンだ? テメーの精神がイカレちまったんじゃなきゃ、あの三十分の間に何かあったんだよナ?」
真面目な顔で実は意外と優しいワン君が若干心配顔で尋ねてくるが、俺も正直どう話したらいいのやら。
すると、メッセージが目の前に流れた。
[私から説明するの]
「ん? おや、これは・・・」
右手に硬い感覚が唐突に沸いたので手の平を見れば、そこには見慣れないダンジョンコアの魔石があった。その魔石の柄は、真っ白い中に横線が引かれており、ぱっと見は、便せん?
「見た事のない魔石が・・・」
「アン?」
「ほら、これ」
「はー、何だかビー玉みたいですね」
覗き込んでくるワン君とミチルさんにその魔石を見せると、ワン君がひょいとその魔石を摘み上げた。
そしてその次の瞬間、彼は雷を打たれたかのような衝撃を受け、バチバチと言う音を発生させて
頭部がバーコードアフロになっていた。
「ご、ごはっ」
「ワン君!?」
バーコードなアフロなんて初めて見たよ!
いや、そうじゃない。
元勇者で滅茶苦茶強いワン君に一体何が。
「申し訳ないの。この方から魔力を頂いたの」
唐突に可愛らしくも申し訳なさそうな声がしたので声のした方向を見ると、ツバが広く三角のテッペンがついた魔女帽のような帽子をかぶりローブをまとった妖精さんの姿がそこにはあった。
なぜかワン君のアフロの上に。
「えーと、誰さんかな?」
戸惑い気味にミチルさんが尋ねたが、その少女は首を横に振っていた。
「名前はないの。ごめんなさいなの」
そう言っておじぎをすると、彼女の肩から髪がずり落ちた。
ふむ、白髪にツインテールか。悪くない。所々黒髪が混じっているのも中々に、その、うん。
「イイネ」
「え? いい・・・の?」
「うん、おっけー」
良く分からないけど、かわいいし素直な子みたいだからとりあえずオッケー。
「あいかわらずおなごには弱いんじゃのぉ」
「かわいい子を見るとすぐこれですよね」
なんでかシルちゃんとミチルさんの視線が厳しいけど、ちょっと待って欲しい。俺は子供相手に思う「かわいい」を思い浮かべているのであって、シルちゃん相手に思うような「かわいい」とは違うんだよ?
と言うかこの妖精さんに欲情するとか、サイズ的にヤバいから。ほんと、人を変人に仕立て上げないで欲しい。
「いや、テメーは十分変態だロ!?」
***
「私は、記憶のダンジョンのダンジョンコアの分体なの」
そう言いだした彼女に、俺を含めた面々は疑問符を頭に浮かべていた。
記憶のダンジョン? 何それ?
なので詳しく話を聞いたところ、なんでも二百年ほど前にこの世界の在り様を嘆き、神々に自国の平和と安寧を願った国が、そのカールビン皇国だったと言う。
ただ願った神が記憶を司る神だったので、そこに大きな問題があった。
記憶の神が、彼らを封印してしまったのである。
「自分たちだけの平和を願った彼らは、人々の記憶を吸い上げたダンジョンに封印され、歳を取らず、死ぬこともなく幻想の世界で今もなお生きているの」
つまり、記憶を司る神様が願いを叶えるために国民の全てを記憶、うーん、何と言えばいいのか、ああ、そうだ。電子脳的な感じで彼らを情報化して、それで守護していたそうだ。
それって、生きてるって言えるんですかね? 電子ゴーストとか、そう言うのじゃないんですかね。
ちなみに俺が体験したのは、その記憶のダンジョンが吸い上げた誰かの記憶をツギハギしたもの。つまり、よそから紛れ込んだ人物がいて、その人がああやって俺のように奴隷にされて塔の攻略を無理やりさせられたのを追体験させられた訳だ。多少中身は違っているようだが、あのような不幸な目に逢った誰かが、実際にいたのだろう。
「記憶の中の者たちに成長はないの。あるとすれば外部からの刺激により、常とは違う反応をする程度なの。だから時々ああやって、外部の者をダンジョンに迷い込ませるの。そうしなければ、今度は精神が死んでしまうの」
そう言って悲しそうに目を伏せる記憶のダンジョンコアの妖精さんは、それが決して良い事だとは思っていないようだった。
なんか、歯車がかみ合ってない的な、そんな感じだ。
「でも、あれはもう、生きているとは言えないの。人としての肉を捨てて、停滞し、進歩も後退もないの。彼らが願ったものは、そのようなものではなかったの」
「だろうね」
そこで彼女の話は終わった。
まぁ要約すると俺が紛れ込んだのが記憶のダンジョンで、あれは単なる夢だった、と言う話。
言われてみれば、俺はカールビン皇国についてもよく知らず、それどころかその間の三か月の記憶もあいまいだった。あれはきっと、ツギハギな記憶を早送りで見たからうろ覚えになったんだろう。それに、今思えばダンジョンの詳細もいまいち覚えていない。迷ったり、階段があったりした事は覚えていても、塔の外壁はどんなだったかとか、何を食べていたのかとか、どんな魔物が出てきたのかとかいまいちよく覚えていない。ガッ〇ャマンと戦ったような記憶が辛うじてあるだけだ。
でもなんでガッ〇ャマン?
「しかし、不思議じゃのぉ。リュータには呪いは効かんと聞いておったが」
「あ、確かに!」
そう、そうだよ。俺が一番疑問に思ったのは、そこだよ。便乗じゃないよ?
「それはそうなの。あれは、あのダンジョンの加護なの」
え? あれが!?
「つまり、人々を守る為の加護が、結果として人を傷つけている、と言う事でしょうか?」
ミチルさんは何だか分かったような顔をしてそんな事を記憶のダンジョンコアの妖精さんに聞いていた。
「って、記憶のダンジョンコアの妖精さんって名前が長すぎる!」
「ごめんなさいなの」
「なので君は今日から記子さん。記憶の記に子供の子で、ノリコさん」
「え?」
「え?」
「え?」
「センスねぇなぁ・・・」
シルちゃん、ミチルさん、ミレイさんの驚いた声と、呆れたようなワン君の声。うーん、俺的にはいい名前だと思ったんだけどなぁ。
「どうかな? 記子さん」
こう言うのは本人が納得するかしないかだし。てゆーか、俺、他にも四人の妖精さんの名づけもしたしー。チョーヤバイってゆーかー。
「う、うう・・・」
記子さん(仮名)が、泣いた!?
「そんなにもイヤだったの!?」
妖精カルテットに名づけをした時はなかった事態に俺、困惑。
いや、待てよ。ひょっとして妖精カルテットも実は名前、あんまり気に入ってないとか、ないよね?
「泣かせたのぉ」
「さすがその名前はあんまりです!」
「私も、生まれる子供の名づけを君に頼むだけはやめるよ」
なんでだよ!?
***
ま、結局誤解だったんだけどね。
まさかうれし泣きされるとは思わなかったよ。
あれからみんなは事情を聴いて納得したと部屋から出て行った。
俺はひとまず安静にと言う事で、今日一日は寝ていろと言われてしまったよ。
「しかし、あれがただの夢かぁ」
今でもしっかりと覚えているのは、罠を解除する感覚だった。それ以外はおぼろげで、本当にあれが実際に起こった事ではなかったのだといやがおうにも認識させられていた。
「聞くだけで悪寒がするような話じゃったからの。夢でむしろよかったのじゃ」
巫女巫女ナースなシルちゃんがそう言って俺を慰めてくれる。
「身体はともかく、心は弱っておるからの。今日は無理せん事じゃ。今、茶を入れてくるからの」
俺の頭を撫でて、それからシルちゃんは立ち上がった。
俺はその後姿、正確にはでん部を見ながら・・・
[解除しますか? はい/いいえ]
「なんだこれ?」
唐突に現れたアナウンスに、思わず俺は「はい」を選択した。
すると後ろを向いていたシルちゃんの足元に白い布がポトリと落ちた。
「シルちゃん、ハンカチ落としたよ?」
そう言って拾い上げたソレは、シルちゃんの体温で少し生暖かかった。
いや、と言うか、袴の中からハンカチって落ちてくるか?
「ぬ、そうか、すまん・・・の!?」
広げてみたが、なんだろう。紐? それと四角くない布地。明らかにこれ、ハンカチじゃないんだけど・・・。
「ぬおおおおおおお!!!」
「はい?」
叫んでその布をひったくり、内股になりながら後ずさりする涙目のシルちゃん。
なにそれ、ソソる。
「じゃなくて、どうしたの!?」
「どうかしましたか!?」
「なんダァ・・・テメーは大人しくできねーのかよ」
「シルビィエンテクライテア様、いかがなさいました?」
シルちゃんの叫び声を聞いて、再び集まった一同に、シルちゃんが震えながら答えてくれた。
「リュータが、ワシのパンツを脱がしたのじゃ・・・」
「え?」
今の、パンツだったの!?
木目が美しい木張りの天井。歴史を感じさせる木の朴訥さに、じっちゃん家へ帰ってきたと錯覚した。
「いや、違うな」
じっちゃん家の布団は、いわゆるせんべい布団、中の綿が少なくてガッチガチに固いヤツだ。まかり間違っても今俺の体にかけられているような羽毛布団ではない。
「じゃぁ、どこなんだ?」
体を起こして見渡してみる。
ん?
「あれ? 体が痛くない?」
直前まで死にかけていたはずなのに、俺の手はツヤッツヤのいつもの手だった。ほほを触っても、うん、いつもの俺だ。
まるで狐に化かされたようだ・・・。
「おや、起きたのかぇ」
「シルちゃん!?」
見慣れた金髪巫女巫女エルフことシルちゃんが部屋の入口から俺に声をかけてきた。
その姿を見て、俺は目から汁が止まらなかった。
「お、おお? 大丈夫じゃ、大丈夫じゃ」
俺はシルちゃんに抱きしめられ、彼女の柔らかで優しく懐かしい匂いに、また泣いた。
もう二度と会えないかと思っていた。
「ぶっ、ぶべぇぇぇぇぇぇ!!」
「ぬお!? リュータは泣き方がちょいとブサイクなんじゃのぉ・・・」
その感想はショックなんですけど!?
***
散々に泣いた後で、シルちゃんと話をしてみたが、どうにも俺の記憶とは異なる様子に俺もシルちゃんも戸惑った。
「お主はワシらが転移してから三十分遅れたのじゃ。その事は玄武から少し聞いておったが、三か月は経っておらぬよ」
「そうなんだね。うーん」
俺の記憶では確かにカールビン皇国で奴隷生活を三か月送ったはずなのに、こちらでは三十分しか経っていない。今はアベリア王国を出立してからまだ一時間しか経っていないようだ。
って、そうか!
「『ステータス』!」
・・・え?
『ステータス』を見たら、確かにシルちゃんの言う通りだった。そして覚えたはずの『罠解除』『罠感知』『罠解析』の三つのスキルがない!?
「どうなってるんだ・・・」
「おお、リュータは目覚めましたか」
「ミレイさん? そのお腹は、もしかして?」
呆然としていたらお腹の大きなミレイさんが現れた。
「久しぶり、リュータ。ええ、そうよ、この子はケントと私の子供なの」
そう言って愛おしそうにお腹を撫でるミレイさんは、何と言うか、今までのような焦りを感じる事はなかった。
って、なにゆえにミレイさんは俺の頭をわしづかみにしておられるのでしょうか?
「久しぶりの再会に良からぬことを考えた子にはお仕置きが必要でしょ?」
「いや、そんな事考えてませんし、それはダメです、ダメですってーーー!!」
頭蓋骨が割れちゃうぅぅぅぅ!!!!
***
あの後、みんなが集まって俺の無事の確認が行われた。
なお、頭以外は大丈夫だと言われた。特に中は手の施しようがないのだとか。
ヲイ。
「んで、一体何があったンだ? テメーの精神がイカレちまったんじゃなきゃ、あの三十分の間に何かあったんだよナ?」
真面目な顔で実は意外と優しいワン君が若干心配顔で尋ねてくるが、俺も正直どう話したらいいのやら。
すると、メッセージが目の前に流れた。
[私から説明するの]
「ん? おや、これは・・・」
右手に硬い感覚が唐突に沸いたので手の平を見れば、そこには見慣れないダンジョンコアの魔石があった。その魔石の柄は、真っ白い中に横線が引かれており、ぱっと見は、便せん?
「見た事のない魔石が・・・」
「アン?」
「ほら、これ」
「はー、何だかビー玉みたいですね」
覗き込んでくるワン君とミチルさんにその魔石を見せると、ワン君がひょいとその魔石を摘み上げた。
そしてその次の瞬間、彼は雷を打たれたかのような衝撃を受け、バチバチと言う音を発生させて
頭部がバーコードアフロになっていた。
「ご、ごはっ」
「ワン君!?」
バーコードなアフロなんて初めて見たよ!
いや、そうじゃない。
元勇者で滅茶苦茶強いワン君に一体何が。
「申し訳ないの。この方から魔力を頂いたの」
唐突に可愛らしくも申し訳なさそうな声がしたので声のした方向を見ると、ツバが広く三角のテッペンがついた魔女帽のような帽子をかぶりローブをまとった妖精さんの姿がそこにはあった。
なぜかワン君のアフロの上に。
「えーと、誰さんかな?」
戸惑い気味にミチルさんが尋ねたが、その少女は首を横に振っていた。
「名前はないの。ごめんなさいなの」
そう言っておじぎをすると、彼女の肩から髪がずり落ちた。
ふむ、白髪にツインテールか。悪くない。所々黒髪が混じっているのも中々に、その、うん。
「イイネ」
「え? いい・・・の?」
「うん、おっけー」
良く分からないけど、かわいいし素直な子みたいだからとりあえずオッケー。
「あいかわらずおなごには弱いんじゃのぉ」
「かわいい子を見るとすぐこれですよね」
なんでかシルちゃんとミチルさんの視線が厳しいけど、ちょっと待って欲しい。俺は子供相手に思う「かわいい」を思い浮かべているのであって、シルちゃん相手に思うような「かわいい」とは違うんだよ?
と言うかこの妖精さんに欲情するとか、サイズ的にヤバいから。ほんと、人を変人に仕立て上げないで欲しい。
「いや、テメーは十分変態だロ!?」
***
「私は、記憶のダンジョンのダンジョンコアの分体なの」
そう言いだした彼女に、俺を含めた面々は疑問符を頭に浮かべていた。
記憶のダンジョン? 何それ?
なので詳しく話を聞いたところ、なんでも二百年ほど前にこの世界の在り様を嘆き、神々に自国の平和と安寧を願った国が、そのカールビン皇国だったと言う。
ただ願った神が記憶を司る神だったので、そこに大きな問題があった。
記憶の神が、彼らを封印してしまったのである。
「自分たちだけの平和を願った彼らは、人々の記憶を吸い上げたダンジョンに封印され、歳を取らず、死ぬこともなく幻想の世界で今もなお生きているの」
つまり、記憶を司る神様が願いを叶えるために国民の全てを記憶、うーん、何と言えばいいのか、ああ、そうだ。電子脳的な感じで彼らを情報化して、それで守護していたそうだ。
それって、生きてるって言えるんですかね? 電子ゴーストとか、そう言うのじゃないんですかね。
ちなみに俺が体験したのは、その記憶のダンジョンが吸い上げた誰かの記憶をツギハギしたもの。つまり、よそから紛れ込んだ人物がいて、その人がああやって俺のように奴隷にされて塔の攻略を無理やりさせられたのを追体験させられた訳だ。多少中身は違っているようだが、あのような不幸な目に逢った誰かが、実際にいたのだろう。
「記憶の中の者たちに成長はないの。あるとすれば外部からの刺激により、常とは違う反応をする程度なの。だから時々ああやって、外部の者をダンジョンに迷い込ませるの。そうしなければ、今度は精神が死んでしまうの」
そう言って悲しそうに目を伏せる記憶のダンジョンコアの妖精さんは、それが決して良い事だとは思っていないようだった。
なんか、歯車がかみ合ってない的な、そんな感じだ。
「でも、あれはもう、生きているとは言えないの。人としての肉を捨てて、停滞し、進歩も後退もないの。彼らが願ったものは、そのようなものではなかったの」
「だろうね」
そこで彼女の話は終わった。
まぁ要約すると俺が紛れ込んだのが記憶のダンジョンで、あれは単なる夢だった、と言う話。
言われてみれば、俺はカールビン皇国についてもよく知らず、それどころかその間の三か月の記憶もあいまいだった。あれはきっと、ツギハギな記憶を早送りで見たからうろ覚えになったんだろう。それに、今思えばダンジョンの詳細もいまいち覚えていない。迷ったり、階段があったりした事は覚えていても、塔の外壁はどんなだったかとか、何を食べていたのかとか、どんな魔物が出てきたのかとかいまいちよく覚えていない。ガッ〇ャマンと戦ったような記憶が辛うじてあるだけだ。
でもなんでガッ〇ャマン?
「しかし、不思議じゃのぉ。リュータには呪いは効かんと聞いておったが」
「あ、確かに!」
そう、そうだよ。俺が一番疑問に思ったのは、そこだよ。便乗じゃないよ?
「それはそうなの。あれは、あのダンジョンの加護なの」
え? あれが!?
「つまり、人々を守る為の加護が、結果として人を傷つけている、と言う事でしょうか?」
ミチルさんは何だか分かったような顔をしてそんな事を記憶のダンジョンコアの妖精さんに聞いていた。
「って、記憶のダンジョンコアの妖精さんって名前が長すぎる!」
「ごめんなさいなの」
「なので君は今日から記子さん。記憶の記に子供の子で、ノリコさん」
「え?」
「え?」
「え?」
「センスねぇなぁ・・・」
シルちゃん、ミチルさん、ミレイさんの驚いた声と、呆れたようなワン君の声。うーん、俺的にはいい名前だと思ったんだけどなぁ。
「どうかな? 記子さん」
こう言うのは本人が納得するかしないかだし。てゆーか、俺、他にも四人の妖精さんの名づけもしたしー。チョーヤバイってゆーかー。
「う、うう・・・」
記子さん(仮名)が、泣いた!?
「そんなにもイヤだったの!?」
妖精カルテットに名づけをした時はなかった事態に俺、困惑。
いや、待てよ。ひょっとして妖精カルテットも実は名前、あんまり気に入ってないとか、ないよね?
「泣かせたのぉ」
「さすがその名前はあんまりです!」
「私も、生まれる子供の名づけを君に頼むだけはやめるよ」
なんでだよ!?
***
ま、結局誤解だったんだけどね。
まさかうれし泣きされるとは思わなかったよ。
あれからみんなは事情を聴いて納得したと部屋から出て行った。
俺はひとまず安静にと言う事で、今日一日は寝ていろと言われてしまったよ。
「しかし、あれがただの夢かぁ」
今でもしっかりと覚えているのは、罠を解除する感覚だった。それ以外はおぼろげで、本当にあれが実際に起こった事ではなかったのだといやがおうにも認識させられていた。
「聞くだけで悪寒がするような話じゃったからの。夢でむしろよかったのじゃ」
巫女巫女ナースなシルちゃんがそう言って俺を慰めてくれる。
「身体はともかく、心は弱っておるからの。今日は無理せん事じゃ。今、茶を入れてくるからの」
俺の頭を撫でて、それからシルちゃんは立ち上がった。
俺はその後姿、正確にはでん部を見ながら・・・
[解除しますか? はい/いいえ]
「なんだこれ?」
唐突に現れたアナウンスに、思わず俺は「はい」を選択した。
すると後ろを向いていたシルちゃんの足元に白い布がポトリと落ちた。
「シルちゃん、ハンカチ落としたよ?」
そう言って拾い上げたソレは、シルちゃんの体温で少し生暖かかった。
いや、と言うか、袴の中からハンカチって落ちてくるか?
「ぬ、そうか、すまん・・・の!?」
広げてみたが、なんだろう。紐? それと四角くない布地。明らかにこれ、ハンカチじゃないんだけど・・・。
「ぬおおおおおおお!!!」
「はい?」
叫んでその布をひったくり、内股になりながら後ずさりする涙目のシルちゃん。
なにそれ、ソソる。
「じゃなくて、どうしたの!?」
「どうかしましたか!?」
「なんダァ・・・テメーは大人しくできねーのかよ」
「シルビィエンテクライテア様、いかがなさいました?」
シルちゃんの叫び声を聞いて、再び集まった一同に、シルちゃんが震えながら答えてくれた。
「リュータが、ワシのパンツを脱がしたのじゃ・・・」
「え?」
今の、パンツだったの!?
0
あなたにおすすめの小説
追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る
夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。
夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
追放された荷物持ち、スキル【アイテムボックス・無限】で辺境スローライフを始めます
黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティーで「荷物持ち」として蔑まれ、全ての責任を押し付けられて追放された青年レオ。彼が持つスキル【アイテムボックス】は、誰もが「ゴミスキル」と笑うものだった。
しかし、そのスキルには「容量無限」「時間停止」「解析・分解」「合成・創造」というとんでもない力が秘められていたのだ。
全てを失い、流れ着いた辺境の村。そこで彼は、自分を犠牲にする生き方をやめ、自らの力で幸せなスローライフを掴み取ることを決意する。
超高品質なポーション、快適な家具、美味しい料理、果ては巨大な井戸や城壁まで!?
万能すぎる生産スキルで、心優しい仲間たちと共に寂れた村を豊かに発展させていく。
一方、彼を追放した勇者パーティーは、荷物持ちを失ったことで急速に崩壊していく。
「今からでもレオを連れ戻すべきだ!」
――もう遅い。彼はもう、君たちのための便利な道具じゃない。
これは、不遇だった青年が最高の仲間たちと出会い、世界一の生産職として成り上がり、幸せなスローライフを手に入れる物語。そして、傲慢な勇者たちが自業自得の末路を辿る、痛快な「ざまぁ」ストーリー!
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強
こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」
騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。
この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。
ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。
これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。
だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。
僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。
「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」
「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」
そうして追放された僕であったが――
自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。
その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。
一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。
「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」
これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる