最強魔法は生活魔法!? ~異世界ではモンスター退治も生活のうち~

gagaga

文字の大きさ
66 / 96
第六章 リュータと神と勇者の秘密

第六十六話 触手のその後

しおりを挟む
 まるで向こうの世界で市や町が管理する街路樹のように、チェーンソーで雑にカットされたかのようなローパーを遠目にながら、俺たちはローパーの触手が届かない安全圏で一息ついていた。
 ローパーは再生が追い付かないのか、短くなった触手をウネウネとさせながら揺らめいていて、色も透き通った青なので幻想的ではある。

「あれは確かに近くで見てみたくなるな。あ゛ー、寝不足だし、妙なテンションだったから疲れた・・・」

 しかし・・・、なんだよ、『封印されし右腕デス☆シザー』って。
 右手一本でシザー、ハサミですらなかったし、俺は何を叫んでいたのだろうか。
 あと四つ、左手、左足、右足、胴体のパーツがそろったらデュエルに勝利でもするのだろうか。

 ああ、冷静になって考えると死ねる。

 考えるな・・・、考えるな・・・。
 ワスレロワスレロ・・・。


 他のみんなの様子はどうだろうだか。
 ひとまず三人で固まっているワン君、アンリエット様、ウィルを見る。

「こっちは・・・ハァハァ・・・・・・。捕まってたから余計に疲れてンゾ・・・。ボェェ。まだ口ン中に何か突っ込まれてる気がすンゾ・・・・・・」
「勇者のくせに、情けない」
「そういうオバ・・・、魔戦隊長殿も、足が生まれたての小鹿の様に震えているではないか」
「ふん、これはその、武者震いだ」
「今ごろ武者震えて、どうする気なンだ。ボェェェェ」

 仲の悪い三人も、この時ばかりはケンカする元気がない・・・、と思わせて、普通に口ゲンカしている。結構余裕あるんだなー。
 これなら彼らは自力で歩いて帰れそうだ。

 三人と同じく触手に捕まっていたミチルさんはと言えば、地面にへたり込んでいた。
 疲れてはいるけど、彼女はおんぶして帰らないといけない、か?

「もう、いやだぁ。お嫁に行けませんー。ひーん」

 器用にも座りながら足をバタバタさせて泣いている。
 うん、思ったより元気がありそうな様子で一安心だ。

 しかし、確かにあの光景を知られては、ただでさえ頭部的に不利なミチルさんの婚期が遠のくね。
 当人は向こうの世界でもまだ高校生、こちらでも成人したてだから焦るほどではないが、それでも

「将来の夢は、素敵なお嫁さんなんです」

 と言う、かわいらしいお嬢さんだ。

 ・・・、そう言う当人の家事能力が皆無なのは、この際目を瞑ろう。

 とにもかくにも、そんなお嬢さんが触手プレイの餌食になって、エロい事になったと知られては、意外と潔癖症と言うか貞操観念の強いこの世界の人たちへのウケはよろしくないだろう。

 だがしかし、こう見えて俺は口が堅い。アンリエット様も軍人だから口は堅いだろう。心配はいらないと思う。

 いや、シルちゃんは、意外と口が軽かったな。
 街でもよく井戸端会議に参加しているし・・・、シルちゃんに見られたのは、ちょっとマズかったかもしれない。

 うーん。
 ひ、ひとまずミチルさんを慰める為に、言葉を選ぶとしよう。

「大丈夫。見てたのは俺とアンリエット様とシルちゃんだけだから。俺は絶対に心の中に留めておくよ。決して先の光景を口外しないから」
「このパーティの中でも常識人のお三方に見られているので、全く大丈夫じゃありませんーー!! リュータさん、忘れて下さいぃぃ」
「そ、そう言われても・・・」

 ファンタジーの伝統芸、ある意味で男の夢、美少女のエローパー触手プレイ。
 クッキリハッキリ覚えていますし、衝撃的すぎて、すぐには忘れられません。ごめんなさい。
 ただミチルさんの頭部的正体を知っているからか、イマイチ興奮出来なかったんだけど、それを言う必要はないよなぁ。
 慰めるどころか、火に油を注ぎそうだし。

「まだあの二人に見られていた方がマシですぅ」

 よほどショックだったのか、ミチルさんの精神年齢が下がっている。
 そう言えば以前、触手プレイよりも催眠プレイの方が好みだと言っていたっけ。

 いやいや、あれはゲームとかの話で、実際に自分がプレイされる側と言う話ではなかったはず。
 いや、まさか、ねぇ?

 ひとまずミチルさんの新たな疑惑、性癖の話は脇に置いておこう。
 触手の圏外とは言え、ここはダンジョン。他にも危険なモノはたくさんあるのだから。

「疲れたのじゃぁ。森はやはり油断できんのぉ」 
「そうだね。これはもう、今日はこれ以上奥深くに行くのは無理だよね」
「幸いにも死人が出なんだのじゃ。時間は惜しいが、ここいらが潮時じゃの」

 シルちゃんは未だにネチネチと口論を繰り広げている三人を見て、そう提案してくる。
 そもそもこうなった原因が、この三人の暴走にあるんだよな。
 不用意にローパーに近寄った男二人と、アンリエット様を庇ったミチルさんが拘束されいきなり戦力大幅減だったからねぇ。

 ・・・、何が心配のないほどの過剰戦力だよ・・・。


 よし、グチグチ考えていても仕方がない。意識を切り替えて、さっさと戻ろう!

「うん、俺も幸運だったと思うよ」

 それに、反応は様々だけど、おおむねみんなの今の思いは一つだ。

「ひとまず拠点に戻りますか」
「賛成~」

 そして俺たちはただの植物にいい様にやられ、這う這うの体でモノリスのある拠点に戻る事になった。

 その道中、何気なくウィルが俺に聞いてきたその内容でまた一波乱あった。

「なぁリュータ。貴様の『生活魔法』には、『除草剤』なんてモノはなかったのか?」
「え?」
「いやなに、『芳香剤』が使えるのなら、そう言うモノもなかったのかと」

 ・・・。

「『除草剤』」

 手近にあった雑草っぽい草に向けて魔法を放つ。

 草は、枯れた。

「・・・」
「・・・」

 ・・・、・・・・・・。
 沈黙と、みんなの視線がイタイ。

「なンでテメー! 最初にコレ使わなかったンダァァァルオオオ!?」
「人に当たるでない、性根まで腐った外道勇者」
「ウッセーババァ! 俺様ァ妙な液体飲まされて、あ、何かお腹痛い・・・。ちょっと待って、出そう。下から何か、出そう・・・」

 興奮していたと思いきや、突如腹を押さえて腹痛を訴えてくる不穏なワン君に、思わず一同後ずさり。
 どうやら先ほどのローパー汁に当たったようだ。

 真っ青な顔をしたワン君に、アンリエット様が容赦なく告げる。

「そこらの茂みででもしてこい! 私たちは先に帰っておるぞ!」
「お、おい、待てよ。本当に、あ、痛い・・・」
「タチの悪い病気の可能性もある。コヤツは今ここで、焼却処分しておく方がよいか?」

 いやいや、アンリエット様は何を物騒な事言ってるんですかねぇ!
 ワン君はハイレベル過ぎて、焼却処分するには俺たちだけだと火力足りてないよ!?

 ・・・、いや、何を考えたんだ、俺。
 どうやら寝不足で思考能力がどうにかなってしまってるようだ。

「・・・、ここは魔戦隊長殿の言う事が正しい。ワンは置いていくべきだろう」
「レベル三桁の勇者だから、死ぬことはないと思いますし、早く帰りましょう~」
「もう、眠いのじゃ~」

 君ら、結構冷たいのね。

 結局、俺がワン君に付き添う形でその場に居残り、残る面々は振り向きもせず拠点に向かって真っ直ぐに帰っていった。
 俺が残ったのは、先ほどワン君の焼却処分について考えた罪滅ぼしだ。

 穴掘って、『消音消臭』をかけて、お尻拭く用の葉っぱも渡してあげて、出たブツの穴を塞いで、最後に手洗い用の水を供給してあげた。
 俺の単独孤島生活の成果が今、最大限に発揮されていた。

「て、テメェは、心の友だぁぁぁぁぁ!!」

 その結果、ワン君にとても懐かれた。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!

追放された荷物持ち、スキル【アイテムボックス・無限】で辺境スローライフを始めます

黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティーで「荷物持ち」として蔑まれ、全ての責任を押し付けられて追放された青年レオ。彼が持つスキル【アイテムボックス】は、誰もが「ゴミスキル」と笑うものだった。 しかし、そのスキルには「容量無限」「時間停止」「解析・分解」「合成・創造」というとんでもない力が秘められていたのだ。 全てを失い、流れ着いた辺境の村。そこで彼は、自分を犠牲にする生き方をやめ、自らの力で幸せなスローライフを掴み取ることを決意する。 超高品質なポーション、快適な家具、美味しい料理、果ては巨大な井戸や城壁まで!? 万能すぎる生産スキルで、心優しい仲間たちと共に寂れた村を豊かに発展させていく。 一方、彼を追放した勇者パーティーは、荷物持ちを失ったことで急速に崩壊していく。 「今からでもレオを連れ戻すべきだ!」 ――もう遅い。彼はもう、君たちのための便利な道具じゃない。 これは、不遇だった青年が最高の仲間たちと出会い、世界一の生産職として成り上がり、幸せなスローライフを手に入れる物語。そして、傲慢な勇者たちが自業自得の末路を辿る、痛快な「ざまぁ」ストーリー!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

処理中です...