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第六章 リュータと神と勇者の秘密
第六十八話 鈍感の神
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俺個人のちょっとした秘密を知ったあの後、取り留めもない会話を交わし気が付けば交代の時間となっていた。
アンリエット様はそれに気づき、シルちゃんとミチルさんが眠っているスペースに入っていった。
ちなみに今回の拠点は、長居をする気がないので女性陣側は木の枝からぶら下げた防水性の布を仕切り代わりにした、とても簡素なものだ。
地面に杭を打ち、木の枝とそこを頑丈なロープで結び、間に布をはわせる軍隊式。天辺には斜めに布が付けられ、建物の軒下程度ではあるものの、雨が降っても大丈夫なようになっている。
設営も撤去も非常に簡単で、なおかつ出入りも容易。運搬には防水シートのようなものと普通に使うロープだけで、冒険者も大所帯になると使っているらしい。個人個人の防水シート1枚ずつを組み合わせて、人数に応じて大きさを変えられるのがいいらしい。
そう言う豆知識と共に結構な勉強になった。
前に冒険者連中、ガルフたちと野宿した時は、地面に防水シートを敷いただけの場所で寝てたし、当時は移動中だったから拠点を作らなかったからねぇ。
ああ、ほんと懐かしいなぁ。
なお俺たちの宿泊設備の方は、ワン君の腕力にモノを言わせて運搬した普通の鉄パイプ式のテントを展開しているが、湿度の高い密林ダンジョンではその密封性が逆に仇となった。
空気の通り道が極端に少ないので不快指数が跳ね上がっており、当初女性陣に使用してもらおうと思っていた俺の意図とは裏腹に完全に拒否され、いい感じに蒸し風呂になったテントで男どもは寝ている。
地味に、その蒸し風呂に入りたくなくて徹夜気味の夜番を引き受けていたのは秘密だ。
「ではあとは任せたぞ」
「うむ、任せるのじゃぁ」
「ふぁい・・・」
眠そうな二人にそう声をかけ、アンリエット様は空いたスペースで熟睡し始める。
いや、きちんと入り口を閉めて下さい。
どうにも思ったよりも昼間の事件の影響がまだ残っているみたいだ。
「とは言え開けっ放しとは、困ったモノだなぁ」
二人に作りたての目覚ましハーブティを渡した後、俺は女性陣の睡眠スペースの入り口を閉じる。軽く前合わせで磁石のような留め具が付いている、ちょっとだけ向こうの世界を思わせるそのデザインに驚きつつ、きっちりと入り口を閉じる。
中は虫よけのお香が焚かれているが、閉めないと大物が迷い込んで酷い目に逢ったりするそうだ。
そしてなんとはなく俺は焚き火の前に戻る。
俺たちのテントからうめき声が聞こえ、中が確実に蒸し風呂と化しているので戻りたくないとか、そんな理由ではそんなにない。
それよりも彼女たち二人の意見が聞きたかったからだ。
「二人とも、大丈夫?」
そう聞く俺に、ちょっと眠そうなホンワカした笑顔で二人が頷いていた。
うん、すっごく緩んでるね。
不安しか感じないよ・・・。
「昨晩は済まなんだのぉ。夜番をやっとる事を知らなんだ故に、リュータには負担をかけたのぉ」
「聞いていなかったとは言え、本当にすいませんでした」
俺の不安を感じ取ったのか、あるいはタイミングを見計らっていたのか、二人して昨晩について謝られてしまった。
ちなみに今彼女らの言う通り、彼女ら自身は夜番があった事すら知らなかった。
「いやいや、夜番については君たちが寝てからこっちで勝手に決めた事だからね」
と言うか、探知能力が高い勇者二人は奇襲されても対処出来て、シルちゃんはそもそもこのダンジョンにそこまで危機感を抱いていない。
だから俺も夜の見張りなんていらないんじゃないかって思ってたんだよね。
ただアンリエット様が、ほぼ一般人のウィルがいるから何かあってからでは困ると提案して、あれよあれよと言う間、ウィルとワン君とアンリエット様がケンカしているうちに決まっちゃったからねぇ。
「事前に打ち合わせもなかったし、ダンジョン入る前の計画にすらなかったんだから、二人が悪い訳じゃないよ」
そもそも発案者のアンリエット様は、結局二人を起こす事なく仲良く三人で寝てたわけだし、言っちゃなんだけど割と抜けてるんだよなぁ。
「そうは言うてものぉ」
「そうです! そんなわけですから、ささ、どうぞお休みください」
「うん、そうだね」
二人に聞きたいことがあって居座ってみたけど、これだけ恐縮と言うか気を使われてしまったら今日の所は寝ようかな。
そう思って立ち上がり、テントの入り口に手をかけた。
テントの入り口のわずかな隙間から、独特の男臭と熱気が漏れ出ている。
即座に閃いて、『生活魔法』の『換気』を行なうも、それにより出てきた色の濃い湯気は、何と言うか、幻視なんだろうけど、なんとなく黄色くなっていたような気がした。
俺は回れ右をした。
その様子を見ていた二人は無言で自分たちの間にスペースを作ってくれた。
俺は二人の間に収まった。
焚き火に顔を照らされつつ、三角座りをした俺は呟いた。
「あれはないなぁ・・・」
「彼らは我慢大会でもしておるのか?」
「うめき声が聞こえると思ったら、あんなことになっていたんですね」
遠目からでも中の惨事が想像出来たらしく、彼女らも無理に戻れとは言わなかった。
「そう言う訳だから、ちょっと話をしない?」
「構いませんが・・・」
ハーブティを飲み終えて、意識がしっかりしてきたミチルさんが俺を気遣うような視線を向けてくる。その視線に強く頷いて大丈夫だとアピールしてから、いきなり本題に入る。
「アンリエット様と、ワン君について二人はどう思う?」
そう、俺の疑問はあの二人についてだ。
正直、ここまで犬猿の仲だとは思わなかった。
「あ、リュータさんも気になりました?」
うん、さすがに気になるでしょ、アレ。
「そうさのぉ。確かに歯がゆいのぉ」
うん、歯がゆいね、アレ。
・・・、うん? 歯がゆい?
「ですよね。あれだけ好き合っているのにケンカばっかりで」
「ケンカするほど仲が良い。エルフの里に居った頃にも何度も見たが、余計な背景の無い者たちの話であれば楽しめるのじゃが、この度はあの調子じゃしのぉ」
ん? んん?
なんだろう。二人は俺の知らない誰かの話をしているのだろうか。
これではまるで、アンリエット様とワン君が好き合っていると言っているような・・・?
「リュータよ。お主まさか、気付いておらなんだのか?」
「そんなはずは・・・あ、あれ? リュータさんはもしかして本気でケンカしていると思っていました?」
はい、思ってました。
ガックリうな垂れる俺を見て、優しい顔で頭を撫でてくるシルちゃん。
思わず膝枕してもらう形で倒れ込む。
「ホッホ。リュータもまだまだと言う事じゃのぉ。あの二人ほど分かりやすいのはないのにのぉ」
「え、えーと、その。二人はあれです、ツンデレです! 真紅さんみたいなのです!」
ツンデレ。
色々意味はあるけど、有名なのは二つ。
表面上ツンツンしているけど、内心ではデレデレ。
もう一つは、最初は反目してツンツンしていたけど、人となりや行動を見てデレデレするようになる。
今回の場合、二人は改めて人となりや行動を改めて知る機会なんてなかったはず。
つまり、前者か。
確かに真紅さんっぽいけど、彼女は結構素直なんだよなぁ。
「言われてみれば、ワン君は普通にツンデレだったね」
口汚いのに妙に優しい。それがワン君だ。
そんな彼が、恋愛方面でもツンデレだった、と。
あれ? 真紅さんも同じ、なのか・・・?
それってつまり、彼女は俺に対してデレてる、つまり俺に惚れているのか?
なんかちょっと、違和感あるなぁ。
「そうじゃの。それにアンリエット殿はあれじゃな。お立場上、本音を隠す機会も多かったのじゃろう。好いておってもそれをストレートに表現するなんて、出来なかったのじゃな」
「でもでも、アンリエット様は分かりやすすぎますよね。だってアレだけ怒ったりしてたのに、あからさまに興味がありませんって取り繕って、まるで心を閉ざすかのような変貌をしていたら誰だって気付きますよ! あ!?」
うん、誰だって気付くのに気付かなかった間抜けならここにいるから、失言したーみたいな顔で俺を見るのはやめてね、ミチルさん。
つい昨日もその光景、夜番の時に間近で見てて、それでも気付かなかったからね、俺。
「そ、そう言えば、あの二人に巻き込まれているウィル様は、ちょっと気の毒でしたね」
「そうなの? って、あいつも気付いていたのか!?」
全然そんな感じなかったのに!
いや、待てよ。よくよく考えてみたら不自然な点はいくつかあった。
そもそも目上で立場も上、暴力的な実力も上のアンリエット様をウィルが挑発する理由は、よく考えたらない。
それ以前に、ウィルが理由もなくそんな面倒なことをするはずがない。
だってあいつは自分が興味のある事と、今の立場を守るための必要最小限以外には興味がないからだ。
その立場を守るにしたって、好きな研究を気の合う仲間たちと共にしたいってのが原動力だし。
そこで俺は、ピンと来た。
「そうか。アンリエット様がワン君と正面衝突しないように、緩衝材になっていたのか」
「二人とも、根っこの気性は荒そうじゃからの。そこにいち早く気付き、関わりを断たぬ程度に交流させつつ、ある程度被害を自分で被る。あの研究小僧も、さすがは腐っても王族じゃのぉ」
「そうだったのか」
「私、出会ってすぐのお二人ならともかく、今のお二人なら取っ組み合いのケンカを始めたら、途中でお互いの胸倉掴んで、キスしちゃってもおかしくないかなーって」
え? 二人の気持ちって、そこまで進んでたの!?
「二人がそこまでだったとは、まったく分からなかった」
「リュータは鈍い所があるでのぉ。それに、ワシ、じゃなかった、私もこれでもエルフの里で長やっとったからのぉ。皆の様子を見ながら、カップルの出来具合や子作りの具合はどうかと確認しとったからの」
「私は、表情の切り替えが不自然すぎて何かを隠しているんだなーって思ってたら、自然と気付いちゃいました」
なるほど。里の出生率を問題視していたシルちゃんらしい視点から、そう言う結論に至ったのか。
そしてミチルさんは、女子高生的な直感っぽい。
「もしあの二人が付き合うようになるのなら、私はワンを奴隷から解放してもいいと思っています」
そりゃそうだろうね。そもそも奴隷にしたのもただの行きがかりだったしね。
「リュータの鈍感さには困ったものじゃのぉ。うむ、今からリュータは『鈍感の神』と名乗るか?」
「 そ れ は 勘弁!!」
なんて色々と新発見と言うか、自分の鈍さを指摘されつつ、その後は挽回するようにローパー戦で気付いた事を二人と話したのだった。
アンリエット様はそれに気づき、シルちゃんとミチルさんが眠っているスペースに入っていった。
ちなみに今回の拠点は、長居をする気がないので女性陣側は木の枝からぶら下げた防水性の布を仕切り代わりにした、とても簡素なものだ。
地面に杭を打ち、木の枝とそこを頑丈なロープで結び、間に布をはわせる軍隊式。天辺には斜めに布が付けられ、建物の軒下程度ではあるものの、雨が降っても大丈夫なようになっている。
設営も撤去も非常に簡単で、なおかつ出入りも容易。運搬には防水シートのようなものと普通に使うロープだけで、冒険者も大所帯になると使っているらしい。個人個人の防水シート1枚ずつを組み合わせて、人数に応じて大きさを変えられるのがいいらしい。
そう言う豆知識と共に結構な勉強になった。
前に冒険者連中、ガルフたちと野宿した時は、地面に防水シートを敷いただけの場所で寝てたし、当時は移動中だったから拠点を作らなかったからねぇ。
ああ、ほんと懐かしいなぁ。
なお俺たちの宿泊設備の方は、ワン君の腕力にモノを言わせて運搬した普通の鉄パイプ式のテントを展開しているが、湿度の高い密林ダンジョンではその密封性が逆に仇となった。
空気の通り道が極端に少ないので不快指数が跳ね上がっており、当初女性陣に使用してもらおうと思っていた俺の意図とは裏腹に完全に拒否され、いい感じに蒸し風呂になったテントで男どもは寝ている。
地味に、その蒸し風呂に入りたくなくて徹夜気味の夜番を引き受けていたのは秘密だ。
「ではあとは任せたぞ」
「うむ、任せるのじゃぁ」
「ふぁい・・・」
眠そうな二人にそう声をかけ、アンリエット様は空いたスペースで熟睡し始める。
いや、きちんと入り口を閉めて下さい。
どうにも思ったよりも昼間の事件の影響がまだ残っているみたいだ。
「とは言え開けっ放しとは、困ったモノだなぁ」
二人に作りたての目覚ましハーブティを渡した後、俺は女性陣の睡眠スペースの入り口を閉じる。軽く前合わせで磁石のような留め具が付いている、ちょっとだけ向こうの世界を思わせるそのデザインに驚きつつ、きっちりと入り口を閉じる。
中は虫よけのお香が焚かれているが、閉めないと大物が迷い込んで酷い目に逢ったりするそうだ。
そしてなんとはなく俺は焚き火の前に戻る。
俺たちのテントからうめき声が聞こえ、中が確実に蒸し風呂と化しているので戻りたくないとか、そんな理由ではそんなにない。
それよりも彼女たち二人の意見が聞きたかったからだ。
「二人とも、大丈夫?」
そう聞く俺に、ちょっと眠そうなホンワカした笑顔で二人が頷いていた。
うん、すっごく緩んでるね。
不安しか感じないよ・・・。
「昨晩は済まなんだのぉ。夜番をやっとる事を知らなんだ故に、リュータには負担をかけたのぉ」
「聞いていなかったとは言え、本当にすいませんでした」
俺の不安を感じ取ったのか、あるいはタイミングを見計らっていたのか、二人して昨晩について謝られてしまった。
ちなみに今彼女らの言う通り、彼女ら自身は夜番があった事すら知らなかった。
「いやいや、夜番については君たちが寝てからこっちで勝手に決めた事だからね」
と言うか、探知能力が高い勇者二人は奇襲されても対処出来て、シルちゃんはそもそもこのダンジョンにそこまで危機感を抱いていない。
だから俺も夜の見張りなんていらないんじゃないかって思ってたんだよね。
ただアンリエット様が、ほぼ一般人のウィルがいるから何かあってからでは困ると提案して、あれよあれよと言う間、ウィルとワン君とアンリエット様がケンカしているうちに決まっちゃったからねぇ。
「事前に打ち合わせもなかったし、ダンジョン入る前の計画にすらなかったんだから、二人が悪い訳じゃないよ」
そもそも発案者のアンリエット様は、結局二人を起こす事なく仲良く三人で寝てたわけだし、言っちゃなんだけど割と抜けてるんだよなぁ。
「そうは言うてものぉ」
「そうです! そんなわけですから、ささ、どうぞお休みください」
「うん、そうだね」
二人に聞きたいことがあって居座ってみたけど、これだけ恐縮と言うか気を使われてしまったら今日の所は寝ようかな。
そう思って立ち上がり、テントの入り口に手をかけた。
テントの入り口のわずかな隙間から、独特の男臭と熱気が漏れ出ている。
即座に閃いて、『生活魔法』の『換気』を行なうも、それにより出てきた色の濃い湯気は、何と言うか、幻視なんだろうけど、なんとなく黄色くなっていたような気がした。
俺は回れ右をした。
その様子を見ていた二人は無言で自分たちの間にスペースを作ってくれた。
俺は二人の間に収まった。
焚き火に顔を照らされつつ、三角座りをした俺は呟いた。
「あれはないなぁ・・・」
「彼らは我慢大会でもしておるのか?」
「うめき声が聞こえると思ったら、あんなことになっていたんですね」
遠目からでも中の惨事が想像出来たらしく、彼女らも無理に戻れとは言わなかった。
「そう言う訳だから、ちょっと話をしない?」
「構いませんが・・・」
ハーブティを飲み終えて、意識がしっかりしてきたミチルさんが俺を気遣うような視線を向けてくる。その視線に強く頷いて大丈夫だとアピールしてから、いきなり本題に入る。
「アンリエット様と、ワン君について二人はどう思う?」
そう、俺の疑問はあの二人についてだ。
正直、ここまで犬猿の仲だとは思わなかった。
「あ、リュータさんも気になりました?」
うん、さすがに気になるでしょ、アレ。
「そうさのぉ。確かに歯がゆいのぉ」
うん、歯がゆいね、アレ。
・・・、うん? 歯がゆい?
「ですよね。あれだけ好き合っているのにケンカばっかりで」
「ケンカするほど仲が良い。エルフの里に居った頃にも何度も見たが、余計な背景の無い者たちの話であれば楽しめるのじゃが、この度はあの調子じゃしのぉ」
ん? んん?
なんだろう。二人は俺の知らない誰かの話をしているのだろうか。
これではまるで、アンリエット様とワン君が好き合っていると言っているような・・・?
「リュータよ。お主まさか、気付いておらなんだのか?」
「そんなはずは・・・あ、あれ? リュータさんはもしかして本気でケンカしていると思っていました?」
はい、思ってました。
ガックリうな垂れる俺を見て、優しい顔で頭を撫でてくるシルちゃん。
思わず膝枕してもらう形で倒れ込む。
「ホッホ。リュータもまだまだと言う事じゃのぉ。あの二人ほど分かりやすいのはないのにのぉ」
「え、えーと、その。二人はあれです、ツンデレです! 真紅さんみたいなのです!」
ツンデレ。
色々意味はあるけど、有名なのは二つ。
表面上ツンツンしているけど、内心ではデレデレ。
もう一つは、最初は反目してツンツンしていたけど、人となりや行動を見てデレデレするようになる。
今回の場合、二人は改めて人となりや行動を改めて知る機会なんてなかったはず。
つまり、前者か。
確かに真紅さんっぽいけど、彼女は結構素直なんだよなぁ。
「言われてみれば、ワン君は普通にツンデレだったね」
口汚いのに妙に優しい。それがワン君だ。
そんな彼が、恋愛方面でもツンデレだった、と。
あれ? 真紅さんも同じ、なのか・・・?
それってつまり、彼女は俺に対してデレてる、つまり俺に惚れているのか?
なんかちょっと、違和感あるなぁ。
「そうじゃの。それにアンリエット殿はあれじゃな。お立場上、本音を隠す機会も多かったのじゃろう。好いておってもそれをストレートに表現するなんて、出来なかったのじゃな」
「でもでも、アンリエット様は分かりやすすぎますよね。だってアレだけ怒ったりしてたのに、あからさまに興味がありませんって取り繕って、まるで心を閉ざすかのような変貌をしていたら誰だって気付きますよ! あ!?」
うん、誰だって気付くのに気付かなかった間抜けならここにいるから、失言したーみたいな顔で俺を見るのはやめてね、ミチルさん。
つい昨日もその光景、夜番の時に間近で見てて、それでも気付かなかったからね、俺。
「そ、そう言えば、あの二人に巻き込まれているウィル様は、ちょっと気の毒でしたね」
「そうなの? って、あいつも気付いていたのか!?」
全然そんな感じなかったのに!
いや、待てよ。よくよく考えてみたら不自然な点はいくつかあった。
そもそも目上で立場も上、暴力的な実力も上のアンリエット様をウィルが挑発する理由は、よく考えたらない。
それ以前に、ウィルが理由もなくそんな面倒なことをするはずがない。
だってあいつは自分が興味のある事と、今の立場を守るための必要最小限以外には興味がないからだ。
その立場を守るにしたって、好きな研究を気の合う仲間たちと共にしたいってのが原動力だし。
そこで俺は、ピンと来た。
「そうか。アンリエット様がワン君と正面衝突しないように、緩衝材になっていたのか」
「二人とも、根っこの気性は荒そうじゃからの。そこにいち早く気付き、関わりを断たぬ程度に交流させつつ、ある程度被害を自分で被る。あの研究小僧も、さすがは腐っても王族じゃのぉ」
「そうだったのか」
「私、出会ってすぐのお二人ならともかく、今のお二人なら取っ組み合いのケンカを始めたら、途中でお互いの胸倉掴んで、キスしちゃってもおかしくないかなーって」
え? 二人の気持ちって、そこまで進んでたの!?
「二人がそこまでだったとは、まったく分からなかった」
「リュータは鈍い所があるでのぉ。それに、ワシ、じゃなかった、私もこれでもエルフの里で長やっとったからのぉ。皆の様子を見ながら、カップルの出来具合や子作りの具合はどうかと確認しとったからの」
「私は、表情の切り替えが不自然すぎて何かを隠しているんだなーって思ってたら、自然と気付いちゃいました」
なるほど。里の出生率を問題視していたシルちゃんらしい視点から、そう言う結論に至ったのか。
そしてミチルさんは、女子高生的な直感っぽい。
「もしあの二人が付き合うようになるのなら、私はワンを奴隷から解放してもいいと思っています」
そりゃそうだろうね。そもそも奴隷にしたのもただの行きがかりだったしね。
「リュータの鈍感さには困ったものじゃのぉ。うむ、今からリュータは『鈍感の神』と名乗るか?」
「 そ れ は 勘弁!!」
なんて色々と新発見と言うか、自分の鈍さを指摘されつつ、その後は挽回するようにローパー戦で気付いた事を二人と話したのだった。
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