最強魔法は生活魔法!? ~異世界ではモンスター退治も生活のうち~

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第七章 リュータと魔王

第七十七話 騒乱と王様と決意の時

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「それで、リザードマンの方々はご無事なんですか!?」
「落ち着け姐さん、って、ブゲッ!?」
「姐さんと呼ばないで下さい!!」

 気が立っているミチルさんを不要に姐さんと呼んだツヨシ君が殴られ吹っ飛んだ中、シルちゃんが口を開いた。

「うむ、ワシの、じゃなかった、私の同胞が交渉に臨んでいたのが幸いしたのじゃ。今は全員避難を終えてエルフの里で体を休めておる」
「イ、イデデ・・・、そりゃあの頑丈なトカゲ人間ドモが簡単にやられるわきゃねーよナァ」

 ツヨシ君が初めてあのリザードマンの街に来た時、手加減していたとは言え容赦なくぶっ飛ばしまくってたけど、リザードマンの人たちは案外平気そうだったもんねぇ。

「んー、とりあえず状況を整理する為にも、会議室に移動しようか。それと、ウィルやアンリエット様にも報告しないと」
「あ奴らはすでに動いておる。必要な救援物資の確保に、援助の体制確保だそうじゃ」
「さすが腐っても王族は行動がハェーな」
「わ、私にも何か出来る事はないですか!?」
「ぬ、おお! むろん、ミチルにもやってもらう事は山ほどあるのじゃ。その準備の為にも、会議室へ向かうのじゃ」
「なら、すぐに行きましょう」
「これ、ミチルよ! ワシを荷物抱えるみたいに小脇に挟むでない。ぬおおお!? こ、このまま移動じゃと!? 地面が近くて怖いのじゃぁぁぁぁぁ!!」
「シルちゃん!?」

 ミチルさんがシルちゃんを拉致っていった・・・。

「姉御はあのトカゲ人間に世話ンなったっつってたかんナァ。焦んなっつっても無理カァ」
「そ、そうだね。そうだけど・・・」

 いくらなんでも慌てすぎだよね。

「はー、ひとまず『お手伝いさん』」
「へい!」

 『お手伝いさん』こと『レッドキャップ』を全員呼び出す。

「ん? 何だか人数、増えてない?」
「気のせいでさぁ!」

 そ、そうかなぁ。
 そんなキッパリ断言されてしまうと、俺も記憶に自信が無くなるなぁ。

「いやいやいや! 十五人もいなかったろ、テメーラ!!」

 ツヨシ君もこう言ってるし、俺の記憶違いではなかった模様。
 でも、今は人手が欲しいから助かる。

「まぁいいや。とりあえず君たちにも動いてもらうよ」
「へい! お任せくだせぇ! 絶対にお役に立ってみせまさぁ!」

 そう一声かければ、あっという間に散り散りになる『レッドキャップ』たち。
 彼らなら何をなすべきか適時判断して、的確に動いてくれるだろう。魔石に蓄積された魔力が無くなる前にローテーションを組む必要があるけど、それも勝手に判断してくれるから安心して任せていられる。
 なんせ今は彼らに細かな指示を出す余裕もないし、きっと彼らのように自由に動ける人手もこの後で必要になると思うから。

「これでよし。じゃぁ俺たちも行こうか、ツヨシ君」
「だ、大丈夫なのか? あいつら・・・」
「信じるしかないよ」
「まぁテメーがそう言うならな。しっかし何が起こってンのやら」
「そうだね」

 あの屈強な戦士であるリザードマンが敗退した。
 一体何があったのだろうか。

「俺様ァ、あの負けず嫌いなトカゲ人間が逃げるっつーのが納得いかネーんだがよ」
「・・・、!? そう言えば・・・そうだね。全員無事と言うがちょっと不思議だ」
「ダロ? ぜってー何かアンだよ」

 オラオラ系勇者であるツヨシ君が殴り込みをかけた時も逃げなかったリザードマンが、全員無事で逃げた。
 ケガ人すら、いない?

「言われてみたら不自然だね」
「ヤツら、街を大事にしてたかンナ。俺様も修理を手伝ったっつーのに、ヤツら一体何やってンダ」
「さすがに情報不足だけど、って、あれ? なんだこれ・・・」
「こいつァ・・・、新たな看板かァ? ンなモンあったか? ねーよナァ」

 そう、前に会議をしていた第二会議室の隣、この役所の中で最も大きな第三会議室の前に大きな看板が二つあった。
 それを設置しているのは、何故か俺が放った『レッドキャップ』たちだ。

「先回りして何をしていたかと思えば・・・、えーと? 『対魔王情報収集局』?」
「こっちには『魔王対策本部』。って、これ昼間にあったヤツじゃねーカ」

 そっちは昼間にあったのか。
 しかし、うーん。

「何だろうか。俺の知らない間に話がどんどん広がっているんだけど」

 そう呟いて第三会議室のドアを開けてみた。
 対魔王情報収集局って明らかに俺の手に余りそうな部門だし、開けるのイヤなんだけど、シルちゃんが待ってるしなぁ。

「北のザルツベルクでも魔王軍が!」
「西のボーエンラントも被害甚大です!!」
「西はパライスもドモコもだ! ああ、クリスタも追加しろ!!」
「聖国まで!? ああ、人類はもうおしまいだ・・・」

 ・・・。

「おい、なんでそっと閉じてンダヨ・・・」

 え? いや、なんか。

「なんだってンダ。今更怖気ヅくようなタマじゃネーダロ?」
「心の準備なく開いたもんだから・・・ちょっと現実を受け入れられなくて」
「ハァ? 何言ってンダ?」

 って、俺がこう言ってるのに躊躇なく開けてしまうのですか!?

「周辺諸国十三のうち、十一が壊滅です! これはもはや、人類存亡の危機です!!」
「う、うろたえるな! まだ、そう、まだ我らには希望の星たる勇者様方がおられるのだ! 他の国の勇者様と力を合わせればまだ巻き返せる!」
「・・・、クリスタ聖国にも勇者はいましたが、死亡されたようです・・・」
「何という事だ・・・。我らの運命はもはや我が国の勇者様方の肩にかかって」

 パタン。

「ツヨシ君?」
「皆まで言うナ・・・」

 うん、まあ、そうだよね。
 ちょっと想像を絶する状況になっていて、さすがに焦るよね。

「リュータよ。こっちじゃ、隣じゃ」
「あれ? シルちゃん?」

 ミチルさんに拉致されたシルちゃんが、第二会議室からひょっこりと顔を出していた。
 ひとまずそっちに向かうか。

 部屋に入ると人影が四つ。
 えーと、『レッドキャップ』が二人と、ミチルさんにシルちゃん。

「あれ? これだけ?」
「うむ、他の者は走り回っておるでの。じゃが、安心するがよい。ウィルが良いものを残していっておる」
「いいものっつーと、この赤いのが用意してる機械っつーか、魔道具カ?」

 ツヨシ君が見ている物体は、多分前に俺がウィルにアイデアを提供していた『電話』の『生活魔法』が使える魔道具だろう。
 以前彼が新しく作っていた通信用の魔道具は、『音波』の魔法を増幅させ、超遠距離で無理やり音を発生させると言う非効率極まりないもので、なおかつ受け手が音量調節出来ないなんて代物だったから、新しい案を提供させてもらったのだ。

「しかし、まさかこんなにも早く実用化されるとはなぁ」

 中継器が必要とは言え、通信機の小型化も込みで俺のアイデアだったが、元々下地となった失敗した通信機があったとは言え、そこから改造してこれを作ってみせたウィルの頭脳はすごいな。

「本人は納得いっとらんようじゃがの。ほれ、これが『電話』の魔道具、魔電話じゃ」
「弁当箱サイズか。それにちょっと重い。なるほど、確かにウィルならこんなものじゃ納得しないよね」
「じゃが、持ち運べる上に通信距離も国内であればほぼ届くのじゃ。しかも獣人王国にも、エルフの里にも中継器を設置中なのでの。いずれはこの三国のどこでも通話が可能となるのじゃ。これは、とんでもない代物じゃぞ。今、隣で情報収集しとるのも国境にある砦から、こいつを通じてだそうじゃ。今までであれば数日はかかっておった事じゃぞ! まさに、情報革命じゃ」
「さらに上を行く現代日本がいかに技術的に進んでいるか、シルビィちゃんの様子を見るとよく分かりますね。この分だと、スマホなんて見せたらどうなるでしょうか」

 魔法なんて非科学的な力もないのに、日本全国をほぼ網羅している通信網。
 冷静になって考えてみると、日本ヤバい。
 いや、あの世界全体が、この世界と比べるとヤバいのか。
 魔法ないのに、すごいんだな。この世界、アースガルズを思うと、俺たちが元いた世界は不思議なほど文明が進んでいる。

「ンで、これは今どこに繋がってンダ? 青いのが点滅してるってー事は、相手がすでに出てんだロ?」

 なんか、それ、フラグじゃない?

「聞こえておるぞ。ふむ、その声は、勇者イトーツか。久しいな」

 ん? このダンディな声、まさか・・・。

「ゲェェ! 国王のクソジジイ!?」
「はっはっは! あの素直なイトーツからそんな言葉が聞けるとはな! 嬉しく思うぞ」
「なんでテメーがしゃべってンだヨォ!」

 魔電話越しの声は、どうやら俺が以前お会いした事のあるデクス=テスカ=ウル=アベリア様、この国の王様のようだ。

「さて、イトーツには悪いが、今は非常事態だ。積もる話は後にさせてもらうぞ」
「ッチ!」
「露骨な舌打ち、うむ、俺は今のイトーツの方が好ましいぞ! 頼もしい限りだ。その調子で、人類を、頼む」

 ざわり、と王様の背後から戸惑うような声が聞こえる。
 これ、きっと魔電話越しに王様が頭を下げているんだろうなぁ。

「さて、いずれこちらの誠意は対面した時にでも見せるとして、リュータ子爵、いや、ハイヒューマン・リュータ殿、ならびに勇者トーゴミ、勇者イトーツ、そしてリュータ殿の伴侶でありハイエルフたるシルビィエンテクライテア様に、人の代表として願い奉る」

 願い、・・・奉る!?
 この国で最もえらい王様が、完全にへりくだりこちらを上に見ている!?

 やばい。

 いやな予感しかしない。




「どうか、魔王を討伐して頂きたい」

 あ、うん。
 対策すっ飛ばして討伐ですか。

「魔王は我が国より南東、海を隔てたもう一つの大陸に反応があった」

 位置的には、リザードマンの街のさらに南だろうか。

「今までは、魔王の出現と魔王軍の所在地は同じであった」

 そうなんだ。

「だが、この度は異なるのだ。全方位から、人類のみならずあらゆる生命、カメムシを除いて、を抹殺すべく、全ての魔物、魔人が攻勢を仕掛けてきているのだ。」

 カメムシだけは違うのか。
 一体何なんだ、ギガローリングカメムシってヤツは。

「故に我らは我ら自身を守らねばならぬ。無茶を言っておるのは承知しておる。だが、頼れるのはそなたたちしかおらぬのだ」

 無茶を言う、ね。
 うん、つまり、そうよね。この後の言葉は俺でも想像がつくわ。

「ハー。つまり、テメーは動けネーから、俺らだけでトッコーしてこいっつーんだロ?」
「・・・、そうだ。可能な限り、こちらから援助はする。惜しむつもりもない。だが」
「魔王に辿り着くのも自力、魔王を倒すのも俺らだけってカァ?」
「・・・、その、通りだ」
「テメーらは、そンでもこの世界の人間カヨ。よそモンである俺らの力に頼りきってヨォ?」

 大きくため息を吐くツヨシ君。
 言葉だけを聞いていると、ツヨシ君の言い分は正論だし、冷めた他人事のようにも聞こえる。
 だけど、目の前にいるツヨシ君を見たら分かる。

 やる気だ。
 彼はきっと、俺やミチルさん、シルちゃんが動かなくても、きっとたった一人でも魔王を倒しに向かう。

「ふう、本当にツヨシ君は素直じゃないなぁ」
「王様相手にもツンデレ・・・、王様×ワン!?」
「だからミチルさん、そのバッテンはダメだってば!」
「これは掛け算ですよ?」

 もっとダメじゃないかなぁ。

「ふふ、人の国の王よ。安心するのじゃ」
「シルビィエンテクライテア様・・・」
「皆はもう、すっかりやる気じゃぞ? お主に頼まれるまでもなく、のぉ」

 パシンと拳と手の平を打ち付けてやる気満々のツヨシ君。
 いつの間にか佩刀しているミチルさん。
 実に頼もしい。
 きっと、目の前でこの光景を見せられていたら、王様もこんな懸念をしないで済んだだろう。
 この辺が声だけの電話の限界だよなぁ。
 ・・・そうだ、どうせなら映像も送れるようにならないか、ウィルに今度提案しようかな。

「ハッ! 俺たチャ最初からこの為に、この世界に来たようなもンだからナァ!」
「はい、勇者は伊達じゃないです!」

 頼もしい限りだねぇ。

「うん、そうか。頑張ってね」

 俺、一般人だし、勇者が二人もいれば前線は任せてもいいよね。そもそも神様も魔王倒さなくてもいいって言ってたし。
 大丈夫、俺もバックアップ、サポートとして可能な限り二人を応援するから・・・、ってなんで二人は俺の両脇を固めているの!?

「おいおい、最強戦力が何言ってンダァ?」
「そうですよ。ともすれば私たちより強いリュータさんが戦わないなんてありえませんよね?」
「え? いや、俺、ほら、死んだら死ぬし!?」
「そんなの私も一緒ですよ」

 いやいや、頑丈さが違うでしょ!?
 え? いや、待って! うそーーー!!

「ンじゃジジイ、俺らァとっとと魔王とやらを退治してくっからよ。戻ってきたら、詫び、聞かせロや」
「・・・、ああ、もちろんだとも。褒美も期待するがよい」
「テメーの用意する褒美なんざイラネーんだよ!! また不細工と年増を押し付けるのカァ!?」
「ふ、ふはははは! あれでもこの国では中々の器量よしだったのだがな! だが、そうであればこちらも考えておこう!」
「だから、イラネっつってンだろガ!!」

 盛り上がってる所悪いんだけど、いや、待って。
 本当に俺も前出て戦うの?

「すまぬの、リュータ。ワシも里を守るために、是非に協力して欲しいのじゃ」
「うん、分かったよ!」

 シルちゃんの頼みなら、たとえ火の中水の中だよ!

「・・・、納得行きません」

 ミチルさん!? 腕をつねらないで! もげるから!
 あ、本当にもげちゃうから!! 千切れるから!

 アッーーー!!
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