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第七章 リュータと魔王
第七十八話 新エルフの里と状況確認
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「で、ここはどこ?」
「何を言うておるのじゃ、リュータ。ここはエルフの里じゃぞ?」
うん、そうだね。
ドラちゃんが管理している例の密林ダンジョンを経由して、俺は確かにエルフの里に来たんだよね。
夜だし非常事態だから煌々と明かりの魔法らしいものが空中に浮かんでいる。
その為にいつもと違った光景になるのは理解は出来るよ。
いや、でもさ。
「なんであんな、見た事ないビルとかあるの!? おかしいでしょ!?」
そう、シルちゃんのお社から見える景色は、森を切り開いた場所にある隠れ里的な村ではなく
何故か巨大なコンクリートのビルが立ち並ぶ大都会だったのだ。
「いや、ここって、新宿駅前だったっけ?」
「違うと思いますが・・・、あれ? 私もおかしいのでしょうか。長岡駅前に見えます」
「俺様にも名古屋駅前みてーに見えらァ」
それぞれ違う場所を思い描いているかのような呟きだけど・・・。
しかしこれ、村の外側に整然とコの字型にビルが並んでいるんで、よくよく見れば大都会とは違う雰囲気がある。
シルちゃんのお社、巨木の枝の一つから見下ろした村の光景は、簡潔に表現するなら 「ビルに監禁されたエルフ村」 だろうか。
魔王軍なんて単語の方がいっそ自然に思えてくるほどのパワーワードだな。剣と魔法のこの世界に全く似つかわしくない。
「この前のクマ魔人の時に里帰りしてから、まだ半年も経ってないよね!?」
「半年どころか、里からオビヒロに戻ってまだ一週間ちょっとです」
「こっちの世界じゃ一年は向こうよりなげーんだ。だから一週間と言っても・・・でも無理だぞ、コリャ。タケノコじゃあるめーし、数日で生えるなんてありえねーダロ」
しかし狼狽する俺たち三人に対して、シルちゃんは至って普通。一番驚いていないといけないはずの人が、何故か一番動揺していない。
いや、納得顔でポンと手を打っている?
「そうじゃったの。三日ほど前にウィル殿がここに来ておった事は言うてなかったのぉ」
「ウィルがエルフの里に?」
「うむ。アベリア王国の親善大使として二度目の来訪をしておっての。その際に『ビルディング』なる土魔法を扱える魔道具を置いていったのじゃ」
そっかー。
「へー・・・。って、いやいや、おかしいでしょ!? 巨大な建物がわずか三日で建つのは魔道具、いや、ファンタジーでまだ納得いくよ? でも、なんでそれでこんな世界観を無視したコンクリートなビルが建っちゃうのさ!?」
「ご丁寧にガラス窓も完備ですね」
「リュータらの世界にもあったと聞いておったのでの。二つ返事で建設を許可したそうなのじゃ。見れば見るほど良い出来じゃのぉ。では早速まいるのじゃ」
ど、どこにですかー!?
まさか、あのビルに・・・?
ファンタジー感一切無視の、あそこにですかー!?
って、あれ?
「そっちって、シルちゃんの家?」
「中までギッチリ石が詰まっておる外壁で会議は出来ぬからのぉ。門に砦は付いておるが、あちらは厳戒態勢中なのじゃ」
・・・。
見た目に騙された。アレ、ただの石壁だったのね。
「紛らわしすぎンダロ・・・。見かけだけかよ、アレ」
「以前ウィル殿にサーベルタイガー魔人と魔物に襲撃された件を相談しておっての。守りを固めるにはどうしたらよいかと」
それであの発明バカのウィルに相談しちゃったのかぁ。
いや、待てよ?
それならなんであいつ、新しい発明品を作る時間が取れないとか言っていたんだ?
「それでなんでビルを建てる魔道具だったのでしょうか」
「それがの。並の人間には動かせないほどの魔力が必要じゃから、実験しようにも出来なかったそうなのじゃ」
「あー、そうか。それで魔力量の多いエルフの人たちに使ってもらったのか」
「そういや翻訳機ってーのも、最初はとんでもねー魔力食ってたナァ。あの初代翻訳機を使えたエルフならッテカァ?」
「エルフは魔力の総量は多いのじゃが、なんせ出力は並じゃからのぉ。無駄に魔力を余らせた結果、そう、何と言ったかのぅ。のうき、ん? になっておったし、ウィル殿の発明品はその魔力を発散できるので、里の者は大喜びで実験に参加しておったぞ。ただウィル殿本人はこの成果を見る前に帰ってしまったのでの。私が見届けてからオビヒロに戻ったら、詳細を根掘り葉掘り聞かれたのじゃ」
最初にシルちゃんにあのトンデモ魔力大喰らいの翻訳機を送ったのは俺だけど、こんな交流にまで発展していたなんて初めて知ったよ。
ウィル、人の彼女の身内を実験台にするんじゃない。
でも、あいつの機嫌が悪かった理由は良く分かった。
トンボ帰りするハメになったのは、俺の所為だろうから。
いやほんと、すまんかった。てへりん。
心の中のエアウィルに謝ったので万事オールオッケーなのだ。
「他にもほれ。今明かりを付けておるのもウィルが作った魔道具じゃ。花火を元に改良したそうじゃ。本当は来年の収穫祭の為にとウィル殿からもらったのじゃが、何が役に立つか分からんものじゃの」
「収穫祭になんで明かりが必要なンダァ?」
「エルフの収穫祭は、夜通し行うからじゃ。多少は夜目が利く故に今までは最小の明かりでやっておったのじゃが、このような魔道具があるのでな。パーっとやりたくなったのじゃ」
へーそうなんだ。
「その祭り、俺も参加したいなぁ」
「うむ、当然じゃ! そもそもオビヒロの祭りを皆に話したが故に、こうなったのじゃ。ゆえに、是非にでも参加してもらうのじゃ」
ソ、ソウナンダー。
「オウ、ブラザー。やっぱテメーが原因カヨ」
「び、ビルは俺じゃないし!?」
「ビル、と言うのもリュータにアイデアをもらったとウィル殿は言うておったのぉ」
「ファンタジー要素なくなってンの、やっぱテメーの所為じゃねーカ! 俺様のエルフの里のイメージ、返しやがレ!」
そんな事言われてもさぁ!?
「ここ、懐かしいですねぇ。やっぱり日本家屋は落ち着きますね」
「姉御も何か言ってやれヤァ!」
「私はこれでいいですよ」
「なんでダァ? 姉御はこう言うの、こだわりそうなンダガ・・・」
「あなたは知らないでしょうけど、リザードマンさんたちの街で私はたこ焼きを食べました」
「た、たこ焼きダァ?」
あー、あったね。中身がタコじゃなくてクラーケンだったけど、懐かしい。
そう言えばあの屋台のオヤジさん、無事かなぁ。
「リザードマンさんの、リザードマン焼き。それがたこ焼きです」
「ナンですカァ、その紛らわしい名前」
「確かに紛らわしいけど、でも私たちより前に日本人がこの世界に来て、リザードマンさんたちと出会い、その人が伝授した証だと思うのです。そう言うのが積み重なったのがこの世界なら、こんなのも今更だと思うんですよね」
確かに、ユーバリ地方だとかバリッバリの日本由来の名前だしねぇ。
「だからちょっとは驚いたけど、でも、こうやって私たちがこの世界に流れ着く限り、あるべき変化だと思うんですよね。そもそもローマンコンクリートは紀元前から存在しますから、ビルだってこの世界にあっても不思議ではないですよ。あなたも各国を旅していたというのなら、日本人の感性で作られた非ファンタジーを目にしているのではないですか?」
「・・・、そういやザルツベルクにゃ温水便座が、あったナァ」
え? あの国にそんなものがあったの!?
しまったなぁ。
「どうにかあの国が滅ぼされる前に、一度行ってみたいな」
「動機がヒデーが、まぁそうだな。その為にゃぁ」
「魔王をどうにかしないといけません、ね」
「うむ、やる気十分なようじゃな! よろしく頼むのじゃ!」
***
「現場に行っておったミントからの情報が、これじゃな」
自らを巨人族だと勘違いしていたダークエルフ族のミントさんたち。彼女らがリザードマンの街の交渉団にいたから情報が早い。
今は疲れ果てて寝ているから、会うのは明日の朝になるだろう。せめて無事な姿でも見に行こうとしたら、女性の寝顔を覗くなんてとミチルさんに怒られた。
かつて一晩を同じベッドで共に過ごしたことは、何もなかったとはいえ、黙っていよう。
しかし、外の世界を見てみたいと言う彼女たちの意思を尊重して交渉団に加えていたが、それがどうにもうまく作用したようで、逆にその事が、ほんの少し釈然としない気持ちを生む。
ダークエルフの彼女たちは、普通のエルフよりも体が大きくて頑丈だ。だからこそケガを負ったり老いたりで身動きが取れなくなっていた一部のリザードマンたちを背負って森の中を突っ切れたのだ。これが普通のエルフだけだったらおいていかざるをえず、何人か犠牲者が出ていただろう、と聞いている。
これは、偶然にしては出来すぎている。
神様たちは、一体どこまで俺たちの事を見ていて、干渉しているのだろうか。
「考えても仕方ないか。それで、どれどれ・・・、ん? んん?」
会議室にある魔ホワイトボードに、シルちゃんが手元の資料を見ながら要点をまとめて書き連ねてくれる。
そこそこな分量だから、こう言うのはありがたい。
しかし、書き込まれている内容がぶっ飛びすぎていて、俺の理解が追い付かない。
- 魔王軍について -
・魔王軍の規模は十万単位でいる。数の詳細は不明
・主力はゴースト系、一部ゾンビやスケルトンも見られる
・仕切っている魔人はネズミ型で丸くて大きな耳を持つ
・魔王軍のゴーストにはほとんど魔法が効いていない
・物理攻撃もほとんど効かない
・進軍速度は非常に遅い
・進軍先は明らかにエルフの里を向いている
・魔王軍はエルフの里とリザードマンの街の間の密林で進軍速度が更に落ちている
・エルフの里での交戦予定時刻は夜明け前の四時ごろ
・軍勢の背後に魔王の影
十万単位の軍勢に、正体はゴーストか。ここに来て更に未知の魔物だなんて、勘弁して下さい。
「ゴーストですか。私は見た事がありませんが、魔法も物理も通用しないのは反則ですね」
非実体だから物理が効かないのはゲームによくあるお約束だけど、魔法も効かないのは酷いな。
「そう言うヤツぁ、お約束で光や聖の魔法に弱いんじゃネーのカァ?」
「ヤツらは高濃度の魔力の塊じゃ。生半可な魔法では通用せぬ。川に桶で水をぶつけるようなものなのじゃ」
「相変わらずこの世界はバランス調整ミスってるな」
隣でミチルさんもツヨシ君もうなずいているが、シルちゃんは不思議そうな顔をしている。
これは、俺たちが余所の世界から来たから余計にそう思うんだろうか。
考えてみれば魔力って、不思議な法則があるんだよなぁ。
非実体なのに物理的な衝撃はあるし、臭いなんてものも発生させられる。
魔力って、一体何なんだろうか。
「これじゃ実質弱点なしじゃねーカ。ゴーストってヤツを、今まではどうやって対処してたンダ?」
「ゴーストの大半は朝日で消えるのじゃ。そもそも身体がないのでの。早ければ数分で消えるような、はかない存在なのじゃ。今あちらの規模が小さくなっておらぬのは、恐らく魔人が随時召喚しておるからじゃの」
「それは、今夜さえ凌ぎきれば大丈夫、と言う事なのでしょうか」
「随時召喚しておる以上、それでは不十分じゃな。それに十万規模の軍勢相手では分が悪すぎるのじゃ。ミチルとワンが出向いても、今のここの防衛力では日の出までの一時間さえ持たぬやもしれぬ。何せ対ゴーストの設備など全くないのでの」
部屋の時計を見れば、今は夜の十一時半。
衝突まで残り、四時間半。
そしてそこから耐えるべき時間は、日の出である五時までのおよそ一時間。
十万の、魔法も物理攻撃も通用しないゴーストを相手取るには長すぎる時間だ。まず防衛線が持たないだろう。
「頭脳であるウィルもいない。リザードマンは疲労困憊で戦力にはカウントできない。そもそも攻撃が通じない。これは、詰んだ?」
「窮地、じゃのぉ」
「ピンチですね」
「でもまぁ、あんま心配いらねーヨナァ」
へー、そうなんだ。ツヨシ君には何が策があるのか。
「って、なんで三人とも俺を見てるの?」
いやな予感しかしませんが。
「いや、だってナァ?」
「もちろん、リュータさんが何とかしてくれるって、私、信じていますから!」
「うむ、リュータであれば魔王軍などひとひねりじゃ!」
えーと?
アイデア出すのは
「お、俺ぇ!?」
聞いてないよー。
「何を言うておるのじゃ、リュータ。ここはエルフの里じゃぞ?」
うん、そうだね。
ドラちゃんが管理している例の密林ダンジョンを経由して、俺は確かにエルフの里に来たんだよね。
夜だし非常事態だから煌々と明かりの魔法らしいものが空中に浮かんでいる。
その為にいつもと違った光景になるのは理解は出来るよ。
いや、でもさ。
「なんであんな、見た事ないビルとかあるの!? おかしいでしょ!?」
そう、シルちゃんのお社から見える景色は、森を切り開いた場所にある隠れ里的な村ではなく
何故か巨大なコンクリートのビルが立ち並ぶ大都会だったのだ。
「いや、ここって、新宿駅前だったっけ?」
「違うと思いますが・・・、あれ? 私もおかしいのでしょうか。長岡駅前に見えます」
「俺様にも名古屋駅前みてーに見えらァ」
それぞれ違う場所を思い描いているかのような呟きだけど・・・。
しかしこれ、村の外側に整然とコの字型にビルが並んでいるんで、よくよく見れば大都会とは違う雰囲気がある。
シルちゃんのお社、巨木の枝の一つから見下ろした村の光景は、簡潔に表現するなら 「ビルに監禁されたエルフ村」 だろうか。
魔王軍なんて単語の方がいっそ自然に思えてくるほどのパワーワードだな。剣と魔法のこの世界に全く似つかわしくない。
「この前のクマ魔人の時に里帰りしてから、まだ半年も経ってないよね!?」
「半年どころか、里からオビヒロに戻ってまだ一週間ちょっとです」
「こっちの世界じゃ一年は向こうよりなげーんだ。だから一週間と言っても・・・でも無理だぞ、コリャ。タケノコじゃあるめーし、数日で生えるなんてありえねーダロ」
しかし狼狽する俺たち三人に対して、シルちゃんは至って普通。一番驚いていないといけないはずの人が、何故か一番動揺していない。
いや、納得顔でポンと手を打っている?
「そうじゃったの。三日ほど前にウィル殿がここに来ておった事は言うてなかったのぉ」
「ウィルがエルフの里に?」
「うむ。アベリア王国の親善大使として二度目の来訪をしておっての。その際に『ビルディング』なる土魔法を扱える魔道具を置いていったのじゃ」
そっかー。
「へー・・・。って、いやいや、おかしいでしょ!? 巨大な建物がわずか三日で建つのは魔道具、いや、ファンタジーでまだ納得いくよ? でも、なんでそれでこんな世界観を無視したコンクリートなビルが建っちゃうのさ!?」
「ご丁寧にガラス窓も完備ですね」
「リュータらの世界にもあったと聞いておったのでの。二つ返事で建設を許可したそうなのじゃ。見れば見るほど良い出来じゃのぉ。では早速まいるのじゃ」
ど、どこにですかー!?
まさか、あのビルに・・・?
ファンタジー感一切無視の、あそこにですかー!?
って、あれ?
「そっちって、シルちゃんの家?」
「中までギッチリ石が詰まっておる外壁で会議は出来ぬからのぉ。門に砦は付いておるが、あちらは厳戒態勢中なのじゃ」
・・・。
見た目に騙された。アレ、ただの石壁だったのね。
「紛らわしすぎンダロ・・・。見かけだけかよ、アレ」
「以前ウィル殿にサーベルタイガー魔人と魔物に襲撃された件を相談しておっての。守りを固めるにはどうしたらよいかと」
それであの発明バカのウィルに相談しちゃったのかぁ。
いや、待てよ?
それならなんであいつ、新しい発明品を作る時間が取れないとか言っていたんだ?
「それでなんでビルを建てる魔道具だったのでしょうか」
「それがの。並の人間には動かせないほどの魔力が必要じゃから、実験しようにも出来なかったそうなのじゃ」
「あー、そうか。それで魔力量の多いエルフの人たちに使ってもらったのか」
「そういや翻訳機ってーのも、最初はとんでもねー魔力食ってたナァ。あの初代翻訳機を使えたエルフならッテカァ?」
「エルフは魔力の総量は多いのじゃが、なんせ出力は並じゃからのぉ。無駄に魔力を余らせた結果、そう、何と言ったかのぅ。のうき、ん? になっておったし、ウィル殿の発明品はその魔力を発散できるので、里の者は大喜びで実験に参加しておったぞ。ただウィル殿本人はこの成果を見る前に帰ってしまったのでの。私が見届けてからオビヒロに戻ったら、詳細を根掘り葉掘り聞かれたのじゃ」
最初にシルちゃんにあのトンデモ魔力大喰らいの翻訳機を送ったのは俺だけど、こんな交流にまで発展していたなんて初めて知ったよ。
ウィル、人の彼女の身内を実験台にするんじゃない。
でも、あいつの機嫌が悪かった理由は良く分かった。
トンボ帰りするハメになったのは、俺の所為だろうから。
いやほんと、すまんかった。てへりん。
心の中のエアウィルに謝ったので万事オールオッケーなのだ。
「他にもほれ。今明かりを付けておるのもウィルが作った魔道具じゃ。花火を元に改良したそうじゃ。本当は来年の収穫祭の為にとウィル殿からもらったのじゃが、何が役に立つか分からんものじゃの」
「収穫祭になんで明かりが必要なンダァ?」
「エルフの収穫祭は、夜通し行うからじゃ。多少は夜目が利く故に今までは最小の明かりでやっておったのじゃが、このような魔道具があるのでな。パーっとやりたくなったのじゃ」
へーそうなんだ。
「その祭り、俺も参加したいなぁ」
「うむ、当然じゃ! そもそもオビヒロの祭りを皆に話したが故に、こうなったのじゃ。ゆえに、是非にでも参加してもらうのじゃ」
ソ、ソウナンダー。
「オウ、ブラザー。やっぱテメーが原因カヨ」
「び、ビルは俺じゃないし!?」
「ビル、と言うのもリュータにアイデアをもらったとウィル殿は言うておったのぉ」
「ファンタジー要素なくなってンの、やっぱテメーの所為じゃねーカ! 俺様のエルフの里のイメージ、返しやがレ!」
そんな事言われてもさぁ!?
「ここ、懐かしいですねぇ。やっぱり日本家屋は落ち着きますね」
「姉御も何か言ってやれヤァ!」
「私はこれでいいですよ」
「なんでダァ? 姉御はこう言うの、こだわりそうなンダガ・・・」
「あなたは知らないでしょうけど、リザードマンさんたちの街で私はたこ焼きを食べました」
「た、たこ焼きダァ?」
あー、あったね。中身がタコじゃなくてクラーケンだったけど、懐かしい。
そう言えばあの屋台のオヤジさん、無事かなぁ。
「リザードマンさんの、リザードマン焼き。それがたこ焼きです」
「ナンですカァ、その紛らわしい名前」
「確かに紛らわしいけど、でも私たちより前に日本人がこの世界に来て、リザードマンさんたちと出会い、その人が伝授した証だと思うのです。そう言うのが積み重なったのがこの世界なら、こんなのも今更だと思うんですよね」
確かに、ユーバリ地方だとかバリッバリの日本由来の名前だしねぇ。
「だからちょっとは驚いたけど、でも、こうやって私たちがこの世界に流れ着く限り、あるべき変化だと思うんですよね。そもそもローマンコンクリートは紀元前から存在しますから、ビルだってこの世界にあっても不思議ではないですよ。あなたも各国を旅していたというのなら、日本人の感性で作られた非ファンタジーを目にしているのではないですか?」
「・・・、そういやザルツベルクにゃ温水便座が、あったナァ」
え? あの国にそんなものがあったの!?
しまったなぁ。
「どうにかあの国が滅ぼされる前に、一度行ってみたいな」
「動機がヒデーが、まぁそうだな。その為にゃぁ」
「魔王をどうにかしないといけません、ね」
「うむ、やる気十分なようじゃな! よろしく頼むのじゃ!」
***
「現場に行っておったミントからの情報が、これじゃな」
自らを巨人族だと勘違いしていたダークエルフ族のミントさんたち。彼女らがリザードマンの街の交渉団にいたから情報が早い。
今は疲れ果てて寝ているから、会うのは明日の朝になるだろう。せめて無事な姿でも見に行こうとしたら、女性の寝顔を覗くなんてとミチルさんに怒られた。
かつて一晩を同じベッドで共に過ごしたことは、何もなかったとはいえ、黙っていよう。
しかし、外の世界を見てみたいと言う彼女たちの意思を尊重して交渉団に加えていたが、それがどうにもうまく作用したようで、逆にその事が、ほんの少し釈然としない気持ちを生む。
ダークエルフの彼女たちは、普通のエルフよりも体が大きくて頑丈だ。だからこそケガを負ったり老いたりで身動きが取れなくなっていた一部のリザードマンたちを背負って森の中を突っ切れたのだ。これが普通のエルフだけだったらおいていかざるをえず、何人か犠牲者が出ていただろう、と聞いている。
これは、偶然にしては出来すぎている。
神様たちは、一体どこまで俺たちの事を見ていて、干渉しているのだろうか。
「考えても仕方ないか。それで、どれどれ・・・、ん? んん?」
会議室にある魔ホワイトボードに、シルちゃんが手元の資料を見ながら要点をまとめて書き連ねてくれる。
そこそこな分量だから、こう言うのはありがたい。
しかし、書き込まれている内容がぶっ飛びすぎていて、俺の理解が追い付かない。
- 魔王軍について -
・魔王軍の規模は十万単位でいる。数の詳細は不明
・主力はゴースト系、一部ゾンビやスケルトンも見られる
・仕切っている魔人はネズミ型で丸くて大きな耳を持つ
・魔王軍のゴーストにはほとんど魔法が効いていない
・物理攻撃もほとんど効かない
・進軍速度は非常に遅い
・進軍先は明らかにエルフの里を向いている
・魔王軍はエルフの里とリザードマンの街の間の密林で進軍速度が更に落ちている
・エルフの里での交戦予定時刻は夜明け前の四時ごろ
・軍勢の背後に魔王の影
十万単位の軍勢に、正体はゴーストか。ここに来て更に未知の魔物だなんて、勘弁して下さい。
「ゴーストですか。私は見た事がありませんが、魔法も物理も通用しないのは反則ですね」
非実体だから物理が効かないのはゲームによくあるお約束だけど、魔法も効かないのは酷いな。
「そう言うヤツぁ、お約束で光や聖の魔法に弱いんじゃネーのカァ?」
「ヤツらは高濃度の魔力の塊じゃ。生半可な魔法では通用せぬ。川に桶で水をぶつけるようなものなのじゃ」
「相変わらずこの世界はバランス調整ミスってるな」
隣でミチルさんもツヨシ君もうなずいているが、シルちゃんは不思議そうな顔をしている。
これは、俺たちが余所の世界から来たから余計にそう思うんだろうか。
考えてみれば魔力って、不思議な法則があるんだよなぁ。
非実体なのに物理的な衝撃はあるし、臭いなんてものも発生させられる。
魔力って、一体何なんだろうか。
「これじゃ実質弱点なしじゃねーカ。ゴーストってヤツを、今まではどうやって対処してたンダ?」
「ゴーストの大半は朝日で消えるのじゃ。そもそも身体がないのでの。早ければ数分で消えるような、はかない存在なのじゃ。今あちらの規模が小さくなっておらぬのは、恐らく魔人が随時召喚しておるからじゃの」
「それは、今夜さえ凌ぎきれば大丈夫、と言う事なのでしょうか」
「随時召喚しておる以上、それでは不十分じゃな。それに十万規模の軍勢相手では分が悪すぎるのじゃ。ミチルとワンが出向いても、今のここの防衛力では日の出までの一時間さえ持たぬやもしれぬ。何せ対ゴーストの設備など全くないのでの」
部屋の時計を見れば、今は夜の十一時半。
衝突まで残り、四時間半。
そしてそこから耐えるべき時間は、日の出である五時までのおよそ一時間。
十万の、魔法も物理攻撃も通用しないゴーストを相手取るには長すぎる時間だ。まず防衛線が持たないだろう。
「頭脳であるウィルもいない。リザードマンは疲労困憊で戦力にはカウントできない。そもそも攻撃が通じない。これは、詰んだ?」
「窮地、じゃのぉ」
「ピンチですね」
「でもまぁ、あんま心配いらねーヨナァ」
へー、そうなんだ。ツヨシ君には何が策があるのか。
「って、なんで三人とも俺を見てるの?」
いやな予感しかしませんが。
「いや、だってナァ?」
「もちろん、リュータさんが何とかしてくれるって、私、信じていますから!」
「うむ、リュータであれば魔王軍などひとひねりじゃ!」
えーと?
アイデア出すのは
「お、俺ぇ!?」
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クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
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