17 / 71
第一章 契約ではなく、約束しましょう
まいの幼馴染が現れた 〜ジェイド視点
しおりを挟む
大嫌いな人間が無防備に眠っているのなら、それがたとえ女でもめちゃくちゃにしてやりたいと思う。
こんなフェロモンを撒き散らしやがって、なぜ俺が自分を抑えてやる必要があるのかと自分でも思う。
......だが、野獣のような俺にいだかれて、すやすやと眠るまいは、到底大人の女には見えない。
(後ほどまいが成人した女だと知り驚愕したのだが、この時の俺はまいはガキだと思い込んでいたから添い寝などしたのだが)
あどけなく、汚れのない幼な子のようなまいを男の毒牙にかけることは、抵抗できない奴隷の俺たちを蹂躙してきたクズで糞な人間たちと同じになってしまうことが嫌だった。
そんな訳で俺は、久しぶりの女の匂いに悶々としながらも、必死に自制して朝が来るのを待った。
朝になり目覚めたまいは、十分に睡眠が取れた様子で、邪気のない笑顔を浮かべながら俺に添い寝の礼を言う。こっちの夜通しの忍耐など知りもしないまいに俺は少々イラついた。
ここで少しばかり襲うフリでもして恐らかしてやろうかーー。
だが、自分の口から出た言葉は全く違っていた。
「別に......あそこで放っといて熱でも出されたら面倒だからな」
何だよ俺!
牙を抜かれて弱いくせに、強がっている猛獣みたいじゃないか。
俺は風変わりで弱っちぃ人間の少女にイラつかされてるというのに、反撃すらできず振り回されている。
命令されないなら、人間などに遜へりくだったりしないと思っていた俺は戸惑いを拭えない。
その後もまいは、奴隷に食べ物を与え自分は我慢しようとしたり、奴隷を使役せず自分が働いて養おうとしたり......とにかく俺のことを優先し庇護しようとする。そんな人間は今まで見たことがなかったので、俺は何だかんだ言いながらもついまいを手助けしてしまうのだ。
だが、こんなまいだって、いつかは。
好いた男ができれば俺が邪魔になる。
......そん時は、俺はまいを殺して逃げなければならない。
そう分かってはいるが、存外居心地の良いこの状況を、もう少しだけ楽しんでみたい。だから、できればそんな男が現れるのは、もっと先であって欲しいーーなどと思い始めている自分を、まだこの時の俺は自覚していなかった。
しかし、そんな俺の潜在意識とは裏腹に、すぐにまいの元に一人の男が現れてしまったーー。
***
仕事を探すため、街まで足を運んだ俺たちはギルドで求人情報を見ながら歩いていた。
通常、女の一人暮らしなら、猛獣系の奴隷を買い、護衛をさせ働かせ、自分は優雅にお洒落を楽しみ贅沢に暮らすのが定番だ。
だが、例によってまいは俺を庇護下におこうとする。だから俺は、お互い成人しているのだから共に働こうと提案した。
こんな魔法も使えず、何の特技も知識もなさそうなまいに、養ってもらおうなどとは思えるはずもないしな。
まいは俺の提案を受けて、二人で共に働ける場所を探している。そんなまいは、子供ガキと見まごうほど小柄なので、目線より高い掲示板を見るためかかとを上げて歩いていた。そんな様子を見ていると、俺を庇護しようとしている場合ではなくお前が庇護されなきゃいけないだろ! とツッコミたくなる。
このまま見ていられない俺は、思わずまいを抱き上げていた。彼女は軽いので、俺の片腕に余裕で座らせてやることができる。
熊の俺に突然抱き上げられるなど、通常の女なら怖がって悲鳴を上げるところだが、案の定まいは嬉しそうに微笑んで礼を言った。ーーそしてなぜか俺の身体を触りまくるのだ。
獣のような俺をペットとでも思っているのだろうか。
そう思われるのはシャクなので、俺は怖い顔をして睨んで見せるのだが、まいはちっとも俺を怖がらず平気で触りまくるのだ。
まったく......俺だからされるがままでいてやっているが、これが他の獣人の男だったら、どういうことになるのか一度、知らしめてやりたいぜ。
そう思いつつも悪い気がしていない俺は、まいと一緒に隅々まで求人情報を見ながら意見を出し合っていた。
そんな時、俺たちの背後から一人の男の声がした。
「へぇ。獣奴隷なんて珍しいな。熊なんて強そうだし、僕に譲ってもらえないかな」
ーーまさかこんなにも早く、まいの想い人になりかねない、人間の男......しかも幼馴染みが現れてしまうとはーー
俺はうっかり絆ほだされそうになっていたまいへの気持ちに、再び警戒しなければならなくなった。
こんなフェロモンを撒き散らしやがって、なぜ俺が自分を抑えてやる必要があるのかと自分でも思う。
......だが、野獣のような俺にいだかれて、すやすやと眠るまいは、到底大人の女には見えない。
(後ほどまいが成人した女だと知り驚愕したのだが、この時の俺はまいはガキだと思い込んでいたから添い寝などしたのだが)
あどけなく、汚れのない幼な子のようなまいを男の毒牙にかけることは、抵抗できない奴隷の俺たちを蹂躙してきたクズで糞な人間たちと同じになってしまうことが嫌だった。
そんな訳で俺は、久しぶりの女の匂いに悶々としながらも、必死に自制して朝が来るのを待った。
朝になり目覚めたまいは、十分に睡眠が取れた様子で、邪気のない笑顔を浮かべながら俺に添い寝の礼を言う。こっちの夜通しの忍耐など知りもしないまいに俺は少々イラついた。
ここで少しばかり襲うフリでもして恐らかしてやろうかーー。
だが、自分の口から出た言葉は全く違っていた。
「別に......あそこで放っといて熱でも出されたら面倒だからな」
何だよ俺!
牙を抜かれて弱いくせに、強がっている猛獣みたいじゃないか。
俺は風変わりで弱っちぃ人間の少女にイラつかされてるというのに、反撃すらできず振り回されている。
命令されないなら、人間などに遜へりくだったりしないと思っていた俺は戸惑いを拭えない。
その後もまいは、奴隷に食べ物を与え自分は我慢しようとしたり、奴隷を使役せず自分が働いて養おうとしたり......とにかく俺のことを優先し庇護しようとする。そんな人間は今まで見たことがなかったので、俺は何だかんだ言いながらもついまいを手助けしてしまうのだ。
だが、こんなまいだって、いつかは。
好いた男ができれば俺が邪魔になる。
......そん時は、俺はまいを殺して逃げなければならない。
そう分かってはいるが、存外居心地の良いこの状況を、もう少しだけ楽しんでみたい。だから、できればそんな男が現れるのは、もっと先であって欲しいーーなどと思い始めている自分を、まだこの時の俺は自覚していなかった。
しかし、そんな俺の潜在意識とは裏腹に、すぐにまいの元に一人の男が現れてしまったーー。
***
仕事を探すため、街まで足を運んだ俺たちはギルドで求人情報を見ながら歩いていた。
通常、女の一人暮らしなら、猛獣系の奴隷を買い、護衛をさせ働かせ、自分は優雅にお洒落を楽しみ贅沢に暮らすのが定番だ。
だが、例によってまいは俺を庇護下におこうとする。だから俺は、お互い成人しているのだから共に働こうと提案した。
こんな魔法も使えず、何の特技も知識もなさそうなまいに、養ってもらおうなどとは思えるはずもないしな。
まいは俺の提案を受けて、二人で共に働ける場所を探している。そんなまいは、子供ガキと見まごうほど小柄なので、目線より高い掲示板を見るためかかとを上げて歩いていた。そんな様子を見ていると、俺を庇護しようとしている場合ではなくお前が庇護されなきゃいけないだろ! とツッコミたくなる。
このまま見ていられない俺は、思わずまいを抱き上げていた。彼女は軽いので、俺の片腕に余裕で座らせてやることができる。
熊の俺に突然抱き上げられるなど、通常の女なら怖がって悲鳴を上げるところだが、案の定まいは嬉しそうに微笑んで礼を言った。ーーそしてなぜか俺の身体を触りまくるのだ。
獣のような俺をペットとでも思っているのだろうか。
そう思われるのはシャクなので、俺は怖い顔をして睨んで見せるのだが、まいはちっとも俺を怖がらず平気で触りまくるのだ。
まったく......俺だからされるがままでいてやっているが、これが他の獣人の男だったら、どういうことになるのか一度、知らしめてやりたいぜ。
そう思いつつも悪い気がしていない俺は、まいと一緒に隅々まで求人情報を見ながら意見を出し合っていた。
そんな時、俺たちの背後から一人の男の声がした。
「へぇ。獣奴隷なんて珍しいな。熊なんて強そうだし、僕に譲ってもらえないかな」
ーーまさかこんなにも早く、まいの想い人になりかねない、人間の男......しかも幼馴染みが現れてしまうとはーー
俺はうっかり絆ほだされそうになっていたまいへの気持ちに、再び警戒しなければならなくなった。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
735
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる