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不安と困惑 〜ジェラルド視点
しおりを挟むボタンを嵌めてやると、女は深々と頭を下げてお礼を言った。
「心優しいお侍さん、何から何までありがとうございました。このご恩は必ずやお返し致します。それではご機嫌よう」
そう言って、キョロキョロと何か探している。
「どうするのだ?」
「お暇しようと思うのですが、出口はどちらでございますか?」
えっ、男のシャツ一枚で外に出るつもりか?
「ここを出て、どこへ行くのだ?」
俺は大いなる不安を抱いて尋ねた。
「そうですわねぇ、行く当てがないですから、とりあえずは山にでも入って暮らしますわ」
女は顎に曲げた人差し指を当て、首を傾け考えた末こう言った。
や、山……?
俺の背に、ダラダラと冷や汗が流れた。
「だめだ。山など入っては危険だ」
山には狼がいるし、毒虫や毒草だってある。たおやかな女が一人で暮らせるような場所ではない。
俺が焦って女を引き止めると、女はほほほと朗らかに笑った。
「心配には及びませんわ。私、山育ちですから。それではお侍さん、ご機嫌よう」
そう言って、女はわからない出口を求めて歩きだした。
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