魔術少女と呪われた魔獣 ~愛なんて曖昧なモノより、信頼できる魔術で王子様の呪いを解こうと思います!!~

朝霧 陽月

文字の大きさ
10 / 94

第10話 呪いをかけられた王子さま-後談-

しおりを挟む
「以上だ……」

 語り終えると、アルフォンス様は暗い顔で口をつぐみ黙り込んでしまった。
 そして静まりかえった部屋は、彼の表情のせいだろうか冷たく痛々しいものに感じられた。


 話自体はよくあるお伽噺そのものだった。
 ただ問題は呪いをかけられたところでそのまま終わっていることと、その当事者の王子さまが目の前にいるということだ。

 それまでのおこないの悪さから呪いをかけられて姿を変えられたか……んん?

「呪いで姿を変えられたのですよね?」

「ああ、このような恐ろしい獣のような姿にな」

 沈痛な面持ちでアルフォンス様は答えるが、個人的に恐ろしいか否かなどは重要じゃない。

「もとは獣人ではなかったということですか?」

「私はもともと人間だ」

 人間って……普通に私と同じ感じのアレのことかな。

「そもそも獣人のような存在は、呪いをかけられた私を除いて見たこともない」

「……」

 その発言は地味に私の精神にショックを与えた。
 そ、そっか……この辺にはいないのか。
 未知の種族との邂逅とか旅の醍醐味っぽくて楽しみにしていたのに……。
 更にあのモフモフも呪いの産物なのか、天然じゃないのか……。

 あぁ、モフモフモフモフ……いや、違う違う。
 落胆から見当違いの方向に転がっていきそうな思考に歯止めをかけて、気を取り直す。

 今はアルフォンス様の呪いについて詳しく聞かなくてはならないのだからと気持ちと頭を切り替え、彼への聞き取りを再開することにした。


「お聞きしたいことは何点かありますが、まずはアレについてお願いします」

 ビシッと私が指を指したのは、この部屋に入ったときから視線を感じるようで気になっていた調度品がまとめて置かれている場所だった。

「あの調度品少し妙ですよね? 先程からまるでコチラを見ているような気配がします」

 最初はなんとなく気になっていただけだったが、話しを聞いてる途中でやや魔力をまとっていることと、感じる視線が確かなものであることを確信した。

「そうだろうか……?」

「ええ、魔力を感じますし……ちょっと失礼して調べさせていただきますね」

「……ああ」

 そういうのと同時に立ち上がって、調度品の置いてある棚の前まで歩み寄った。
 見かけは本当に普通の調度品だ。
 ツボが複数に燭台、時計、ティーポットにカップやグラスまであるけど……食器類は片付けた方がいいんじゃないだろうか。

 いざ近寄ってみても遠目から見たとき以上の情報が分からず、手頃な燭台を手に持ってみて何気なく逆さまにした。

「わっ」

 静かな室内に人の声のようなものが響いた、私が持った燭台から。

「えっ……」

 これって傾けると音がするものなの?

 燭台をまじまじと見つめたのち、試しにとブンブン上下に振ってみた。

「そ、それ以上はやめてくれ……!!」

 何回か振ったところで慌てたアルフォンス様の声聞こえて、私はピタッと動きを止めた。

「アレ、もしかしてマズかったですかね……」

 声の感じからして、私の行動が良くないことだと言うことは明らかだった。
 気まずい気持ちでアルフォンス様に顔を向けると、彼はいや……と左右にクビを振った。

「説明しなかった私も悪かった……事情を話すから燭台を棚に置いてくれないか?」

「はい、すぐに……」

 私が燭台を棚に戻したのを見て、こわばった表情だったアルフォンス様はややホッとした様子を見せた。
 そしてそのまま私に席へ着くように促し、座ったところで口を開いた。

「それは元々、城に呪いがかけられたときに、一緒に呪いをかけられてしまった城の使用人達だ」

 んん? 使用人……ということはヒト、人間?

「……ちなみに意識はあるし、動けるし喋れる」

「……」

 その言葉に先程の燭台に目をやると、三つ叉の燭台は私が戻した棚の上で左右を手のように折り曲げてお辞儀をした。

「実は昨夜からずっとお姿を隠れて拝見しておりました、ご無礼をお許し下さい」

 へぇーそうだったんだ、昨日からね~
 無礼がどうこうって言ったら今、私は思いっきりキミを上下に振っちゃったんだけどなー
 ……うん、マズいよね?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

処理中です...