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第十一話 別棟の取り壊しと本棟改築
しおりを挟む年が明けて、学生たちが実家から寮へと戻ってきたある日の晩、大家さんから寮生たちに召集がかかった。私も千帆ちゃんと一緒に食堂を訪れた。
「今日集められた理由知ってる?」
千帆ちゃんに問えば、彼女は首を左右に振る。全く見当がつかない。そうしている間に大家さんが入ってきた。茶々さんは食堂にいる人の多さからか、姿を現さない。
寮生たちの視線が大家さんへと向く。
「こんばんは、皆さん。今日集まっていただいたのは大事なお知らせがあるからです」
「(お知らせ?)」
私たちは顔を見合わせた。他の寮生たちもざわざわとしだす。
「今年、この本棟を改築いたします。また、別棟の取り壊しが決定しました」
さらにざわつく食堂内。私も突然のことに目を丸くした。私が住んでいる別棟の取り壊しが決定したという事は、私は引っ越しをしなければならないのだろうか……。考えている間に大家さんが再び口を開く。
「なので、今年は新入生の入寮は無しとし、別棟に住んでいる方で今年もここを継続して利用して頂ける方々は本棟へ引っ越すことになります」
寮長曰く、独り暮らしに憧れる学生は多いらしい。そのため、最初の一年は寮へ入り翌年にはアパートへ引っ越す生徒が毎年いるのだそうだ。私はアパートに引っ越すつもりはないため、四年間この寮でお世話になるつもりでいる。
「本棟改築の間、本棟にお住いの皆さんは別棟へと移っていただくことになりますので、その点はご了承ください。質問がある方は随時受け付けますので、遠慮なく仰ってください」
「ねえ、和ちゃんはどうする?」
千帆ちゃんに問われた私は迷わず「継続する」と答えた。彼女に同じ質問を返すと、彼女も「私も!」と笑って答える。
「という事は、千帆ちゃんも別棟に一時的に住むんだね」
「隣部屋だと面白いのにね」
そんなことあるわけない、と笑っていた私たちは三月の下旬、隣部屋になって笑うのだった。ちなみに、千帆ちゃんと隣部屋になったのは本棟の改築が終了する三ヶ月という短い期間だけ。
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