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痛いくらいに激しく抱いて⑦
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目が覚めるとホテルのベッドにいた。
あのまま気を失ったのか。
恋人の余りの豹変振りに、思考が全然追いつかない。そしてそれほどまでに明成を怒らせてしまったことに胸を痛めた。
当然の報いだな。
自重気味に笑ってふと横を向くと、明成が静かに寝ていた。その綺麗で端正な顔を見つめていると、勝手に涙が溢れてきた。
自分を気遣う優しい顔も、嬉しそうに笑う顔も声も、仕草も全部好きだった。それなのにそんな愛おしい男を裏切った自分。今更ながら自分の行為が許せなくなった。愛していたなら、満足できないと初めから諦めず、きちんと話し合うべきだったのだ。
昨日の明成は明らかに怒っていたし、侮蔑も含んでいた。その冷たい眼差しが自分の心を激しく抉った。
「ごめんなぁ、明成。」
出来るだけ優しい手つきで明成の頭を撫でる。そして、自分のした裏切りにけじめをつけるべくベッドを降りた。
体を動かすと、体中が痛かった。怠い体を何とか動かしながら、近くにあったメモ用紙に明成へのメッセージを綴る。
“裏切って悪かった。今までありがとう“
書きながら手が震えた。こんな自分が明成の側に居ていいわけがないと俺自身もわかっているのにどうしても悲しみで視界が歪む。それと同時に思い知る。やはり自分には恋愛など向いていなかったと。
そして、明成にこんな思いを抱かせてしまった事を傷つけてしまった事を後悔しながら、静かにホテルを後にした。
そこからは穏やかな日常に戻った。特に何をする訳でもなく、只家と会社を往復するだけの毎日。
バーに行ったり、出会いを求めることもやめた。たまに体が疼くこともあるが、自分が明成にした事を思うと到底新たに出会いを求める気も起きなかった。
そういう生活が1ヶ月程続いた。こうして着実に毎日を過ごしていくことで、少しずつ明成の事を忘れていけると思ったが、現実はそこまで甘くなかった。ふとした時に、目を瞑るたびに明成を思い出す。ホテルでの明成は恐ろしかったが、思い出すのはいつもの優しい、犬のように人懐こい明成だった。
会いたい•••
都合がいいのはわかっているが、その思いだけは捨てる事ができなかった。
次の日、仕事で疲れた体を引きずって家に戻ると、自宅の玄関の前に誰かが座っていた。遠くからでは誰か判別などできない。
少し緊張しながら歩みを進める。そしてその人物が間近に迫った頃、俺は目の前の光景が信じられなくて目を見開いた。
「あ、明成?」
喉が引き攣り上手く言葉にならず、掠れたような声が出る。
俺の声に反応して明成が顔を上げた。そして、疲れたような顔でこっちを一瞥するとおもむろに立ち上がった。
「なんで•••」
どうして明成がここにいるのか、自分に会いに来たのか分からなくて軽くパニックになる。
その間にも明成はどんどんこちらに近づいてくる。
その目にはうっすら涙が浮いているようだった。
薄暗いマンションの通路で俺は1週間ぶりに明成と対峙した。
あのまま気を失ったのか。
恋人の余りの豹変振りに、思考が全然追いつかない。そしてそれほどまでに明成を怒らせてしまったことに胸を痛めた。
当然の報いだな。
自重気味に笑ってふと横を向くと、明成が静かに寝ていた。その綺麗で端正な顔を見つめていると、勝手に涙が溢れてきた。
自分を気遣う優しい顔も、嬉しそうに笑う顔も声も、仕草も全部好きだった。それなのにそんな愛おしい男を裏切った自分。今更ながら自分の行為が許せなくなった。愛していたなら、満足できないと初めから諦めず、きちんと話し合うべきだったのだ。
昨日の明成は明らかに怒っていたし、侮蔑も含んでいた。その冷たい眼差しが自分の心を激しく抉った。
「ごめんなぁ、明成。」
出来るだけ優しい手つきで明成の頭を撫でる。そして、自分のした裏切りにけじめをつけるべくベッドを降りた。
体を動かすと、体中が痛かった。怠い体を何とか動かしながら、近くにあったメモ用紙に明成へのメッセージを綴る。
“裏切って悪かった。今までありがとう“
書きながら手が震えた。こんな自分が明成の側に居ていいわけがないと俺自身もわかっているのにどうしても悲しみで視界が歪む。それと同時に思い知る。やはり自分には恋愛など向いていなかったと。
そして、明成にこんな思いを抱かせてしまった事を傷つけてしまった事を後悔しながら、静かにホテルを後にした。
そこからは穏やかな日常に戻った。特に何をする訳でもなく、只家と会社を往復するだけの毎日。
バーに行ったり、出会いを求めることもやめた。たまに体が疼くこともあるが、自分が明成にした事を思うと到底新たに出会いを求める気も起きなかった。
そういう生活が1ヶ月程続いた。こうして着実に毎日を過ごしていくことで、少しずつ明成の事を忘れていけると思ったが、現実はそこまで甘くなかった。ふとした時に、目を瞑るたびに明成を思い出す。ホテルでの明成は恐ろしかったが、思い出すのはいつもの優しい、犬のように人懐こい明成だった。
会いたい•••
都合がいいのはわかっているが、その思いだけは捨てる事ができなかった。
次の日、仕事で疲れた体を引きずって家に戻ると、自宅の玄関の前に誰かが座っていた。遠くからでは誰か判別などできない。
少し緊張しながら歩みを進める。そしてその人物が間近に迫った頃、俺は目の前の光景が信じられなくて目を見開いた。
「あ、明成?」
喉が引き攣り上手く言葉にならず、掠れたような声が出る。
俺の声に反応して明成が顔を上げた。そして、疲れたような顔でこっちを一瞥するとおもむろに立ち上がった。
「なんで•••」
どうして明成がここにいるのか、自分に会いに来たのか分からなくて軽くパニックになる。
その間にも明成はどんどんこちらに近づいてくる。
その目にはうっすら涙が浮いているようだった。
薄暗いマンションの通路で俺は1週間ぶりに明成と対峙した。
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