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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」
物置部屋のティータイム
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なんとかティーカップを入手出来た私は、テルファ様と別れ、物置部屋へと戻った。
「大分遅くなっちゃったな・・・・・・ギーシャ王子、お待たせしました」
「お帰り」
部屋に入ると、ギーシャ王子がティーポットを持って待っていた。
何をしているのかと思ってよく見ると、ティーポットが少し赤みを帯びている。これは、魔法を使った時に現れる魔法光だ。赤ということは炎とか熱系だな。
「温め直してくれたんですか?」
「ああ。冷めてきたから。遅かったが、何かあったのか?」
「いえ、ちょっと道に迷ってボスキャラに遭遇しただけです」
「は?」
ギーシャ王子が目をぱちくりさせてるが、私は気にせず持っていた小箱から先程テルファ様に譲渡されたティーカップとソーサーを取り出した。
ギーシャ王子はそれをトレイの上に起き、温め直した紅茶を注ぐ。トクトクという音と一緒に紅茶の香りが鼻腔を擽った。
「砂糖はいくつ入れる?」
「二つで」
私が手をピースの形にして言うと、ギーシャ王子がシュガーポットからちっちゃな角砂糖用のトングで角砂糖を挟み、ぽとんぽとんと二つカップの中に落とした。
それからティースプーンでかき混ぜる。角砂糖が完全に溶けきったのを確認すると、ギーシャ王子はソーサーを持って、私に紅茶を差し出した。
「ありがとうございます。いただきます」
取っ手に指をかけ、カップを音を立てないように持ち上げて一口啜る。
さすが、王族が飲む紅茶。とても芳醇だ。
角砂糖のおかげでほんのり甘い紅茶は疲れた体に染み渡るようだった。はぁ~うんまい。
「美味しいです!」
「ギルハードは紅茶を淹れるのが上手いからな」
「え!? これ、ギルハード様が淹れたんですか?」
「そうだぞ」
そういえば、持ってきたのはギルハード様って言ってたような・・・・・・。でも、てっきり淹れたのは侍女さんか誰かだと思ってた。
思わずまじまじと手元の紅茶を見つめてしまう。
「どうした?」
「いえ。少し意外だったもので」
「そうなのか?」
「なんというか、ギルハード様はあまり生活感を感じない方なので・・・・・・」
The・騎士! といったギルハード様の姿が頭に浮かぶ。あ、でもキリくんの面倒を見ている時のギルハード様はちょっとお父さんっぽいかも?
ギーシャ王子は空になった自分のティーカップにおかわりを注ぐと、角砂糖を三つ落とす。
「相変わらず、甘党なんですね」
「ああ。茶菓子があったら一つしか入れないんだがな」
「私も甘いものを食べる時は入れませんね」
「知ってる」
甘いものに甘い飲み物は合わないもんね。
それから私たちはしばらく無言で紅茶を味わった。ギーシャ王子はさっきのように入念に紅茶に息を吹きかけて冷ましていたから、私のカップが先に空になった。
「おかわりいるか?」
「そうですね・・・・・・いただきます」
再び、透き通った紅に満たされたカップを両手で包み込み、その中に映り込んだ自分の顔を見つめる。
そこにいる私の顔には逡巡が浮かんでいた。
迷っているのね、ミリア。
けど、ギーシャ王子と話さなきゃ。
心を決め、私は不安を飲み込むように紅茶を一気飲みした。
「──っ!? あつっ!? あっつ!!! ゲホッゴホッ!」
「ミリア!?」
ろくに冷ましていなかった紅茶を一気飲みしたせいで、熱いやら噎せたやらで咳き込んでしまった。
けほけほしてる私の背中をギーシャ王子が優しく擦ってくれた。しばらくそうして貰い、ようやく呼吸が落ち着いた私は大きく深呼吸して、姿勢を直した。
「すみません」
「大丈夫か?」
「ええ。もう落ち着きました」
これから結構真面目な話をするというのに、格好つかないなぁ。いや、紅茶を吐き出さなかっただけ良かったと思うべき?
「ギーシャ王子」
「何だ?」
隣で私を覗き込んでいるギーシャ王子の名前を呼ぶ。
「あのね、少し私の話を聞いてくれる?」
昔のような口調でそう言うと、ギーシャ王子の指先がぴくりと動いたような気がした。
「大分遅くなっちゃったな・・・・・・ギーシャ王子、お待たせしました」
「お帰り」
部屋に入ると、ギーシャ王子がティーポットを持って待っていた。
何をしているのかと思ってよく見ると、ティーポットが少し赤みを帯びている。これは、魔法を使った時に現れる魔法光だ。赤ということは炎とか熱系だな。
「温め直してくれたんですか?」
「ああ。冷めてきたから。遅かったが、何かあったのか?」
「いえ、ちょっと道に迷ってボスキャラに遭遇しただけです」
「は?」
ギーシャ王子が目をぱちくりさせてるが、私は気にせず持っていた小箱から先程テルファ様に譲渡されたティーカップとソーサーを取り出した。
ギーシャ王子はそれをトレイの上に起き、温め直した紅茶を注ぐ。トクトクという音と一緒に紅茶の香りが鼻腔を擽った。
「砂糖はいくつ入れる?」
「二つで」
私が手をピースの形にして言うと、ギーシャ王子がシュガーポットからちっちゃな角砂糖用のトングで角砂糖を挟み、ぽとんぽとんと二つカップの中に落とした。
それからティースプーンでかき混ぜる。角砂糖が完全に溶けきったのを確認すると、ギーシャ王子はソーサーを持って、私に紅茶を差し出した。
「ありがとうございます。いただきます」
取っ手に指をかけ、カップを音を立てないように持ち上げて一口啜る。
さすが、王族が飲む紅茶。とても芳醇だ。
角砂糖のおかげでほんのり甘い紅茶は疲れた体に染み渡るようだった。はぁ~うんまい。
「美味しいです!」
「ギルハードは紅茶を淹れるのが上手いからな」
「え!? これ、ギルハード様が淹れたんですか?」
「そうだぞ」
そういえば、持ってきたのはギルハード様って言ってたような・・・・・・。でも、てっきり淹れたのは侍女さんか誰かだと思ってた。
思わずまじまじと手元の紅茶を見つめてしまう。
「どうした?」
「いえ。少し意外だったもので」
「そうなのか?」
「なんというか、ギルハード様はあまり生活感を感じない方なので・・・・・・」
The・騎士! といったギルハード様の姿が頭に浮かぶ。あ、でもキリくんの面倒を見ている時のギルハード様はちょっとお父さんっぽいかも?
ギーシャ王子は空になった自分のティーカップにおかわりを注ぐと、角砂糖を三つ落とす。
「相変わらず、甘党なんですね」
「ああ。茶菓子があったら一つしか入れないんだがな」
「私も甘いものを食べる時は入れませんね」
「知ってる」
甘いものに甘い飲み物は合わないもんね。
それから私たちはしばらく無言で紅茶を味わった。ギーシャ王子はさっきのように入念に紅茶に息を吹きかけて冷ましていたから、私のカップが先に空になった。
「おかわりいるか?」
「そうですね・・・・・・いただきます」
再び、透き通った紅に満たされたカップを両手で包み込み、その中に映り込んだ自分の顔を見つめる。
そこにいる私の顔には逡巡が浮かんでいた。
迷っているのね、ミリア。
けど、ギーシャ王子と話さなきゃ。
心を決め、私は不安を飲み込むように紅茶を一気飲みした。
「──っ!? あつっ!? あっつ!!! ゲホッゴホッ!」
「ミリア!?」
ろくに冷ましていなかった紅茶を一気飲みしたせいで、熱いやら噎せたやらで咳き込んでしまった。
けほけほしてる私の背中をギーシャ王子が優しく擦ってくれた。しばらくそうして貰い、ようやく呼吸が落ち着いた私は大きく深呼吸して、姿勢を直した。
「すみません」
「大丈夫か?」
「ええ。もう落ち着きました」
これから結構真面目な話をするというのに、格好つかないなぁ。いや、紅茶を吐き出さなかっただけ良かったと思うべき?
「ギーシャ王子」
「何だ?」
隣で私を覗き込んでいるギーシャ王子の名前を呼ぶ。
「あのね、少し私の話を聞いてくれる?」
昔のような口調でそう言うと、ギーシャ王子の指先がぴくりと動いたような気がした。
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