修羅場を観察していたら巻き込まれました。

夢草 蝶

文字の大きさ
39 / 183
第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」

奉仕活動部の活動内容

しおりを挟む
「それは俺も気になった」

 ギーシャがギルハード様の意見に賛同を示す。

「あれ? 言ってなかったっけ?」
「ミリアは奉仕活動部として学園の皆の役に絶って貰うとだけ言っていた」
「ありゃりゃ」

 つまり、私は具体的な話を何一つしてなかったってわけかー。こりゃうっかりだ。

「奉仕活動部という名からして、奉仕活動を行うのは分かりますが、学内での奉仕活動とは一般のそれとはまた違ったものなのですか?」
「そうですね。基本的な活動は学内の清掃だったり、先生のお手伝いだったり、生徒が過ごしやすい環境作りって感じですが、それとは別に人助けなども考えています」
「人助け?」

 二人に奉仕活動部の予定している活動内容を話すと、ギーシャは最後の人助けという言葉が気になったようで、私は更に説明を加えた。

「そう。新学期が始まってから学内の様子を見て考えるけど、生徒から相談事や依頼を受け付ける仕組みを作ろうと思うの。言わば学内限定の便利屋みたいなものね今やっているパーティー準備はその予行練習も兼ねてるわ」
「この場合ですと、ミリア嬢が依頼人ということですか?」
「はい」

 私が頷くと、ギルハード様は何かを考えるような仕草をし、そのまま黙り込んだ。もしかしたら、活動内容に潜ませた私の思惑に気づいたのかもしれない。バレて困るものでもないし、ギルハード様がそれを妨害することもないだろうけど、ギルハード様には折を見て話しておいた方がいいかな?

「人助け・・・・・・」
「ギーシャ?」
「いや、なんでもない」

 ギーシャが少しぼーっとしているようだったから、声をかけてみる。ギーシャは何かを誤魔化すように微かに笑って、窓の外を眺め始めた。

 馬車も大分進んでいて、今走っているところは平民と呼ばれる人々が暮らしている区域。
 八百屋、書店、大衆食堂、骨董屋、様々な店が軒を並べている。
 春期休暇だからか、いつも以上に賑わっているように感じた。いや、普段内部から出ないからよく分からないんだけどね。
 王都は東西南北以外に、中心から内部、中部、外部と区域が分かれている。内部は王宮を中心に貴族の家が多く、中部は平民階級の生活区域になっており、外部はそれぞれ、港やら畑やら生活産業に使われる土地になっている。

 過ぎていく景色を眺めていると、馬車の進む先に赤い猫の絵が描かれた看板が見えた。恐らく、あれが猫の爪なんだろう。
 馬車が停止すると、ギルハード様が最初に下り、次にギーシャ、私の順に下りた。

「では、私は外で待ってますので、何かあったらすぐにお呼びください」
「中に入らないんですか?」
「私がいると店の者を威圧してしまうでしょうから」

 ギルハード様は苦笑しながら言った。確かに初対面の人にギルハード様のお顔は怖く見えてしまうだろうし、首筋の茨の模様も『茨の魔王』だとは気づかれなくても、カタギじゃないと勘違いされてしまうかもしれない。というか、以前そういうことがあったらしい。怖い人が刺青をするのはこの世界でも一緒のようだ。ギルハード様のは刺青じゃないけど。

「じゃあ、行ってきます」
「はい、行ってらっしゃいませ」

 ギルハード様を背に、私とギーシャは猫の爪に足を踏み入れた。

 店内は少し暗く、静かだった。
 OPENのプレートがかかってたから、営業中ではあるのだろうけど、カウンターに店員らしき影は見えない。

「ごめんくださーい!」

 店の奥に向かって呼び掛けると、しばらくして奥の扉から誰かが出てきた。
 暗くてよく見えないけど、近づいてくるとその姿が見えてきた。

 流れるような長い銀の髪を束ねた男性だ。若々しい芽のような明るい黄緑色の双眼の片方にモノクルをかけている。

 男性は私たちの前に立つと、両腕を広げ、芝居がかった素振りをして言った。

「ようこそ! 猫の爪へ!」
しおりを挟む
感想 104

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

婚約者の心の声が聞こえるようになったが手遅れだった

神々廻
恋愛
《めんどー、何その嫌そうな顔。うっざ》 「殿下、ご機嫌麗しゅうございます」 婚約者の声が聞こえるようになったら.........婚約者に罵倒されてた.....怖い。 全3話完結

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

魅了魔法…?それで相思相愛ならいいんじゃないんですか。

iBuKi
恋愛
サフィリーン・ル・オルペウスである私がこの世界に誕生した瞬間から決まっていた既定路線。 クロード・レイ・インフェリア、大国インフェリア皇国の第一皇子といずれ婚約が結ばれること。 皇妃で将来の皇后でなんて、めっちゃくちゃ荷が重い。 こういう幼い頃に結ばれた物語にありがちなトラブル……ありそう。 私のこと気に入らないとか……ありそう? ところが、完璧な皇子様に婚約者に決定した瞬間から溺愛され続け、蜂蜜漬けにされていたけれど―― 絆されていたのに。 ミイラ取りはミイラなの? 気付いたら、皇子の隣には子爵令嬢が居て。 ――魅了魔法ですか…。 国家転覆とか、王権強奪とか、大変な事は絡んでないんですよね? いろいろ探ってましたけど、どうなったのでしょう。 ――考えることに、何だか疲れちゃったサフィリーン。 第一皇子とその方が相思相愛なら、魅了でも何でもいいんじゃないんですか? サクッと婚約解消のち、私はしばらく領地で静養しておきますね。 ✂---------------------------- 不定期更新です。 他サイトさまでも投稿しています。 10/09 あらすじを書き直し、付け足し?しました。

処理中です...