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第一章 公爵令嬢曰く、「好奇心は台風の目に他ならない」
原爆固め
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「そーっと、そーっと。ゆっくりでいいですからね。そのまま、後ろへ──よし、外れました」
「ぷあ~・・・・・・うぅ、ずっと口開いてたから、奥歯の辺りがいたぁい」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫~。ありがとね~」
耳朶の裏辺りを擦りながら、口をぱくぱくさせている。
桃色の髪と海色のジト目っぽい目つきをした女の子。
肌がとても白くて、可愛らしい顔立ちをしている。身長は私の胸下くらいまでしかない。初等部一、二年生くらいかな?
もう一人の長い黒髪を束ねて、翡翠のような色合いのきりっとした凛々しい美女さんにもお辞儀をされた。
「助けて頂きありがとうございます。お礼をしたいのですが、少々お待ち頂けますか?」
「私も猫の爪に用があったので、大丈夫ですよ」
「そうですか。では、失礼して。ロイド」
「はぁい?」
黒髪美女さんはごそごそと店内の棚を物色しているロイドさんの元へ寄り、背後からロイドさんのお腹に手を回した。
あら、大胆。
女の人が男の人に抱きついている光景に、思わずどきっとしてしまった。う~ん、普段お父様とお母様がぎゅ~ってしてる姿は見慣れているけれど、家族以外がしてるのを見ることはあまりないから、つい眺めてしまう。
あれ? でもこの人ってロイドさんに噛みついて──
「ふん!」
「ぎゃあ!」
瞬間、黒髪美女さんは大きく後ろに背を反らした。ブリッジに似た体勢になっている。
当然、お腹に手を回されていたロイドさんの体は浮かび上がり、そのまま床に脳天直撃。
これって─あれだ。
原爆固め。或いはジャーマンスープレックス。
女性が自分より身長の高い男性をとは──色々すごいなぁ。
「リシー、すごぉい」
桃髪少女がぱちぱちと拍手を送る。
ロイドさんに噛みついていたことから、この子と黒髪美女さんの心は同じのようでロイドさんに対する同情的はまるで見られない。
技を決められたロイドさん本人はというと、床で頭を抑えてぴくぴくしている。
「ろ、ロイドさーん、起き上がれます? あ、鎮痛魔法かけます? 私の腕だとないよりまし程度ですけど」
「起き上がるのはちょっと待って下さい・・・・・・鎮痛魔法はお願いします」
私は呪文を唱えて鎮痛魔法をかけた。氷とか、炎とか、元から適性が高い属性魔法なら多少扱えるけど、こういう魔法は得意じゃない。カルム先生に空いてる時間にちょろっと教えてもらっただけだし。
けど、強い痛みを少し緩和することは出来るだろう。
「別に、そんなことやらなくていいぞー。ロイドが悪いんだから」
「ひどいー」
壷を脇に抱えたエリックさんがやって来て、さらっと言った。
「そんなことより、薬はどこだ?」
すっとロイドさんが開いた棚を指差した。
エリックさんはその中をごそごそと探る。
・・・・・・ロイドさんの扱い雑すぎない?
「ぷあ~・・・・・・うぅ、ずっと口開いてたから、奥歯の辺りがいたぁい」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫~。ありがとね~」
耳朶の裏辺りを擦りながら、口をぱくぱくさせている。
桃色の髪と海色のジト目っぽい目つきをした女の子。
肌がとても白くて、可愛らしい顔立ちをしている。身長は私の胸下くらいまでしかない。初等部一、二年生くらいかな?
もう一人の長い黒髪を束ねて、翡翠のような色合いのきりっとした凛々しい美女さんにもお辞儀をされた。
「助けて頂きありがとうございます。お礼をしたいのですが、少々お待ち頂けますか?」
「私も猫の爪に用があったので、大丈夫ですよ」
「そうですか。では、失礼して。ロイド」
「はぁい?」
黒髪美女さんはごそごそと店内の棚を物色しているロイドさんの元へ寄り、背後からロイドさんのお腹に手を回した。
あら、大胆。
女の人が男の人に抱きついている光景に、思わずどきっとしてしまった。う~ん、普段お父様とお母様がぎゅ~ってしてる姿は見慣れているけれど、家族以外がしてるのを見ることはあまりないから、つい眺めてしまう。
あれ? でもこの人ってロイドさんに噛みついて──
「ふん!」
「ぎゃあ!」
瞬間、黒髪美女さんは大きく後ろに背を反らした。ブリッジに似た体勢になっている。
当然、お腹に手を回されていたロイドさんの体は浮かび上がり、そのまま床に脳天直撃。
これって─あれだ。
原爆固め。或いはジャーマンスープレックス。
女性が自分より身長の高い男性をとは──色々すごいなぁ。
「リシー、すごぉい」
桃髪少女がぱちぱちと拍手を送る。
ロイドさんに噛みついていたことから、この子と黒髪美女さんの心は同じのようでロイドさんに対する同情的はまるで見られない。
技を決められたロイドさん本人はというと、床で頭を抑えてぴくぴくしている。
「ろ、ロイドさーん、起き上がれます? あ、鎮痛魔法かけます? 私の腕だとないよりまし程度ですけど」
「起き上がるのはちょっと待って下さい・・・・・・鎮痛魔法はお願いします」
私は呪文を唱えて鎮痛魔法をかけた。氷とか、炎とか、元から適性が高い属性魔法なら多少扱えるけど、こういう魔法は得意じゃない。カルム先生に空いてる時間にちょろっと教えてもらっただけだし。
けど、強い痛みを少し緩和することは出来るだろう。
「別に、そんなことやらなくていいぞー。ロイドが悪いんだから」
「ひどいー」
壷を脇に抱えたエリックさんがやって来て、さらっと言った。
「そんなことより、薬はどこだ?」
すっとロイドさんが開いた棚を指差した。
エリックさんはその中をごそごそと探る。
・・・・・・ロイドさんの扱い雑すぎない?
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