散らない春のアルメリア~婚約破棄を決めた婚約者が物凄い誤解をしてました~

夢草 蝶

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本編

第十三話 雨季の花園には

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 ──花園にはライラックとアルメリアがある。

 それを聞いて、私はあることを仕向けるためにこのようなご提案をいたしました。

「アクシズ殿下、花園を拝見させていただいた後はお茶をしたいのですけど、よろしいでしょうか?」

「もちろんだ。歩いた後は腰を据えて話した方がいい。では今のうちに手配を──」

「そういうことだから、ライラック、お城の方にお茶の用意をお願いしてきて」

「は? なんで俺が?」

「だって今日は私とアクシズ殿下の縁談なんだよ? 人選を考えたらライラックしかいないでしょ」

「俺は監督役をする必要がある」

「ないでしょ。縁談なんだから、少しはアクシズ殿下と二人で話させて。ほら行って行って。お願いね」

 渋るライラックの背中を押して、参った時に最初に通された来客用の宮殿へと向かわせました。
 ライラックは何かを訴えるようにこちらを見てきましたが、負けじと笑顔で手を振って見送ると諦めて歩き始めました。その間も何度もこちらを振り返ってましたが、その度に笑顔で手を振りました。
 ライラックが宮殿へ入っていくところを確認し、私はようやく手を下ろすことができました。

「なんか、親戚に連れられて嫌々出掛ける子供みたいだな」

「言い得て妙ですね。では、参りましょう。アクシズ殿下、私は花園の場所を存じ上げませんので、ご案内していただいてもよろしいですか?」

「ああ、こっちだよ。着いてきて」

 アクシズ殿下が指差した方角へ向けて、歩き始めます。

「ところで、何かライラックを花園へ連れて行きたくない理由でもあったのかな?」

「え?」

「随分と強引に見えたから」

「まぁ」

 頬に手を当てて、声を漏らしました。
 けれど、確かにそうかもしれません。焦燥、と言うほどのものではありませんけれど、強いて表すなら少し舗装の悪い普通の道と、綺麗に整えられた長い道の長い道を選ぶような。ほんの僅かな違和感から逃れる逃避のようなものです。

「そうですね。その通りです」

「理由を訊いても?」

 アクシズ殿下の言葉に頷くも、私はその場では答えずにまっすぐに花園へ続く道の先へ目を向けました。

「それは、花園に着いてからご説明させていただきます」

 春が終わって、次第に蒸し暑くなる雨季。
 花園にはこの時季の代名詞と言える紫陽花が咲いていることでしょう。

 麗らかな春は北へ旅立ち、春の花も共に散ってゆきました。
 けれど、もしかしたらそこにはあるかもしれません。
 私がライラックと共に花園に行きたくなかった理由。居残る、春の──が──。
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