13 / 33
本編
第十三話 雨季の花園には
しおりを挟む
──花園にはライラックとアルメリアがある。
それを聞いて、私はあることを仕向けるためにこのようなご提案をいたしました。
「アクシズ殿下、花園を拝見させていただいた後はお茶をしたいのですけど、よろしいでしょうか?」
「もちろんだ。歩いた後は腰を据えて話した方がいい。では今のうちに手配を──」
「そういうことだから、ライラック、お城の方にお茶の用意をお願いしてきて」
「は? なんで俺が?」
「だって今日は私とアクシズ殿下の縁談なんだよ? 人選を考えたらライラックしかいないでしょ」
「俺は監督役をする必要がある」
「ないでしょ。縁談なんだから、少しはアクシズ殿下と二人で話させて。ほら行って行って。お願いね」
渋るライラックの背中を押して、参った時に最初に通された来客用の宮殿へと向かわせました。
ライラックは何かを訴えるようにこちらを見てきましたが、負けじと笑顔で手を振って見送ると諦めて歩き始めました。その間も何度もこちらを振り返ってましたが、その度に笑顔で手を振りました。
ライラックが宮殿へ入っていくところを確認し、私はようやく手を下ろすことができました。
「なんか、親戚に連れられて嫌々出掛ける子供みたいだな」
「言い得て妙ですね。では、参りましょう。アクシズ殿下、私は花園の場所を存じ上げませんので、ご案内していただいてもよろしいですか?」
「ああ、こっちだよ。着いてきて」
アクシズ殿下が指差した方角へ向けて、歩き始めます。
「ところで、何かライラックを花園へ連れて行きたくない理由でもあったのかな?」
「え?」
「随分と強引に見えたから」
「まぁ」
頬に手を当てて、声を漏らしました。
けれど、確かにそうかもしれません。焦燥、と言うほどのものではありませんけれど、強いて表すなら少し舗装の悪い普通の道と、綺麗に整えられた長い道の長い道を選ぶような。ほんの僅かな違和感から逃れる逃避のようなものです。
「そうですね。その通りです」
「理由を訊いても?」
アクシズ殿下の言葉に頷くも、私はその場では答えずにまっすぐに花園へ続く道の先へ目を向けました。
「それは、花園に着いてからご説明させていただきます」
春が終わって、次第に蒸し暑くなる雨季。
花園にはこの時季の代名詞と言える紫陽花が咲いていることでしょう。
麗らかな春は北へ旅立ち、春の花も共に散ってゆきました。
けれど、もしかしたらそこにはあるかもしれません。
私がライラックと共に花園に行きたくなかった理由。居残る、春の──が──。
それを聞いて、私はあることを仕向けるためにこのようなご提案をいたしました。
「アクシズ殿下、花園を拝見させていただいた後はお茶をしたいのですけど、よろしいでしょうか?」
「もちろんだ。歩いた後は腰を据えて話した方がいい。では今のうちに手配を──」
「そういうことだから、ライラック、お城の方にお茶の用意をお願いしてきて」
「は? なんで俺が?」
「だって今日は私とアクシズ殿下の縁談なんだよ? 人選を考えたらライラックしかいないでしょ」
「俺は監督役をする必要がある」
「ないでしょ。縁談なんだから、少しはアクシズ殿下と二人で話させて。ほら行って行って。お願いね」
渋るライラックの背中を押して、参った時に最初に通された来客用の宮殿へと向かわせました。
ライラックは何かを訴えるようにこちらを見てきましたが、負けじと笑顔で手を振って見送ると諦めて歩き始めました。その間も何度もこちらを振り返ってましたが、その度に笑顔で手を振りました。
ライラックが宮殿へ入っていくところを確認し、私はようやく手を下ろすことができました。
「なんか、親戚に連れられて嫌々出掛ける子供みたいだな」
「言い得て妙ですね。では、参りましょう。アクシズ殿下、私は花園の場所を存じ上げませんので、ご案内していただいてもよろしいですか?」
「ああ、こっちだよ。着いてきて」
アクシズ殿下が指差した方角へ向けて、歩き始めます。
「ところで、何かライラックを花園へ連れて行きたくない理由でもあったのかな?」
「え?」
「随分と強引に見えたから」
「まぁ」
頬に手を当てて、声を漏らしました。
けれど、確かにそうかもしれません。焦燥、と言うほどのものではありませんけれど、強いて表すなら少し舗装の悪い普通の道と、綺麗に整えられた長い道の長い道を選ぶような。ほんの僅かな違和感から逃れる逃避のようなものです。
「そうですね。その通りです」
「理由を訊いても?」
アクシズ殿下の言葉に頷くも、私はその場では答えずにまっすぐに花園へ続く道の先へ目を向けました。
「それは、花園に着いてからご説明させていただきます」
春が終わって、次第に蒸し暑くなる雨季。
花園にはこの時季の代名詞と言える紫陽花が咲いていることでしょう。
麗らかな春は北へ旅立ち、春の花も共に散ってゆきました。
けれど、もしかしたらそこにはあるかもしれません。
私がライラックと共に花園に行きたくなかった理由。居残る、春の──が──。
98
あなたにおすすめの小説
女神様、もっと早く祝福が欲しかった。
しゃーりん
ファンタジー
アルーサル王国には、女神様からの祝福を授かる者がいる。…ごくたまに。
今回、授かったのは6歳の王女であり、血縁の判定ができる魔力だった。
女神様は国に役立つ魔力を授けてくれる。ということは、血縁が乱れてるってことか?
一人の倫理観が異常な男によって、国中の貴族が混乱するお話です。ご注意下さい。
聖女を怒らせたら・・・
朝山みどり
ファンタジー
ある国が聖樹を浄化して貰うために聖女を召喚した。仕事を終わらせれば帰れるならと聖女は浄化の旅に出た。浄化の旅は辛く、聖樹の浄化も大変だったが聖女は頑張った。聖女のそばでは王子も励ました。やがて二人はお互いに心惹かれるようになったが・・・
家族に裏切られて辺境で幸せを掴む?
しゃーりん
恋愛
婚約者を妹に取られる。
そんな小説みたいなことが本当に起こった。
婚約者が姉から妹に代わるだけ?しかし私はそれを許さず、慰謝料を請求した。
婚約破棄と共に跡継ぎでもなくなったから。
仕事だけをさせようと思っていた父に失望し、伯父のいる辺境に行くことにする。
これからは辺境で仕事に生きよう。そう決めて王都を旅立った。
辺境で新たな出会いがあり、付き合い始めたけど?というお話です。
居場所を失った令嬢と結婚することになった男の葛藤
しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢ロレーヌは悪女扱いされて婚約破棄された。
父親は怒り、修道院に入れようとする。
そんな彼女を助けてほしいと妻を亡くした28歳の子爵ドリューに声がかかった。
学園も退学させられた、まだ16歳の令嬢との結婚。
ロレーヌとの初夜を少し先に見送ったせいで彼女に触れたくなるドリューのお話です。
夢を現実にしないための正しいマニュアル
しゃーりん
恋愛
娘が処刑される夢を見た。
現在、娘はまだ6歳。それは本当に9年後に起こる出来事?
処刑される未来を変えるため、過去にも起きた夢の出来事を参考にして、変えてはいけないことと変えるべきことを調べ始める。
婚約者になる王子の周囲を変え、貴族の平民に対する接し方のマニュアルを作り、娘の未来のために頑張るお話。
聖女と呼ばれることになった侯爵令嬢はご立腹です!
しゃーりん
恋愛
ちょっとした治癒魔法が使える程度であった侯爵令嬢が、ある事件によって聖女級の治癒力が使えるようになってしまった。
大好きな婚約者と別れて王太子と結婚?!
とんでもないとご立腹の令嬢のお話です。
振られたから諦めるつもりだったのに…
しゃーりん
恋愛
伯爵令嬢ヴィッテは公爵令息ディートに告白して振られた。
自分の意に沿わない婚約を結ぶ前のダメ元での告白だった。
その後、相手しか得のない婚約を結ぶことになった。
一方、ディートは告白からヴィッテを目で追うようになって…
婚約を解消したいヴィッテとヴィッテが気になりだしたディートのお話です。
貧乏伯爵令嬢は従姉に代わって公爵令嬢として結婚します。
しゃーりん
恋愛
貧乏伯爵令嬢ソレーユは伯父であるタフレット公爵の温情により、公爵家から学園に通っていた。
ソレーユは結婚を諦めて王宮で侍女になるために学園を卒業することは必須であった。
同い年の従姉であるローザリンデは、王宮で侍女になるよりも公爵家に嫁ぐ自分の侍女になればいいと嫌がらせのように侍女の仕事を与えようとする。
しかし、家族や人前では従妹に優しい令嬢を演じているため、横暴なことはしてこなかった。
だが、侍女になるつもりのソレーユに王太子の側妃になる話が上がったことを知ったローザリンデは自分よりも上の立場になるソレーユが許せなくて。
立場を入れ替えようと画策したローザリンデよりソレーユの方が幸せになるお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる