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第一章 悠久老師──改め、悠久少女
第二話 白花の少女
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霞がかった山頂に辿り着いた蒼炎は、麓を見て、言葉を失った。
麓は雲に覆われ見えず、その雲が晴れた遠くはあまりに小さく、色しか判断できない程であった。
人生で初めて見る天上の景色。筆舌に尽くしがたき、壮麗さに蒼炎は一瞬我を忘れた。
しかし、すぐに自分の目的を思い出し、辺りを探った。若草と白い見たこともない美しい花が咲く道を進む。人の気配は全く感じない。こんな場所に本当に誰かが住んでいるのか? 俄に疑問に思い始めた蒼炎は自分の体の様子がおかしい事に気づいた。
息が苦しいのだ。高所は酸素が薄らぐ。大陸一の標高を誇る天花山だ。その山頂にどれだけの空気があるだろう。
「はぁ……はぁ……うっ!」
酸欠と疲労により、蒼炎が地面に膝をつく。
蒼炎は立ち上がろうとするが、上手く力が入らない。
呼吸が荒くなり、目が霞む。
朦朧とする意識の中で、蒼炎の耳に鈴の音のような澄んだ声が響いた。
「これをお飲みなさい」
目の前に一本の竹筒が差し出された。中には透明な水が揺れている。蒼炎はぼんやりとした瞳でそれを受け取ると、仄かに甘い匂いのする水を一気に飲み干した。水は甘い匂いに反して苦く、見かけによらず甘露を好む蒼炎は苦々しい顔をした。
暫くすると息苦しさが消え、立ち上がれるようになった。
蒼炎は竹筒を差し出してきた相手を見る。
白く長い髪と青に近い紫の瞳をした少女がそこにいた。少女は簡素な服を着ており、手に持った籠の中には辺りに生えている白い花がいっぱい詰め込まれていた。
(この山の頂上にこんな年端もいかない少女が?)
蒼炎は正体不明の少女を訝しげに観察した。職業上、人間観察の癖がついてしまっているのだ。
年齢は十三、四といったところだろうか? 背は蒼炎の胸元までしかなく、平均より蒼炎の身長が高い事を差し引いても小柄な方だろう。手足は細く華奢で、とてもこんな処まで来られるようには見えなかった。
少女は少女で興味深そうに蒼炎を頭の天辺から足の先まで眺めると、小さな唇を開いて言った。
「こんな処にお客人なんて珍しい。貴方はだぁれ? どうしてここに来たの?」
「俺は龍蒼炎。鈴珠国の将軍だ。悠久老師の万能薬を求めて、ここまで来た。君は誰だ? 悠久老師の関係者か? もしそうなら、老師の下まで案内してくれ」
少女の問いに、蒼炎は素直に答え、続いて訊ねた。
少女はきょとんとした表情で何かを思案するように目を反らしてから改めて蒼炎を見て、優しく微笑み、言った。
「私は竜胆。貴方の探している悠久老師よ」
麓は雲に覆われ見えず、その雲が晴れた遠くはあまりに小さく、色しか判断できない程であった。
人生で初めて見る天上の景色。筆舌に尽くしがたき、壮麗さに蒼炎は一瞬我を忘れた。
しかし、すぐに自分の目的を思い出し、辺りを探った。若草と白い見たこともない美しい花が咲く道を進む。人の気配は全く感じない。こんな場所に本当に誰かが住んでいるのか? 俄に疑問に思い始めた蒼炎は自分の体の様子がおかしい事に気づいた。
息が苦しいのだ。高所は酸素が薄らぐ。大陸一の標高を誇る天花山だ。その山頂にどれだけの空気があるだろう。
「はぁ……はぁ……うっ!」
酸欠と疲労により、蒼炎が地面に膝をつく。
蒼炎は立ち上がろうとするが、上手く力が入らない。
呼吸が荒くなり、目が霞む。
朦朧とする意識の中で、蒼炎の耳に鈴の音のような澄んだ声が響いた。
「これをお飲みなさい」
目の前に一本の竹筒が差し出された。中には透明な水が揺れている。蒼炎はぼんやりとした瞳でそれを受け取ると、仄かに甘い匂いのする水を一気に飲み干した。水は甘い匂いに反して苦く、見かけによらず甘露を好む蒼炎は苦々しい顔をした。
暫くすると息苦しさが消え、立ち上がれるようになった。
蒼炎は竹筒を差し出してきた相手を見る。
白く長い髪と青に近い紫の瞳をした少女がそこにいた。少女は簡素な服を着ており、手に持った籠の中には辺りに生えている白い花がいっぱい詰め込まれていた。
(この山の頂上にこんな年端もいかない少女が?)
蒼炎は正体不明の少女を訝しげに観察した。職業上、人間観察の癖がついてしまっているのだ。
年齢は十三、四といったところだろうか? 背は蒼炎の胸元までしかなく、平均より蒼炎の身長が高い事を差し引いても小柄な方だろう。手足は細く華奢で、とてもこんな処まで来られるようには見えなかった。
少女は少女で興味深そうに蒼炎を頭の天辺から足の先まで眺めると、小さな唇を開いて言った。
「こんな処にお客人なんて珍しい。貴方はだぁれ? どうしてここに来たの?」
「俺は龍蒼炎。鈴珠国の将軍だ。悠久老師の万能薬を求めて、ここまで来た。君は誰だ? 悠久老師の関係者か? もしそうなら、老師の下まで案内してくれ」
少女の問いに、蒼炎は素直に答え、続いて訊ねた。
少女はきょとんとした表情で何かを思案するように目を反らしてから改めて蒼炎を見て、優しく微笑み、言った。
「私は竜胆。貴方の探している悠久老師よ」
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