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番外編
ほのぼの日常編1 再婚を祝う人々3(ダニエラ視点)
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「ダニエラ、少し痩せたか。こちらに来て良く顔を見せなさい。ネルツ侯爵夫人の非情なる振る舞いが、そなたに負担を掛けたのだな。美しいデルロイ似の顔に翳りが見えるとはなんと嘆かわしい事だろう」
陛下は大袈裟と感じる程に私の体調を気遣い、嘆き悲しんで下さっていますが私はそれを見て引きつるだけです。
デルロイ似、つまり私のお父様に似ていると言われているのですが、私では無くお父様の方に美しいとつける辺り陛下の気持ちがどちらに傾いているか分かります。
「陛下、ご心配をお掛けして申し訳ございません」
引きつった笑顔で私は陛下にそう告げながら、隣に立つお兄様の表情を盗み見しました。
こちらに来てと言われて素直に動くと痛い目を見るのは過去の経験から分かっていますが、どうしたらいいでしょうか。
「知らせを聞いて、デルロイの心痛はいかばかりかと、余は胸が潰れる思いがしたのだぞ」
「伯父上、ダニエラを心配下さり感謝申し上げます。屋敷で数日の間静養させておりましたが、まだ万全ではございません。ダニエラも年頃の娘ですからやつれた顔を伯父上の直ぐ側でお見せするのは辛いでしょう。どうかご容赦頂きたく」
お兄様のこれは、助けに見せかけた私への嫌味なのでしょうか。
年頃の娘、前世の感覚で言えばそうですが、この世界で結婚している女性にそんな扱いはしません。
「そうかそうか。それは余の気遣いが足りなかったな。二人共座りなさい」
陛下から許可を頂き、私達は陛下とテーブルを挟んで向かい合わせにソファーに腰掛けました。
この部屋は陛下がお父様と二人だけのお茶会をする為だけに用意した部屋だと、以前お兄様から聞いたことがあります。
私は初めてこの部屋に招かれましたが、調度品はどう見てもお父様の好みで揃えられています。
陛下はお父様を溺愛されていると、以前お兄様から聞いていましたし、実際にそれを私も見ていますがここまでくると執着の方が強いのではないでしょうか。
「如何したダニエラ」
「こちらには初めて伺ったというのに何だか懐かしい気がして、失礼ながらお父様の部屋によく似ている為かと考えていました」
「デルロイの好みは余が一番理解しておるから、当然の事であろう」
陛下の執着があちこちに見える部屋に呆れていただけですが、暗にお父様の好みだろうと言えば陛下に満足そうな返事を返されてしまい、一番理解とは? と引きつりそうになる頬を無理矢理に笑顔に変えました。
「まあ、陛下に大切に思われるお父様は幸せですわね」
「デルロイをこの世で一番思っているのは余だから、あれが幸福なのは当然の事であろう。だが余はニールとダニエラも等しく思っている。その証に十日後に大神殿の聖殿の間でダニエラの婚姻の儀式を行える様手配した」
今、陛下はなんと仰っていたのでしょう。
婚姻の儀式と聞こえたのは聞き違いでしょうか。
「伯父上、ダニエラは」
「デルロイの愛娘の初めての結婚、まさか儀式も無しに送り出すつもりではないだろうな。ニール」
「初めて?」
珍しくお兄様が戸惑った様な声を上げましたが、私はそれどころではありません。
今、大神殿の聖殿と聞こえたのですから。
「五年の間婚約していたネルツ候爵家の一人息子であるディーン・ネルツに嫁ぐのだから初めてだろう」
「伯父上、ディーンは」
「神聖なる誓いを行った妻に毒を使う様な男、神はそのような非道な行いを許さない。デルロイの心痛はいかばかりか考えるだけではらわたが煮え返る思いだ。ネルツ侯爵夫人の非道な行いも腹立たしい。あの家の子は過去も現在もディーン一人のみ。そうであろうニール」
まさか陛下は、ピーターの存在を系譜から消してしまったのでしょうか。
つまり、私の最初の結婚は無効にされた?
「今素晴らしいドレスを仕立させている。余からの結婚の祝いだ」
「陛下、私にそんな栄誉を頂けるのですか」
声が震えてしまうのを、誤魔化せませんでした。
これは私への思いやりでは無く、陛下のお父様への執着故でしょうかそれとも何か他に思惑があるのでしょうか。
それが分からないのが怖いのです。
大神殿の聖殿の間は、基本的には王族と公爵家の儀式に使用する場所です。
私とピーターの時は、通常上位貴族が婚姻の儀式を行う大神殿の東の間でした。それは嫁ぐ家が侯爵家だったからです。
ディーンが相手でも条件は同じなのですから、今回何故聖殿の間を使うのか理由が分かりません。
「栄誉など、愛する姪が嫁ぐのだから伯父からのささやかな贈り物だ。ダニエラは堅苦しく陛下等と呼ぶが余は昔の様に伯父様と呼ばれたほうが嬉しいぞ。ニールを見習いなさい」
「公爵家を出る立場で、伯父様とお呼び出来るのは幸いに存じます。でもよろしいのでしょうか。伯父様のご厚意とはいえ、侯爵家の婚姻に聖殿の間など」
「良い。ディーン・ネルツは魔法師団にいる間、貴重な魔法陣をいくつも発明し国に多大なる貢献をしたから、これはその褒美でもある。発明した魔法陣の中でも特に転移の魔法陣は素晴らしい。魔石を大量に使うのが難点だが、それもゆくゆくは改良されるだろう。侯爵家を継ぐ為に魔法師団を辞めるのは惜しいが、ネルツ侯爵が病を得たのであれば仕方がないな」
お義父様が病を。
新たな情報に目眩がしそうです。
それにしても、ディーンが陛下からこんなに気に入られていると知りませんでした。
「伯父様が彼をご存知とは思いませんでした」
ディーンはピーターが亡くなるまで、爵位を継げない平民になるしかない人だった筈です。
友人らしいお兄様はともかく、陛下に存在を知られているとは思いませんでした。
「あぁ、デルロイからニールの親友とも言える者で優秀な男だからダニエラの夫にしたい、と言われて調べてみればなかなかの逸材であった。流石デルロイが見込んだだけの事はある。侯爵夫人の醜聞はあれど、余が許した婚姻であると世に知らしめるのだから安心して嫁ぐがいい」
つまり、お父様の後押しが陛下の暴走を産んだということなのでしょうか。
陛下はどうだ、嬉しいだろう、自分は良い兄だから弟の願いを叶えるのだと言わんばかりの顔でこちらを見ている気がします。
「ありがとうございます伯父様。伯父様から祝福されて嫁げるのですから心強いです。きっとお父様も伯父様の心遣いに歓喜していることでしょう」
とても安心出来ませんが、ディーンとは届けだけで婚姻の儀式は出来ないだろうと考えていましたから、まかさの聖殿の間でそれが出来るのは嬉しいのは確かですから、もやもやする気持ちは飲み込もうと、陛下に向けにっこりと微笑んでお礼を言うしかありませんでした。
※※※※※※※※※
ダニエラ父の根回しは完璧。
陛下の重苦しい愛情は面倒臭いと内心思っていても、使えるものは何でも使うウィンストン公爵家の人々です。
それにしてもこの話、執着愛の人ばかり出て来ますね。
陛下は大袈裟と感じる程に私の体調を気遣い、嘆き悲しんで下さっていますが私はそれを見て引きつるだけです。
デルロイ似、つまり私のお父様に似ていると言われているのですが、私では無くお父様の方に美しいとつける辺り陛下の気持ちがどちらに傾いているか分かります。
「陛下、ご心配をお掛けして申し訳ございません」
引きつった笑顔で私は陛下にそう告げながら、隣に立つお兄様の表情を盗み見しました。
こちらに来てと言われて素直に動くと痛い目を見るのは過去の経験から分かっていますが、どうしたらいいでしょうか。
「知らせを聞いて、デルロイの心痛はいかばかりかと、余は胸が潰れる思いがしたのだぞ」
「伯父上、ダニエラを心配下さり感謝申し上げます。屋敷で数日の間静養させておりましたが、まだ万全ではございません。ダニエラも年頃の娘ですからやつれた顔を伯父上の直ぐ側でお見せするのは辛いでしょう。どうかご容赦頂きたく」
お兄様のこれは、助けに見せかけた私への嫌味なのでしょうか。
年頃の娘、前世の感覚で言えばそうですが、この世界で結婚している女性にそんな扱いはしません。
「そうかそうか。それは余の気遣いが足りなかったな。二人共座りなさい」
陛下から許可を頂き、私達は陛下とテーブルを挟んで向かい合わせにソファーに腰掛けました。
この部屋は陛下がお父様と二人だけのお茶会をする為だけに用意した部屋だと、以前お兄様から聞いたことがあります。
私は初めてこの部屋に招かれましたが、調度品はどう見てもお父様の好みで揃えられています。
陛下はお父様を溺愛されていると、以前お兄様から聞いていましたし、実際にそれを私も見ていますがここまでくると執着の方が強いのではないでしょうか。
「如何したダニエラ」
「こちらには初めて伺ったというのに何だか懐かしい気がして、失礼ながらお父様の部屋によく似ている為かと考えていました」
「デルロイの好みは余が一番理解しておるから、当然の事であろう」
陛下の執着があちこちに見える部屋に呆れていただけですが、暗にお父様の好みだろうと言えば陛下に満足そうな返事を返されてしまい、一番理解とは? と引きつりそうになる頬を無理矢理に笑顔に変えました。
「まあ、陛下に大切に思われるお父様は幸せですわね」
「デルロイをこの世で一番思っているのは余だから、あれが幸福なのは当然の事であろう。だが余はニールとダニエラも等しく思っている。その証に十日後に大神殿の聖殿の間でダニエラの婚姻の儀式を行える様手配した」
今、陛下はなんと仰っていたのでしょう。
婚姻の儀式と聞こえたのは聞き違いでしょうか。
「伯父上、ダニエラは」
「デルロイの愛娘の初めての結婚、まさか儀式も無しに送り出すつもりではないだろうな。ニール」
「初めて?」
珍しくお兄様が戸惑った様な声を上げましたが、私はそれどころではありません。
今、大神殿の聖殿と聞こえたのですから。
「五年の間婚約していたネルツ候爵家の一人息子であるディーン・ネルツに嫁ぐのだから初めてだろう」
「伯父上、ディーンは」
「神聖なる誓いを行った妻に毒を使う様な男、神はそのような非道な行いを許さない。デルロイの心痛はいかばかりか考えるだけではらわたが煮え返る思いだ。ネルツ侯爵夫人の非道な行いも腹立たしい。あの家の子は過去も現在もディーン一人のみ。そうであろうニール」
まさか陛下は、ピーターの存在を系譜から消してしまったのでしょうか。
つまり、私の最初の結婚は無効にされた?
「今素晴らしいドレスを仕立させている。余からの結婚の祝いだ」
「陛下、私にそんな栄誉を頂けるのですか」
声が震えてしまうのを、誤魔化せませんでした。
これは私への思いやりでは無く、陛下のお父様への執着故でしょうかそれとも何か他に思惑があるのでしょうか。
それが分からないのが怖いのです。
大神殿の聖殿の間は、基本的には王族と公爵家の儀式に使用する場所です。
私とピーターの時は、通常上位貴族が婚姻の儀式を行う大神殿の東の間でした。それは嫁ぐ家が侯爵家だったからです。
ディーンが相手でも条件は同じなのですから、今回何故聖殿の間を使うのか理由が分かりません。
「栄誉など、愛する姪が嫁ぐのだから伯父からのささやかな贈り物だ。ダニエラは堅苦しく陛下等と呼ぶが余は昔の様に伯父様と呼ばれたほうが嬉しいぞ。ニールを見習いなさい」
「公爵家を出る立場で、伯父様とお呼び出来るのは幸いに存じます。でもよろしいのでしょうか。伯父様のご厚意とはいえ、侯爵家の婚姻に聖殿の間など」
「良い。ディーン・ネルツは魔法師団にいる間、貴重な魔法陣をいくつも発明し国に多大なる貢献をしたから、これはその褒美でもある。発明した魔法陣の中でも特に転移の魔法陣は素晴らしい。魔石を大量に使うのが難点だが、それもゆくゆくは改良されるだろう。侯爵家を継ぐ為に魔法師団を辞めるのは惜しいが、ネルツ侯爵が病を得たのであれば仕方がないな」
お義父様が病を。
新たな情報に目眩がしそうです。
それにしても、ディーンが陛下からこんなに気に入られていると知りませんでした。
「伯父様が彼をご存知とは思いませんでした」
ディーンはピーターが亡くなるまで、爵位を継げない平民になるしかない人だった筈です。
友人らしいお兄様はともかく、陛下に存在を知られているとは思いませんでした。
「あぁ、デルロイからニールの親友とも言える者で優秀な男だからダニエラの夫にしたい、と言われて調べてみればなかなかの逸材であった。流石デルロイが見込んだだけの事はある。侯爵夫人の醜聞はあれど、余が許した婚姻であると世に知らしめるのだから安心して嫁ぐがいい」
つまり、お父様の後押しが陛下の暴走を産んだということなのでしょうか。
陛下はどうだ、嬉しいだろう、自分は良い兄だから弟の願いを叶えるのだと言わんばかりの顔でこちらを見ている気がします。
「ありがとうございます伯父様。伯父様から祝福されて嫁げるのですから心強いです。きっとお父様も伯父様の心遣いに歓喜していることでしょう」
とても安心出来ませんが、ディーンとは届けだけで婚姻の儀式は出来ないだろうと考えていましたから、まかさの聖殿の間でそれが出来るのは嬉しいのは確かですから、もやもやする気持ちは飲み込もうと、陛下に向けにっこりと微笑んでお礼を言うしかありませんでした。
※※※※※※※※※
ダニエラ父の根回しは完璧。
陛下の重苦しい愛情は面倒臭いと内心思っていても、使えるものは何でも使うウィンストン公爵家の人々です。
それにしてもこの話、執着愛の人ばかり出て来ますね。
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