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番外編
おまけ 愛のかたち1 (蜘蛛視点)
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「……久しぶりにニール様とダンスをしたの。素敵だったわ」
昨夜の事を思い出しているのだろう、ニール様の妻ロマーナ様はうっとりとした顔でダニエラに話している。
昨日は夜会にニール様と出掛けていて帰って来るのも遅かったらしいというのに、寝不足などどこにも無い顔で朝食の席に現れたロマーナ様は、朝食の後もダニエラと共に過ごしている。
今は子供達用の客間でのんびりと朝食後のお茶を頂いているところだ。
ニール様はまだ寝ているらしいのに、ロマーナ様は元気だな。
まあ、主は父上殿と何やら話し中だからもしかするとニール様もそちらにいるのかもしれないが。
「お兄様は昔からダンスが得意でしたものね」
ニール様はなんでも人並み以上に出来る人だから、ダンスもニール様としては特別得意なわけではないのだろうが、あの外見であればただ着飾って立っているだけでも誰もが見惚れるだろうことは蜘蛛にも分かる。
そしてその見惚れる筆頭は主だろうことも分かる。
「ふふふ、ダニエラちゃんが小さい頃ニール様がダンスのお稽古に何度も付き合っていたわね。懐かしいわ」
「ええ、お義姉様もご指導下さいましたね」
ロマーナ様の話にダニエラは、当時を思い出したのかにこにこと嬉しそうに笑っている。
ダニエラが可愛くて仕方がないのは、多分ウィンストン家の者すべてだろうが、ロマーナ様ほどその好意を押し出してくる者はいないというか、他の方々の好意が分かりにくいから、ダニエラはロマーナ様に少し戸惑いつつ相手をしている様に見えていたが、こうして見ると仲は悪くないのかもしれない。
そもそもダニエラは何事にもおおらかだから、相手が好意的に接してくるならそれを拒否しないどころか、好意を向けるのを受入れて許してしまう人間だから、相手はどんどんダニエラと親しくなっていくし際限なく好きになっていくのだろう。
「ダァス? 二ーリュさぁとダァス?」
「あらあら、アデライザは急に言葉が増えたわね。アデライザ可愛いわ。そうよニール様はとても素敵なのよ」
「あまり話さないから心配していたのですけれど、昨日も沢山おしゃべりしていて、ね。くぅちゃん」
「あぁ、今までは一言話すかどうかだったから驚いた」
アデライザはダニエラの膝の上でご機嫌だ。
ロマーナ様はすでにダンスの話はどうでもいいのか、ニール様がどれだけ素敵かアデライザに話している。
「しゅて……二ーリュしゃま!」
ロマーナ様の話が気に入ったのか、アデライザは手を叩きながら声をあげる。
こんなアデライザを見たらジェリンドが大騒ぎするだろうが、生憎今は勉強時間で家庭教師と共に自室にいる。
マチルディーダがそれに付き合い勉強すると言い出したのも驚きだったが、子供の成長というものは急に来るものなのだろうか。
「それでね、ニール様からダニエラちゃんとお揃いでドレスを作っていいとお許しを頂いたから、午後から仕立て屋を呼んでどんなドレスを作るか相談しましょうね」
「ドレス、ですか?」
「ええ、ネルツ家の針子が一人入ったから、ダニエラちゃん考案のドレスも仕立てられる様になったわ」
「そうですか、ドレス」
ダニエラは憂鬱そうに考え込むが、お揃いが嫌なのだろうか。
「私とお揃いは嫌?」
「いいえ、お義姉様とお揃いのものが増えるのは嬉しいですけれど、私は顔立ちがキツイので似合うものが限られてしまいます」
「まあ、この世で一番可愛い私の義妹が何を言うの! もしもあなたに合わないドレスがあるというなら、それは仕立てた者の腕が悪いのよ」
さすがに針子の腕が悪いだけではないだろうが、ダニエラなら大抵のものを着こなせるだろう。
それにしても、ダニエラは自分の顔が好きではないようなのは何故だろう。
魔物の蜘蛛から見てもダニエラは綺麗だぞ。
「針子達は悪くありませんわ。私に自信が無いだけなのですもの」
「ダニエラは綺麗だと蜘蛛は思うぞ。主なら一日中ダニエラの美しさを称えるだろう」
「それはディーンだもの」
「まあ、ダニエラちゃんのことは、千人いれば千人の人が綺麗だと言うはずよ」
そうだな、好みはあるかもしれないが、ロマーナ様の意見は蜘蛛も正しいと思う。
「綺麗かそうでないかではありません。キツイ顔が私にとって問題というか、悪いものの様に思えてしまって」
「誰かに言われたのか?」
「そうなの? ダニエラちゃんを悪く言う人が? そんな者が存在するの?」
ロマーナ様が驚いているが、悪感情を持っていてそれをダニエラに聞こえるように言える人間がいるとは蜘蛛も思えない。
それを知ったら、ニール様達が遠ざけるだろう。
「王妃様と第一王子殿下に幼い頃何度も言われて、……物語で悪役は、大抵意地悪な顔立ちをしていると書かれているから、王妃様にダニエラは物語に出てくる意地悪な令嬢みたいねって」
「そんなことを? 幼い子供に言うなんて」
ふるふるとロマーナ様は怒りで震えている。
「お母様が席を外す僅かな時間に言われて、私が泣きそうになると第一王子殿下が、大声を出すの。そうなると私も涙が堪えられなくて、戻ってきたお母様は王妃様には嫌味を言われながら私を抱き上げて帰るのよ。お母様に申し訳なくて、辛かったわ」
「お義母様からそんな話を聞いたこと無かったわ」
主も知らないのではないだろうか。
「お母様はお忙しい方で、私が幼い頃一緒にいられるのは王宮に向かう時が多かったの。だから王妃様に悲しいことを言われたとは言えなかったの。ずっと忘れていたけれど急に思い出してしまったわ」
「ダニエラちゃんっ! 辛かったのね」
ダニエラがそんな辛い目にあっていたのかと、ロマーナ様だけでなく壁際に控えていたメイナ達も驚いている。
蜘蛛は驚きより怒りのほうが上だ。
「辛くないわ、些細なことよ。ディーンに愛されているもの幸せよ」
王妃め、ダニエラに毒を盛るだけではなく言葉でも傷付けていたとは。
「もおっ。幸せなのは良いことだけど。いいこと? ダニエラちゃんは物語に出てくる悪者でも意地悪な令嬢でもないのよ。あなたが物語に出てくるなら、幸せな皆に愛される主人公これしかないわ。ダニエラちゃん!」
ロマーナ様は自信満々に言い切った後、メイナ達に振り返り「そう思うわよね!」と声を上げた。
「そうですよ奥様!」
「奥様が悪役なら善人なんて、この世に存在しません!」
「その通りです!」
「キツイなんてとんでもないことです。奥様は誰もが見惚れる程お綺麗なのです!」
次々出てくるメイナ達の励ましに、ダニエラはきょとんとした後で「そんなに言われたら恥ずかしいわ」と照れたのだった。
※※※※※※※※※※
ダニエラ、王妃に悪人顔と虐められたトラウマがありますが、自分は乙女ゲームの悪役令嬢の母親ポジの顔だから王妃に意地悪なことをいわれてたんだろうなと考えてます。
昨夜の事を思い出しているのだろう、ニール様の妻ロマーナ様はうっとりとした顔でダニエラに話している。
昨日は夜会にニール様と出掛けていて帰って来るのも遅かったらしいというのに、寝不足などどこにも無い顔で朝食の席に現れたロマーナ様は、朝食の後もダニエラと共に過ごしている。
今は子供達用の客間でのんびりと朝食後のお茶を頂いているところだ。
ニール様はまだ寝ているらしいのに、ロマーナ様は元気だな。
まあ、主は父上殿と何やら話し中だからもしかするとニール様もそちらにいるのかもしれないが。
「お兄様は昔からダンスが得意でしたものね」
ニール様はなんでも人並み以上に出来る人だから、ダンスもニール様としては特別得意なわけではないのだろうが、あの外見であればただ着飾って立っているだけでも誰もが見惚れるだろうことは蜘蛛にも分かる。
そしてその見惚れる筆頭は主だろうことも分かる。
「ふふふ、ダニエラちゃんが小さい頃ニール様がダンスのお稽古に何度も付き合っていたわね。懐かしいわ」
「ええ、お義姉様もご指導下さいましたね」
ロマーナ様の話にダニエラは、当時を思い出したのかにこにこと嬉しそうに笑っている。
ダニエラが可愛くて仕方がないのは、多分ウィンストン家の者すべてだろうが、ロマーナ様ほどその好意を押し出してくる者はいないというか、他の方々の好意が分かりにくいから、ダニエラはロマーナ様に少し戸惑いつつ相手をしている様に見えていたが、こうして見ると仲は悪くないのかもしれない。
そもそもダニエラは何事にもおおらかだから、相手が好意的に接してくるならそれを拒否しないどころか、好意を向けるのを受入れて許してしまう人間だから、相手はどんどんダニエラと親しくなっていくし際限なく好きになっていくのだろう。
「ダァス? 二ーリュさぁとダァス?」
「あらあら、アデライザは急に言葉が増えたわね。アデライザ可愛いわ。そうよニール様はとても素敵なのよ」
「あまり話さないから心配していたのですけれど、昨日も沢山おしゃべりしていて、ね。くぅちゃん」
「あぁ、今までは一言話すかどうかだったから驚いた」
アデライザはダニエラの膝の上でご機嫌だ。
ロマーナ様はすでにダンスの話はどうでもいいのか、ニール様がどれだけ素敵かアデライザに話している。
「しゅて……二ーリュしゃま!」
ロマーナ様の話が気に入ったのか、アデライザは手を叩きながら声をあげる。
こんなアデライザを見たらジェリンドが大騒ぎするだろうが、生憎今は勉強時間で家庭教師と共に自室にいる。
マチルディーダがそれに付き合い勉強すると言い出したのも驚きだったが、子供の成長というものは急に来るものなのだろうか。
「それでね、ニール様からダニエラちゃんとお揃いでドレスを作っていいとお許しを頂いたから、午後から仕立て屋を呼んでどんなドレスを作るか相談しましょうね」
「ドレス、ですか?」
「ええ、ネルツ家の針子が一人入ったから、ダニエラちゃん考案のドレスも仕立てられる様になったわ」
「そうですか、ドレス」
ダニエラは憂鬱そうに考え込むが、お揃いが嫌なのだろうか。
「私とお揃いは嫌?」
「いいえ、お義姉様とお揃いのものが増えるのは嬉しいですけれど、私は顔立ちがキツイので似合うものが限られてしまいます」
「まあ、この世で一番可愛い私の義妹が何を言うの! もしもあなたに合わないドレスがあるというなら、それは仕立てた者の腕が悪いのよ」
さすがに針子の腕が悪いだけではないだろうが、ダニエラなら大抵のものを着こなせるだろう。
それにしても、ダニエラは自分の顔が好きではないようなのは何故だろう。
魔物の蜘蛛から見てもダニエラは綺麗だぞ。
「針子達は悪くありませんわ。私に自信が無いだけなのですもの」
「ダニエラは綺麗だと蜘蛛は思うぞ。主なら一日中ダニエラの美しさを称えるだろう」
「それはディーンだもの」
「まあ、ダニエラちゃんのことは、千人いれば千人の人が綺麗だと言うはずよ」
そうだな、好みはあるかもしれないが、ロマーナ様の意見は蜘蛛も正しいと思う。
「綺麗かそうでないかではありません。キツイ顔が私にとって問題というか、悪いものの様に思えてしまって」
「誰かに言われたのか?」
「そうなの? ダニエラちゃんを悪く言う人が? そんな者が存在するの?」
ロマーナ様が驚いているが、悪感情を持っていてそれをダニエラに聞こえるように言える人間がいるとは蜘蛛も思えない。
それを知ったら、ニール様達が遠ざけるだろう。
「王妃様と第一王子殿下に幼い頃何度も言われて、……物語で悪役は、大抵意地悪な顔立ちをしていると書かれているから、王妃様にダニエラは物語に出てくる意地悪な令嬢みたいねって」
「そんなことを? 幼い子供に言うなんて」
ふるふるとロマーナ様は怒りで震えている。
「お母様が席を外す僅かな時間に言われて、私が泣きそうになると第一王子殿下が、大声を出すの。そうなると私も涙が堪えられなくて、戻ってきたお母様は王妃様には嫌味を言われながら私を抱き上げて帰るのよ。お母様に申し訳なくて、辛かったわ」
「お義母様からそんな話を聞いたこと無かったわ」
主も知らないのではないだろうか。
「お母様はお忙しい方で、私が幼い頃一緒にいられるのは王宮に向かう時が多かったの。だから王妃様に悲しいことを言われたとは言えなかったの。ずっと忘れていたけれど急に思い出してしまったわ」
「ダニエラちゃんっ! 辛かったのね」
ダニエラがそんな辛い目にあっていたのかと、ロマーナ様だけでなく壁際に控えていたメイナ達も驚いている。
蜘蛛は驚きより怒りのほうが上だ。
「辛くないわ、些細なことよ。ディーンに愛されているもの幸せよ」
王妃め、ダニエラに毒を盛るだけではなく言葉でも傷付けていたとは。
「もおっ。幸せなのは良いことだけど。いいこと? ダニエラちゃんは物語に出てくる悪者でも意地悪な令嬢でもないのよ。あなたが物語に出てくるなら、幸せな皆に愛される主人公これしかないわ。ダニエラちゃん!」
ロマーナ様は自信満々に言い切った後、メイナ達に振り返り「そう思うわよね!」と声を上げた。
「そうですよ奥様!」
「奥様が悪役なら善人なんて、この世に存在しません!」
「その通りです!」
「キツイなんてとんでもないことです。奥様は誰もが見惚れる程お綺麗なのです!」
次々出てくるメイナ達の励ましに、ダニエラはきょとんとした後で「そんなに言われたら恥ずかしいわ」と照れたのだった。
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ダニエラ、王妃に悪人顔と虐められたトラウマがありますが、自分は乙女ゲームの悪役令嬢の母親ポジの顔だから王妃に意地悪なことをいわれてたんだろうなと考えてます。
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