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番外編
おまけ 兄の寵愛弟の思惑8(その他視点)
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「なんて麗しい」
壇上に立ち、新入生代表挨拶をしている男性を僕は熱に浮かされたような気持ちで見つめていた。
僕も一応この学校の新入生だけど、壇上に立たれている方とは天と地程に立場が違う。
いや、あの方が天なら僕なんて地どころか泥水以下だと思う。噂では聞いていたけれど、あんなに綺麗で凛々しくて麗しき人が本当に存在しているなんて信じられない。
あの方が、第二王子殿下、デルロイ様なのか。
式の間椅子に座っていた僕達は、第二王子殿下が壇上に上がるなり誰からの指示が無くとも立ち上がり、最敬礼した。校長の挨拶ですら座ったまま聞いていたのに、王家の方だからではなく、尊いその方への敬意で自然に体が動いたのだ。
「お声だけでも奇跡の様だな。神の園に流れる歌声とはきっと殿下のお声を言うのだろう」
「本当に同じ人間なんだろうか、なんていう美しさだ」
「いや、あの方はきっと神の化身だ」
ヒソヒソと聞こえてくる声はすべて第二王子殿下への賛辞だった。僕の周囲の人達も、僕と同じ様に本物のあの方を初めて見たのだろう。
皆が見とれ、見惚れながら、その声に聞き入っていた。
僕達は今伝説の魅了魔法に掛かってしまったのではないだろうか、それ程講堂内にいる者達は壇上のただ一人だけを見つめていたのだ。
「……最後に、私はこの学び舎で皆と共に学べることを幸せだと考えている。先輩方を良き手本とし、新入生の皆と共に切磋琢磨し成長していきたいと思う。皆も私と共に己を高めていこう」
新入生の皆と共に、そう言いながら微笑むそのお顔は、まるで神殿に飾られたシード神の像の様に神々しい。
その微笑みを見ているだけで、僕は心の底から第二王子殿下の虜になってしまった。
この国の貴族家に生まれた者として、王家に忠誠を誓っているが、僕は第二王子殿下の助けになれるような者になりたいと思ってしまった。
「私達は第二王子殿下と同じ場所で学べるんだな」
「こんな栄誉ないぞ、私達は下級組だが、それでも同じ学年だ。同じく今日入学した」
「第二王子殿下は、新入生の皆と共にと仰ったな」
「己を高める。第二王子殿下と共に」
ジンと胸の奥が熱くなる。
私はなんて素晴らしい年に入学出来たのだろう。
「私は、誓います! 貴族としての誇りを忘れず、王家に忠誠を誓い、国のため王家の為自分自身を高めます!」
「私も誓う!」
「私も誓います!」
「ぼ、僕も誓います! 精一杯学び、この国の力となれる様に、自分を高めます!」
周囲の声に負けないように、いつの間にか声を上げていた。
「そうか、あなた達の誓い、このデルロイの胸に確かに届いた。皆も私と共に学んでいこう!」
次々に上がる誓いの声に、一瞬驚いた様に見えた第二王子殿下は、そう言った後破顔した。
「私今儚くなっても後悔はないわ」
「あんな笑顔を私達に向けて下さるなんて」
令嬢達の声が震えているのも当然だ。
あの笑顔は、あまりにも素晴らしすぎた。
第二王子殿下の神々しい笑顔に、僕は腰が砕けてしまったかの様に力が入らなくなりへなりと椅子に座り込んだ。
その僅かな時間で第二王子殿下は壇を下り、元の場所に戻ってしまった。
「あの笑顔を見られたのは、生涯の宝だ」
まだ式は終わっていないというのに、すっかり惚けてしまった僕が呟くと、隣に座っていた男性が「本当に」と同意を示した。
「第二王子殿下は神の化身なのかもしれないな」
「そう思うか、僕も同じく思っていた」
何ていうかあの方は神々しくて、王家の方を間近(といってもここから壇上はかなり距離があるけれど)で見るのは初めてだけど、陛下より王太子殿下より、第二王子殿下は別格なんじゃないかと思う。
だってあれ以上の方が存在するとは思えない。
「勉強苦手だけれど、これからは睡眠時間を削ってでも勉強して上級の王宮役人を目指す」
「僕ははしがない子爵家の次男だけど、成績が良ければ上級役人になれるのか?」
「そう聞いている。それにここだけの話、第二王子殿下は臣籍降下するらしい。同学年で優秀なら殿下の目に留まり領地の役人になれる可能性だって」
コソコソと話す声に僕の心は決まった。
家は子爵家としては裕福でも、所詮僕は次男だ。
勉強が得意だから親は学校に入れてくれたが、あまり明るい未来は無い。良い婿入り先が無ければ、王宮役人の末端にでも潜り込めればいいかと考えていたけれど、上級役人になれたら第二王子殿下の配下になれる可能性があるのか!!
「僕は勉強だけは得意だ。三年間目一杯努力して第二王子殿下のお役に立てる人間になる」
僕の唯一の得意なものが勉強だ。
のほほんとした兄より、僕のほうが余程領地経営に向いていると周囲から言われる程には優秀なつもりだ。
「よし、一緒に頑張ろうぜ」
「うん、よろしくな」
田舎の子爵家の出で仲良い人も皆無で不安しか無かったというのに、いきなり友達と目標が出来てしまった。
この誓いが後にウィンストン家の会計係に繋がるなんて、この時の僕は思ってもいなかったんだ。
※※※※※※※※※※※
魅了魔法はありませんが、十五歳のデルロイ君は天使ですか? な見た目をしています。
将来ウィンストン家の会計になるモブ君視点でした。
デルロイ君は無意識に信者を増やす人です。
壇上に立ち、新入生代表挨拶をしている男性を僕は熱に浮かされたような気持ちで見つめていた。
僕も一応この学校の新入生だけど、壇上に立たれている方とは天と地程に立場が違う。
いや、あの方が天なら僕なんて地どころか泥水以下だと思う。噂では聞いていたけれど、あんなに綺麗で凛々しくて麗しき人が本当に存在しているなんて信じられない。
あの方が、第二王子殿下、デルロイ様なのか。
式の間椅子に座っていた僕達は、第二王子殿下が壇上に上がるなり誰からの指示が無くとも立ち上がり、最敬礼した。校長の挨拶ですら座ったまま聞いていたのに、王家の方だからではなく、尊いその方への敬意で自然に体が動いたのだ。
「お声だけでも奇跡の様だな。神の園に流れる歌声とはきっと殿下のお声を言うのだろう」
「本当に同じ人間なんだろうか、なんていう美しさだ」
「いや、あの方はきっと神の化身だ」
ヒソヒソと聞こえてくる声はすべて第二王子殿下への賛辞だった。僕の周囲の人達も、僕と同じ様に本物のあの方を初めて見たのだろう。
皆が見とれ、見惚れながら、その声に聞き入っていた。
僕達は今伝説の魅了魔法に掛かってしまったのではないだろうか、それ程講堂内にいる者達は壇上のただ一人だけを見つめていたのだ。
「……最後に、私はこの学び舎で皆と共に学べることを幸せだと考えている。先輩方を良き手本とし、新入生の皆と共に切磋琢磨し成長していきたいと思う。皆も私と共に己を高めていこう」
新入生の皆と共に、そう言いながら微笑むそのお顔は、まるで神殿に飾られたシード神の像の様に神々しい。
その微笑みを見ているだけで、僕は心の底から第二王子殿下の虜になってしまった。
この国の貴族家に生まれた者として、王家に忠誠を誓っているが、僕は第二王子殿下の助けになれるような者になりたいと思ってしまった。
「私達は第二王子殿下と同じ場所で学べるんだな」
「こんな栄誉ないぞ、私達は下級組だが、それでも同じ学年だ。同じく今日入学した」
「第二王子殿下は、新入生の皆と共にと仰ったな」
「己を高める。第二王子殿下と共に」
ジンと胸の奥が熱くなる。
私はなんて素晴らしい年に入学出来たのだろう。
「私は、誓います! 貴族としての誇りを忘れず、王家に忠誠を誓い、国のため王家の為自分自身を高めます!」
「私も誓う!」
「私も誓います!」
「ぼ、僕も誓います! 精一杯学び、この国の力となれる様に、自分を高めます!」
周囲の声に負けないように、いつの間にか声を上げていた。
「そうか、あなた達の誓い、このデルロイの胸に確かに届いた。皆も私と共に学んでいこう!」
次々に上がる誓いの声に、一瞬驚いた様に見えた第二王子殿下は、そう言った後破顔した。
「私今儚くなっても後悔はないわ」
「あんな笑顔を私達に向けて下さるなんて」
令嬢達の声が震えているのも当然だ。
あの笑顔は、あまりにも素晴らしすぎた。
第二王子殿下の神々しい笑顔に、僕は腰が砕けてしまったかの様に力が入らなくなりへなりと椅子に座り込んだ。
その僅かな時間で第二王子殿下は壇を下り、元の場所に戻ってしまった。
「あの笑顔を見られたのは、生涯の宝だ」
まだ式は終わっていないというのに、すっかり惚けてしまった僕が呟くと、隣に座っていた男性が「本当に」と同意を示した。
「第二王子殿下は神の化身なのかもしれないな」
「そう思うか、僕も同じく思っていた」
何ていうかあの方は神々しくて、王家の方を間近(といってもここから壇上はかなり距離があるけれど)で見るのは初めてだけど、陛下より王太子殿下より、第二王子殿下は別格なんじゃないかと思う。
だってあれ以上の方が存在するとは思えない。
「勉強苦手だけれど、これからは睡眠時間を削ってでも勉強して上級の王宮役人を目指す」
「僕ははしがない子爵家の次男だけど、成績が良ければ上級役人になれるのか?」
「そう聞いている。それにここだけの話、第二王子殿下は臣籍降下するらしい。同学年で優秀なら殿下の目に留まり領地の役人になれる可能性だって」
コソコソと話す声に僕の心は決まった。
家は子爵家としては裕福でも、所詮僕は次男だ。
勉強が得意だから親は学校に入れてくれたが、あまり明るい未来は無い。良い婿入り先が無ければ、王宮役人の末端にでも潜り込めればいいかと考えていたけれど、上級役人になれたら第二王子殿下の配下になれる可能性があるのか!!
「僕は勉強だけは得意だ。三年間目一杯努力して第二王子殿下のお役に立てる人間になる」
僕の唯一の得意なものが勉強だ。
のほほんとした兄より、僕のほうが余程領地経営に向いていると周囲から言われる程には優秀なつもりだ。
「よし、一緒に頑張ろうぜ」
「うん、よろしくな」
田舎の子爵家の出で仲良い人も皆無で不安しか無かったというのに、いきなり友達と目標が出来てしまった。
この誓いが後にウィンストン家の会計係に繋がるなんて、この時の僕は思ってもいなかったんだ。
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魅了魔法はありませんが、十五歳のデルロイ君は天使ですか? な見た目をしています。
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デルロイ君は無意識に信者を増やす人です。
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