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番外編
おまけ 兄の寵愛弟の思惑18 (デルロイ視点)
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「モロウールリ国から参りましたロマーノ・トニエと申します。私は薬師であり錬金術師でもあります。必要な素材を自分で採取するため魔物を狩ることもあり、冒険者としての活動も多く行っております」
冒険者の言葉に鍛錬場に散らばっている生徒達から声が上がる。
魔物を狩り生活の糧を得る冒険者という者達は、私からかなり遠いところで生きているという印象だ。
剣で戦う騎士達、魔法を使い戦う魔法使いは周囲にいても、王宮に勤める彼らと冒険者達は考え方が違うだろう。
「私の剣は魔物を屠る為に鍛錬して来たものです。人様にお見せできるものではございませんし、一般的な剣術とは遠いものになりますが、何かの参考になれば嬉しく思います。どうぞよろしくお願い致します」
緑色の瞳が細められる。
モロウールリ国の学校を卒業後こちらに留学して来たと聞いたから、兄上と年齢は変わらないと思うが、何て言うか落ち着いていて、……幼い頃から私を診てくれている治癒師のじいやの様な印象を受ける。
「それでは、始めようか。君は普段何を使っている?」
「はい、私はこちらの短剣と片手剣を使っております。対人ですと短剣の方ですが、こちらは模範試合には向かないかと存じます」
マーニ先生の問いに、彼は落ち着いた控えめな態度で答える。
彼の手には短剣と片手剣、どちらも使い込まれている様に見える。
「そうか。今回は模擬剣になるが、いいか?」
「はい。得意なのは今申し上げたものですが、両手剣も使えますので、ご指定下さい」
態度は控えめだが、自分の腕に自信があるのだろう。どんな剣でも大丈夫だと言い切った。
「そうか、ではあちらにある剣から好きなものを選んで欲しい」
「畏まりました」
先生が指さしたのは、私達も使っている模擬剣が置かれている棚だ。
彼は足音をたてることなく、でもかなりの速度で棚に近付き剣を選ぶとすぐに戻って来た。
「それでいいんだな、では始めよう。剣のみの攻撃とする、その他の攻撃は今回は無しだ」
「畏まりました」
頷くと彼はすぐに剣をかまえて先生と対峙する。
ほんの僅かな動きで、彼の印象が急変した。
「彼はかなりの腕ですね。まったく隙がない」
「その様だな。先生のあんな顔、兄上でもなかなか引き出せない」
マーニ先生は、私達に指導する時は余裕の顔をしている。
兄上はかなり強くなっているから、剣を交えていると時々先生も真剣に戦っているように見えるが、私とだとまさに大人と子どもの戦いでしかない。
「始めっ!」
審判の役目らしい助手の先生が声を上げたが、二人はすぐには動かなかった。
互いの様子を見て、相手の隙を見ているのだろう。
沢山の生徒に見られている中、互いの目に映っているは目の前にいる相手だけのように見える。
「……見ているこちらの方が緊張しますね」
テレンスがじっと二人を見つめながら呟く声に、私も頷く。
私が先生と対峙する時、エベラルドやテレンスと対峙する時、こんな肌がひりつくような空気にはならない。
鍛錬場にいる者達は誰もが真剣な顔で二人を見ている。
それは生徒だけでなく、マーニ先生以外の先生達も同じだった。
「……どちらが先にしかける?」
じりじりと互いの動きを見ながら動いていく二人から目が離せない。
私の呟きがシンと静まり返った鍛錬場に響き、それに応えるように先生が動いた。
「っ!」
素早い攻撃にロマーノ・トニエが瞬時に反応した。
ガツンと剣がぶつかり合う音が響いた後、すぐさまロマーノ・トニエは先生から距離を取り、次の瞬間先生の胴目掛けて剣を振り切った。
「っと」
僅差で避けた様に私の目には移ったが、避けるのを想定していたかの様に第二、第三の攻撃が繰り出される。
ロマーノ・トニエの動きは、私が今まで習って来た剣術とは違っている様に見える。
なんだろう、剣を交えていると言うよりは的確に急所を狙っている様な、そんな動きに見える。
「……そこまで!」
暫く打ち合いが続いた後、決着がつかぬまま助手の先生が声を上げた。
「はぁ、お前少しは遠慮というものはないのか」
「遠慮は……魔物相手にしていたら自分の命が危うくなりますので」
息を切らせているマーニ先生は、それでも機嫌よくバンバンとロマーノ・トニエの背中を叩いている。
マーニ先生が息を切らせている姿を見たのは初めてかもしれない。
「皆どうだ、良い参考になっただろう。これが魔物と戦う者の剣だ」
ロマーノ・トニエはマーニ先生の声に何の反応も示さず、ただ立っている。
今激しい剣の打ち合いをしていた者にはとても見えない姿に、私は彼となんとかして話が出来ないかと考え始めていた。
冒険者の言葉に鍛錬場に散らばっている生徒達から声が上がる。
魔物を狩り生活の糧を得る冒険者という者達は、私からかなり遠いところで生きているという印象だ。
剣で戦う騎士達、魔法を使い戦う魔法使いは周囲にいても、王宮に勤める彼らと冒険者達は考え方が違うだろう。
「私の剣は魔物を屠る為に鍛錬して来たものです。人様にお見せできるものではございませんし、一般的な剣術とは遠いものになりますが、何かの参考になれば嬉しく思います。どうぞよろしくお願い致します」
緑色の瞳が細められる。
モロウールリ国の学校を卒業後こちらに留学して来たと聞いたから、兄上と年齢は変わらないと思うが、何て言うか落ち着いていて、……幼い頃から私を診てくれている治癒師のじいやの様な印象を受ける。
「それでは、始めようか。君は普段何を使っている?」
「はい、私はこちらの短剣と片手剣を使っております。対人ですと短剣の方ですが、こちらは模範試合には向かないかと存じます」
マーニ先生の問いに、彼は落ち着いた控えめな態度で答える。
彼の手には短剣と片手剣、どちらも使い込まれている様に見える。
「そうか。今回は模擬剣になるが、いいか?」
「はい。得意なのは今申し上げたものですが、両手剣も使えますので、ご指定下さい」
態度は控えめだが、自分の腕に自信があるのだろう。どんな剣でも大丈夫だと言い切った。
「そうか、ではあちらにある剣から好きなものを選んで欲しい」
「畏まりました」
先生が指さしたのは、私達も使っている模擬剣が置かれている棚だ。
彼は足音をたてることなく、でもかなりの速度で棚に近付き剣を選ぶとすぐに戻って来た。
「それでいいんだな、では始めよう。剣のみの攻撃とする、その他の攻撃は今回は無しだ」
「畏まりました」
頷くと彼はすぐに剣をかまえて先生と対峙する。
ほんの僅かな動きで、彼の印象が急変した。
「彼はかなりの腕ですね。まったく隙がない」
「その様だな。先生のあんな顔、兄上でもなかなか引き出せない」
マーニ先生は、私達に指導する時は余裕の顔をしている。
兄上はかなり強くなっているから、剣を交えていると時々先生も真剣に戦っているように見えるが、私とだとまさに大人と子どもの戦いでしかない。
「始めっ!」
審判の役目らしい助手の先生が声を上げたが、二人はすぐには動かなかった。
互いの様子を見て、相手の隙を見ているのだろう。
沢山の生徒に見られている中、互いの目に映っているは目の前にいる相手だけのように見える。
「……見ているこちらの方が緊張しますね」
テレンスがじっと二人を見つめながら呟く声に、私も頷く。
私が先生と対峙する時、エベラルドやテレンスと対峙する時、こんな肌がひりつくような空気にはならない。
鍛錬場にいる者達は誰もが真剣な顔で二人を見ている。
それは生徒だけでなく、マーニ先生以外の先生達も同じだった。
「……どちらが先にしかける?」
じりじりと互いの動きを見ながら動いていく二人から目が離せない。
私の呟きがシンと静まり返った鍛錬場に響き、それに応えるように先生が動いた。
「っ!」
素早い攻撃にロマーノ・トニエが瞬時に反応した。
ガツンと剣がぶつかり合う音が響いた後、すぐさまロマーノ・トニエは先生から距離を取り、次の瞬間先生の胴目掛けて剣を振り切った。
「っと」
僅差で避けた様に私の目には移ったが、避けるのを想定していたかの様に第二、第三の攻撃が繰り出される。
ロマーノ・トニエの動きは、私が今まで習って来た剣術とは違っている様に見える。
なんだろう、剣を交えていると言うよりは的確に急所を狙っている様な、そんな動きに見える。
「……そこまで!」
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息を切らせているマーニ先生は、それでも機嫌よくバンバンとロマーノ・トニエの背中を叩いている。
マーニ先生が息を切らせている姿を見たのは初めてかもしれない。
「皆どうだ、良い参考になっただろう。これが魔物と戦う者の剣だ」
ロマーノ・トニエはマーニ先生の声に何の反応も示さず、ただ立っている。
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