神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです

珂里

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私だけでした

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次の日、朝ご飯を食べてから、私はとーさまと一緒に馬車に乗り込んだ。
かーさまは今日は一緒に行かないみたい。

「とーさま、おしろ、とおい?」

「大丈夫、そんなに時間はかからないよ。」

馬車が町中を走るにつれて、だんだんと町も賑わってくる。
大きな通りには人も馬車も沢山いて、広場らしき所には屋台が並んでいた。

「とーさま!おみせ、いっぱい!」

「そうだね。そういえばアヤナは町に行った事が無かったな。今度行ってみるかい?」

「いきたい!」

とーさまが目を細めながら私の頭を撫でてくれた。

キョロキョロと馬車の中から町を見ていて、私は不思議に思ったことをとーさまに質問した。

「みんな、かみ、くろい、ない?」

町中を歩く人達を見ていると、みんな金髪か銀髪で、私みたいな黒髪の人が全然いない。

「この国の人は皆、金か銀髪なんだよ。」

えー⁉︎ 私1人だけ黒いとか、すごく怪しい人っぽくない?他の人が見たらどうなの?

「……とーさま、へいき?こわい、ない?」

「ん?何がだい?」

「あやな、かみ、くろい。ひとりだけ……。」

それを聞いたとーさまは、大きく目を見開いた。
それから私を膝の上に乗せると、優しく優しく抱き締めてくれた。

「こんなに可愛い子が怖い訳ないよ。アヤナのこの黒い髪も目も、とっても綺麗だ。私は……私達は皆、アヤナが大好きだよ。」

とーさまが私の髪を梳かしながら笑ってくれる。

「とーさま、だいすき!!」

とーさまの娘になれて本当に良かった!

私がとーさまにギュ~ッて抱き付いていたら、いつの間にかお城に着いていたらしい。
馬車の扉を開けてくれた御者さんに温かい目で見られて、ちょっと恥ずかしい。

「とーさま、リスター、いる?」

とーさまに抱っこされながら馬車を降りて聞く。 
リスターはお家がお城に近いらしくて、私達とは別々に行く事になった。先にお城で待っててくれるって。

「アヤナ」

リスターの声がした方を見ると、遠くの方からリスターが駆け寄って来てくれている。
私はリスターに会えて嬉しくなって走ってリスターに抱き付いた。
昨日会ったばかりだけどね!

「リスター!」

私は抱き付いたまま、リスターの胸に顔をグリグリ擦り付ける。
リスターも私の黒髪、変に思ってないよね?

「アヤナ、どうしたの?」

リスターが私の行動を不思議がって、顔を覗き込んできた。

「あやなだけ、かみ、くろい。リスター、こわい、ない?いや、ない?」

「アヤナの髪?誰かに何か言われたの?」

心配してくれるリスターに首をブンブンと横に振るけど、上手く説明出来ない。
そこへとーさまが来て私の代わりに説明してくれた。

とーさまに話しを聞いたリスターは、私の前に膝をついて目線の高さを合わせると、真っ直ぐわたしを見た。

「アヤナ、大好きだよ。僕はアヤナの黒い髪の毛も黒い目も、とても神秘的で綺麗だと思ってる。アヤナに見つめられると、可愛過ぎてドキドキが止まらないんだ。」

真剣な眼差しで私に思ってることを伝えてくれるリスターに、私も嬉しくてドキドキが止まらない。

「ありがと、リスター。わたしも、だいすき!」

また私が抱き付くと、リスターは、よしよしと頭を撫で撫でしてくれた。
顔を真っ赤にしながら照れ臭そうに撫でてくれてるリスターはいつもはカッコいいけど、今はなんだかとても可愛い。



「さあ、行こうか。アヤナ。」

リスターが立ち上がり笑顔で私に手を差し出す。

私もニッコリ笑って大好きなリスターの手を取った。







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