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キングダム・レボリューション 開幕(シックザール学園 第四章)

本が嫌いなんて言わないで

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「スピカ様、ごきげんよう」
「……ごきげんよう、オルコット様」
「今日はどうされたんですか?」
「課題の調べ物です……今、移動を」
「待ってください! そのまま、そのままここにいてください!」
「はあ……?」


 そして、私は素知らぬ顔でスピカ様の隣の席に座り、本を開く。
 隣からの視線が突き刺さるようでとても心苦しいけど、私は目を合わせない。
 スピカ様はそんな態度に諦めたのか呆れたのか、調べ物を再開させていた。


「その課題、去年私もやりました!」
「そうでしたか」
「お、お手伝いしましょうか?」
「……結構ですわ、そのような義理立ては不要です」


 目を合わせる様子もなく、淡々と事務的に答えるスピカ様。
 どうしよう、油断したら泣きそう…
 けど、私も最初スピカ様に対する態度はとてもよそよそしかった。
 他人行儀で、きっとすごく冷たかったと思うのに、スピカ様は温かく穏やかな空気で私を包み込んでくれた。


「分からないことがありましたら、お力添え致しますわ」
「……ありがとうございます、本当に歴史がお好きなんですね?」
「え? あ……そう、ですね……」


 ずっと、好きなことを誰かと分かち合えたら素敵だなと思っていた。
 バルト様以外で、しかも初対面で話があんなにも弾んだのはスピカ様が初めてのことだった。
 人との距離の詰め方、その場の空気の回し方、私にないものをいくつも持ってるスピカ様をとても羨ましく思った。
 そんな遠い存在のスピカ様が私だけを必要とする歴史を語る会は、私に少しの優越感と心地良さを与えてくれた。
 けど、スピカ様は記憶を失うと本は好きではないと、あんなに大好きだった歴史からも距離を置いてしまった。


「以前の私は、そんなに本を読んで歴史を学んでいたのですか?」
「はい、とてもお好きだと……」
「我ながら、自分で自分のことが理解出来ませんわ」


 バルト様と婚約する時に一つの誓いを立てたのです。
 将来、私達のもとに生まれてくれた子どもが娘なら、スピカと名付けようと。
 私達を繋いでくれた恩人のスピカ様のように、誰からも愛されるような子に育つようにと願いを込めて。

 大切な人バルト様を救うことはスピカ・アルドレード様に出会わなければ、きっと叶うことはなかった。
 心に留めて踏み出せもせず、私は勇気を出すこともなく、公開と自責の念に苛まれていたかもしれない。
 こんな弱い私を信じてくれた、大切な人を一緒に救おうと涙まで流してくれた本当に尊いお方。


「しかし、そんなあなたに救われた命は本当にたくさんありますわ」


 あなた以上に偉大で、気高くて、心優しい人を私はこの先も知らないです。
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