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第二章 未知の世界への移住
空気がおいしいの意味を知る
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「それでは、地下扉を開きます」
モーリスが地下扉の開閉をする操作を行う。
俺達は今、空島の地下にいる。
ここは、シエロの切り離し作業を行う時にしか使わない地下扉の前だ。
空島の最下層であるここから、俺達は外に出て行く。
少しして独特の機械音が聞こえたかと思えば、静かに地下扉が開いていく。
外は濃い霧が辺り一面に広がり、先がまったく見えないほどだった。
「みんな、気を付けてね……」
「ご武運を」
俺達を見送りに来た真由、橘さん、ローレンさん、アーデルのメンバー、チーム・ロジャーはそれぞれに何かを俺達に言いたそうだったが、なかなか上手い言葉が見つからないようだった。
そこで、クレアとモーリスが代表して俺達に言葉を告げた。
気を付けてとご武運をか……
外の様子を見に行くだけで、戦いに行くわけじゃないんだけどな……
まあ、この濃い霧で事前情報がまったく得られなかったし、そうもなるか。
「クレア、待っていてくれ! 必ず私は期待に応えて……」
「それじゃ、行っくぞ~!」
「お、おー」
「本当に大丈夫なのか……」
ハロルドのクレアに対する感動するかどうかは怪しいけど、その言葉をゾーイは綺麗に遮った。
そして、緊張感の欠片もないその言葉を合図にして、俺達は濃い霧の中に足を踏み入れたのだった。
「クソッ! 本当に鬱陶しいな、全然見えねえし……」
そう呟いたのは、先頭を歩く望。
霧が濃いから迷子にならないようにロープを全員で持って、望、アラン、ゾーイ、ハロルド、俺、サトルの順番で一列になって進んで行く。
着陸した時に周りに何もないということは確認済みだ。
けど、変に外の様子が見えても不安感を煽るのではないかという意見を誰かが言い出して、ナサニエルの窓は全て締め切ってしまっていた。
そのせいで、一か月も経つのに、この辺りがどうなっているのかをまったく知らなかったんだ。
ドローンを飛ばしたりしたけど、霧が濃すぎて意味はほとんどなかった。
「行けども行けども、霧しかないね」
「時間の無駄だったかもな」
「コラ! アランはまた、すぐにそうやって諦めないの!」
「殴られたいのか、お前は」
「どこに顔があるかわかるなら、どうぞご自由に?」
「後ろで、ごちゃごちゃうるっせえんだよ!!」
アランとゾーイの小競り合いに勝手にハラハラしていると、望がキレた。
アランはまああれだけど、ゾーイは本当に緊張感なさすぎ……
まあ、俺の前を歩くハロルドは真逆に怯えきっているのが霧でよく見えないのにわかるほどだ。
「ハロルド? 大丈夫か?」
「あ、ああああ……! し、心配は、心配無用だ! 昴くん!」
「そっか……」
うん、全然大丈夫じゃないな?
「昴くん、一つ確認したいんだが……」
「うん? どうかした?」
「こんなに闇雲に歩いて、我々は無事にナサニエルに帰れるのだろうか……」
「ハロルド! それなら、毎日お昼にアーデルが赤の煙弾を打ち上げるからって言ってたじゃないか、大丈夫だよ」
「サトルの言う通りだよ。それを目印にしたら、絶対に帰れるって」
「……それもそうだな! あ、あくまで確認だ! 気にしないでくれ!」
空島には、煙弾発射装置というものが必ず搭載されている。
空島がルートを外れたり、通信機能が故障したりといったあらゆる緊急事態に備えて、空島同士が衝突しないための位置情報を伝えるための手段だ。
今回は、俺達に位置情報を知らせるために毎日お昼に赤の煙弾を打ち上げることになった。
これだけ霧が濃いと帰り道がわからなくなるだろうことは必然だしな。
「けど、待って? 何か急に霧が晴れてきてない?」
「え? うわあ……」
ゾーイに言われて周りを見渡すと、少しずつあんなに濃かった霧が晴れていくのがわかった。
そして、霧が晴れるとそこには……
「緑だ……自然ってやつだあ!」
まるで、ゾーイの声に反応したかのように風が通り過ぎて行く。
木が生い茂り、数え切れないほどの緑の葉が揺れる。
タイミングを合わせたわけでもないのに、俺達はつないでいたロープを離すと思い思いに目の前の自然に触れた。
「空と太陽があんなに高いなんて……」
サトルはこれでもかと仰け反り、遥か彼方にある空を見上げる。
「これが土というものか……こんなサラサラと、フワフワとしているのか!」
すっかり興奮気味のハロルドは、手の平で何度も何度も土をすくい上げる。
「匂いが、空島とは別物だな」
木から葉っぱを取り、それを心なしか穏やかな表情で見つめるアラン。
「あれって……海だよね!? 望、早く行くよ! 早く!」
「はあ!? 俺は行かね……おい!」
嫌がる望を引っ張り、ゾーイは目の前にどこまでも広がる海に入って行く。
空島から見下ろすだけだった海、木や土は教科書で見ただけの知識。
俺達は生まれて初めて、人工物なんかじゃない本物の自然に触れた。
「空気がおいしいってやつか……」
モーリスが地下扉の開閉をする操作を行う。
俺達は今、空島の地下にいる。
ここは、シエロの切り離し作業を行う時にしか使わない地下扉の前だ。
空島の最下層であるここから、俺達は外に出て行く。
少しして独特の機械音が聞こえたかと思えば、静かに地下扉が開いていく。
外は濃い霧が辺り一面に広がり、先がまったく見えないほどだった。
「みんな、気を付けてね……」
「ご武運を」
俺達を見送りに来た真由、橘さん、ローレンさん、アーデルのメンバー、チーム・ロジャーはそれぞれに何かを俺達に言いたそうだったが、なかなか上手い言葉が見つからないようだった。
そこで、クレアとモーリスが代表して俺達に言葉を告げた。
気を付けてとご武運をか……
外の様子を見に行くだけで、戦いに行くわけじゃないんだけどな……
まあ、この濃い霧で事前情報がまったく得られなかったし、そうもなるか。
「クレア、待っていてくれ! 必ず私は期待に応えて……」
「それじゃ、行っくぞ~!」
「お、おー」
「本当に大丈夫なのか……」
ハロルドのクレアに対する感動するかどうかは怪しいけど、その言葉をゾーイは綺麗に遮った。
そして、緊張感の欠片もないその言葉を合図にして、俺達は濃い霧の中に足を踏み入れたのだった。
「クソッ! 本当に鬱陶しいな、全然見えねえし……」
そう呟いたのは、先頭を歩く望。
霧が濃いから迷子にならないようにロープを全員で持って、望、アラン、ゾーイ、ハロルド、俺、サトルの順番で一列になって進んで行く。
着陸した時に周りに何もないということは確認済みだ。
けど、変に外の様子が見えても不安感を煽るのではないかという意見を誰かが言い出して、ナサニエルの窓は全て締め切ってしまっていた。
そのせいで、一か月も経つのに、この辺りがどうなっているのかをまったく知らなかったんだ。
ドローンを飛ばしたりしたけど、霧が濃すぎて意味はほとんどなかった。
「行けども行けども、霧しかないね」
「時間の無駄だったかもな」
「コラ! アランはまた、すぐにそうやって諦めないの!」
「殴られたいのか、お前は」
「どこに顔があるかわかるなら、どうぞご自由に?」
「後ろで、ごちゃごちゃうるっせえんだよ!!」
アランとゾーイの小競り合いに勝手にハラハラしていると、望がキレた。
アランはまああれだけど、ゾーイは本当に緊張感なさすぎ……
まあ、俺の前を歩くハロルドは真逆に怯えきっているのが霧でよく見えないのにわかるほどだ。
「ハロルド? 大丈夫か?」
「あ、ああああ……! し、心配は、心配無用だ! 昴くん!」
「そっか……」
うん、全然大丈夫じゃないな?
「昴くん、一つ確認したいんだが……」
「うん? どうかした?」
「こんなに闇雲に歩いて、我々は無事にナサニエルに帰れるのだろうか……」
「ハロルド! それなら、毎日お昼にアーデルが赤の煙弾を打ち上げるからって言ってたじゃないか、大丈夫だよ」
「サトルの言う通りだよ。それを目印にしたら、絶対に帰れるって」
「……それもそうだな! あ、あくまで確認だ! 気にしないでくれ!」
空島には、煙弾発射装置というものが必ず搭載されている。
空島がルートを外れたり、通信機能が故障したりといったあらゆる緊急事態に備えて、空島同士が衝突しないための位置情報を伝えるための手段だ。
今回は、俺達に位置情報を知らせるために毎日お昼に赤の煙弾を打ち上げることになった。
これだけ霧が濃いと帰り道がわからなくなるだろうことは必然だしな。
「けど、待って? 何か急に霧が晴れてきてない?」
「え? うわあ……」
ゾーイに言われて周りを見渡すと、少しずつあんなに濃かった霧が晴れていくのがわかった。
そして、霧が晴れるとそこには……
「緑だ……自然ってやつだあ!」
まるで、ゾーイの声に反応したかのように風が通り過ぎて行く。
木が生い茂り、数え切れないほどの緑の葉が揺れる。
タイミングを合わせたわけでもないのに、俺達はつないでいたロープを離すと思い思いに目の前の自然に触れた。
「空と太陽があんなに高いなんて……」
サトルはこれでもかと仰け反り、遥か彼方にある空を見上げる。
「これが土というものか……こんなサラサラと、フワフワとしているのか!」
すっかり興奮気味のハロルドは、手の平で何度も何度も土をすくい上げる。
「匂いが、空島とは別物だな」
木から葉っぱを取り、それを心なしか穏やかな表情で見つめるアラン。
「あれって……海だよね!? 望、早く行くよ! 早く!」
「はあ!? 俺は行かね……おい!」
嫌がる望を引っ張り、ゾーイは目の前にどこまでも広がる海に入って行く。
空島から見下ろすだけだった海、木や土は教科書で見ただけの知識。
俺達は生まれて初めて、人工物なんかじゃない本物の自然に触れた。
「空気がおいしいってやつか……」
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