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第二章 未知の世界への移住
笑顔の裏は底知れなかった
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「あー、よく寝たわ……」
「あの状況で、爆睡できる神経が理解できねえ」
「おはよう、澤木兄弟」
「まとめてんな!」
「お、おはよう、ゾーイ……ぐっすりだったね?」
「睡眠は、全ての基本だからね!」
朝日が昇り、空が明るくなった頃にゾーイは起きた。
今も、サトル、ハロルド、アランにそれぞれ丁寧に朝の挨拶をしている。
望の言う通り、下に落ちたらひとたまりもないこの状況で、よくあれだけの熟睡ができるよな……
俺なんて、最悪の事態しか思い浮かばなくて、一睡もできなかったのに。
「さてと、無事に朝を迎えられたことに拍手でもしてみる?」
「誰がするか、一人でやっとけ!」
「ゾーイ! 見たところ、あの猛獣達は諦めたみたいだ」
「そうらしいね! よし、下りよう」
「……気を付けながらね?」
「おーい! 聞こえてる? 今から地面に下りるからねー?」
ゾーイに、わかったと反応したのはサトルの声だった。
俺は辺りを警戒しながら、ゆっくりと木を下りていく。
ぐるりと見渡してみるけど、あの猛獣達の影すら見当たらなかった。
そのことに、安堵のため息をつく。
「え、どうした? 揃いも揃って目の下のクマとか、えげつないけど?」
ゾーイの言う通り、俺達は顔を見合わせる。
全員寝不足って顔だし、特にハロルドはぐったりして青ざめている。
意外だったのは、てっきり寝ていると思っていたアランだ。
どこか疲れている様子だし、おそらく寝ていないのだろう。
まあ、そのことを突っ込める人間がこの場にいるわけもなく……
「アラン、あんたも寝てないの? 見かけによらず小心者なんだね」
うん、一人だけいたね、ゾーイが。
自分を睨んでいるアランに、寝不足でますます目付きが悪いよなんて爆弾発言を繰り返している。
本当にもう……俺達がどれだけハラハラしているか教えたいよ……
「あ! そ、それより、ゾーイ!」
「うん?」
「あの猛獣って、何だったんだろな?」
「あー、それか」
サトルが慌てて、アランとゾーイの間に入って話題を変える。
「ライオンだと思うよ、あれは」
「聞いたことがある! 確か、動物の王って呼ばれていたんだよな?」
ゾーイは、少し考えてから答える。
一瞬、何のことだかがわからなかったけど、サトルの動物の王って単語で、全員が思い出したような顔をする。
「けれど、ライオンはアフリカのサバンナに生息していたはずだが……」
「お前曰く、ここは日本なんだろ。なぜ奴らがいる」
そう、ハロルドとアランの言う通りにそれが疑問だった。
アランに関しては敵意むき出しで、苦笑いするしかなかったけど……
「多分、動物園から逃げ出して、ずっと生きながらえていたんじゃない?」
「ドウブツエン?」
「大昔は、お金を払えば、たくさんの動物を安全なところから見れるテーマパークがあったの。それが動物園」
けど、ゾーイは特に考える素振りも見せず、サラッと仮説を答えてみせた。
「お前、やけに歴史に詳しいな?」
望が訝しげに、ゾーイに対して全員が思っているであろう疑問を投げかけた。
「そりゃあ、史学科だしね?」
「は? 誰が?」
「あたしが」
「し、史学科!? ゾーイ、君がか!?」
「そんな驚くこと?」
ゾーイはそう言うけど、みんなの反応は大げさではないと、俺は思う。
史学科とはその名の通り、まだ地上に人類が文明を築いていた時代から、空島に移り住んでからの時代、全ての歴史を学ぶ学科だ。
古い文献や記録の解読、空島に残る地域や遺跡の実地調査を行っている。
研究職の色が濃い史学科は、それぞれ花形の職業になる近道とも言われている他のナサニエルの学科とは、どこか一線を画している。
そんな史学科とゾーイの人物像が上手く結びつかないんだよな……
けど、だからといってゾーイが他の学科に合うかと言われたら、どこもピンとは来ないんだけど。
「史学科に入った理由は何だ」
「え、何でよ?」
「さっさと答えろ」
どうやら、望も腑に落ちないところがあったようでほぼ命令口調で問う。
普段ならその望の乱暴な物言いをフォローするところだけど、俺も気になってゾーイの言葉を待っていた。
ゾーイのことだから、サラッと適当に答えるだろうと思っていたからだ。
けど、激しく後悔することになる。
「は? 答える義理ないだろ」
それまでのゾーイとは、その一瞬で空気が変わったのがわかった。
俺とサトルは一歩下がり、ハロルドは小さく悲鳴を上げ、アランとゾーイに質問をした張本人の望は目を見開いた。
「ほら、そんなことより! さっさとナサニエルに帰るよ!」
次の瞬間には、ゾーイはいつも通りに笑顔を見せる。
けど、あれは見間違えじゃなかった。
あの瞬間、確かにゾーイは俺達のことを拒絶した――
「あの状況で、爆睡できる神経が理解できねえ」
「おはよう、澤木兄弟」
「まとめてんな!」
「お、おはよう、ゾーイ……ぐっすりだったね?」
「睡眠は、全ての基本だからね!」
朝日が昇り、空が明るくなった頃にゾーイは起きた。
今も、サトル、ハロルド、アランにそれぞれ丁寧に朝の挨拶をしている。
望の言う通り、下に落ちたらひとたまりもないこの状況で、よくあれだけの熟睡ができるよな……
俺なんて、最悪の事態しか思い浮かばなくて、一睡もできなかったのに。
「さてと、無事に朝を迎えられたことに拍手でもしてみる?」
「誰がするか、一人でやっとけ!」
「ゾーイ! 見たところ、あの猛獣達は諦めたみたいだ」
「そうらしいね! よし、下りよう」
「……気を付けながらね?」
「おーい! 聞こえてる? 今から地面に下りるからねー?」
ゾーイに、わかったと反応したのはサトルの声だった。
俺は辺りを警戒しながら、ゆっくりと木を下りていく。
ぐるりと見渡してみるけど、あの猛獣達の影すら見当たらなかった。
そのことに、安堵のため息をつく。
「え、どうした? 揃いも揃って目の下のクマとか、えげつないけど?」
ゾーイの言う通り、俺達は顔を見合わせる。
全員寝不足って顔だし、特にハロルドはぐったりして青ざめている。
意外だったのは、てっきり寝ていると思っていたアランだ。
どこか疲れている様子だし、おそらく寝ていないのだろう。
まあ、そのことを突っ込める人間がこの場にいるわけもなく……
「アラン、あんたも寝てないの? 見かけによらず小心者なんだね」
うん、一人だけいたね、ゾーイが。
自分を睨んでいるアランに、寝不足でますます目付きが悪いよなんて爆弾発言を繰り返している。
本当にもう……俺達がどれだけハラハラしているか教えたいよ……
「あ! そ、それより、ゾーイ!」
「うん?」
「あの猛獣って、何だったんだろな?」
「あー、それか」
サトルが慌てて、アランとゾーイの間に入って話題を変える。
「ライオンだと思うよ、あれは」
「聞いたことがある! 確か、動物の王って呼ばれていたんだよな?」
ゾーイは、少し考えてから答える。
一瞬、何のことだかがわからなかったけど、サトルの動物の王って単語で、全員が思い出したような顔をする。
「けれど、ライオンはアフリカのサバンナに生息していたはずだが……」
「お前曰く、ここは日本なんだろ。なぜ奴らがいる」
そう、ハロルドとアランの言う通りにそれが疑問だった。
アランに関しては敵意むき出しで、苦笑いするしかなかったけど……
「多分、動物園から逃げ出して、ずっと生きながらえていたんじゃない?」
「ドウブツエン?」
「大昔は、お金を払えば、たくさんの動物を安全なところから見れるテーマパークがあったの。それが動物園」
けど、ゾーイは特に考える素振りも見せず、サラッと仮説を答えてみせた。
「お前、やけに歴史に詳しいな?」
望が訝しげに、ゾーイに対して全員が思っているであろう疑問を投げかけた。
「そりゃあ、史学科だしね?」
「は? 誰が?」
「あたしが」
「し、史学科!? ゾーイ、君がか!?」
「そんな驚くこと?」
ゾーイはそう言うけど、みんなの反応は大げさではないと、俺は思う。
史学科とはその名の通り、まだ地上に人類が文明を築いていた時代から、空島に移り住んでからの時代、全ての歴史を学ぶ学科だ。
古い文献や記録の解読、空島に残る地域や遺跡の実地調査を行っている。
研究職の色が濃い史学科は、それぞれ花形の職業になる近道とも言われている他のナサニエルの学科とは、どこか一線を画している。
そんな史学科とゾーイの人物像が上手く結びつかないんだよな……
けど、だからといってゾーイが他の学科に合うかと言われたら、どこもピンとは来ないんだけど。
「史学科に入った理由は何だ」
「え、何でよ?」
「さっさと答えろ」
どうやら、望も腑に落ちないところがあったようでほぼ命令口調で問う。
普段ならその望の乱暴な物言いをフォローするところだけど、俺も気になってゾーイの言葉を待っていた。
ゾーイのことだから、サラッと適当に答えるだろうと思っていたからだ。
けど、激しく後悔することになる。
「は? 答える義理ないだろ」
それまでのゾーイとは、その一瞬で空気が変わったのがわかった。
俺とサトルは一歩下がり、ハロルドは小さく悲鳴を上げ、アランとゾーイに質問をした張本人の望は目を見開いた。
「ほら、そんなことより! さっさとナサニエルに帰るよ!」
次の瞬間には、ゾーイはいつも通りに笑顔を見せる。
けど、あれは見間違えじゃなかった。
あの瞬間、確かにゾーイは俺達のことを拒絶した――
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