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第二章 未知の世界への移住
イクスプレェシャンリィス
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「あの猛獣の存在が、揃って頭から抜け落ちてんじゃねえのか? 他にもあんなのがうじゃうじゃと森にはいるかもしれねえだろ。そんな場所に移り住んでみろよ、一日で五、六人は奴らのエサだ」
得意げに、どこか小馬鹿にしたように望は主にゾーイとアランの二人に言い放った。
そのおかげで、空気は最悪だった。
アランの目付きが普段の三倍くらいに鋭くなっているのは、心から気のせいだと思いたいが多分違う。
その証拠に、シン、デルタ、ソニアのチーム・ロジャーは少し下がっている。
ああ、久しぶりに血を見るかな……
俺が勝手に覚悟を決めて、アランが望に何かを言い返そうとした時だ。
「そんなの知ったこっちゃないわよ」
君は何の迷いもなく、そしてどこか不思議そうに、そう答えた。
「は? どういう意味だ」
全員の動きが止まり、視線はゾーイ。
すぐに望がゾーイに問うが、本人は呆れたような顔を見せた。
「まだわからないの? ここは、何かあったら大人が守ってくれる安心で快適な空島じゃないのよ? 全員が平等で、自分の身は自分で守るの。まあ、誰かに頼りたいとか、誰かを支えたいっていうのは止めないけどね? あたしは御免だけど、他人を気遣う暇があるなら、明日の我が身を考える」
「お前、本気か……?」
「嘘つく必要ある? あと、あたしはアイデアを出しただけで、ナサニエルを出ろって強制するつもりはないから。ここにいたきゃいればいいわ」
誰も言葉が見つからず、しばらくコックピットは静まり返っていた。
君はどこまでも正しく、どこまでも残酷な答えを僕達に示していくね。
***
あれからすぐに、全館放送でいつかのように大ホールに生徒達を招集し、現状の発表が包み隠さず行われた。
予想通り、突然目の前に絶望を突き付けられた生徒達は、怒り、悲しみなどの様々な感情で大パニックだった。
中には、気を失って倒れる生徒も後を絶たなかった。
結果、九割の、それ以上のほとんどの生徒がナサニエルに残ることを選んだ。
それどころか、地上に移り住むのは構わないが、ナサニエルから自分の物以外の食料や燃料、その他の物資すら持ち出しを禁止するという意見というか、ストライキのような勢いの強要が、俺達に下された。
「そ、れは、あまりにも理不尽な……」
そんな情けなくて頼りないハロルドの精一杯の反論は愚か、クレアやモーリスをはじめとしたアーデルの説得でさえ聞く耳など誰も持たなかった。
「ふざけんじゃねえよ!! 元はと言えばお前らの管理が甘かったからだろ!!」
「餓死なんかしたら、あんたらのこと呪ってやるから……!!」
「地上でもどこでも行け!! むしろ、ナサニエルから今すぐ出ていけよ!!」
「得体の知れない森なんか行って、命を無駄にするなんて御免よ!!」
何百人の生徒達からのブーイング。
一心に浴びるエリート集団、それを舞台裏から見守る不良軍団。
俺はなぜか、どこか冷え切った頭で前にも似たようなことがあったなと思い出していた。
本当に俺達の気も知らないで、好き勝手言ってくれるよな。
管理が甘いだ、呪ってやるって、口だけならいくらでも言えるだろ。
手の平に爪がくい込むほど握り、喉のここまで言葉が出ようとしていた。
けど、俺が顔を上げた時に、もう既に君は前に立っていた。
「言いたいことはそれだけ? よく自分を棚に上げて他人のせいにする、そんな無責任な言葉がポンポン浮かぶわね」
その声の主がゾーイだと、着陸直後の大ホールの一連の出来事で生徒達の記憶に刷り込まれたあの人間だとわかると、大ホールは一瞬で静まり返った。
「別にいいんじゃん? どうでもね」
それだけを言い残して、こっちに振り向いたゾーイに久しぶりに息を呑んだ。
美人が怒ると怖いというけど、俺はゾーイの無表情ほど怖いものはないだろうと、その時思った。
得意げに、どこか小馬鹿にしたように望は主にゾーイとアランの二人に言い放った。
そのおかげで、空気は最悪だった。
アランの目付きが普段の三倍くらいに鋭くなっているのは、心から気のせいだと思いたいが多分違う。
その証拠に、シン、デルタ、ソニアのチーム・ロジャーは少し下がっている。
ああ、久しぶりに血を見るかな……
俺が勝手に覚悟を決めて、アランが望に何かを言い返そうとした時だ。
「そんなの知ったこっちゃないわよ」
君は何の迷いもなく、そしてどこか不思議そうに、そう答えた。
「は? どういう意味だ」
全員の動きが止まり、視線はゾーイ。
すぐに望がゾーイに問うが、本人は呆れたような顔を見せた。
「まだわからないの? ここは、何かあったら大人が守ってくれる安心で快適な空島じゃないのよ? 全員が平等で、自分の身は自分で守るの。まあ、誰かに頼りたいとか、誰かを支えたいっていうのは止めないけどね? あたしは御免だけど、他人を気遣う暇があるなら、明日の我が身を考える」
「お前、本気か……?」
「嘘つく必要ある? あと、あたしはアイデアを出しただけで、ナサニエルを出ろって強制するつもりはないから。ここにいたきゃいればいいわ」
誰も言葉が見つからず、しばらくコックピットは静まり返っていた。
君はどこまでも正しく、どこまでも残酷な答えを僕達に示していくね。
***
あれからすぐに、全館放送でいつかのように大ホールに生徒達を招集し、現状の発表が包み隠さず行われた。
予想通り、突然目の前に絶望を突き付けられた生徒達は、怒り、悲しみなどの様々な感情で大パニックだった。
中には、気を失って倒れる生徒も後を絶たなかった。
結果、九割の、それ以上のほとんどの生徒がナサニエルに残ることを選んだ。
それどころか、地上に移り住むのは構わないが、ナサニエルから自分の物以外の食料や燃料、その他の物資すら持ち出しを禁止するという意見というか、ストライキのような勢いの強要が、俺達に下された。
「そ、れは、あまりにも理不尽な……」
そんな情けなくて頼りないハロルドの精一杯の反論は愚か、クレアやモーリスをはじめとしたアーデルの説得でさえ聞く耳など誰も持たなかった。
「ふざけんじゃねえよ!! 元はと言えばお前らの管理が甘かったからだろ!!」
「餓死なんかしたら、あんたらのこと呪ってやるから……!!」
「地上でもどこでも行け!! むしろ、ナサニエルから今すぐ出ていけよ!!」
「得体の知れない森なんか行って、命を無駄にするなんて御免よ!!」
何百人の生徒達からのブーイング。
一心に浴びるエリート集団、それを舞台裏から見守る不良軍団。
俺はなぜか、どこか冷え切った頭で前にも似たようなことがあったなと思い出していた。
本当に俺達の気も知らないで、好き勝手言ってくれるよな。
管理が甘いだ、呪ってやるって、口だけならいくらでも言えるだろ。
手の平に爪がくい込むほど握り、喉のここまで言葉が出ようとしていた。
けど、俺が顔を上げた時に、もう既に君は前に立っていた。
「言いたいことはそれだけ? よく自分を棚に上げて他人のせいにする、そんな無責任な言葉がポンポン浮かぶわね」
その声の主がゾーイだと、着陸直後の大ホールの一連の出来事で生徒達の記憶に刷り込まれたあの人間だとわかると、大ホールは一瞬で静まり返った。
「別にいいんじゃん? どうでもね」
それだけを言い残して、こっちに振り向いたゾーイに久しぶりに息を呑んだ。
美人が怒ると怖いというけど、俺はゾーイの無表情ほど怖いものはないだろうと、その時思った。
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