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第三章-⑴ 昴と望と真由
双子の幼なじみな君の本音
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その言葉に俺は、俺と真由は一瞬呼吸をすることを忘れていた。
「ゾーイ、何でわかったの……!?」
「あ、やっぱり?」
真由の驚きを隠せていない問いに、ゾーイはいつも通りに返事をする。
本当に、出会った時から君には驚かされることばかりだ。
ゾーイの言う通り、俺はある時すごく大きな怪我をして、左腕が肩よりも上に挙がらなくなってしまった。
けど、そのことは別に隠していたってわけじゃないし、特に問題なく日常生活を送ることもできる。
何も支障はないし、俺の体に大怪我をしたって事実が残っただけだ。
「了解したわ。それであと一つだけ、聞きたいことがあるんだけど」
「う、うん。何?」
「昴はもういいよ? むしろ、今はここを出てって?」
「え?」
「女同士の話があるの。それ、速やかに男は撤退しましょう~!」
抵抗や言い返す暇なんてなくて、俺はゾーイに医務室を追い出された。
待て待て? 真由と女同士の話?
女同士の話って何だよ!? てか、そんなあの二人って仲良かったか!?
どうにもこうにも落ち着かなくて、俺はダメだと思いながらも医務室の扉にピタリと耳をつけて中の話を聞いていた。
「さてと、急にごめんね?」
「それは大丈夫だけど、ゾーイが私に話って……?」
「ずっと前から思ってたんだけど、昴と望って、昔からあんな感じだったの?」
「え?」
「あれ、何かおかしなこと聞いた? 記憶が正しければ、真由って澤木兄弟とは幼なじみなんだよね?」
この場合、ゾーイは何も間違ったことを言っていないわけだ。
確かに言っていないけど、誰だって真由と同じ反応をするだろ……
俺だって、今声が出そうになったよ。
本当に話題が、いつだって唐突で心の準備とかお構いなしだもんな……
「そ、そう、幼なじみよ。あの二人とは六歳かな? ずっと一緒なの」
「すごい長いね! その頃から、喧嘩三昧だったの?」
「……ううん、逆なのよ。あの頃の昴と望は、すごく仲が良かった」
今、この扉の向こうで真由はどんな顔をしているのだろうか。
悲しそうな声が、俺の耳に響いた。
「それは驚きだわ。まるで、あの二人の仲良しの映像とか、想像できないもん」
「そうだよね……けど、本当なの。あの二人はというか、基本的に望が昴にベッタリで、そんな望を昴が守って……」
「ストップストップ! ていうか、今のとこ巻き戻して!」
「え、巻き戻すって……」
「衝撃の事実が、あまりにサラッと出てきて混乱よ? 望が昴にベッタリ?」
「そうよ?」
「その後の昴が望を守る? それって真由の記憶違いとかじゃなくて?」
「気持ちはわかるけど、それが事実」
何か、ゾーイの反応が想像してた通りのものなんだけど……ねえ?
これを過去の栄光って言うのかな。
「望は中学で一気に背が伸びて、そのまま私も昴も抜かしたんだけど、それまでは本当に小さかったのよ。そのせいでよく近所の上級生にいじめられてた」
「ますます、想像できないけど……」
「そんな望のことを、いつも昴が守ってあげてたの。昴にとって、やっぱり望は宝物なの。ずっと、大切にしてきたのに突然拒絶されて……どうしたらいいのかわからないんだと思う。だから……」
「真由は、昴の肩を持つんだね?」
ゾーイが、珍しく人の話を大人しく黙って聞いていたと思ったら、そんな質問を真由にしていた。
何だよ、何かその質問って……
しばらく、沈黙が続いていたが、その間も俺の心臓はバクバクだった。
「……うちの両親ね、共働きで、ずっと私は一人だったの。そんな時に昴が一緒に両親の帰りを待つよって、遊ぼうって言ってくれて……私は、一人じゃなくなったの」
「へー、昴って、望だけじゃなく、真由のことも守っていたわけだ」
「澤木家って、お父さんを早くに病気で亡くしててね? お母さんが女手一つで二人を育てたんだ」
「そりゃまた、大変そうだわ……」
「私もそう思うわ。けど、そんな環境だったから、あの頃の昴って父親になろうとしてたんだと思うの……多分、私の父親にもなろうとしてたんだと思う」
「父親ね……」
「……うん。昔はよく、望と話してたことがあるんだ……大人になったら強くなって、昴の隣に立ちたいねって……」
懐かしくて、切なくて、それ以上聞くことができなくて……
俺はその場を走って、離れた――
「ゾーイ、何でわかったの……!?」
「あ、やっぱり?」
真由の驚きを隠せていない問いに、ゾーイはいつも通りに返事をする。
本当に、出会った時から君には驚かされることばかりだ。
ゾーイの言う通り、俺はある時すごく大きな怪我をして、左腕が肩よりも上に挙がらなくなってしまった。
けど、そのことは別に隠していたってわけじゃないし、特に問題なく日常生活を送ることもできる。
何も支障はないし、俺の体に大怪我をしたって事実が残っただけだ。
「了解したわ。それであと一つだけ、聞きたいことがあるんだけど」
「う、うん。何?」
「昴はもういいよ? むしろ、今はここを出てって?」
「え?」
「女同士の話があるの。それ、速やかに男は撤退しましょう~!」
抵抗や言い返す暇なんてなくて、俺はゾーイに医務室を追い出された。
待て待て? 真由と女同士の話?
女同士の話って何だよ!? てか、そんなあの二人って仲良かったか!?
どうにもこうにも落ち着かなくて、俺はダメだと思いながらも医務室の扉にピタリと耳をつけて中の話を聞いていた。
「さてと、急にごめんね?」
「それは大丈夫だけど、ゾーイが私に話って……?」
「ずっと前から思ってたんだけど、昴と望って、昔からあんな感じだったの?」
「え?」
「あれ、何かおかしなこと聞いた? 記憶が正しければ、真由って澤木兄弟とは幼なじみなんだよね?」
この場合、ゾーイは何も間違ったことを言っていないわけだ。
確かに言っていないけど、誰だって真由と同じ反応をするだろ……
俺だって、今声が出そうになったよ。
本当に話題が、いつだって唐突で心の準備とかお構いなしだもんな……
「そ、そう、幼なじみよ。あの二人とは六歳かな? ずっと一緒なの」
「すごい長いね! その頃から、喧嘩三昧だったの?」
「……ううん、逆なのよ。あの頃の昴と望は、すごく仲が良かった」
今、この扉の向こうで真由はどんな顔をしているのだろうか。
悲しそうな声が、俺の耳に響いた。
「それは驚きだわ。まるで、あの二人の仲良しの映像とか、想像できないもん」
「そうだよね……けど、本当なの。あの二人はというか、基本的に望が昴にベッタリで、そんな望を昴が守って……」
「ストップストップ! ていうか、今のとこ巻き戻して!」
「え、巻き戻すって……」
「衝撃の事実が、あまりにサラッと出てきて混乱よ? 望が昴にベッタリ?」
「そうよ?」
「その後の昴が望を守る? それって真由の記憶違いとかじゃなくて?」
「気持ちはわかるけど、それが事実」
何か、ゾーイの反応が想像してた通りのものなんだけど……ねえ?
これを過去の栄光って言うのかな。
「望は中学で一気に背が伸びて、そのまま私も昴も抜かしたんだけど、それまでは本当に小さかったのよ。そのせいでよく近所の上級生にいじめられてた」
「ますます、想像できないけど……」
「そんな望のことを、いつも昴が守ってあげてたの。昴にとって、やっぱり望は宝物なの。ずっと、大切にしてきたのに突然拒絶されて……どうしたらいいのかわからないんだと思う。だから……」
「真由は、昴の肩を持つんだね?」
ゾーイが、珍しく人の話を大人しく黙って聞いていたと思ったら、そんな質問を真由にしていた。
何だよ、何かその質問って……
しばらく、沈黙が続いていたが、その間も俺の心臓はバクバクだった。
「……うちの両親ね、共働きで、ずっと私は一人だったの。そんな時に昴が一緒に両親の帰りを待つよって、遊ぼうって言ってくれて……私は、一人じゃなくなったの」
「へー、昴って、望だけじゃなく、真由のことも守っていたわけだ」
「澤木家って、お父さんを早くに病気で亡くしててね? お母さんが女手一つで二人を育てたんだ」
「そりゃまた、大変そうだわ……」
「私もそう思うわ。けど、そんな環境だったから、あの頃の昴って父親になろうとしてたんだと思うの……多分、私の父親にもなろうとしてたんだと思う」
「父親ね……」
「……うん。昔はよく、望と話してたことがあるんだ……大人になったら強くなって、昴の隣に立ちたいねって……」
懐かしくて、切なくて、それ以上聞くことができなくて……
俺はその場を走って、離れた――
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