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第三章-⑴ 昴と望と真由
青くて耳としっぽが長い動物
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「じゃあ、真由? しっかりと二人のこと見張っといてよ?」
「うん、わかったわ!」
「は? お前はどこ行くんだよ!?」
「そんなの関係ないでしょ。まず、何であんたらに付き合って、あたしまでここに張り付いてないといけないのよ」
そう言って、ゾーイは真由に見張りを任せて、さっさと走り去っていった。
ごもっともな意見だけど、本当に終わりが見えないんだよな……
有難いことに水道はある。
地上時代の名残のようで、蛇口をひねれば水は出るようになっている。
けど、空島みたいに食器洗い機なんてあるわけもなく、ヘチマのスポンジと洗剤替わりの米ぬかで、ひたすら洗う。
作れるものなら、洗剤とか、そういう日用品は作った方いいなこれ……
明日、サトルとレオに相談を……この皿洗いが終わればだけど……
「あんた達の喧嘩には、さすがにこの頃呆れてるわよ」
「え? あ、ああ……そっか」
真由と俺のそれぞれ一言で、会話は終了した。
コミュニケーション下手くそかよ……
望は無言で、意地でも喋るかって雰囲気を出してるしな。
思えば、俺達三人だけってのは、本当に久しぶりな気がする。
子どもの頃は毎日三人一緒で、どんな時も俺は二人を……
「動くな」
「は?」
「え、望? 何を……」
「動くなっつってんだろが!」
「説明しろってば! 藪から棒に、お前は何なんだよ!」
「黙れ! 動けば、問答無用でぶっ飛ばしてやるからな!?」
また望が無茶苦茶な難癖をつけたかと思えば、俺達に動くなと怒鳴る。
俺と真由は顔を見合わせ、ため息をつくしかなかった。
そうかと思えば、望は地面に這いつくばって何かを捜しているようだった。
「望、何か捜し物?」
「お前らには関係ねえことだ!」
真由が穏やかに問いかけても、相も変わらず望は噛み付くばかりだ。
「ぼさっと突っ立ってねえで、テメーは皿を洗え!」
「お前が動くなって言ったんだろ?」
「臨機応変って言葉を知らねえのか!」
「あのな……てか、俺と真由も一緒に捜してやるから、正直に言えよ」
「うるせえな! お前らだけには……」
「捜し物って、これ? 望くん?」
俺と望の毎度の言い争いに前触れもなく入ってきたのは、どこかに行くと言ってこの場を一度離れたゾーイだった。
そして、そんなゾーイの手は何かを持っているようで……
「は……それ、お前、どこで……!?」
そして、どうやら、さっきから望が捜していたものだったようだ。
というか、相当動揺してるのか、この事態に望はずっとパクパクと口を開けたり、閉じたり……
こんな望はいつぶり……いや、これが初めてかもしれないぞ?
「さっきよ? 無駄にあんたら二人と肩組んだ時かな? 少しは警戒しないとダメよ? 簡単にスられるよ?」
「テメーな……今日は、もう手加減しねえぞ! それを返せ!」
「わあ、怖いことですわ。自分で取り返してみれば?」
スられるって……それより、スるのがプロ級のゾーイが心配だよ。
そんなことを思っている間に、二人は追いかけっこを始めた。
ゾーイは余裕で、望は何だか死にものぐるいって感じだから、対照的だけど。
それにしても、望があんな必死になるほどのものって……
「昴! 真由! ちゃんとキャッチしてよね~!」
「え?」
「は、はい?」
そう考えていると、遠く離れたところまで走って行ったゾーイが、望のことを大きく引き離して戻って来ながら、そう俺達に叫んだ。
「落としたりしたら、望はブチ切れると思うからさ~!」
「既に、ブチ切れてない?」
「……きっと見えないんじゃないか、ゾーイには」
「準備オッケー? そーれ!」
綺麗な曲線を描いて宙を舞ったその物体は、俺の手にしっかりと落ちる。
「は? 何だこれ?」
それは、多分ぬいぐるみだと思う。
うさぎのような長い耳、体は青く、長く伸びたしっぽ、目は黄色のビー玉で、既に片目はなくなっており、お腹の袋のようなものの中には……毛玉?
見たところすごく年季が入っていて、お世辞にも可愛いとは言えない不格好なぬいぐるみだった。
「これが、望の捜していたもの?」
「……ねえ、昴?」
「真由、どうした?」
「私、このぬいぐるみに見覚えが……」
そんな真由の言葉を待たずして、俺の手から乱暴にその謎の青いぬいぐるみは奪い去られた。
息を切らした望の手によって。
「……ま、すぐ……はあ……!! 今すぐに忘れろ!! それができねえなら、お前らを殺して俺も死ぬ!!」
「人形一つで大げさでしょ」
ゾーイの華麗なツッコミが入る中、望は俺達を、俺をこれでもかと睨む。
「昴、その青いのカンガルーよ」
「カンガルー?」
「余計なこと言うな! 黙れ! 黙らねえと……どおわっ!?」
ゾーイに掴みかかろうとした望だったけど、華麗に避けられ、それどころかゾーイに地面に投げ出されていた。
おでこ痛いぞ、あれは絶対に……
というか、カンガルーって、何か昔にどこかで……?
「あ、あ! そっか、これ!」
「え? 何? 真由、このぬいぐるみのこと知ってるのか?」
真由は急に声を上げたかと思えば、俺と望を見比べて何だか嬉しそうだ。
「いや、あんたが忘れたらぬいぐるみだって可哀想じゃん」
「え、ゾーイ? それは……」
「これを作ったの、昴でしょ?」
「うん、わかったわ!」
「は? お前はどこ行くんだよ!?」
「そんなの関係ないでしょ。まず、何であんたらに付き合って、あたしまでここに張り付いてないといけないのよ」
そう言って、ゾーイは真由に見張りを任せて、さっさと走り去っていった。
ごもっともな意見だけど、本当に終わりが見えないんだよな……
有難いことに水道はある。
地上時代の名残のようで、蛇口をひねれば水は出るようになっている。
けど、空島みたいに食器洗い機なんてあるわけもなく、ヘチマのスポンジと洗剤替わりの米ぬかで、ひたすら洗う。
作れるものなら、洗剤とか、そういう日用品は作った方いいなこれ……
明日、サトルとレオに相談を……この皿洗いが終わればだけど……
「あんた達の喧嘩には、さすがにこの頃呆れてるわよ」
「え? あ、ああ……そっか」
真由と俺のそれぞれ一言で、会話は終了した。
コミュニケーション下手くそかよ……
望は無言で、意地でも喋るかって雰囲気を出してるしな。
思えば、俺達三人だけってのは、本当に久しぶりな気がする。
子どもの頃は毎日三人一緒で、どんな時も俺は二人を……
「動くな」
「は?」
「え、望? 何を……」
「動くなっつってんだろが!」
「説明しろってば! 藪から棒に、お前は何なんだよ!」
「黙れ! 動けば、問答無用でぶっ飛ばしてやるからな!?」
また望が無茶苦茶な難癖をつけたかと思えば、俺達に動くなと怒鳴る。
俺と真由は顔を見合わせ、ため息をつくしかなかった。
そうかと思えば、望は地面に這いつくばって何かを捜しているようだった。
「望、何か捜し物?」
「お前らには関係ねえことだ!」
真由が穏やかに問いかけても、相も変わらず望は噛み付くばかりだ。
「ぼさっと突っ立ってねえで、テメーは皿を洗え!」
「お前が動くなって言ったんだろ?」
「臨機応変って言葉を知らねえのか!」
「あのな……てか、俺と真由も一緒に捜してやるから、正直に言えよ」
「うるせえな! お前らだけには……」
「捜し物って、これ? 望くん?」
俺と望の毎度の言い争いに前触れもなく入ってきたのは、どこかに行くと言ってこの場を一度離れたゾーイだった。
そして、そんなゾーイの手は何かを持っているようで……
「は……それ、お前、どこで……!?」
そして、どうやら、さっきから望が捜していたものだったようだ。
というか、相当動揺してるのか、この事態に望はずっとパクパクと口を開けたり、閉じたり……
こんな望はいつぶり……いや、これが初めてかもしれないぞ?
「さっきよ? 無駄にあんたら二人と肩組んだ時かな? 少しは警戒しないとダメよ? 簡単にスられるよ?」
「テメーな……今日は、もう手加減しねえぞ! それを返せ!」
「わあ、怖いことですわ。自分で取り返してみれば?」
スられるって……それより、スるのがプロ級のゾーイが心配だよ。
そんなことを思っている間に、二人は追いかけっこを始めた。
ゾーイは余裕で、望は何だか死にものぐるいって感じだから、対照的だけど。
それにしても、望があんな必死になるほどのものって……
「昴! 真由! ちゃんとキャッチしてよね~!」
「え?」
「は、はい?」
そう考えていると、遠く離れたところまで走って行ったゾーイが、望のことを大きく引き離して戻って来ながら、そう俺達に叫んだ。
「落としたりしたら、望はブチ切れると思うからさ~!」
「既に、ブチ切れてない?」
「……きっと見えないんじゃないか、ゾーイには」
「準備オッケー? そーれ!」
綺麗な曲線を描いて宙を舞ったその物体は、俺の手にしっかりと落ちる。
「は? 何だこれ?」
それは、多分ぬいぐるみだと思う。
うさぎのような長い耳、体は青く、長く伸びたしっぽ、目は黄色のビー玉で、既に片目はなくなっており、お腹の袋のようなものの中には……毛玉?
見たところすごく年季が入っていて、お世辞にも可愛いとは言えない不格好なぬいぐるみだった。
「これが、望の捜していたもの?」
「……ねえ、昴?」
「真由、どうした?」
「私、このぬいぐるみに見覚えが……」
そんな真由の言葉を待たずして、俺の手から乱暴にその謎の青いぬいぐるみは奪い去られた。
息を切らした望の手によって。
「……ま、すぐ……はあ……!! 今すぐに忘れろ!! それができねえなら、お前らを殺して俺も死ぬ!!」
「人形一つで大げさでしょ」
ゾーイの華麗なツッコミが入る中、望は俺達を、俺をこれでもかと睨む。
「昴、その青いのカンガルーよ」
「カンガルー?」
「余計なこと言うな! 黙れ! 黙らねえと……どおわっ!?」
ゾーイに掴みかかろうとした望だったけど、華麗に避けられ、それどころかゾーイに地面に投げ出されていた。
おでこ痛いぞ、あれは絶対に……
というか、カンガルーって、何か昔にどこかで……?
「あ、あ! そっか、これ!」
「え? 何? 真由、このぬいぐるみのこと知ってるのか?」
真由は急に声を上げたかと思えば、俺と望を見比べて何だか嬉しそうだ。
「いや、あんたが忘れたらぬいぐるみだって可哀想じゃん」
「え、ゾーイ? それは……」
「これを作ったの、昴でしょ?」
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