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第三章-⑴ 昴と望と真由
温泉を掘り当てましょう
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じゃあ、今日は無理矢理にでも答えを俺が、兄ちゃんが出してやるよ。
望は俺の言葉を聞いて、しばらく目を見開いて固まっていたが……
「……どっかの青春ドラマかよ」
望は居心地悪そうにしていて、真由はボロボロ涙を流して、俺は口角が上がるのを抑えられなかった。
俺達は不器用すぎたのかな、こんなに簡単なことだったのにな。
けど、ここに導いてくれたのは……
「さてさて、安い青春ドラマごっこは終わりでよろしいかしら?」
「ゾーイ!?」
「は? お前どこから……!?」
突然手を叩きながら現れたのは、俺がまさに思い浮かんだ人物だった。
「ずっと、あんたらが落ちたりんごの木の下にいたけど? てか、真由ってば号泣じゃんよ、大丈夫?」
「う、うん……グスッ……」
「今はそんなことよりな!?」
「望くん、そんなこととは何よ? 女の子が、しかも君達の幼なじみが隣で大号泣なのよ? これ放っておけるの?」
「本当に、どこまでもよく動いてくれる口を持ってるよな、お前は……!!」
「待て待て! ゾーイと望は、そこでストップだ! 真由は……とりあえず、深呼吸とか……落ち着けるか?」
とりあえず、一秒で一触即発ゾーイと望の間に入りつつ、真由のことを何とか落ち着かせる。
真由が泣き止んだところで、俺達は話を再開する。
「ゾーイ、いつから見てたの?」
「最初からよ?」
俺の質問にゾーイは悪びれることなく答えるから、苦笑いしかないよね。
「平然とお前は盗み見してましたと自己申告か! どういう神経してんだ!」
「望、まあまあ……」
やっぱり、望は突っかかるし、それを真由が宥めていく。
そんな光景すらも、今の俺には何だか眩しかった。
けど、そんな平和な時間は続かず……
「は? あたしだけじゃないわよ? 通行人達のほとんどが、そのまま物陰に隠れて見物してるけど?」
「何て言った!?」
「はあ!?」
「う、嘘でしょ!?」
「見せよっか? おーい! 全員の位置把握してるから、無駄な抵抗は時間の無駄よ~!」
ゾーイの予想外すぎる言葉に、俺達は一斉に悲鳴を上げるように叫んだ。
そして、ゾーイが空高く、そう呼びかけると、出るわ出るわ。
「サトル……お前もいたのか」
「ごめん、昴! ほんの出来心で……」
「菜々美まで……」
「真由、これはその……!!」
ありとあらゆる場所から、サトルや橘さんのナサニエルメンツをはじめ、犬族と猫族まで出て来た。
「これだけ目立つ場所で熱いドラマが繰り広げられてたら、そりゃ見るわよ」
「完全におちょくってるよな!?」
「まあ、これでほんの少しは、あたしのストレスも減るってもんね。じゃあ、明日もよろしく、あたしは寝る」
そんな望の訴えにも、ゾーイは知らぬ存ぜぬの態度を崩さずという……
呆れながらも、俺はまだ何もゾーイに言っていないことに気が付いた。
「ゾーイ、ちょっと待って!」
「え、何? 昴、あたし眠いの」
「ごめん! けど、言わせて? 本当にありがとう!」
「あ、私からも! ありがとう……」
ゾーイを引き止め、慌てて俺はお礼を叫ぶように言った。
真由も続いて涙声でお礼を言った。
「は? あたし、お礼言われること何かしたっけ?」
けど、当の本人はこの状況に本気で不思議そうな顔をしていた。
それが何だか、すごくおかしかった。
「ふふっ、私、今回のことでゾーイのこと大好きになっちゃった!」
「俺は、また印象が変わったよ」
「……そりゃ、どうも?」
真由と顔を見合せ、俺達はゾーイに今の思いをぶつける。
他人に興味がない態度をして、自分が一番って感じの彼女。
本当は、どんな子なのだろうか。
「ねえ、望も何か言いなさいよ!」
「はあ?」
「そうだぞ? お礼は言わないと」
「死んでも言わねえよ!」
「……別に、言わなくていいよ」
まだ望が何もゾーイに言っていないことに気付き、真由と俺は望を説得する。
まあ、答えは予想通り。
どうしたものかと思っていると、ゾーイはそう言ったかと思えば、おもむろにこっちに近付いて来る。
次の瞬間、ゾーイは両手で急に望の顔を掴んで自分の方に向かせた。
「はあ!? おまっ、はな……ちかっ」
急だったからなのか、望の顔は一瞬で真っ赤に染まる。
心無しか手足が震えてる。
今にもくっ付きそうなほど、ゾーイと望の顔の距離は近い。
「言わなくていいからさ、望は温泉を作って!」
「は、はあ!?」
「もう限界なの! 毎日繰り返し薪割りしてお風呂沸かすとかって、時代遅れだし、時間の無駄だと思わない?」
「そ、そんな……こと……」
「本当にお願い! 温泉掘り当てて、作って!」
「わか……わかったから、お前はその手を離せえええええ!!」
***
その後、環境学科の俺の知識で見事温泉を掘り当て、建設学科の望とサトルの技術を中心にして、無事にワンニャン王国に温泉は完成した。
ほとんどの空島には温泉施設がある。
今考えると、これって地上時代の日本の文化だったよな?
どんな歴史の流れだったんだろう。
「うひゃー! 本物の温泉だ! これで薪割りから解放だー!」
「俺に感謝しろよな」
結果的に、ゾーイはとても喜んだ。
出来上がった温泉施設の前で、それは飛び上がって喜んでいる。
そして、兄として片割れとして、望の変化にも俺は最近気が付いた。
「めっちゃ感謝してるよ! あ、記念に一緒に入る?」
「は? はあ!? お、おお……お前……」
「まあ、冗談だけどね」
望のゾーイへの態度は傍から見たら変わらずだけど、気付いたら望はゾーイのことを目で追っている。
その目はすごく優しいものだ。
まあ、本人と目が合うと途端に睨みに変わっちゃうんだけど……
そして、俺と望の無意味な喧嘩は、ほとんどなくなっていた。
けど、一番の進歩は望が俺を……
「昴! 早く行くぞ!」
昴と、昔みたいに名前で呼ぶようになってくれたことだ。
望は俺の言葉を聞いて、しばらく目を見開いて固まっていたが……
「……どっかの青春ドラマかよ」
望は居心地悪そうにしていて、真由はボロボロ涙を流して、俺は口角が上がるのを抑えられなかった。
俺達は不器用すぎたのかな、こんなに簡単なことだったのにな。
けど、ここに導いてくれたのは……
「さてさて、安い青春ドラマごっこは終わりでよろしいかしら?」
「ゾーイ!?」
「は? お前どこから……!?」
突然手を叩きながら現れたのは、俺がまさに思い浮かんだ人物だった。
「ずっと、あんたらが落ちたりんごの木の下にいたけど? てか、真由ってば号泣じゃんよ、大丈夫?」
「う、うん……グスッ……」
「今はそんなことよりな!?」
「望くん、そんなこととは何よ? 女の子が、しかも君達の幼なじみが隣で大号泣なのよ? これ放っておけるの?」
「本当に、どこまでもよく動いてくれる口を持ってるよな、お前は……!!」
「待て待て! ゾーイと望は、そこでストップだ! 真由は……とりあえず、深呼吸とか……落ち着けるか?」
とりあえず、一秒で一触即発ゾーイと望の間に入りつつ、真由のことを何とか落ち着かせる。
真由が泣き止んだところで、俺達は話を再開する。
「ゾーイ、いつから見てたの?」
「最初からよ?」
俺の質問にゾーイは悪びれることなく答えるから、苦笑いしかないよね。
「平然とお前は盗み見してましたと自己申告か! どういう神経してんだ!」
「望、まあまあ……」
やっぱり、望は突っかかるし、それを真由が宥めていく。
そんな光景すらも、今の俺には何だか眩しかった。
けど、そんな平和な時間は続かず……
「は? あたしだけじゃないわよ? 通行人達のほとんどが、そのまま物陰に隠れて見物してるけど?」
「何て言った!?」
「はあ!?」
「う、嘘でしょ!?」
「見せよっか? おーい! 全員の位置把握してるから、無駄な抵抗は時間の無駄よ~!」
ゾーイの予想外すぎる言葉に、俺達は一斉に悲鳴を上げるように叫んだ。
そして、ゾーイが空高く、そう呼びかけると、出るわ出るわ。
「サトル……お前もいたのか」
「ごめん、昴! ほんの出来心で……」
「菜々美まで……」
「真由、これはその……!!」
ありとあらゆる場所から、サトルや橘さんのナサニエルメンツをはじめ、犬族と猫族まで出て来た。
「これだけ目立つ場所で熱いドラマが繰り広げられてたら、そりゃ見るわよ」
「完全におちょくってるよな!?」
「まあ、これでほんの少しは、あたしのストレスも減るってもんね。じゃあ、明日もよろしく、あたしは寝る」
そんな望の訴えにも、ゾーイは知らぬ存ぜぬの態度を崩さずという……
呆れながらも、俺はまだ何もゾーイに言っていないことに気が付いた。
「ゾーイ、ちょっと待って!」
「え、何? 昴、あたし眠いの」
「ごめん! けど、言わせて? 本当にありがとう!」
「あ、私からも! ありがとう……」
ゾーイを引き止め、慌てて俺はお礼を叫ぶように言った。
真由も続いて涙声でお礼を言った。
「は? あたし、お礼言われること何かしたっけ?」
けど、当の本人はこの状況に本気で不思議そうな顔をしていた。
それが何だか、すごくおかしかった。
「ふふっ、私、今回のことでゾーイのこと大好きになっちゃった!」
「俺は、また印象が変わったよ」
「……そりゃ、どうも?」
真由と顔を見合せ、俺達はゾーイに今の思いをぶつける。
他人に興味がない態度をして、自分が一番って感じの彼女。
本当は、どんな子なのだろうか。
「ねえ、望も何か言いなさいよ!」
「はあ?」
「そうだぞ? お礼は言わないと」
「死んでも言わねえよ!」
「……別に、言わなくていいよ」
まだ望が何もゾーイに言っていないことに気付き、真由と俺は望を説得する。
まあ、答えは予想通り。
どうしたものかと思っていると、ゾーイはそう言ったかと思えば、おもむろにこっちに近付いて来る。
次の瞬間、ゾーイは両手で急に望の顔を掴んで自分の方に向かせた。
「はあ!? おまっ、はな……ちかっ」
急だったからなのか、望の顔は一瞬で真っ赤に染まる。
心無しか手足が震えてる。
今にもくっ付きそうなほど、ゾーイと望の顔の距離は近い。
「言わなくていいからさ、望は温泉を作って!」
「は、はあ!?」
「もう限界なの! 毎日繰り返し薪割りしてお風呂沸かすとかって、時代遅れだし、時間の無駄だと思わない?」
「そ、そんな……こと……」
「本当にお願い! 温泉掘り当てて、作って!」
「わか……わかったから、お前はその手を離せえええええ!!」
***
その後、環境学科の俺の知識で見事温泉を掘り当て、建設学科の望とサトルの技術を中心にして、無事にワンニャン王国に温泉は完成した。
ほとんどの空島には温泉施設がある。
今考えると、これって地上時代の日本の文化だったよな?
どんな歴史の流れだったんだろう。
「うひゃー! 本物の温泉だ! これで薪割りから解放だー!」
「俺に感謝しろよな」
結果的に、ゾーイはとても喜んだ。
出来上がった温泉施設の前で、それは飛び上がって喜んでいる。
そして、兄として片割れとして、望の変化にも俺は最近気が付いた。
「めっちゃ感謝してるよ! あ、記念に一緒に入る?」
「は? はあ!? お、おお……お前……」
「まあ、冗談だけどね」
望のゾーイへの態度は傍から見たら変わらずだけど、気付いたら望はゾーイのことを目で追っている。
その目はすごく優しいものだ。
まあ、本人と目が合うと途端に睨みに変わっちゃうんだけど……
そして、俺と望の無意味な喧嘩は、ほとんどなくなっていた。
けど、一番の進歩は望が俺を……
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昴と、昔みたいに名前で呼ぶようになってくれたことだ。
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