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第三章-⑵ デルタとソニア
幽霊なんていてたまるか
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「レオ、本当にゾーイが無理を言ってごめんな?」
「全然大丈夫。何かは知らないけど、結構深刻な話をする感じなんだろ?」
「うん、まあな……」
「それなら、やっぱり、みんながいる教会よりはここの方がいいよ」
「本当に助かる! もしかしたら、結構長引くかもなんだけど……」
「気にしないでくれ、今日はコタロウの家に泊まるから。じゃあ、おやすみ」
「ああ、おやすみ」
レオは手だけでなく、しっぽまでも振って俺におやすみと言ってくれた。
そんなレオの背中を見送り、俺は家の中に入る。
無理を言って貸してくれたレオの家に今は、俺、ゾーイ、レイモンド兄妹の計四人がいる。
昨日ゾーイが言ったように、昨日のことをはじめとしたその他もろもろのことを話し合うこの場は、いつも通りのゾーイの有無を言わさぬ態度から設けられることとなった。
このメンバーの中に俺がいるのは、不本意にもゾーイについて行ってデルタの秘密を知ってしまったことから。
ゾーイに強制参加だからと、あの目で言われたら断れるわけもなく……
しかも、事が事だから他言無用で。
ただでさえ、ソニアの引っ掻き傷が顔中にあるってのに、夜は遅くなるから先に寝てろなんて言おうものなら、もれなく全員に理由を詰められた。
特に真由、サトル、望の三人は本当に言いくるめるのが大変だったし、きっと今も納得はしていないだろう。
昨日の自分に言ってやりたいよ……
頼むから、気になるだろうが、絶対にゾーイについて行くなと……
「何を突っ立ってんの? 座れば?」
そして、そもそもの元凶であるゾーイは早くも我が物顔で、俺達に座れと言うマイペースっぷりを発揮する。
ここはレオの家のはずだけどな……
まあ、そんな言葉がゾーイに通じるわけもないので、俺は大人しくゾーイの隣のイスに座る。
レイモンド兄妹も諦めたようで仕方なく、テーブルを挟んだ俺達の向かい側に並んで座る。
「さてと、それじゃ、回りくどいのは面倒だから、さっそく本題に入るわね」
「言っとくけど、話すってことを了承をした覚えはないけど?」
ゾーイの言葉に、デルタは腕を組んで不気味な笑みを浮かべて挑発する。
臨戦態勢バッチリという感じで……
本当に見た目は女だけど、声とかは完全に男だよな……本当に慣れないよ。
「あらま、そんなこと言っちゃって大丈夫なの? じゃあ、今から実はデルタは男でしたって言いふらして来るけど?」
「は?」
「ま、待ってよ、ゾーイ! 昨日の夜は何もしないって……」
そして、ゾーイはその喧嘩を買う気のようだ。
まさかの言葉に、秒速でレイモンド兄妹は反応する。
今のソニアの顔なんて、真っ青だ。
「ソニア? それは昨日のあたしの言葉よ? 心は移ろいやすいのよ、乙女心と秋の空って言うでしょ? それに、当の本人のデルタが非協力的だしね?」
「そ、そんな……!!」
「……俺を脅す気か?」
「そう捉えてくれて構わないけど?」
さっきまでの平和的に話し合おう的な雰囲気が、一瞬で消し去られる。
まさかの急展開による一触即発で、ソニアは泣きそうだし、ゾーイとデルタは無表情で睨み合っている。
「す、ストップ! 二人とも、ちょっと落ち着こう! 冷静に……そうだろ? ゾーイ、とりあえずはゾーイの考えとかを先に話した方がいいと思うよ?」
このままじゃ血を見ることになると思った俺は、慌ててゾーイとデルタの間に入って話題を逸らす。
「あたしの考えを?」
「そう! どうして、昨日の夜に温泉に忍び込んだのか! そもそも、デルタが男って何で気付いたのか! 無断で秘密を暴いちゃったわけだし、ここは先にゾーイから歩み寄るというか……」
「あー、それもそうね? わかった」
わかってくれて、よかった……本当によかった!
まだ何も始まっていないのに、俺にとってひと仕事終えた感満載だった。
「昨日のあれは、幽霊の正体の答え合わせをするためよ」
「ゆ、幽霊?」
「三日しか経ってないわよ? さすがに覚えてるわよね?」
「え? 三日って……シンとジェームズの騒動のことぐらいしか……ああ!」
「思い出した? ついでに、騒動の謎が解けたって感じ?」
「う、うん……!」
あの時シンとジェームズは、男湯で女の幽霊を見たと言っていた。
そっか、その幽霊っていうのは温泉に入っていたデルタのことだったのか!
あれ、待てよ、あの時そういえば……
「そうか! だから、あの時、デルタとソニアは途中から現れたんだね!?」
「おお、そこまで気が付いてたんだ」
俺の言葉に、ゾーイは意外だと驚いたような顔を向けていた。
一方で、レイモンド兄妹は揃って罰が悪そうな顔で俺から目を逸らしていた。
「けど、ゾーイ? 何で、昨日デルタが温泉にいるってわかったの?」
「三日が限界かなって思ったの」
「え?」
「人間って、どんなことでも習慣とかが狂うといつも通り調子は出ないし、イライラするのよ。特に温泉に入らないとスッキリしないし、何か気持ち悪くなってくるでしょ? だから、せいぜい我慢できて三日かなって思ったのよ」
本当に、ゾーイの考えって先々のことまで及んでるんだな……
全然追い付ける気がしないや。
「……やっぱり、ゾーイの第一印象はそのままだったな」
「あら、どんな印象よ?」
「敵には回したくないって印象だよ」
「随分、物騒だこと」
「……隠したってしょうがねえか、結構長くなるぞ?」
どうやら、デルタは逃げられないと観念したようだった。
「全然大丈夫。何かは知らないけど、結構深刻な話をする感じなんだろ?」
「うん、まあな……」
「それなら、やっぱり、みんながいる教会よりはここの方がいいよ」
「本当に助かる! もしかしたら、結構長引くかもなんだけど……」
「気にしないでくれ、今日はコタロウの家に泊まるから。じゃあ、おやすみ」
「ああ、おやすみ」
レオは手だけでなく、しっぽまでも振って俺におやすみと言ってくれた。
そんなレオの背中を見送り、俺は家の中に入る。
無理を言って貸してくれたレオの家に今は、俺、ゾーイ、レイモンド兄妹の計四人がいる。
昨日ゾーイが言ったように、昨日のことをはじめとしたその他もろもろのことを話し合うこの場は、いつも通りのゾーイの有無を言わさぬ態度から設けられることとなった。
このメンバーの中に俺がいるのは、不本意にもゾーイについて行ってデルタの秘密を知ってしまったことから。
ゾーイに強制参加だからと、あの目で言われたら断れるわけもなく……
しかも、事が事だから他言無用で。
ただでさえ、ソニアの引っ掻き傷が顔中にあるってのに、夜は遅くなるから先に寝てろなんて言おうものなら、もれなく全員に理由を詰められた。
特に真由、サトル、望の三人は本当に言いくるめるのが大変だったし、きっと今も納得はしていないだろう。
昨日の自分に言ってやりたいよ……
頼むから、気になるだろうが、絶対にゾーイについて行くなと……
「何を突っ立ってんの? 座れば?」
そして、そもそもの元凶であるゾーイは早くも我が物顔で、俺達に座れと言うマイペースっぷりを発揮する。
ここはレオの家のはずだけどな……
まあ、そんな言葉がゾーイに通じるわけもないので、俺は大人しくゾーイの隣のイスに座る。
レイモンド兄妹も諦めたようで仕方なく、テーブルを挟んだ俺達の向かい側に並んで座る。
「さてと、それじゃ、回りくどいのは面倒だから、さっそく本題に入るわね」
「言っとくけど、話すってことを了承をした覚えはないけど?」
ゾーイの言葉に、デルタは腕を組んで不気味な笑みを浮かべて挑発する。
臨戦態勢バッチリという感じで……
本当に見た目は女だけど、声とかは完全に男だよな……本当に慣れないよ。
「あらま、そんなこと言っちゃって大丈夫なの? じゃあ、今から実はデルタは男でしたって言いふらして来るけど?」
「は?」
「ま、待ってよ、ゾーイ! 昨日の夜は何もしないって……」
そして、ゾーイはその喧嘩を買う気のようだ。
まさかの言葉に、秒速でレイモンド兄妹は反応する。
今のソニアの顔なんて、真っ青だ。
「ソニア? それは昨日のあたしの言葉よ? 心は移ろいやすいのよ、乙女心と秋の空って言うでしょ? それに、当の本人のデルタが非協力的だしね?」
「そ、そんな……!!」
「……俺を脅す気か?」
「そう捉えてくれて構わないけど?」
さっきまでの平和的に話し合おう的な雰囲気が、一瞬で消し去られる。
まさかの急展開による一触即発で、ソニアは泣きそうだし、ゾーイとデルタは無表情で睨み合っている。
「す、ストップ! 二人とも、ちょっと落ち着こう! 冷静に……そうだろ? ゾーイ、とりあえずはゾーイの考えとかを先に話した方がいいと思うよ?」
このままじゃ血を見ることになると思った俺は、慌ててゾーイとデルタの間に入って話題を逸らす。
「あたしの考えを?」
「そう! どうして、昨日の夜に温泉に忍び込んだのか! そもそも、デルタが男って何で気付いたのか! 無断で秘密を暴いちゃったわけだし、ここは先にゾーイから歩み寄るというか……」
「あー、それもそうね? わかった」
わかってくれて、よかった……本当によかった!
まだ何も始まっていないのに、俺にとってひと仕事終えた感満載だった。
「昨日のあれは、幽霊の正体の答え合わせをするためよ」
「ゆ、幽霊?」
「三日しか経ってないわよ? さすがに覚えてるわよね?」
「え? 三日って……シンとジェームズの騒動のことぐらいしか……ああ!」
「思い出した? ついでに、騒動の謎が解けたって感じ?」
「う、うん……!」
あの時シンとジェームズは、男湯で女の幽霊を見たと言っていた。
そっか、その幽霊っていうのは温泉に入っていたデルタのことだったのか!
あれ、待てよ、あの時そういえば……
「そうか! だから、あの時、デルタとソニアは途中から現れたんだね!?」
「おお、そこまで気が付いてたんだ」
俺の言葉に、ゾーイは意外だと驚いたような顔を向けていた。
一方で、レイモンド兄妹は揃って罰が悪そうな顔で俺から目を逸らしていた。
「けど、ゾーイ? 何で、昨日デルタが温泉にいるってわかったの?」
「三日が限界かなって思ったの」
「え?」
「人間って、どんなことでも習慣とかが狂うといつも通り調子は出ないし、イライラするのよ。特に温泉に入らないとスッキリしないし、何か気持ち悪くなってくるでしょ? だから、せいぜい我慢できて三日かなって思ったのよ」
本当に、ゾーイの考えって先々のことまで及んでるんだな……
全然追い付ける気がしないや。
「……やっぱり、ゾーイの第一印象はそのままだったな」
「あら、どんな印象よ?」
「敵には回したくないって印象だよ」
「随分、物騒だこと」
「……隠したってしょうがねえか、結構長くなるぞ?」
どうやら、デルタは逃げられないと観念したようだった。
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