エリート希望者の地球再生記

行倉宙華

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第三章-⑶ ジェームズとコタロウ

お次は食料問題ですか

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「お~い! 夕飯できたぞ~!」
「集合して~! 冷めちゃうよ~?」


 デルタとソニアの呼びかけに、俺達は作業を止め、手を洗って、急いで教会に向かった。
 何やら、香ばしい匂いが俺の空腹を加速させていた。
 最近急に寒くなったことで、今までは外で三食とも食事をとっていたのだが、このままだと風邪をひいてしまうだろうという意見が上がり、暖炉をつけた室内基、教会で食べるようになっていた。
 教会の食堂はやっぱり広くて、五つの大テーブルと椅子が置かれている。
 けど、こんなに広いのに揃いも揃って俺達は一か所に固まって座っている。
 まあ、時々ゾーイとアランは離れたがっているけど、二人とも無理矢理に同じテーブルに座らされている光景を、俺は何度も見ている。


「うわうわうわ! 今日も美味そう!」
「実に食欲をそそる香りだ!」


 シンが目を輝かせ、なぜかハロルドは両手を広げて喜びを表現している。
 うん、すっかり見慣れちゃったな。


「今日は、ゾーイとレオがめっちゃ頑張ってくれたの! そこで、夕飯はチキンパーティーにしてみました!」
「まあ、俺とソニアの手にかかれば全て美味いけど、今日は自信作だ!」


 ソニアの言葉によって、一斉に視線はゾーイとレオへと注がれる。
 これなら作り甲斐があると、デルタはどこか満足げだった。
 テーブルいっぱいに並べられた、何十種類もの鶏肉料理の数々を俺は見渡す。
 サラダ、揚げ物、照り焼き、煮込み料理、スープに何でもござれ。
 本当にどれも美味そうだ……
 空島では野菜や果物は育つので、天然のものだけど、人間以外の生物はいなかったから、当然俺達が食べていた肉や魚は人工物だった。
 様々な物質を合成していて、本物の肉と魚に近い味や食感にしてるらしい。
 けど、やっぱり、本物には敵わないと地上で出会った食べ物を食べる度に俺は思っていた。

 王国の改革で、何となく俺達は自分で役割を見つけていっていた。
 俺はサトルと望のアシスタント的な建築補佐と、環境学科の知識を活かして全体的な農作物の監修係をやっている。
 そして、ゾーイが担当しているのは食料調達全般のこと。
 レオや他の犬族と猫族と一緒に、冗談抜きで森中を走り回っている。
 毎日、大量の食料を積んで帰って来るその姿は一種のパレードと化していた。


「さすが! あいかわらずの最強っぷりに頭が下がります!」
「……そうね。ごちそうさまです」
「いやいや、そんなことは……」
「そうよ? わかったなら、もっとあたし達のこと敬って奉ってよね~?」


 まあ、橘さんとローレンさんの褒め言葉に対する、レオとゾーイの反応の正反対ぶりには苦笑するしかないけど……


「それじゃ、奉ってやるから、大人しく木に吊るされとけよ」
「望くん、奉るの意味知ってます?」
「はあ? その言葉そっくりそのまま返してやるよ。そもそもな、ゾーイ? お前は、どうせ、いつもみたいにそのよく動く口でレオ達を使ってるだけだろ?」
「ちょっと待て。まるで、今までもあたしが人を散々こき使ってきたみたいに聞こえるんですけどね? ていうか、文句あるなら食べなくて、結構ですが?」


 すると、また望とゾーイは、俺の隣で言い争いを始めた。
 けど、最近のこの二人言い争いは望が敵意剥き出しで、緊張感漂っていた前のようなものではない。
 どちらかというと二人特有の、コミュニケーションみたいなものだ。
 その証拠に、ゾーイの方は前とさほど変わらないけれど、望の表情はどこか楽しそうにしている。
 まあ、それにゾーイが言葉巧みに俺達を振り回してきたのは事実だしね。
 それで生き残ってこれたんだけど……


「あ、けど、どちらかというとゾーイは先陣を切って狩りをしてるよ?」
「え!? レオ、それ本当なの!?」
「本当よ、真由? 私も何度か狩りに同行したことがあるけど、ゾーイのあの身のこなしは、すごかったわ!」
「人間ってあんなに動けるのかって、初めて見た時はびっくりだったよ!」


 レオは煮込まれて柔らかくなった手羽先にかぶりつきながら、やんわりと望の言葉を否定する。
 その言葉に驚いて、隣に座る真由が声を上げると、補足するようにモカとレオは少し興奮したように答える。
 正確な時期は覚えていないけど、レオとモカが俺達と一緒に食事をとることは普通になってきていた。
 もうここに来て、多分三か月と少しは経ったと思う。
 俺達が、犬族と猫族に溶け込んでこうして平和に過ごせているのは本当にレオとモカと……コタロウのおかげだ。
 まあ、コタロウの場合はレオとモカに言われて、俺達に嫌々協力しているってことが丸わかりだけど……


「いや……あの体力と軽い身のこなしはゾーイ以外はできないよ」


 サトルは苦笑しながら、手をヒラヒラと振って否定する。
 それはそうだ、ゾーイが俺達人類のデフォルトだと思われたら、さすがにたまったものじゃないしな……


「そういえば、思っていたのだけど、冬場の食料とかはどうするの?」
「確かに。私の記憶が正しければ、冬は動物は冬眠し、採れる作物も少なかったと思うのですが、間に合うのですか?」


 不安そうなクレアと、眉間にしわを寄せたモーリスは、レオとモカにそう問うのだった。
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