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第三章-⑶ ジェームズとコタロウ
友達が友達を誘拐しました
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「ジェームズ、何か言ってくれ! 何か理由があるのだろう!?」
「そうよ、話して? 全部聞くわ!」
ハロルドとクレアが、手にランプを持って照らしながら必死に檻の中のジェームズに話しかけている。
そう、今のジェームズは俺達が最初に入れられた、あの檻の中だ。
「コタロウ、お願い! こんなのあんまりだよ……ジェームズのこと、檻から出してあげてよ!」
「そうだよ! さすがに、ここまでやるのはやりすぎだってば!」
「ジェームズも反省してるし! こんなこと絶対、二度とさせないからさ!」
「あ、ああ、そうだ! 俺達からもよく言い聞かせるからよ……!!」
ジェームズを檻にぶち込んだ張本人であるコタロウに対して、橘さんとソニアは涙声で、デルタとシンは頼み込んで必死に訴えかけている。
「じゃあ、お前達が代わりに入るか」
けど、コタロウは俺達をこれでもかと睨みつけて、そう吐き捨てる。
そうなると、誰も何も言えず、俯いてしまうばかりだった。
「こんなこと、争いごとを望まず、平和を重んじるあなたらしくありません」
意外なことに、あのあまり他人に興味を示さないモーリスまで、今回のことには驚いているようだった。
同じアーデルのメンバーとして、何か思うことがあるのだろうか……
けど、どんなに話しかけても、檻の中のジェームズは返事をしなかった。
ずっと、檻の奥で俯いたままだ……
「……寝る」
「え、アラン!?」
しばらくして、アランは不機嫌なことを隠そうともせず、そう呟いた。
そして、振り返ると、ソニアの呼びかけには応答せず、足早に教会に戻るアランの背中がそこにはあった。
まあ、予想通りの展開だけど……
「チッ……薄情な野郎だな」
そんなアランを見送りながら、俺の隣にいた望がそう悪態をつく。
うん、お前の言い分はわかるけど……
「望は人のこと言えないでしょ?」
「はあ!? 一緒にすんなよ!」
「いやあ、ちょっと前までの望くんは同じような感じだったけど?」
まあ、すかさず俺が思っていた通りのことを真由が指摘する。
すぐに望は反論するが、あっさりとサトルからからかうような言い回しで否定されていた。
「こいつら……おい、昴!」
「え? あー、その……ゾーイ?」
分が悪くなったことで、助けを求めるように望に俺は名前を呼ばれる。
どうしようかと辺りを見渡すと、それまで珍しく黙って見ていたゾーイが檻に向かって歩くのが目に入った。
「おーい、ジェームズ?」
ゾーイが檻に近付くと、ハロルドとクレアは檻の前から自然と避ける。
そして、ゾーイはジェームズのことを呼ぶが、やっぱり反応はなかった。
「……まあ、いいや。とりあえず、今日は頭冷やしな。あ、冬本番がまだとは言え、冷えてきたから風邪ひかないように気を付けてよね?」
「え、ゾーイ、それだけなのか!?」
檻の前をさっさと去り、あっさりと教会に戻ろうとするゾーイに、たまらずハロルドが声をかける。
けど、そのハロルドの言葉がほぼ俺達の総意だと思う。
正直、ゾーイならジェームズから理由を聞き出そうと、あの手この手で追い詰めると思っていたから……
何より、コタロウにいつも通りに神経を逆撫でするようなことを言って、無理矢理にでもジェームズを檻から出すと思っていた。
その証拠に、あからさまにゾーイを警戒していたコタロウの今の顔は、拍子抜けしたと書いてあるようだ。
「は? 逆に何かある? 本人はだんまり決め込んでて、檻の中で一夜過ごすことに異論ないっぽいじゃん。ついでに食べすぎで気持ち悪くて動けないみたいだし。これ以上はいくら事態を進展させたくても、進展しようがないでしょ?」
「そ、それは……しかしだ!」
「あたしは寝るから。それじゃ、また明日もよろしく~!」
ハロルドの次の言葉を待たずして、ゾーイは誰にも有無を言わせずに、その場を立ち去ったのだ。
そして、俺達もジェームズの頑なな黙秘にどうすることもできず、檻の中で寒くないようにと毛布を与えて、その日は解散となったのだ。
しかし、この一連の流れは嵐の前の静けさにすぎなかったのだと、翌日に俺は思い知ることになる――
***
「全員追いかけろ! そして、必ず捕まえろ!」
「どっちに行った!?」
「草の根分けてでも、捜し出せ!」
昼ご飯を食べ終わり、一息ついた時に外からコタロウや兵士達の慌てたような怒ったような声が響いてきた。
俺達は不審に思って、外に出る。
すると、前後左右あちこちで、犬族と猫族の鎧を着た兵士達が王国中を走り回っていたのだ。
「は? 何かあったのか……?」
「お~い!! みんな~!!」
俺がそう呟くと、向こうからレオが猛スピードで走って来るのが見えた。
「はあ……はあ……あ、あの……ね!」
「れ、レオ!? まずは、落ち着いて?」
そして、俺達の前までやって来ると息吐く間もなく、苦しそうにしながらも慌てたようにまくし立てる。
とりあえず、俺達はレオの息が整うのを待つことにした。
「レオ、大丈夫か? 落ち着いたか?」
「ごめん……僕はって……あ、ここには全員揃ってるか!?」
「え? まあ、ジェームズ以外は……あれ? ゾーイはどこ行った?」
我に返ったようなレオのすごい剣幕に押されて、俺は辺りを見渡す。
そこで俺は初めて、どこにもゾーイが見当たらないことを確認した。
「あれ……さっきまで、一緒にご飯を食べていたはずなんだけど……」
「本当に、油断ならねえよな……」
真由や望も、全員がキョロキョロと目的の人物を捜すが、ゾーイはどこにも見当たらなかった。
「やっぱりか……聞いてくれ、ゾーイのことで話がある!」
途端に真剣な顔を見せたレオが、そう切り出す。
「今さっきゾーイが檻の前にいた見張り番を縛り上げて、ジェームズのことを誘拐した!」
「そうよ、話して? 全部聞くわ!」
ハロルドとクレアが、手にランプを持って照らしながら必死に檻の中のジェームズに話しかけている。
そう、今のジェームズは俺達が最初に入れられた、あの檻の中だ。
「コタロウ、お願い! こんなのあんまりだよ……ジェームズのこと、檻から出してあげてよ!」
「そうだよ! さすがに、ここまでやるのはやりすぎだってば!」
「ジェームズも反省してるし! こんなこと絶対、二度とさせないからさ!」
「あ、ああ、そうだ! 俺達からもよく言い聞かせるからよ……!!」
ジェームズを檻にぶち込んだ張本人であるコタロウに対して、橘さんとソニアは涙声で、デルタとシンは頼み込んで必死に訴えかけている。
「じゃあ、お前達が代わりに入るか」
けど、コタロウは俺達をこれでもかと睨みつけて、そう吐き捨てる。
そうなると、誰も何も言えず、俯いてしまうばかりだった。
「こんなこと、争いごとを望まず、平和を重んじるあなたらしくありません」
意外なことに、あのあまり他人に興味を示さないモーリスまで、今回のことには驚いているようだった。
同じアーデルのメンバーとして、何か思うことがあるのだろうか……
けど、どんなに話しかけても、檻の中のジェームズは返事をしなかった。
ずっと、檻の奥で俯いたままだ……
「……寝る」
「え、アラン!?」
しばらくして、アランは不機嫌なことを隠そうともせず、そう呟いた。
そして、振り返ると、ソニアの呼びかけには応答せず、足早に教会に戻るアランの背中がそこにはあった。
まあ、予想通りの展開だけど……
「チッ……薄情な野郎だな」
そんなアランを見送りながら、俺の隣にいた望がそう悪態をつく。
うん、お前の言い分はわかるけど……
「望は人のこと言えないでしょ?」
「はあ!? 一緒にすんなよ!」
「いやあ、ちょっと前までの望くんは同じような感じだったけど?」
まあ、すかさず俺が思っていた通りのことを真由が指摘する。
すぐに望は反論するが、あっさりとサトルからからかうような言い回しで否定されていた。
「こいつら……おい、昴!」
「え? あー、その……ゾーイ?」
分が悪くなったことで、助けを求めるように望に俺は名前を呼ばれる。
どうしようかと辺りを見渡すと、それまで珍しく黙って見ていたゾーイが檻に向かって歩くのが目に入った。
「おーい、ジェームズ?」
ゾーイが檻に近付くと、ハロルドとクレアは檻の前から自然と避ける。
そして、ゾーイはジェームズのことを呼ぶが、やっぱり反応はなかった。
「……まあ、いいや。とりあえず、今日は頭冷やしな。あ、冬本番がまだとは言え、冷えてきたから風邪ひかないように気を付けてよね?」
「え、ゾーイ、それだけなのか!?」
檻の前をさっさと去り、あっさりと教会に戻ろうとするゾーイに、たまらずハロルドが声をかける。
けど、そのハロルドの言葉がほぼ俺達の総意だと思う。
正直、ゾーイならジェームズから理由を聞き出そうと、あの手この手で追い詰めると思っていたから……
何より、コタロウにいつも通りに神経を逆撫でするようなことを言って、無理矢理にでもジェームズを檻から出すと思っていた。
その証拠に、あからさまにゾーイを警戒していたコタロウの今の顔は、拍子抜けしたと書いてあるようだ。
「は? 逆に何かある? 本人はだんまり決め込んでて、檻の中で一夜過ごすことに異論ないっぽいじゃん。ついでに食べすぎで気持ち悪くて動けないみたいだし。これ以上はいくら事態を進展させたくても、進展しようがないでしょ?」
「そ、それは……しかしだ!」
「あたしは寝るから。それじゃ、また明日もよろしく~!」
ハロルドの次の言葉を待たずして、ゾーイは誰にも有無を言わせずに、その場を立ち去ったのだ。
そして、俺達もジェームズの頑なな黙秘にどうすることもできず、檻の中で寒くないようにと毛布を与えて、その日は解散となったのだ。
しかし、この一連の流れは嵐の前の静けさにすぎなかったのだと、翌日に俺は思い知ることになる――
***
「全員追いかけろ! そして、必ず捕まえろ!」
「どっちに行った!?」
「草の根分けてでも、捜し出せ!」
昼ご飯を食べ終わり、一息ついた時に外からコタロウや兵士達の慌てたような怒ったような声が響いてきた。
俺達は不審に思って、外に出る。
すると、前後左右あちこちで、犬族と猫族の鎧を着た兵士達が王国中を走り回っていたのだ。
「は? 何かあったのか……?」
「お~い!! みんな~!!」
俺がそう呟くと、向こうからレオが猛スピードで走って来るのが見えた。
「はあ……はあ……あ、あの……ね!」
「れ、レオ!? まずは、落ち着いて?」
そして、俺達の前までやって来ると息吐く間もなく、苦しそうにしながらも慌てたようにまくし立てる。
とりあえず、俺達はレオの息が整うのを待つことにした。
「レオ、大丈夫か? 落ち着いたか?」
「ごめん……僕はって……あ、ここには全員揃ってるか!?」
「え? まあ、ジェームズ以外は……あれ? ゾーイはどこ行った?」
我に返ったようなレオのすごい剣幕に押されて、俺は辺りを見渡す。
そこで俺は初めて、どこにもゾーイが見当たらないことを確認した。
「あれ……さっきまで、一緒にご飯を食べていたはずなんだけど……」
「本当に、油断ならねえよな……」
真由や望も、全員がキョロキョロと目的の人物を捜すが、ゾーイはどこにも見当たらなかった。
「やっぱりか……聞いてくれ、ゾーイのことで話がある!」
途端に真剣な顔を見せたレオが、そう切り出す。
「今さっきゾーイが檻の前にいた見張り番を縛り上げて、ジェームズのことを誘拐した!」
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