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第三章-⑶ ジェームズとコタロウ
それオープンカーだよ
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「ゆ、誘拐した……?」
「なぜなんだあああああああ!!!!」
俺のわずかばかりの呟きは、ハロルドの絶叫にかき消されたのだった。
「待って? 待ってくれ……いろいろと聞きたいことがありすぎて……」
「私もよ、デルタ……まるでダメ、全然頭に入ってこないんだけど!?」
デルタは目を瞑りながら現実逃避、橘さんは頭を抱えている。
「レオ、状況を整理させて! ゾーイは正確には何をしたの!?」
クレアが半ば叫びながら、レオの体を思いっきり揺さぶってそう聞き出す。
あまりに強く揺さぶるから、途中でサトルに止められていたけど……
「えっと……又聞きしてるから、正確ではないかもだけど……まず、ジェームズの檻の前の二人の見張り番に不意打ちを喰らわせて縛り上げて、次に鍵を奪ってジェームズを檻から脱獄させて、この王国中を逃げ回ってて、今は兵士達が総動員で捜してるって……とこかな?」
若干クレアに揺さぶられたことで目を回しながらも、レオは説明してくれた。
ゆっくりはっきり聞けば聞くほど、事の重大さが発覚するだけだったが……
「傷害罪と窃盗と脱獄と……あとは、現在進行形で逃亡犯か……ははっ」
「シン! 今は笑ってる場合じゃないでしょうよ!?」
「まあな。けどよ……逆に他に何をどうしろって言うんだよ!? こんなこと笑うとかしなきゃ、やってらんねえだろ!?」
「お、おお……シン、わかった。一旦深呼吸しよ? ヒッヒッフーって……」
シンはすっかりご乱心だった、あまりの事実にキャパオーバーのようで……
それを一見冷静なソニアが宥めているけど、そんなことはない。
ソニア、ヒッヒッフーは出産だよ。
心の中でそんな風に冷静にツッコミを入れながら、俺はどうにか自分のことを落ち着かせようとしていた。
「……やっぱり、昨日は引き下がるのが早いなって思ってたんだよな」
「何かあるって疑うべきだったな……」
そう俺が後悔全開で吐き捨てたことに対し、望もうんざりした顔で反応する。
どうして、こうも次から次へと事件が勃発するのだろうか……
「それで、今の状況は最悪とまだ希望があるんだったら、どっちだ?」
「うーん……希望があるかな? とにかく、今は兵士達が、特にコタロウが血眼になって二人のことを捜してるから、コタロウが見つける前に僕達が二人を保護しないと、大変なことになる……!!」
神妙な顔でサトルが尋ねると、レオは真っ青な顔で答えた。
「そうよね……きっと、コタロウは怒り心頭だろうし、ただでは済まされないわよね……けど、先に保護だとは言ってもどうしたら……」
「可能性は五分五分だけど、とにかく今は手分けして……!!」
「ねえ……あれ、何かしら?」
真由がつられて真っ青な顔をして頭を必死に回転させている横で、サトルが意を決したように顔を上げた時……
サトルの言葉の続きを遮ったのは、意外にもローレンさんだった。
一瞬驚いた後、ローレンさんがある方角を指で差していることに気付く。
そして、俺達は一斉にローレンさんが指で差し示す方に視線を移した。
「何だろう、あれ?」
「気のせいかな……すごいスピードでこっちに向かって来てるような……」
俺の呟きに、真由が恐る恐るといった具合にそう反応する。
俺達の視線の先は小高い丘だ。
今そこを、猛スピードの何かがこっちに向かって下って来てる光景を俺達は目の当たりにしてる。
「おいおいおいおい! 気のせいじゃねえって! 百パーセントこっち向かって来てるだろうよ!」
シンの叫びを皮切りにして、その場は一瞬で騒がしくなる。
待てよ……あれって、まさか……
「あれって、自動車じゃないか!?」
そう、猛スピードの物体の正体は、俺達のことをこの王国までたどり着かせてくれた自動車だった。
けど、どうやら俺達がここまで乗って来た自動車とは別のものらしい。
赤くて、小さくて、屋根もないな。
そうこうしてる間にも猛スピードの自動車は、王国のど真ん中を突っ切ってはどんどん近付いて来ていた。
「自動車が猛スピードで接近中だ! 作業を中断して、避難してくれ!」
「全員、すぐ端に寄って! もしぶつかったりしたら、ひとたまりもないわ!」
レオとクレアが必死に叫んで、住民の犬族と猫族に避難を誘導する。
俺達もそれを手伝って、必死に声を張り上げていたが……
「あ、あれ? 何かおかしくない?」
橘さんの困惑の呟きと共に、俺達は何事かと自動車に視線を移す。
けど、困惑して当然だ、その自動車は上手いこと犬族と猫族をはじめとして、道端の荷物や家を避けて、その上で猛スピードで走行していたのだ。
おかげで、被害は特になかった。
まあ、そのせいで自動車自体は飛んで落ちての繰り返しだけど……
「意味わかんね……あんなクソ荒い運転してんのはどこのアホだ!?」
「俺さ……何かさっきから嫌な予感しかしないんだけど……」
望が目をこれでもかと見開きながら悪態をつくと、それにデルタが苦笑いで返答する。
やがて、その赤い自動車はスピードを落とすこともなく俺達の前にやって来ると、急ブレーキをかけた。
そして、そのデルタの予感は当たることになるのだ。
「お疲れ! ねえ、今からジェームズと海行くんだけど、あんたらも来る?」
赤い自動車の運転席から顔を出したのは、ゾーイだった。
「なぜなんだあああああああ!!!!」
俺のわずかばかりの呟きは、ハロルドの絶叫にかき消されたのだった。
「待って? 待ってくれ……いろいろと聞きたいことがありすぎて……」
「私もよ、デルタ……まるでダメ、全然頭に入ってこないんだけど!?」
デルタは目を瞑りながら現実逃避、橘さんは頭を抱えている。
「レオ、状況を整理させて! ゾーイは正確には何をしたの!?」
クレアが半ば叫びながら、レオの体を思いっきり揺さぶってそう聞き出す。
あまりに強く揺さぶるから、途中でサトルに止められていたけど……
「えっと……又聞きしてるから、正確ではないかもだけど……まず、ジェームズの檻の前の二人の見張り番に不意打ちを喰らわせて縛り上げて、次に鍵を奪ってジェームズを檻から脱獄させて、この王国中を逃げ回ってて、今は兵士達が総動員で捜してるって……とこかな?」
若干クレアに揺さぶられたことで目を回しながらも、レオは説明してくれた。
ゆっくりはっきり聞けば聞くほど、事の重大さが発覚するだけだったが……
「傷害罪と窃盗と脱獄と……あとは、現在進行形で逃亡犯か……ははっ」
「シン! 今は笑ってる場合じゃないでしょうよ!?」
「まあな。けどよ……逆に他に何をどうしろって言うんだよ!? こんなこと笑うとかしなきゃ、やってらんねえだろ!?」
「お、おお……シン、わかった。一旦深呼吸しよ? ヒッヒッフーって……」
シンはすっかりご乱心だった、あまりの事実にキャパオーバーのようで……
それを一見冷静なソニアが宥めているけど、そんなことはない。
ソニア、ヒッヒッフーは出産だよ。
心の中でそんな風に冷静にツッコミを入れながら、俺はどうにか自分のことを落ち着かせようとしていた。
「……やっぱり、昨日は引き下がるのが早いなって思ってたんだよな」
「何かあるって疑うべきだったな……」
そう俺が後悔全開で吐き捨てたことに対し、望もうんざりした顔で反応する。
どうして、こうも次から次へと事件が勃発するのだろうか……
「それで、今の状況は最悪とまだ希望があるんだったら、どっちだ?」
「うーん……希望があるかな? とにかく、今は兵士達が、特にコタロウが血眼になって二人のことを捜してるから、コタロウが見つける前に僕達が二人を保護しないと、大変なことになる……!!」
神妙な顔でサトルが尋ねると、レオは真っ青な顔で答えた。
「そうよね……きっと、コタロウは怒り心頭だろうし、ただでは済まされないわよね……けど、先に保護だとは言ってもどうしたら……」
「可能性は五分五分だけど、とにかく今は手分けして……!!」
「ねえ……あれ、何かしら?」
真由がつられて真っ青な顔をして頭を必死に回転させている横で、サトルが意を決したように顔を上げた時……
サトルの言葉の続きを遮ったのは、意外にもローレンさんだった。
一瞬驚いた後、ローレンさんがある方角を指で差していることに気付く。
そして、俺達は一斉にローレンさんが指で差し示す方に視線を移した。
「何だろう、あれ?」
「気のせいかな……すごいスピードでこっちに向かって来てるような……」
俺の呟きに、真由が恐る恐るといった具合にそう反応する。
俺達の視線の先は小高い丘だ。
今そこを、猛スピードの何かがこっちに向かって下って来てる光景を俺達は目の当たりにしてる。
「おいおいおいおい! 気のせいじゃねえって! 百パーセントこっち向かって来てるだろうよ!」
シンの叫びを皮切りにして、その場は一瞬で騒がしくなる。
待てよ……あれって、まさか……
「あれって、自動車じゃないか!?」
そう、猛スピードの物体の正体は、俺達のことをこの王国までたどり着かせてくれた自動車だった。
けど、どうやら俺達がここまで乗って来た自動車とは別のものらしい。
赤くて、小さくて、屋根もないな。
そうこうしてる間にも猛スピードの自動車は、王国のど真ん中を突っ切ってはどんどん近付いて来ていた。
「自動車が猛スピードで接近中だ! 作業を中断して、避難してくれ!」
「全員、すぐ端に寄って! もしぶつかったりしたら、ひとたまりもないわ!」
レオとクレアが必死に叫んで、住民の犬族と猫族に避難を誘導する。
俺達もそれを手伝って、必死に声を張り上げていたが……
「あ、あれ? 何かおかしくない?」
橘さんの困惑の呟きと共に、俺達は何事かと自動車に視線を移す。
けど、困惑して当然だ、その自動車は上手いこと犬族と猫族をはじめとして、道端の荷物や家を避けて、その上で猛スピードで走行していたのだ。
おかげで、被害は特になかった。
まあ、そのせいで自動車自体は飛んで落ちての繰り返しだけど……
「意味わかんね……あんなクソ荒い運転してんのはどこのアホだ!?」
「俺さ……何かさっきから嫌な予感しかしないんだけど……」
望が目をこれでもかと見開きながら悪態をつくと、それにデルタが苦笑いで返答する。
やがて、その赤い自動車はスピードを落とすこともなく俺達の前にやって来ると、急ブレーキをかけた。
そして、そのデルタの予感は当たることになるのだ。
「お疲れ! ねえ、今からジェームズと海行くんだけど、あんたらも来る?」
赤い自動車の運転席から顔を出したのは、ゾーイだった。
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