エリート希望者の地球再生記

行倉宙華

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第三章-⑷ アランとシンとレオとモカ

トラブルのオーラです

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「は!? おまっ、何なんだよ!?」
「何でもないよ!」


 どうしようもなくて、やり場のないこの気持ちを振り払うように、俺は望の髪をぐしゃぐしゃと乱暴に撫でる。
 大丈夫だと、そんな顔するなと素直に言えない俺の精一杯だ。


「兄弟っていいものなんだな」
「いや、サトル? それこの間まで絶縁状態だった俺達によく言えたな?」
「まあまあ、一種の軌跡ってやつよ」
「軌跡ね……そんな綺麗なもんじゃねえけどな?」


 そんな俺達のことを見て、サトルが微笑ましいと言わんばかりの顔を向ける。
 何だか照れ臭くて、俺は茶化すような言い方になってしまった。


「ていうかな、お前こそ、橘とはどうなってんだよ!」


 多分、望も照れ臭くなったのか、話題を変えようとサトルに振る。


「え? あー、僕と菜々美は……」


 けど、サトルが次の言葉を続けようとした時だ……


「お願いだから! みんなと同じように仕事してよ!」


 突然聞こえてきたのは、すごく聞き覚えのある怒鳴り声。
 その声は俺達三人が寄りかかっていたりんごの木の、さらに後ろから聞こえてきた。
 三人で目配せをして、こっそりと木に隠れて覗くと……


「一人だけ特別扱いはできない! 働かざる者食うべからずって、そのことわざ知らないわけじゃないでしょ!?」
「じゃあ、俺の分の飯はいらねえよ」


 そこには少し涙目で怒り心頭のクレアと、アランがいた。
 正直、それはもうすっかり見慣れた光景だった。
 チーム・ロジャーのシン、デルタ、ソニアとはすっかり打ち解けた。
 三人とも、王国改革にも協力的だ。
 けど、リーダーのアランは、チーム以外と打ち解ける気はないようで……
 王国改革や他の作業も一切手伝ってはくれないのだ。


「また、あいつかよ……」
「ははは……クレアも大変だな」


 隣で望が顔を歪めながら、サトルは苦笑いで小声でそう呟くのが聞こえた。
 この二人のように、ほぼ全員からのアランに対する評価は最悪だった。
 怖いだとか、睨んでいるとか、人を殺したことのある目だとか……
 本当にこう考えると散々だよな。
 けど、その評価にはアラン独特の雰囲気というか、オーラも関係してると俺は思ってる。
 アランからは人を寄せつけない同い年とは思えないような、そんなオーラを感じる。
 本当に、オーラの強さで言えばアランと対等ぐらいか、それ以上に渡り合えるのはゾーイぐらいだろうな……
 けど、正直、俺はアランのことはまだ全然知らないけど、デルタの件もあってそんなに悪い人間とは思えなかった。


「そういう問題じゃないわ!」


 まあ、今はどう考えてもクレアを怒らせてるのは、アランだけど……


「止めに行った方がいいかな……?」
「そうだな……待て、昴!」
「うわあっ!? サトル、何だ……よ……」


 あまりにクレアが不憫で、思わず出て行こうとしたその時、俺はサトルに右腕を思いっきり引っ張られる。
 あまりにも突然だったので、そのまま俺は後ろに倒れ込む。
 そして、どうしたとサトルを問い詰めようとしたら……


「クレアってば、本当に飽きずよくやるよね?」


 道具を持ってこれから狩りに行くと思われる、ゾーイがやって来たのだ。
 すると、アランはあからさまに面倒だというように顔を歪める。


「ゾーイ! 飽きずにって……もうゾーイからも、アランに何か言ってよ!」


 そして、クレアはゾーイにも、結構厳しく怒鳴る。
 この光景も見慣れたものだった。


「無駄だって。自分で決心しなきゃそう簡単に変わらないって」
「そんな……!!」


 まあ、あいかわらずゾーイはそんなことは気にせずに、サラリとかわす。
 そして、ゾーイはアランの方に向き直り、不敵な笑みを浮かべると……


「アランくんは、どうしてもこの状況に納得がいかないご様子ですしね?」


 心底面白そうに、挑発するように、アランにそう言い放った。
 ゾーイの言葉、どういう意味だ?
 その時の二人の間の雰囲気は、決して誰も入り込めないようなそんな雰囲気だった。


「……こんな平和、見せかけだ」


 すると、アランはそう言うと、最後にゾーイのことを睨みつけて、走り去って行ってしまった。


「え……? 何だったの?」


 呆気にとられていたクレアが我に返ると、ゾーイにそう尋ねる。
 そのクレアの言葉は、俺達三人からの言葉でもあった。
 今のやり取りって何だったんだ?
 すると、ゾーイは少し考えてから、クレアに向き直ると……


「不器用な生き方をしてるから、現在進行形でしんどいってことよ」


 その答えがわかる人間は、その場には誰もいなかったと思う。
 けど、何でかわからないけど、その時の俺には虫の知らせというか、胸騒ぎがしていた。





 嫌な予感ほど当たるもの、事件はその日の夜に起きてしまった。





「大変だ! アランが、犬族と猫族に重傷を負わせたらしい!」
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