エリート希望者の地球再生記

行倉宙華

文字の大きさ
98 / 257
第三章-⑷ アランとシンとレオとモカ

三人のリーダーの言葉

しおりを挟む
 レオが俺達を庇ったことで、他の犬族と猫族はより一層にざわつき始める。


「レオ、お前……人間の味方するのか」
「こんなこと、間違ってる」


 怒りを込めたような言い方でフウタはレオに問う。
 それにレオはとても苦しそうに、泣きそう顔で、はっきりと告げたのだ。


「ふざけんじゃねえよ!! ずっと、黙認をしてたけどな、レオ、モカ、コタロウを始めとして、どいつもこいつも人間に絆されやがってよ!!」
「待てって! 少し落ち着けって!」
「フウタ、やめてくれ……」


 そのことに憤慨したフウタはレオに殴りかからんばかりの興奮状態となり、コタロウに止められている。
 そんな状態のフウタを前に、レオは耐えられないとばかりに俯く。


「そもそもな、レオ!! お前が、あの時に人間を受け入れたのが悪いんだ!!」
「じゃあ、答えてくれ!」


 けど、フウタの言葉を聞いて、レオは俯いていた顔を上げて叫ぶ。


「ゾーイ達が、僕達に何をした!?」
「は……?」


 レオの叫びにフウタは声が漏れ、辺りは一段と静まり返る。


「確かに、僕も人間は嫌いだし、すごく恐ろしかった……けど、ゾーイ達と共に生活をするようになって、あと少しで、二百日が過ぎようとしてる。その間に被害を受けた者はいるか!?」


 そして、レオはその言葉を目の前のフウタだけではなく、処刑台の前の犬族と猫族全員に必死に訴える。


「被害って……俺達がいるだろ?」
「そうだな。けど、同時にお前達が拳銃を武器庫から持ち出し隠し持っていたことも、紛れもない事実だ」


 それを聞いたフウタは、すかさず自分達が被害者だと告げる。
 けど、それはレオの的確な言葉で一蹴されていた。


「それだって、俺達を騙すための……」


 普段の穏やかなレオと違う様子に、若干の動揺を見せながらも、フウタはまだ食い下がってくる。


「それは、ありえないことだ」


 けど、はっきりとレオはフウタにまた泣きそうな顔で言い返す。


「僕とモカは、そこにいたんだ……」


 それを聞いたフウタは、途端に言葉を失って目を見開いた。
 そうだった、今まで拳銃を見つけたのは俺達で、その場にレオとモカが居合わせていたことは言ってなかった。
 今、こいつらは知ったんだ……
 他の重症を負わされた五人も、そんな悲しそうなレオを前に、何も言えなくなっていた。
 そして、それぞれが目を逸らすのだ。
 さすがにこうなると、言い訳なんてできないよな……


「僕達はお互いの文明のいいところを共有して、新しいものを生み出し、この王国をより良いものにしようと半年間も支え合ってきたじゃないか! そこに、信頼は生まれてなかったのか!?」


 そして、さらに続けるレオの訴えには他の犬族と猫族にも理解をして認めてほしいというような、そんなまっすぐで必死な思いが込められている気がした。
 そんなレオの言葉を聞いて、目頭が熱くなっていた時……


「俺は、ゾーイ達が仲間になった日のことを昨日のことのように覚えている」


 コタロウが、抵抗するのをやめて抜け殻のようになってしまったフウタの拘束を解き、前に来て話し始めたのだ。


「きっと、この先も忘れることはないと思う。あの日、俺とレオは初めて喧嘩をしたんだ」
「あー、それで次の日二人とも、見るに堪えない顔だったわけね?」


 真剣そのものといった顔で話すコタロウの横で、まさかのゾーイが話に割って入ったのだ……
 コタロウもマジか……という感じで振り向いている。


「全然わからねえ。よく、この会話の流れに入っていけるよな……」


 内心冷や汗ものだった俺の隣で、望がそんなことを呟いていた。
 本当にな、激しいくらいに同意だよ。


「そうそう、結構本気になってね? 子どもの頃からコタロウとは一緒なのに、一度も喧嘩したことなかったから、あれは忘れられないや」


 けど、そんな風に通常運転のゾーイに気が抜けたのか、レオは楽しそうにゾーイの話に乗っかって話をしていた。


「確かにな? まあ、最終的にレオの押しに負けた俺とモカは、しばらくゾーイ達のことは様子見ってことになったんだけど……」


 そんなレオにつられるように、コタロウは呆れ気味に話をする。
 けど、しばらくの沈黙の後、コタロウはゾーイに視線を移して……


「時間が経てば経つほど、ゾーイ達への憎しみは消えていった。俺自身、気付かされたこともあったりしてよ……人間は悪い奴ばかりじゃねえかもって、この二百日の間で思った奴、いるだろ?」


 優しく微笑んでから、コタロウは他の犬族と猫族にそう問うのだった。
 そんなコタロウの姿は初めて出会った時には、想像もできなかったものだ。


「そもそも、歴史なんて何百年も昔のことよ? その間に私達は進化し、人間は数々の困難を乗り越えた。もうこだわるのはやめましょう?」


 そんなコタロウに続いたのは、モカだった。


「他の人間がどうかなんて、確かに今はわからないけど……少なくとも、私はゾーイ達が好き!」


 モカは一度俺達、最後にゾーイに笑顔を向けて、そう高らかに宣言した。


「この二百日間、確かにいろいろあったけど、人間と平和に共存してきたという事実がある。それは変わらないんだ」


 最後にレオが締めくくった三人のリーダーの訴え。
 そんな必死な訴えに、他の犬族と猫族の心にも変化が訪れていることが、処刑台から見下ろしているとその顔色でよくわかった。
 けど、トドメを刺したのは、やっぱり君だったね?


「あのさ、別に人間のことを嫌っても構わないよ?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

処理中です...