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第三章-⑷ アランとシンとレオとモカ
三人のリーダーの言葉
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レオが俺達を庇ったことで、他の犬族と猫族はより一層にざわつき始める。
「レオ、お前……人間の味方するのか」
「こんなこと、間違ってる」
怒りを込めたような言い方でフウタはレオに問う。
それにレオはとても苦しそうに、泣きそう顔で、はっきりと告げたのだ。
「ふざけんじゃねえよ!! ずっと、黙認をしてたけどな、レオ、モカ、コタロウを始めとして、どいつもこいつも人間に絆されやがってよ!!」
「待てって! 少し落ち着けって!」
「フウタ、やめてくれ……」
そのことに憤慨したフウタはレオに殴りかからんばかりの興奮状態となり、コタロウに止められている。
そんな状態のフウタを前に、レオは耐えられないとばかりに俯く。
「そもそもな、レオ!! お前が、あの時に人間を受け入れたのが悪いんだ!!」
「じゃあ、答えてくれ!」
けど、フウタの言葉を聞いて、レオは俯いていた顔を上げて叫ぶ。
「ゾーイ達が、僕達に何をした!?」
「は……?」
レオの叫びにフウタは声が漏れ、辺りは一段と静まり返る。
「確かに、僕も人間は嫌いだし、すごく恐ろしかった……けど、ゾーイ達と共に生活をするようになって、あと少しで、二百日が過ぎようとしてる。その間に被害を受けた者はいるか!?」
そして、レオはその言葉を目の前のフウタだけではなく、処刑台の前の犬族と猫族全員に必死に訴える。
「被害って……俺達がいるだろ?」
「そうだな。けど、同時にお前達が拳銃を武器庫から持ち出し隠し持っていたことも、紛れもない事実だ」
それを聞いたフウタは、すかさず自分達が被害者だと告げる。
けど、それはレオの的確な言葉で一蹴されていた。
「それだって、俺達を騙すための……」
普段の穏やかなレオと違う様子に、若干の動揺を見せながらも、フウタはまだ食い下がってくる。
「それは、ありえないことだ」
けど、はっきりとレオはフウタにまた泣きそうな顔で言い返す。
「僕とモカは、そこにいたんだ……」
それを聞いたフウタは、途端に言葉を失って目を見開いた。
そうだった、今まで拳銃を見つけたのは俺達で、その場にレオとモカが居合わせていたことは言ってなかった。
今、こいつらは知ったんだ……
他の重症を負わされた五人も、そんな悲しそうなレオを前に、何も言えなくなっていた。
そして、それぞれが目を逸らすのだ。
さすがにこうなると、言い訳なんてできないよな……
「僕達はお互いの文明のいいところを共有して、新しいものを生み出し、この王国をより良いものにしようと半年間も支え合ってきたじゃないか! そこに、信頼は生まれてなかったのか!?」
そして、さらに続けるレオの訴えには他の犬族と猫族にも理解をして認めてほしいというような、そんなまっすぐで必死な思いが込められている気がした。
そんなレオの言葉を聞いて、目頭が熱くなっていた時……
「俺は、ゾーイ達が仲間になった日のことを昨日のことのように覚えている」
コタロウが、抵抗するのをやめて抜け殻のようになってしまったフウタの拘束を解き、前に来て話し始めたのだ。
「きっと、この先も忘れることはないと思う。あの日、俺とレオは初めて喧嘩をしたんだ」
「あー、それで次の日二人とも、見るに堪えない顔だったわけね?」
真剣そのものといった顔で話すコタロウの横で、まさかのゾーイが話に割って入ったのだ……
コタロウもマジか……という感じで振り向いている。
「全然わからねえ。よく、この会話の流れに入っていけるよな……」
内心冷や汗ものだった俺の隣で、望がそんなことを呟いていた。
本当にな、激しいくらいに同意だよ。
「そうそう、結構本気になってね? 子どもの頃からコタロウとは一緒なのに、一度も喧嘩したことなかったから、あれは忘れられないや」
けど、そんな風に通常運転のゾーイに気が抜けたのか、レオは楽しそうにゾーイの話に乗っかって話をしていた。
「確かにな? まあ、最終的にレオの押しに負けた俺とモカは、しばらくゾーイ達のことは様子見ってことになったんだけど……」
そんなレオにつられるように、コタロウは呆れ気味に話をする。
けど、しばらくの沈黙の後、コタロウはゾーイに視線を移して……
「時間が経てば経つほど、ゾーイ達への憎しみは消えていった。俺自身、気付かされたこともあったりしてよ……人間は悪い奴ばかりじゃねえかもって、この二百日の間で思った奴、いるだろ?」
優しく微笑んでから、コタロウは他の犬族と猫族にそう問うのだった。
そんなコタロウの姿は初めて出会った時には、想像もできなかったものだ。
「そもそも、歴史なんて何百年も昔のことよ? その間に私達は進化し、人間は数々の困難を乗り越えた。もうこだわるのはやめましょう?」
そんなコタロウに続いたのは、モカだった。
「他の人間がどうかなんて、確かに今はわからないけど……少なくとも、私はゾーイ達が好き!」
モカは一度俺達、最後にゾーイに笑顔を向けて、そう高らかに宣言した。
「この二百日間、確かにいろいろあったけど、人間と平和に共存してきたという事実がある。それは変わらないんだ」
最後にレオが締めくくった三人のリーダーの訴え。
そんな必死な訴えに、他の犬族と猫族の心にも変化が訪れていることが、処刑台から見下ろしているとその顔色でよくわかった。
けど、トドメを刺したのは、やっぱり君だったね?
「あのさ、別に人間のことを嫌っても構わないよ?」
「レオ、お前……人間の味方するのか」
「こんなこと、間違ってる」
怒りを込めたような言い方でフウタはレオに問う。
それにレオはとても苦しそうに、泣きそう顔で、はっきりと告げたのだ。
「ふざけんじゃねえよ!! ずっと、黙認をしてたけどな、レオ、モカ、コタロウを始めとして、どいつもこいつも人間に絆されやがってよ!!」
「待てって! 少し落ち着けって!」
「フウタ、やめてくれ……」
そのことに憤慨したフウタはレオに殴りかからんばかりの興奮状態となり、コタロウに止められている。
そんな状態のフウタを前に、レオは耐えられないとばかりに俯く。
「そもそもな、レオ!! お前が、あの時に人間を受け入れたのが悪いんだ!!」
「じゃあ、答えてくれ!」
けど、フウタの言葉を聞いて、レオは俯いていた顔を上げて叫ぶ。
「ゾーイ達が、僕達に何をした!?」
「は……?」
レオの叫びにフウタは声が漏れ、辺りは一段と静まり返る。
「確かに、僕も人間は嫌いだし、すごく恐ろしかった……けど、ゾーイ達と共に生活をするようになって、あと少しで、二百日が過ぎようとしてる。その間に被害を受けた者はいるか!?」
そして、レオはその言葉を目の前のフウタだけではなく、処刑台の前の犬族と猫族全員に必死に訴える。
「被害って……俺達がいるだろ?」
「そうだな。けど、同時にお前達が拳銃を武器庫から持ち出し隠し持っていたことも、紛れもない事実だ」
それを聞いたフウタは、すかさず自分達が被害者だと告げる。
けど、それはレオの的確な言葉で一蹴されていた。
「それだって、俺達を騙すための……」
普段の穏やかなレオと違う様子に、若干の動揺を見せながらも、フウタはまだ食い下がってくる。
「それは、ありえないことだ」
けど、はっきりとレオはフウタにまた泣きそうな顔で言い返す。
「僕とモカは、そこにいたんだ……」
それを聞いたフウタは、途端に言葉を失って目を見開いた。
そうだった、今まで拳銃を見つけたのは俺達で、その場にレオとモカが居合わせていたことは言ってなかった。
今、こいつらは知ったんだ……
他の重症を負わされた五人も、そんな悲しそうなレオを前に、何も言えなくなっていた。
そして、それぞれが目を逸らすのだ。
さすがにこうなると、言い訳なんてできないよな……
「僕達はお互いの文明のいいところを共有して、新しいものを生み出し、この王国をより良いものにしようと半年間も支え合ってきたじゃないか! そこに、信頼は生まれてなかったのか!?」
そして、さらに続けるレオの訴えには他の犬族と猫族にも理解をして認めてほしいというような、そんなまっすぐで必死な思いが込められている気がした。
そんなレオの言葉を聞いて、目頭が熱くなっていた時……
「俺は、ゾーイ達が仲間になった日のことを昨日のことのように覚えている」
コタロウが、抵抗するのをやめて抜け殻のようになってしまったフウタの拘束を解き、前に来て話し始めたのだ。
「きっと、この先も忘れることはないと思う。あの日、俺とレオは初めて喧嘩をしたんだ」
「あー、それで次の日二人とも、見るに堪えない顔だったわけね?」
真剣そのものといった顔で話すコタロウの横で、まさかのゾーイが話に割って入ったのだ……
コタロウもマジか……という感じで振り向いている。
「全然わからねえ。よく、この会話の流れに入っていけるよな……」
内心冷や汗ものだった俺の隣で、望がそんなことを呟いていた。
本当にな、激しいくらいに同意だよ。
「そうそう、結構本気になってね? 子どもの頃からコタロウとは一緒なのに、一度も喧嘩したことなかったから、あれは忘れられないや」
けど、そんな風に通常運転のゾーイに気が抜けたのか、レオは楽しそうにゾーイの話に乗っかって話をしていた。
「確かにな? まあ、最終的にレオの押しに負けた俺とモカは、しばらくゾーイ達のことは様子見ってことになったんだけど……」
そんなレオにつられるように、コタロウは呆れ気味に話をする。
けど、しばらくの沈黙の後、コタロウはゾーイに視線を移して……
「時間が経てば経つほど、ゾーイ達への憎しみは消えていった。俺自身、気付かされたこともあったりしてよ……人間は悪い奴ばかりじゃねえかもって、この二百日の間で思った奴、いるだろ?」
優しく微笑んでから、コタロウは他の犬族と猫族にそう問うのだった。
そんなコタロウの姿は初めて出会った時には、想像もできなかったものだ。
「そもそも、歴史なんて何百年も昔のことよ? その間に私達は進化し、人間は数々の困難を乗り越えた。もうこだわるのはやめましょう?」
そんなコタロウに続いたのは、モカだった。
「他の人間がどうかなんて、確かに今はわからないけど……少なくとも、私はゾーイ達が好き!」
モカは一度俺達、最後にゾーイに笑顔を向けて、そう高らかに宣言した。
「この二百日間、確かにいろいろあったけど、人間と平和に共存してきたという事実がある。それは変わらないんだ」
最後にレオが締めくくった三人のリーダーの訴え。
そんな必死な訴えに、他の犬族と猫族の心にも変化が訪れていることが、処刑台から見下ろしているとその顔色でよくわかった。
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