エリート希望者の地球再生記

行倉宙華

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第三章-⑷ アランとシンとレオとモカ

不器用な守り方と言い訳と

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「あの夜、そいつらが俺達人間のことを気に食わねえって話してるのを、タイミング悪いことに聞いちまってな」


 さっきのアランの発言で、空気は固まり、静まり返ったのをいいことに静かにアランは話し出した。
 俺、サトル、クレア、ハロルド、ゾーイはよく今後についてレオ達と会議を開くことが多くなっていた。
 最近では、夜はほとんど他のみんなと離れていることが多いくらいだ。
 そこのタイミングを見計らって、他のみんなを拳銃で襲って、死なない程度にケガをさせ、その罪を現場にいなかった俺、サトル、クレア、ハロルド、ゾーイに擦り付ける。
 そんな事件があれば問答無用で王国を俺達は追い出され、仲間割れをして自滅をするだろうと……
 そんな計画を重症を負わされた六人が話してるのを、あの事件の夜にアランは聞いたのだという。
 アランが話終わると、途端にその場はざわつき始め、重症を負わされた六人へ非難の視線が飛ぶ。
 何て卑怯で残酷なのか……
 話を聞き終わった俺は、怒りで逆に冷静なくらいで、そんな経験は生まれて初めてだった。


「そ、そんなの……デタラメだ!! 今のは全部口からでまかせだ!!」
 

 しかし、フウタはまだアランの嘘だと叫んだのだ。
 他の重症を負わされた五人も、それに同調して被害者ぶっている。
 こいつら、どこまで腐ってる……!!


「ワンとかニャーとか、毎度本当にうるさいわね! クソつまらん! ガーガーとか鳴けないわけ!?」


 思わず、前に出ようとした俺を止めたのは、ゾーイのそんな声だった。
 ある意味で、空気は凍りついている。
 俺の耳がおかしくなければ、誰もワンとも、ニャーとも言ってないのだが……
 というか、鳴き声に面白さを求めること自体違うよね?
 ほら、意味不明な怒りをぶつけられて重症を負わされた六人は、何を言い返せばいいのかわからなくなってるよ。
 まあ、多分黙ってろって意味だから成功はしてるけど……


「とにかく、それを聞いてアランは手が出たってことでしょ? うわ、ちょっと野蛮すぎない? 怖いわ~!」
「……無駄に口が動くことも、どうかと思うけどな」


 そして、ゾーイは全ての人間を置いてけぼりにして話を進める。
 大して怖くもなさそうな感じで、アランを小突く。
 それを受けたアランは面倒くさそうに睨みながら、ゾーイに言い返すのだ。
 そんな様子に少し安心するけど、まだ今回のことで疑問なことがある。


「あ、ごめん、ゾーイ……あの、一つ聞きたいんだけど……どうして、私達にこの五人の家の中を探させたの? 拳銃があるってことは、ゾーイはあの時点では知らなかったのよね?」


 まさに、俺の思っていたことをモカが代弁してくれた。
 ゾーイとアランの話を割って申し訳なさそうなモカだけど、目は知りたいと言ってるような真剣なものだった。


「あー、それは、シンの言葉がそう思わせたからかな?」
「は……? お、俺!?」


 突然に名前を呼ばれたシンは、目を見開いて、思わず後ろに仰け反るほどには驚いていた。


「何驚いてんの? あんたが言ったんでしょ? アランは理由もなく怪我させたり、逃げ出したりするような奴じゃねえって。熱く語ってたじゃん」


 そんなシンに、ゾーイは淡々とそう告げていた。
 それって、シンが俺とゾーイに話してくれた内容じゃんか……
 やっぱり、あの時にゾーイはアランの人間性を見極めようとしていたんだ。


「え? あ、あー、そんなこともあったり……したりして?」
「何照れてんのよ、気持ち悪いわね」
「ゾーイさん? ちょっと、あまりに辛辣すぎませんか!?!?」


 まさか、アランの前で言われるとは思ってなかったのだろうシンは、少し照れくさいのか、慌てて誤魔化していた。
 話題の中心のアランは、一件無表情だけと、少し驚いている感じかな?
 そんなシンを見て、ゾーイは冷たく吐き捨てている……シンが不憫だこれは。


「まあ、そんなわけで、今回のことには何か事情があるんだろうなって仮定したのよ。そして、その事情は、重症を負わせて逃げ出さなければならないほどの最悪なもの。十中八九、あたし達を嵌めて追い詰めたいか、追い出したいか、又は両方か。どちらにしろ、何か物的証拠を残すだろうと思って、それを探したらビンゴってわけよ」


 すると、ゾーイは話を戻して、淡々とモカの質問に答える。
 探し物は自分にもわからないって君が言った意味が、やっとわかったよ。
 そんなわずかな情報でここまでやってのけるなんて、本当に君はわからない。


「作り話だ! 今話したことが事実だとしたら、何でそいつが逃げるんだ!」


 けど、フウタはしつこいほど食い下がってくる。


「まあ、アランくんの悪いとこが全面に出たんでしょうね? 今まで、リーダーとして一人で背負い込んできたみたいだし、相談するって選択肢がこの固い頭の中には存在しないんじゃない? まあ、そのおかげでこっちは大分遠回りでしたけどね?」


 まあ、そんな苦し紛れの言い訳なんてゾーイはサラリと流していく。
 ゾーイは、アランに向かってまっすぐわざとらしく、そう言い放った。
 そして、一方でそれを聞いたアランは変わらずに、無表情のまま顔を逸らす。
 あれ、すると、アランは俺達のことを守ってくれたってことなのか……?


「……そんなの知るかってんだ!! 人間は全員嘘つきだ!!」
「やめろ」


 ほとんど意地で、フウタは言い返してきていたが……
 今まで他の犬族と猫族は、黙って見守っていただけだったのに、そこに待ったをかける者が現れた。
 低いトーンで一言やめろと、フウタの口を閉じさせたのは……


「レオ……」
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