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第三章-⑸ クレアとハロルド
遭遇率的に俺は呪われてる
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「アラン、どうして……? 私は本当にあなたのことを……!!」
「クレア? 今、俺が困ってること、お前ならわかるだろ?」
「……そうよ、ね……わかったわ」
震える声を絞り出しながらアランに残してから、クレアは俺の目の前を猛スピードで走り去って行った。
「……また、お前か」
「いや、アラン! ごめん! 今回は本当に立ち聞きする気は……!!」
俺は夜中にトイレに起きたことを、これほどまでに後悔したことはなかった。
そのトイレの帰りに、俺は廊下の奥で誰かの言い争うような声が聞こえた。
深刻そうなら止めなければと、変な正義感が湧き上がり見に行ってみると、そこにいたのがクレアとアラン。
正体に気付いて、これはまずいと場を去ろうとしたまさにその時に、クレアはアランにおそらく振られ、そのクレアが走り去る姿を見送り、まんまと隠れてたとこをアランに見つかって詰められてる今にいたる……というわけだ。
何で、ここ最近ずっとこんな場面に出くわすんだよ、不可抗力だ!
「まあ、お前の焦りようで、嘘か本当かはわかる。別に怒ってもいないしな」
「え? ありがとう! 本当に、本当に重ね重ねごめん!」
もういっその事、土下座でもしようかと思ってた時に、アランのため息混じりのそんな声が聞こえる。
そして、俺は安堵と同時に、改めてアラン頭を下げた。
本当に、アランが丸くなってくれて嬉しいことこの上ないな!
「それで、何か質問があるか?」
しかし、そんな安心もつかの間で、アランは俺が今一番聞きたくて、一番聞きにくいことを指すだろうその質問を淡々と投げかけてきた。
思わず、固まった俺だけど、何だかこのまま首を振るのも違う気がした。
そう、違う気がしたから、俺は思い切ってアランに聞いてみることにした。
「あの……誤解はしないでくれ。全部を聞いてたわけじゃないんだ」
「そうか。まあ、そうだとしても、空気的に何が起こったかはわかるだろ?」
「まあ、おそらくね……アラン、君はクレアを……」
どうにか直接的な表現を使わず、何があったかのを聞こうとした俺は、きっとゾーイからしたら、回りくどくて器が小さい人間だと言われるだろう。
ああ、その光景が鮮明に浮かぶよ……
それでも、俺にはこんなやり方しかできないだろうから、せめてゆっくり自分のペースでと思ったのに……
「はっきりしないで、ズルズルと期待を持たせるのは優しさじゃない」
「え?」
サラッとアラン本人によって、そのペースは乱されることになった。
そして、思わず、聞き返した俺だったけど……
「俺は、それをクソ親父に期待する母親の背中で学んだ」
俺を見ず、宙を睨むそのアランの、憎しみと悲しみに満ちた顔を見たら、俺は一歩も動けず、話すことすらできなくなってしまった。
どんな環境で育てば、まだ未成年の少年がこんな顔をできるのか……何て、残酷なのかと、俺は胸が締め付けられた。
「つまらないことを話したな?」
「あ、いや……」
「昴? 寝る前に、一つだけ頼まれてくれないか?」
「え……うん、俺にできるなら……」
俺の空気を察したか、自分の言葉を後悔したか、アランは表情を変えて、俺に頼みがあると伺うように、珍しくどこか慎重に問いかけてきた。
そんなアランらしくない態度に少し疑問に思いながらも、俺は頷く。
「……クレアを、捜してくれないか?」
「うん、わかった……え?」
「それで、話でも聞いてくれ」
申し訳なさそうに、アランは俺のことを見つめた。
自分にはその資格はないからと……訴えが聞こえてくるようで、俺はうんと頷くしかなかった。
その時に俺は初めて、気持ちを受け取ってもらえない人間だけでなく、気持ちを受け取ることができない人間も、すごく傷つくのだと、思い知った。
***
俺はアランと別れて、約束した通りにクレアのことを捜した。
談話室、キッチン、家の周りを本当にくまなく捜し、最後の砦となった屋上に向かう。
そして、階段を駆け上り、扉に手をかけようとした瞬間に……
「お願いだから、もう放っておいて!」
乱暴にバンッと扉が開かれ、そこには目当ての人物が立っていた。
まさかの俺の登場に、クレアはひどく驚いたようで、気まずそうに俺から目を逸らした。
「クレア……!! 少し、話を……」
けど、後ろから聞こえてきた声にハッとしてから、クレアは俺を一回見てそのまま階段を駆け下りて行ってしまった。
状況についていけてない俺は、とりあえず聞こえた聞き覚えのある声の主を闇の中で捜す。
「そこにいるの、ハロルドか?」
「む? もしや、昴くんか!?」
「あ、うん」
「なぜ、君がこんなとこにいるんだ!?」
闇の中でもわかるハロルドの驚きっぷりは、一周回って安心するものがある。
そう思って、ハロルドの質問にそれはお互い様だと返そうとした時、やけに響く声が闇を照らす。
「まったく、最近の我らがリーダーはご立腹ね?」
雲に隠れていた月が顔を出し、その月明かりとともに俺達の目の前に現れたのは、ゾーイだった。
「クレア? 今、俺が困ってること、お前ならわかるだろ?」
「……そうよ、ね……わかったわ」
震える声を絞り出しながらアランに残してから、クレアは俺の目の前を猛スピードで走り去って行った。
「……また、お前か」
「いや、アラン! ごめん! 今回は本当に立ち聞きする気は……!!」
俺は夜中にトイレに起きたことを、これほどまでに後悔したことはなかった。
そのトイレの帰りに、俺は廊下の奥で誰かの言い争うような声が聞こえた。
深刻そうなら止めなければと、変な正義感が湧き上がり見に行ってみると、そこにいたのがクレアとアラン。
正体に気付いて、これはまずいと場を去ろうとしたまさにその時に、クレアはアランにおそらく振られ、そのクレアが走り去る姿を見送り、まんまと隠れてたとこをアランに見つかって詰められてる今にいたる……というわけだ。
何で、ここ最近ずっとこんな場面に出くわすんだよ、不可抗力だ!
「まあ、お前の焦りようで、嘘か本当かはわかる。別に怒ってもいないしな」
「え? ありがとう! 本当に、本当に重ね重ねごめん!」
もういっその事、土下座でもしようかと思ってた時に、アランのため息混じりのそんな声が聞こえる。
そして、俺は安堵と同時に、改めてアラン頭を下げた。
本当に、アランが丸くなってくれて嬉しいことこの上ないな!
「それで、何か質問があるか?」
しかし、そんな安心もつかの間で、アランは俺が今一番聞きたくて、一番聞きにくいことを指すだろうその質問を淡々と投げかけてきた。
思わず、固まった俺だけど、何だかこのまま首を振るのも違う気がした。
そう、違う気がしたから、俺は思い切ってアランに聞いてみることにした。
「あの……誤解はしないでくれ。全部を聞いてたわけじゃないんだ」
「そうか。まあ、そうだとしても、空気的に何が起こったかはわかるだろ?」
「まあ、おそらくね……アラン、君はクレアを……」
どうにか直接的な表現を使わず、何があったかのを聞こうとした俺は、きっとゾーイからしたら、回りくどくて器が小さい人間だと言われるだろう。
ああ、その光景が鮮明に浮かぶよ……
それでも、俺にはこんなやり方しかできないだろうから、せめてゆっくり自分のペースでと思ったのに……
「はっきりしないで、ズルズルと期待を持たせるのは優しさじゃない」
「え?」
サラッとアラン本人によって、そのペースは乱されることになった。
そして、思わず、聞き返した俺だったけど……
「俺は、それをクソ親父に期待する母親の背中で学んだ」
俺を見ず、宙を睨むそのアランの、憎しみと悲しみに満ちた顔を見たら、俺は一歩も動けず、話すことすらできなくなってしまった。
どんな環境で育てば、まだ未成年の少年がこんな顔をできるのか……何て、残酷なのかと、俺は胸が締め付けられた。
「つまらないことを話したな?」
「あ、いや……」
「昴? 寝る前に、一つだけ頼まれてくれないか?」
「え……うん、俺にできるなら……」
俺の空気を察したか、自分の言葉を後悔したか、アランは表情を変えて、俺に頼みがあると伺うように、珍しくどこか慎重に問いかけてきた。
そんなアランらしくない態度に少し疑問に思いながらも、俺は頷く。
「……クレアを、捜してくれないか?」
「うん、わかった……え?」
「それで、話でも聞いてくれ」
申し訳なさそうに、アランは俺のことを見つめた。
自分にはその資格はないからと……訴えが聞こえてくるようで、俺はうんと頷くしかなかった。
その時に俺は初めて、気持ちを受け取ってもらえない人間だけでなく、気持ちを受け取ることができない人間も、すごく傷つくのだと、思い知った。
***
俺はアランと別れて、約束した通りにクレアのことを捜した。
談話室、キッチン、家の周りを本当にくまなく捜し、最後の砦となった屋上に向かう。
そして、階段を駆け上り、扉に手をかけようとした瞬間に……
「お願いだから、もう放っておいて!」
乱暴にバンッと扉が開かれ、そこには目当ての人物が立っていた。
まさかの俺の登場に、クレアはひどく驚いたようで、気まずそうに俺から目を逸らした。
「クレア……!! 少し、話を……」
けど、後ろから聞こえてきた声にハッとしてから、クレアは俺を一回見てそのまま階段を駆け下りて行ってしまった。
状況についていけてない俺は、とりあえず聞こえた聞き覚えのある声の主を闇の中で捜す。
「そこにいるの、ハロルドか?」
「む? もしや、昴くんか!?」
「あ、うん」
「なぜ、君がこんなとこにいるんだ!?」
闇の中でもわかるハロルドの驚きっぷりは、一周回って安心するものがある。
そう思って、ハロルドの質問にそれはお互い様だと返そうとした時、やけに響く声が闇を照らす。
「まったく、最近の我らがリーダーはご立腹ね?」
雲に隠れていた月が顔を出し、その月明かりとともに俺達の目の前に現れたのは、ゾーイだった。
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