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第三章-⑸ クレアとハロルド
才色兼備な彼女の秘密
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「え? え? なっ、何を!? ぞぞぞぞぞぞっ、ゾーイ! 君は、何をいきなり根も葉もないようなことを……はははははははははっ!」
「そういうのいいから。面倒だし、根と葉しかないから。早く話せ」
満月の光に照らされたハロルドは、首まで真っ赤で、大量の汗と、身振り手振りが大きくなるという事態。
そんなハロルドの動揺というよりも壊れっぷりは、見てるこっちが気の毒になってしまうほどだった。
けど、またゾーイはデリカシーとか相手を気遣うとか関係なく、ハロルドを真正面から叩きつけていった。
ごめん、ハロルド……何もできない俺を許せ。
「そもそも! そもそもだ! なぜ、この私が、クレアを……その、あー、クレアのことを、すすすすすっ、すう……恋焦がれているなんて!」
「好きは言えなくて、恋焦がれてるは言えるとか意味わからんわ。よっぽど、その方が恥ずかしいでしょうよ」
ごめん、ハロルド……俺もゾーイと同じことを思ったよ。
けど、もしそうは思っても、普通はゾーイみたいに言葉にしないけどね……
「あのね? クレア含めてナサニエル組は全員あんたの気持ち知ってるの。死ぬほどわかりやすいもん」
「……え?」
「あの、ゾーイ?」
「というか、下手すりゃ王国全体に筒抜けだから、まあ安心しろ。オーケー?」
「……え?」
「ゾーイ!? もうやめてあげて!」
俺の必死の叫びが届くはずもなく、ゾーイは残酷なことを話し続け、ハロルドはすっかり放心していた。
全部言った、全部言ったよ!? 本人にズバッと言っちゃったよ!?
あまりの容赦のなさにびっくりだよ!?
事実しかないけど、安心とオーケーの要素皆無だよ!?
そんな地獄のような俺達のやり取りがしばらく続いて、ハロルドは泣く泣く現実を無理矢理受け入れさせられた。
「逆に、あんなにあからさまな状態で隠してるつもりだったのが、驚きよ」
「そそっ、そうなのか……ああ……」
ゾーイのトドメの言葉に、ハロルドはしっかりと落ち込み、頭を抱えた。
「ハロルド! 大丈夫だぞ! 自分の気持ちを素直にさらけ出すのは、何も別に悪いことじゃないし!」
「昴くん、ありがとう……」
とてもじゃないけど、ハロルドがあまりに不憫で、我ながら必死にハロルドのことを慰めた。
「それで? どうして好きになったのだよ! 太眉くん? あ、これ久しぶりに言ったわ」
しかし、ゾーイはどこまでもゾーイだった。
ハロルドは観念したように、自分がクレアに恋をしたきっかけを、満天の夜空の下で話し始めたのだ。
そして、俺とゾーイは、ハロルドのことを真ん中にして、静かに聞いていた。
「実を言うと、私は最初の頃クレアをあまり良くは思っていなかったんだ」
「え? そうなのか?」
俺は思わず、ハロルドの言葉に聞き返していた。
クレアは誰がどう見ても美人だ。
ハロルドはてっきり、クレアのその美貌に一目惚れをしたのだろうと、俺は思っていたから、少し意外だったのだ。
「クレアは特待生で入学し、初めから目立っていただろう? それに優秀な彼女は当然のように同じくアーデルに入り、そのおかげで自然と注目を集める彼女のことをよく目にはしていたが……当時の私は、どうも気が強そうで近寄り難いクレアとは距離を測りかねていた」
「へー、ハロルドって苦手意識って感情あるんだ? 今日一番の驚きだわ」
「ゾーイ……あの、一体それはどういう意味だろうか……?」
「ハロルド? やめておけ、無駄に傷付くだけだぞ」
次から次へと出てくるハロルドからの本音は意外なことばかりで、ゾーイと同じように驚いていた……けど、ゾーイ?
さすがに正直が過ぎるってば……
そんなゾーイからの正直すぎて遠慮皆無な言葉に、ハロルドは困惑マックスでゾーイに問いかける。
けど、やんわりと俺はそれを止めた。
傷付く未来が見えまくってるここで止めなきゃ、俺達は仲間ではないと思う。
「ま、まあ、とにかく! すぐに、私はアーデルの実習班長として重要な責任を背負ったわけだ! そんな私が、差別は良くないと思ってな! 同時に三年間苦楽をともにするアーデルのメンバーのことを知らねばと思って、自らクレアに話しかけたんだ!」
珍しく、ハロルドは俺の言葉の意味を汲み取ったのか、すぐに話題転換することに成功していた。
きっと、今までのゾーイに関する安心と信頼の実績から学んだのだろう。
「すると、話してみてクレアのことを誤解していたのだと……私は思い知った。彼女は、長女で下に弟と妹が六人もいる大家族らしいんだが……」
「待て! し、下に六人も!?」
「わお、稀に見る大家族ね」
途中で遮って申し訳ないけど、さすがにこれは指摘しないわけはないだろう。
空島には子どもは何人までなんて法律は特にないが、基本的に空島では最大で子どもは三人までがセオリーだ。
六人は見たこともないし……さすがのゾーイも、そこそこ驚いているようだ。
「私も聞いた時は驚いた。そして、それに比例するかのように、生活もあまり裕福ではないようで……ご両親は、仕事を掛け持ちして朝から晩まで働き、必死に子ども達を育ててたそうだ。そんなご両親の背中を見て、クレアは自分が家族を守ると、必死に勉強して特待生の地位を手に入れたのだと」
それを聞いて俺は、今にも涙が溢れ出してしまいそうだった……
「そういうのいいから。面倒だし、根と葉しかないから。早く話せ」
満月の光に照らされたハロルドは、首まで真っ赤で、大量の汗と、身振り手振りが大きくなるという事態。
そんなハロルドの動揺というよりも壊れっぷりは、見てるこっちが気の毒になってしまうほどだった。
けど、またゾーイはデリカシーとか相手を気遣うとか関係なく、ハロルドを真正面から叩きつけていった。
ごめん、ハロルド……何もできない俺を許せ。
「そもそも! そもそもだ! なぜ、この私が、クレアを……その、あー、クレアのことを、すすすすすっ、すう……恋焦がれているなんて!」
「好きは言えなくて、恋焦がれてるは言えるとか意味わからんわ。よっぽど、その方が恥ずかしいでしょうよ」
ごめん、ハロルド……俺もゾーイと同じことを思ったよ。
けど、もしそうは思っても、普通はゾーイみたいに言葉にしないけどね……
「あのね? クレア含めてナサニエル組は全員あんたの気持ち知ってるの。死ぬほどわかりやすいもん」
「……え?」
「あの、ゾーイ?」
「というか、下手すりゃ王国全体に筒抜けだから、まあ安心しろ。オーケー?」
「……え?」
「ゾーイ!? もうやめてあげて!」
俺の必死の叫びが届くはずもなく、ゾーイは残酷なことを話し続け、ハロルドはすっかり放心していた。
全部言った、全部言ったよ!? 本人にズバッと言っちゃったよ!?
あまりの容赦のなさにびっくりだよ!?
事実しかないけど、安心とオーケーの要素皆無だよ!?
そんな地獄のような俺達のやり取りがしばらく続いて、ハロルドは泣く泣く現実を無理矢理受け入れさせられた。
「逆に、あんなにあからさまな状態で隠してるつもりだったのが、驚きよ」
「そそっ、そうなのか……ああ……」
ゾーイのトドメの言葉に、ハロルドはしっかりと落ち込み、頭を抱えた。
「ハロルド! 大丈夫だぞ! 自分の気持ちを素直にさらけ出すのは、何も別に悪いことじゃないし!」
「昴くん、ありがとう……」
とてもじゃないけど、ハロルドがあまりに不憫で、我ながら必死にハロルドのことを慰めた。
「それで? どうして好きになったのだよ! 太眉くん? あ、これ久しぶりに言ったわ」
しかし、ゾーイはどこまでもゾーイだった。
ハロルドは観念したように、自分がクレアに恋をしたきっかけを、満天の夜空の下で話し始めたのだ。
そして、俺とゾーイは、ハロルドのことを真ん中にして、静かに聞いていた。
「実を言うと、私は最初の頃クレアをあまり良くは思っていなかったんだ」
「え? そうなのか?」
俺は思わず、ハロルドの言葉に聞き返していた。
クレアは誰がどう見ても美人だ。
ハロルドはてっきり、クレアのその美貌に一目惚れをしたのだろうと、俺は思っていたから、少し意外だったのだ。
「クレアは特待生で入学し、初めから目立っていただろう? それに優秀な彼女は当然のように同じくアーデルに入り、そのおかげで自然と注目を集める彼女のことをよく目にはしていたが……当時の私は、どうも気が強そうで近寄り難いクレアとは距離を測りかねていた」
「へー、ハロルドって苦手意識って感情あるんだ? 今日一番の驚きだわ」
「ゾーイ……あの、一体それはどういう意味だろうか……?」
「ハロルド? やめておけ、無駄に傷付くだけだぞ」
次から次へと出てくるハロルドからの本音は意外なことばかりで、ゾーイと同じように驚いていた……けど、ゾーイ?
さすがに正直が過ぎるってば……
そんなゾーイからの正直すぎて遠慮皆無な言葉に、ハロルドは困惑マックスでゾーイに問いかける。
けど、やんわりと俺はそれを止めた。
傷付く未来が見えまくってるここで止めなきゃ、俺達は仲間ではないと思う。
「ま、まあ、とにかく! すぐに、私はアーデルの実習班長として重要な責任を背負ったわけだ! そんな私が、差別は良くないと思ってな! 同時に三年間苦楽をともにするアーデルのメンバーのことを知らねばと思って、自らクレアに話しかけたんだ!」
珍しく、ハロルドは俺の言葉の意味を汲み取ったのか、すぐに話題転換することに成功していた。
きっと、今までのゾーイに関する安心と信頼の実績から学んだのだろう。
「すると、話してみてクレアのことを誤解していたのだと……私は思い知った。彼女は、長女で下に弟と妹が六人もいる大家族らしいんだが……」
「待て! し、下に六人も!?」
「わお、稀に見る大家族ね」
途中で遮って申し訳ないけど、さすがにこれは指摘しないわけはないだろう。
空島には子どもは何人までなんて法律は特にないが、基本的に空島では最大で子どもは三人までがセオリーだ。
六人は見たこともないし……さすがのゾーイも、そこそこ驚いているようだ。
「私も聞いた時は驚いた。そして、それに比例するかのように、生活もあまり裕福ではないようで……ご両親は、仕事を掛け持ちして朝から晩まで働き、必死に子ども達を育ててたそうだ。そんなご両親の背中を見て、クレアは自分が家族を守ると、必死に勉強して特待生の地位を手に入れたのだと」
それを聞いて俺は、今にも涙が溢れ出してしまいそうだった……
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