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第三章-⑹ サトルと菜々美とモーリス
豹変した知らない親友
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「は? 何が言いたいんだよ……?」
何気ない一言なのか、何か意味が含まれているのかわからない君からの疑問に誰より早く答えた、サトル。
怪訝そうな、笑っているのに目の奥が笑っていないそんな顔を、終始サトルはゾーイに向けており、少し怖かった……
「そのままよ。あたし、昨日の真由と喧嘩して出て行ったのを最後に、菜々美のこと見てないもの」
「え? 菜々美なら、昨日の夜には家に帰ったはずだけど……」
「え、夜に!?」
そんなサトルをものともせず、ゾーイはマイペースに話を進める。
そのゾーイの発言に、驚いたような様子で答えるモカ……さらにそれに驚くように、真由が声を上げた。
「うん……家まで送って行こうかって言ったんだけど、電気が通って、すっかり明るくなったから大丈夫だって」
「待って? それじゃ、菜々美は昨日の夜から部屋にいるってこと?」
そんな真由に、モカは少し不安そうに俺達のことを見回しながら、告げる。
何だ? この嫌な予感の胸騒ぎは……
俺はその時、言葉にできない動物的な直感というのか、早く気付かなければ後悔するというような、足を引きずり込まれるような、嫌な感覚に襲われた。
そして、モカの言葉に続くようにソニアが声を上げた時だった……
「待っ……おい、サトル!!」
サトルは突然談話室を飛び出した、俺の制止する声なんてまったく耳に入ってはいなかっただろう。
俺達は顔を見合わせて、とりあえずサトルの後を急いで追いかけた。
「菜々美!! 菜々美、中にいるのか!?」
追いついた時には、案の定サトルは橘さんの部屋のドアを強く何度も何度も叩きながら、怒鳴り声を上げていた。
「菜々美!! 頼む、返事しろって!!」
「雨野、落ち着けって!」
「そうだって、まだ夜明け前だ。普通に寝てるだけだろ」
俺達のことなんて眼中になく、ドアを叩きながら怒鳴るサトルを、望とシンが全力で抑えるが……
「うるっせえ!! 何の根拠がある!! 全員そこどけ、ドアを突き破る!!」
サトルの剣幕に、思わず望とシンは手を離す。
俺も思わず、一歩下がってしまうほどのサトルのそれは、普段からの穏やかな彼とはかけ離れたものだった。
そんなサトルを誰一人として止めることができずにいた、その時……
「生け贄って、菜々美のこと?」
ゆっくりと歩いて、その場に遅れて登場したゾーイ。
君は手元の通信機の向こう側に淡々とそう問いかけた……
「ご名答です」
そして、その質問には先ほどぶりのモーリスの落ち着いている声が、通信機を通して返事を返した。
モーリスの声とともに、サトルはドアへの体当たりを決め、中に入る。
俺達を嘲笑うかのように、そこはもぬけの殻だった。
「……菜々美? 菜々美!?」
俺達のことを押し退けて、誰より先に中に入った真由。
真由は橘さんを捜しながら、橘さんの名前を、何度も、何度も呼ぶ。
「嫌よ……嫌だよ、菜々美……こんなのイヤアアアアア!!!!」
そして、その空間での橘さんの不在を確認すると、真由は膝から崩れ落ち、力のある限り叫んで、涙を流した。
俺と望は慌てて駆け寄り、真由のことを支える。
「真由、大丈夫だ……大丈夫だから!」
叫びながら号泣する真由は、そのまま俺に抱き着いて泣き続けた。
強く抱き締める俺と、背中を優しく摩り続ける望。
情けないことに、こんな時にどんな言葉をかけたらいいのかわからず、俺は安っぽい大丈夫という便利な言葉で誤魔化していた……
「……モーリス、このゴミカスが!! 菜々美に何かあってみろよ? 全員、火あぶりにして殺してやるからな!!」
一方で、サトルは、橘さんの不在を確認すると同時に、ゾーイの手から通信機を奪い取り、そこに怒鳴った。
そして、その時のサトルの顔は俺が今まで生きてきた中で見たことない狂気に満ちたもので、俺はまた怖くなった。
サトルの変わり果てた姿と、橘さんが攫われてしまった絶望的な状況で、誰一人として反応できないでいると……
「雨野サトル。今からでも遅くはありません、あなたは王になれます」
モーリスが、俺達とは相反するほどの落ち着いた声で、サトルにそう告げた。
何気ない一言なのか、何か意味が含まれているのかわからない君からの疑問に誰より早く答えた、サトル。
怪訝そうな、笑っているのに目の奥が笑っていないそんな顔を、終始サトルはゾーイに向けており、少し怖かった……
「そのままよ。あたし、昨日の真由と喧嘩して出て行ったのを最後に、菜々美のこと見てないもの」
「え? 菜々美なら、昨日の夜には家に帰ったはずだけど……」
「え、夜に!?」
そんなサトルをものともせず、ゾーイはマイペースに話を進める。
そのゾーイの発言に、驚いたような様子で答えるモカ……さらにそれに驚くように、真由が声を上げた。
「うん……家まで送って行こうかって言ったんだけど、電気が通って、すっかり明るくなったから大丈夫だって」
「待って? それじゃ、菜々美は昨日の夜から部屋にいるってこと?」
そんな真由に、モカは少し不安そうに俺達のことを見回しながら、告げる。
何だ? この嫌な予感の胸騒ぎは……
俺はその時、言葉にできない動物的な直感というのか、早く気付かなければ後悔するというような、足を引きずり込まれるような、嫌な感覚に襲われた。
そして、モカの言葉に続くようにソニアが声を上げた時だった……
「待っ……おい、サトル!!」
サトルは突然談話室を飛び出した、俺の制止する声なんてまったく耳に入ってはいなかっただろう。
俺達は顔を見合わせて、とりあえずサトルの後を急いで追いかけた。
「菜々美!! 菜々美、中にいるのか!?」
追いついた時には、案の定サトルは橘さんの部屋のドアを強く何度も何度も叩きながら、怒鳴り声を上げていた。
「菜々美!! 頼む、返事しろって!!」
「雨野、落ち着けって!」
「そうだって、まだ夜明け前だ。普通に寝てるだけだろ」
俺達のことなんて眼中になく、ドアを叩きながら怒鳴るサトルを、望とシンが全力で抑えるが……
「うるっせえ!! 何の根拠がある!! 全員そこどけ、ドアを突き破る!!」
サトルの剣幕に、思わず望とシンは手を離す。
俺も思わず、一歩下がってしまうほどのサトルのそれは、普段からの穏やかな彼とはかけ離れたものだった。
そんなサトルを誰一人として止めることができずにいた、その時……
「生け贄って、菜々美のこと?」
ゆっくりと歩いて、その場に遅れて登場したゾーイ。
君は手元の通信機の向こう側に淡々とそう問いかけた……
「ご名答です」
そして、その質問には先ほどぶりのモーリスの落ち着いている声が、通信機を通して返事を返した。
モーリスの声とともに、サトルはドアへの体当たりを決め、中に入る。
俺達を嘲笑うかのように、そこはもぬけの殻だった。
「……菜々美? 菜々美!?」
俺達のことを押し退けて、誰より先に中に入った真由。
真由は橘さんを捜しながら、橘さんの名前を、何度も、何度も呼ぶ。
「嫌よ……嫌だよ、菜々美……こんなのイヤアアアアア!!!!」
そして、その空間での橘さんの不在を確認すると、真由は膝から崩れ落ち、力のある限り叫んで、涙を流した。
俺と望は慌てて駆け寄り、真由のことを支える。
「真由、大丈夫だ……大丈夫だから!」
叫びながら号泣する真由は、そのまま俺に抱き着いて泣き続けた。
強く抱き締める俺と、背中を優しく摩り続ける望。
情けないことに、こんな時にどんな言葉をかけたらいいのかわからず、俺は安っぽい大丈夫という便利な言葉で誤魔化していた……
「……モーリス、このゴミカスが!! 菜々美に何かあってみろよ? 全員、火あぶりにして殺してやるからな!!」
一方で、サトルは、橘さんの不在を確認すると同時に、ゾーイの手から通信機を奪い取り、そこに怒鳴った。
そして、その時のサトルの顔は俺が今まで生きてきた中で見たことない狂気に満ちたもので、俺はまた怖くなった。
サトルの変わり果てた姿と、橘さんが攫われてしまった絶望的な状況で、誰一人として反応できないでいると……
「雨野サトル。今からでも遅くはありません、あなたは王になれます」
モーリスが、俺達とは相反するほどの落ち着いた声で、サトルにそう告げた。
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