148 / 257
第三章-⑹ サトルと菜々美とモーリス
無罪だと叫ぶシーンかな
しおりを挟む
「え? ゾーイ、何で切ったの!?」
「次はどこと繋ぐ気なの!?」
しかし、ゾーイはモーリスからの返事を受け取ると同時に通信を切った。
慌ててレオとモカは、ゾーイのことを止めようとするが……
「決まってるでしょうよ? クレア、聞こえる?」
ゾーイのその言葉に、とりあえずレオとモカは引かざる負えなかった。
そして、俺達の中でたくさんの処理が追いつかぬまま、またその場に静寂が訪れることになってしまった。
「ハロルド? ジェームズ? 誰か聞こえてる?」
「……イッ……ゾ、イ……!!」
すると、ゾーイの呼びかけに機械音独特の砂嵐のようなノイズの後、小さく聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「ゾーイ……!! お願いだから、声が聞こえてたら返事をして……」
そして、砂嵐があけ、はっきりと聞こえてきた声に俺達はただただ安心した。
「クレア、大丈夫。聞こえてる」
「え……? 待っ……」
淡々としたいつも通りのゾーイに答えようとしたクレアだったが、すぐ何かに驚いたような声を上げて、再び声が聞こえなくなる。
どうしたのかと、心配になった時……
「ゾーイ? ねえ、本当にゾーイ!?」
「その声はジェームズね? ハロルドはどうしたの?」
「わ、私はここだ! ここにいる!」
泣き出しそうな、安心したようなジェームズとハロルドの声が聞こえたのだ。
しかし、よかったとほっと一息ついたのもつかの間だった。
「わかったから。コタロウは?」
通信機の向こうでこれでもかと声を張り上げるジェームズとハロルドを軽くかわして、ゾーイは問いかけた。
「……ゾーイ、どうしよう」
しかし、そのクレアの返答は不安に押しつぶされてしまいそうなものだった。
「何があったの?」
「ケガ……あの……!! コタロウが、ケガをしちゃって……」
ゾーイの質問に、震えながら答えたクレアの言葉に俺は思考が停止した。
ケガ? 誰が……コタロウが? は?
「コタロウは無事なの?」
「う、うん……止血はしたけど、何が起こってるのか、わからなくて……!!」
「今、どこにいるの?」
「わからないの……ナサニエルに到着をしたと同時に意識を失わされて、気付くと檻みたいなとこで……」
他のみんなもそれぞれ予想外のことにパニックに陥ってしまったのか、ゾーイ以外は誰も言葉を発せずにいた。
そんな空間で、冷静に淡々とクレアに質問をするゾーイは、ある意味ではすごく異様だった……何で、そんなに……
「な、なあ……ナサニエルに、檻なんてあったか?」
すると、デルタが恐る恐るといった感じで俺達に問いかけてきた。
何よりも、その疑問は最もだった。
ナサニエルは養成施設で、あくまで学校として機能している。
体罰はおろか、檻なんて……と、そう全員が頭を捻っていた時だ。
「檻はないけど、地下の食料庫が鉄格子仕様になってるわよ」
ゾーイは、真顔で俺達に告げたのだ。
「はあ!? 何のために……」
「さあね? まあ、地下だし、通気性の関係とかじゃない?」
すかさず、望がゾーイに叫ぶが、あくまでゾーイは知らぬ存ぜぬの様子。
てか、待て? 地下って、関係者以外は立ち入り禁止だよな?
まあ、ゾーイだしな、もうそんなことじゃ驚かないけど……
「ゾーイ……それと、ここに入れられる時にすごく妙なことを聞いたの」
「妙なこと?」
すると、この場の空気から緊張感が消えかかっていた時、クレアは困惑した様子で、ゾーイに告げる。
「お前らの国から、一人生け贄を攫って来たって……」
クレアの言葉に、俺は背中に一瞬で悪寒が走るのがわかった。
生け贄を攫う? この国からって……
「……が、わか……そ……!!」
「クレア? 待て、ハロルド!! ジェームズ!! コタロウ!!」
不気味な空気がその場を支配しようとしたその時だ、突如通信機に謎のノイズ音が響き渡ったかと思えば、それは一瞬にして、クレア達の声を封じた。
そして、焦ったように通信機に叫ぶアランだったが、その必死の呼びかけに返事が返ってくることはなかった……
「クソが……!!」
「今のって、まさか妨害電波か?」
通信が完全に途切れると、アランはイラついたように、机を強く叩いた。
それに続くように、シンが怪訝な顔でそう呟く。
何があった……いや、今ナサニエルで何が起こっている?
モーリスは何だったんだ? コタロウのケガは? 檻に入れられるって……それより、他の二百人近いナサニエルの生徒はどうしたんだ?
俺の頭の中に、次から次へとワードが浮かんでは消え去りを繰り返し、何も考えが進まず、その場の誰もが次の判断を探していた時だ……
「……ねえ、聞きたいんだけどさ、菜々美って、今どこにいる?」
君はさらに、俺達を追い詰める言葉を残酷なまでにはっきりと吐き出した。
「次はどこと繋ぐ気なの!?」
しかし、ゾーイはモーリスからの返事を受け取ると同時に通信を切った。
慌ててレオとモカは、ゾーイのことを止めようとするが……
「決まってるでしょうよ? クレア、聞こえる?」
ゾーイのその言葉に、とりあえずレオとモカは引かざる負えなかった。
そして、俺達の中でたくさんの処理が追いつかぬまま、またその場に静寂が訪れることになってしまった。
「ハロルド? ジェームズ? 誰か聞こえてる?」
「……イッ……ゾ、イ……!!」
すると、ゾーイの呼びかけに機械音独特の砂嵐のようなノイズの後、小さく聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「ゾーイ……!! お願いだから、声が聞こえてたら返事をして……」
そして、砂嵐があけ、はっきりと聞こえてきた声に俺達はただただ安心した。
「クレア、大丈夫。聞こえてる」
「え……? 待っ……」
淡々としたいつも通りのゾーイに答えようとしたクレアだったが、すぐ何かに驚いたような声を上げて、再び声が聞こえなくなる。
どうしたのかと、心配になった時……
「ゾーイ? ねえ、本当にゾーイ!?」
「その声はジェームズね? ハロルドはどうしたの?」
「わ、私はここだ! ここにいる!」
泣き出しそうな、安心したようなジェームズとハロルドの声が聞こえたのだ。
しかし、よかったとほっと一息ついたのもつかの間だった。
「わかったから。コタロウは?」
通信機の向こうでこれでもかと声を張り上げるジェームズとハロルドを軽くかわして、ゾーイは問いかけた。
「……ゾーイ、どうしよう」
しかし、そのクレアの返答は不安に押しつぶされてしまいそうなものだった。
「何があったの?」
「ケガ……あの……!! コタロウが、ケガをしちゃって……」
ゾーイの質問に、震えながら答えたクレアの言葉に俺は思考が停止した。
ケガ? 誰が……コタロウが? は?
「コタロウは無事なの?」
「う、うん……止血はしたけど、何が起こってるのか、わからなくて……!!」
「今、どこにいるの?」
「わからないの……ナサニエルに到着をしたと同時に意識を失わされて、気付くと檻みたいなとこで……」
他のみんなもそれぞれ予想外のことにパニックに陥ってしまったのか、ゾーイ以外は誰も言葉を発せずにいた。
そんな空間で、冷静に淡々とクレアに質問をするゾーイは、ある意味ではすごく異様だった……何で、そんなに……
「な、なあ……ナサニエルに、檻なんてあったか?」
すると、デルタが恐る恐るといった感じで俺達に問いかけてきた。
何よりも、その疑問は最もだった。
ナサニエルは養成施設で、あくまで学校として機能している。
体罰はおろか、檻なんて……と、そう全員が頭を捻っていた時だ。
「檻はないけど、地下の食料庫が鉄格子仕様になってるわよ」
ゾーイは、真顔で俺達に告げたのだ。
「はあ!? 何のために……」
「さあね? まあ、地下だし、通気性の関係とかじゃない?」
すかさず、望がゾーイに叫ぶが、あくまでゾーイは知らぬ存ぜぬの様子。
てか、待て? 地下って、関係者以外は立ち入り禁止だよな?
まあ、ゾーイだしな、もうそんなことじゃ驚かないけど……
「ゾーイ……それと、ここに入れられる時にすごく妙なことを聞いたの」
「妙なこと?」
すると、この場の空気から緊張感が消えかかっていた時、クレアは困惑した様子で、ゾーイに告げる。
「お前らの国から、一人生け贄を攫って来たって……」
クレアの言葉に、俺は背中に一瞬で悪寒が走るのがわかった。
生け贄を攫う? この国からって……
「……が、わか……そ……!!」
「クレア? 待て、ハロルド!! ジェームズ!! コタロウ!!」
不気味な空気がその場を支配しようとしたその時だ、突如通信機に謎のノイズ音が響き渡ったかと思えば、それは一瞬にして、クレア達の声を封じた。
そして、焦ったように通信機に叫ぶアランだったが、その必死の呼びかけに返事が返ってくることはなかった……
「クソが……!!」
「今のって、まさか妨害電波か?」
通信が完全に途切れると、アランはイラついたように、机を強く叩いた。
それに続くように、シンが怪訝な顔でそう呟く。
何があった……いや、今ナサニエルで何が起こっている?
モーリスは何だったんだ? コタロウのケガは? 檻に入れられるって……それより、他の二百人近いナサニエルの生徒はどうしたんだ?
俺の頭の中に、次から次へとワードが浮かんでは消え去りを繰り返し、何も考えが進まず、その場の誰もが次の判断を探していた時だ……
「……ねえ、聞きたいんだけどさ、菜々美って、今どこにいる?」
君はさらに、俺達を追い詰める言葉を残酷なまでにはっきりと吐き出した。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる