エリート希望者の地球再生記

行倉宙華

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第三章-⑹ サトルと菜々美とモーリス

無罪だと叫ぶシーンかな

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「え? ゾーイ、何で切ったの!?」
「次はどこと繋ぐ気なの!?」


 しかし、ゾーイはモーリスからの返事を受け取ると同時に通信を切った。
 慌ててレオとモカは、ゾーイのことを止めようとするが……


「決まってるでしょうよ? クレア、聞こえる?」


 ゾーイのその言葉に、とりあえずレオとモカは引かざる負えなかった。
 そして、俺達の中でたくさんの処理が追いつかぬまま、またその場に静寂が訪れることになってしまった。


「ハロルド? ジェームズ? 誰か聞こえてる?」
「……イッ……ゾ、イ……!!」


 すると、ゾーイの呼びかけに機械音独特の砂嵐のようなノイズの後、小さく聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「ゾーイ……!! お願いだから、声が聞こえてたら返事をして……」


 そして、砂嵐があけ、はっきりと聞こえてきた声に俺達はただただ安心した。


「クレア、大丈夫。聞こえてる」
「え……? 待っ……」


 淡々としたいつも通りのゾーイに答えようとしたクレアだったが、すぐ何かに驚いたような声を上げて、再び声が聞こえなくなる。
 どうしたのかと、心配になった時……


「ゾーイ? ねえ、本当にゾーイ!?」
「その声はジェームズね? ハロルドはどうしたの?」
「わ、私はここだ! ここにいる!」


 泣き出しそうな、安心したようなジェームズとハロルドの声が聞こえたのだ。
 しかし、よかったとほっと一息ついたのもつかの間だった。


「わかったから。コタロウは?」


 通信機の向こうでこれでもかと声を張り上げるジェームズとハロルドを軽くかわして、ゾーイは問いかけた。


「……ゾーイ、どうしよう」


 しかし、そのクレアの返答は不安に押しつぶされてしまいそうなものだった。


「何があったの?」
「ケガ……あの……!! コタロウが、ケガをしちゃって……」


 ゾーイの質問に、震えながら答えたクレアの言葉に俺は思考が停止した。
 ケガ? 誰が……コタロウが? は?


「コタロウは無事なの?」
「う、うん……止血はしたけど、何が起こってるのか、わからなくて……!!」
「今、どこにいるの?」
「わからないの……ナサニエルに到着をしたと同時に意識を失わされて、気付くと檻みたいなとこで……」


 他のみんなもそれぞれ予想外のことにパニックに陥ってしまったのか、ゾーイ以外は誰も言葉を発せずにいた。
 そんな空間で、冷静に淡々とクレアに質問をするゾーイは、ある意味ではすごく異様だった……何で、そんなに……


「な、なあ……ナサニエルに、檻なんてあったか?」


 すると、デルタが恐る恐るといった感じで俺達に問いかけてきた。
 何よりも、その疑問は最もだった。
 ナサニエルは養成施設で、あくまで学校として機能している。
 体罰はおろか、檻なんて……と、そう全員が頭を捻っていた時だ。


「檻はないけど、地下の食料庫が鉄格子仕様になってるわよ」


 ゾーイは、真顔で俺達に告げたのだ。


「はあ!? 何のために……」
「さあね? まあ、地下だし、通気性の関係とかじゃない?」


 すかさず、望がゾーイに叫ぶが、あくまでゾーイは知らぬ存ぜぬの様子。
 てか、待て? 地下って、関係者以外は立ち入り禁止だよな?
 まあ、ゾーイだしな、もうそんなことじゃ驚かないけど……


「ゾーイ……それと、ここに入れられる時にすごく妙なことを聞いたの」
「妙なこと?」


 すると、この場の空気から緊張感が消えかかっていた時、クレアは困惑した様子で、ゾーイに告げる。


「お前らの国から、一人生け贄を攫って来たって……」


 クレアの言葉に、俺は背中に一瞬で悪寒が走るのがわかった。
 生け贄を攫う? この国からって……


「……が、わか……そ……!!」
「クレア? 待て、ハロルド!! ジェームズ!! コタロウ!!」


 不気味な空気がその場を支配しようとしたその時だ、突如通信機に謎のノイズ音が響き渡ったかと思えば、それは一瞬にして、クレア達の声を封じた。
 そして、焦ったように通信機に叫ぶアランだったが、その必死の呼びかけに返事が返ってくることはなかった……


「クソが……!!」
「今のって、まさか妨害電波か?」


 通信が完全に途切れると、アランはイラついたように、机を強く叩いた。
 それに続くように、シンが怪訝な顔でそう呟く。
 何があった……いや、今ナサニエルで何が起こっている?
 モーリスは何だったんだ? コタロウのケガは? 檻に入れられるって……それより、他の二百人近いナサニエルの生徒はどうしたんだ?
 俺の頭の中に、次から次へとワードが浮かんでは消え去りを繰り返し、何も考えが進まず、その場の誰もが次の判断を探していた時だ……


「……ねえ、聞きたいんだけどさ、菜々美って、今どこにいる?」


 君はさらに、俺達を追い詰める言葉を残酷なまでにはっきりと吐き出した。
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