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第三章-⑹ サトルと菜々美とモーリス
嘘に隠れた残酷な事実
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「は? 何言ってんだ? サトルはアイランド35の出身だって……」
俺は条件反射で、サトルの言葉を指摘していた。
ナサニエルに入学して、寮で初めて出会ったあの日、サトルは確かに俺にアイランド35の出身で家は一般家庭の……
そう言葉を続けることは、サトルの気まずそうな顔を見たらできなかった。
「……嘘ついてたのか?」
「昴! 本当に、本当にごめん!」
俺の質問に、サトルはその場で深く頭を下げて謝罪の言葉を告げる。
その瞬間、真由と望が隣から俺の顔を伺っているのがわかった。
俺は今、どんな顔をしているだろう。
少し感覚としてわかるのは、なぜだか口角が上がっていること……その瞬間に俺は理解した。
ああ、笑って誤魔化しているんだと。
「……あ、アイランド58って、あの王制の?」
「え、じゃあ、サトルは正真正銘の本物の王子様ってことかよ!?」
途端にソニアが話を変え、シンがその話に乗っかるようにそう言い放った。
気を遣わせたんだなとすぐにわかったけど、今はすごく有難かった。
これ以上、そのサトルの嘘についての話題を受け止めるには、まだまだ準備が必要だろうから……
「あのさ、話を遮るようでごめんなんだけど、空島って民主制じゃないの?」
そんな時、しばらく黙ったままだったモカがそう問いかけてきた。
振り向くと、そこにはモカとレオの困惑の表情があった。
「あ、気付かなくてごめん。レオとモカは知らないもんな? 空島はアイランド97まで島があって、そのうちの96は確かに民主制なんだ」
「96ってことは……じゃあ、さっき言ってたサトルの出身の島だけが?」
「そう。空島発足時から唯一の王制をとり続けているのが、アイランド58ってわけなんだ」
そうだ、前にレオ、モカ、コタロウには空島の話をしたことがあったけど、そこまで詳しくは話していなかったな。
ぼんやりと思い出してると、デルタがフォローするように、レオとモカに説明してくれる。
それを聞いて、モカは確かめるようにデルタに問いかけて、デルタはそれに頷くのだった。
空島は基本的に空島全体で一つの国のようなもので、アイランド01である中心島が全ての情報を取り仕切っている。
しかし、例外とされており、ほとんど独立国家として成り立っているのがアイランド58だ。
その昔に、空島発足時にその計画に莫大なる支援をした一族がいた。
その一族から支援を続ける条件として出されたのが、自分達が管理する空島を一つもらうこと。
今思えば、何て無茶苦茶な話なのかと非難が上がりそうだが、当時はその一族の力なくては空島を完成させることは不可能だったのだとか……
そんな歴史の名残りというのが、アイランド58の現在まで続く王制の独立国家状態というわけだ。
けど、まさか、そのアイランド58の第一王位継承者がサトルなんて……
「あれ? けど、待って?」
「何だよ、真由? どうし……」
そんなことを思い出してると、真由が何かを思い出したように声を上げた。
すかさず、望が真由に問いかけていたのだが、その後の言葉が途切れた。
俺は不思議に思って振り向くと、そこには真っ青な顔をしている真由がいた。
「真由……? 大丈夫か?」
俺は恐る恐る真由に問いかけるが、真由は俺ではなく……サトルを見た。
「ね、ねえ……雨野?」
「……うん?」
「私の記憶が正しければだけど、前にニュースで見たの……アイランド58の王制は崩壊寸前だって、それって……!!」
「その通りだよ」
真由からの質問に、サトルは一気に表情をなくして、そう答えた。
その瞬間に真由は息を呑んで俺の手を握り、隣の望は一歩後ずさる。
他のみんなもそれぞれ何かしらの反応を見せていた。
まあ、ゾーイだけはずっと無表情でサトルのことを見ていたけど……
とにかく、その時のサトルは何も目に映しておらず、何を思ってるのかの感情さえ感じられなかった。
「アイランド58の王国は僕の両親がこの世から去った時点で、未来が決まってしまったようなものだったんだ……」
そして、さらにサトルはその表情をなくしたままの状態で、吐き捨てた。
サトル、お前……どうしたんだよ……
俺は悲しくて、苦しくて、ものすごく悔しいという、よくわからないごちゃ混ぜの感情に揺れていた。
「……ご両親、亡くなったのか?」
俺は震えないように踏ん張って、そうサトルに問いかける。
両親は新婚みたいに仲が良くて、お金持ちではないけど、平凡でも満足してると……それがサトルから聞いていた家族の情報だ。
また嘘をつかれていたとショックを受けているのと同時に、泣きたくなった。
その嘘は、サトルが望んだ理想の家族の形で、サトルの夢だったのではないかと思ったからだ。
けど、サトルの返事は、俺なんかが想像できない、壮絶なものだった。
「……僕の両親は、殺されたんだ」
俺は条件反射で、サトルの言葉を指摘していた。
ナサニエルに入学して、寮で初めて出会ったあの日、サトルは確かに俺にアイランド35の出身で家は一般家庭の……
そう言葉を続けることは、サトルの気まずそうな顔を見たらできなかった。
「……嘘ついてたのか?」
「昴! 本当に、本当にごめん!」
俺の質問に、サトルはその場で深く頭を下げて謝罪の言葉を告げる。
その瞬間、真由と望が隣から俺の顔を伺っているのがわかった。
俺は今、どんな顔をしているだろう。
少し感覚としてわかるのは、なぜだか口角が上がっていること……その瞬間に俺は理解した。
ああ、笑って誤魔化しているんだと。
「……あ、アイランド58って、あの王制の?」
「え、じゃあ、サトルは正真正銘の本物の王子様ってことかよ!?」
途端にソニアが話を変え、シンがその話に乗っかるようにそう言い放った。
気を遣わせたんだなとすぐにわかったけど、今はすごく有難かった。
これ以上、そのサトルの嘘についての話題を受け止めるには、まだまだ準備が必要だろうから……
「あのさ、話を遮るようでごめんなんだけど、空島って民主制じゃないの?」
そんな時、しばらく黙ったままだったモカがそう問いかけてきた。
振り向くと、そこにはモカとレオの困惑の表情があった。
「あ、気付かなくてごめん。レオとモカは知らないもんな? 空島はアイランド97まで島があって、そのうちの96は確かに民主制なんだ」
「96ってことは……じゃあ、さっき言ってたサトルの出身の島だけが?」
「そう。空島発足時から唯一の王制をとり続けているのが、アイランド58ってわけなんだ」
そうだ、前にレオ、モカ、コタロウには空島の話をしたことがあったけど、そこまで詳しくは話していなかったな。
ぼんやりと思い出してると、デルタがフォローするように、レオとモカに説明してくれる。
それを聞いて、モカは確かめるようにデルタに問いかけて、デルタはそれに頷くのだった。
空島は基本的に空島全体で一つの国のようなもので、アイランド01である中心島が全ての情報を取り仕切っている。
しかし、例外とされており、ほとんど独立国家として成り立っているのがアイランド58だ。
その昔に、空島発足時にその計画に莫大なる支援をした一族がいた。
その一族から支援を続ける条件として出されたのが、自分達が管理する空島を一つもらうこと。
今思えば、何て無茶苦茶な話なのかと非難が上がりそうだが、当時はその一族の力なくては空島を完成させることは不可能だったのだとか……
そんな歴史の名残りというのが、アイランド58の現在まで続く王制の独立国家状態というわけだ。
けど、まさか、そのアイランド58の第一王位継承者がサトルなんて……
「あれ? けど、待って?」
「何だよ、真由? どうし……」
そんなことを思い出してると、真由が何かを思い出したように声を上げた。
すかさず、望が真由に問いかけていたのだが、その後の言葉が途切れた。
俺は不思議に思って振り向くと、そこには真っ青な顔をしている真由がいた。
「真由……? 大丈夫か?」
俺は恐る恐る真由に問いかけるが、真由は俺ではなく……サトルを見た。
「ね、ねえ……雨野?」
「……うん?」
「私の記憶が正しければだけど、前にニュースで見たの……アイランド58の王制は崩壊寸前だって、それって……!!」
「その通りだよ」
真由からの質問に、サトルは一気に表情をなくして、そう答えた。
その瞬間に真由は息を呑んで俺の手を握り、隣の望は一歩後ずさる。
他のみんなもそれぞれ何かしらの反応を見せていた。
まあ、ゾーイだけはずっと無表情でサトルのことを見ていたけど……
とにかく、その時のサトルは何も目に映しておらず、何を思ってるのかの感情さえ感じられなかった。
「アイランド58の王国は僕の両親がこの世から去った時点で、未来が決まってしまったようなものだったんだ……」
そして、さらにサトルはその表情をなくしたままの状態で、吐き捨てた。
サトル、お前……どうしたんだよ……
俺は悲しくて、苦しくて、ものすごく悔しいという、よくわからないごちゃ混ぜの感情に揺れていた。
「……ご両親、亡くなったのか?」
俺は震えないように踏ん張って、そうサトルに問いかける。
両親は新婚みたいに仲が良くて、お金持ちではないけど、平凡でも満足してると……それがサトルから聞いていた家族の情報だ。
また嘘をつかれていたとショックを受けているのと同時に、泣きたくなった。
その嘘は、サトルが望んだ理想の家族の形で、サトルの夢だったのではないかと思ったからだ。
けど、サトルの返事は、俺なんかが想像できない、壮絶なものだった。
「……僕の両親は、殺されたんだ」
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