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第三章-⑹ サトルと菜々美とモーリス
王権争いは物騒の極みです
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「こ、殺されたって……え?」
俺達は、サトルの何も映さない瞳を前にして、動けなくなった。
唯一零れたシンのその言葉に、本人は慌てて口を塞ぐ。
「そうだよ。三年前にね……」
すると、サトルは静かにどこか遠くを見つめながら、静かに呟いたが……
「三年前って……そんなニュース見た記憶ねえけど、俺の記憶違いか?」
「いや、俺も知らねえな……」
デルタが頭を捻りながらナサニエル組全員に問いかけるが、望の呟きを皮切りに全員が首を横に振る。
俺もそれは例外ではなく、どんなに記憶をたどっても、身に覚えがなかった。
「え、待ってよ。さすがに、それはおかしくない?」
すかさず、ソニアが力強くその状況を指摘する……俺も、ソニアの言い分には賛成だった。
唯一の王制をとるアイランド58の動向は、いつの時代でも注目を集めた。
そんなアイランド58の国王と王妃が亡くなった、ましてや殺されたなんてなれば、あちこちのメディアで数週間はその話題で持ち切りだろう。
けど、結果はどうだ? 今ここにいる誰もそのことを知らないなんて、奇妙を通り越して、これはもう不気味だとしか言いようがない状況だ。
「知らなくて、当然だよ。これは、どこにも漏れることはなかったから」
「漏れなかったって……雨野、どういう意味?」
そんな思考を読んだように、サトルは俺達を見ながら、言葉を紡ぐ。
真由は困惑したように、そのサトルの言葉の意味を問うた。
知らなくて当然って、まさか……?
「……揉み消したんだ。王国全体で」
普段は全く当たらないのに、こういう嫌なことはよく当たる。
サトルは、俺が予想した通りの残酷な答えを、無表情のまま吐き捨てた。
「ついでに言うと、僕は両親を殺した連中から命を狙われてる。だから、正体を隠して、状況が落ち着くまで、安全が保証されてるナサニエルに身を潜めることになったんだ」
さらに、サトルはまるでドラマの中のようなリアリティがない話を、俺達に話し始めた。
「は? 何だよそれ? 何で、サトルがそんな目に遭うんだよ!?」
「……昴、王国ってそんなとこだ」
思わず、叫んだ俺にサトルはとっくに諦めたというような、自虐的な笑顔を見せる。
俺には、まるでわからなかった。
どうして……両親を殺されて、さらに辛い目に遭うサトルが、その運命を受け入れてるのか意味がわからなかった。
自分の奥底から、何かがフツフツと湧き上がる感覚。
俺はすごく腹が立ってる……自分に。
サトルの気持ちをわかることは、多分一生できないだろう……けど、どうして俺は一番近くにいながら、何も気付いてあげられなかったのか。
隠していたからだと言ってしまえば終わりだが、俺は自分が情けなかった。
他のみんなも、それぞれ思うところがあるのか、何て声をかけたらいいのかを悩んでいると、君はまた空気を変えた。
「ねえ、質問なんだけど、サトルの親を殺した犯人ってさ、サトルの叔父さんだったりする?」
「……は?」
突然の犯人指定に、サトルはそれまでの無表情から、一気に間の抜けた顔に変わり、声が零れる。
「ちょっ、ちょっと、ゾーイ? 憶測でそんなこと……」
「何で、わかったの?」
さすがにそれは……と、ゾーイを止めようとした俺の声を、綺麗にサトルは遮って、そう返した。
すると、急に遮られ口を開けたままだった俺だけど、正解なのかと叫ぶ暇もなく、ゾーイはサトルの答えに大して驚くこともせず、話を進め出したのだ。
「これで納得だわ。殺しの理由って、その叔父……おっさんが、自分が国王を名乗りたいからでしょ?」
「え……あ、え?」
「サトルの親がいなくなれば、次の国王候補はおっさんかサトル。けど、まだサトルは成人していないから、当然自分が国王だと思っていたけど、まあ大変。おっさんは国民から人気皆無って……それぐらいわからなかったのかね?」
「ぞ、ゾーイ? ねえ……!?」
サトルが焦って……いや、怯えてる?
何度もゾーイの言葉を止めようとするサトルだが、あいかわらずまったく話を聞く気のないゾーイは、淡々と止まることなく話を進める。
てか、今明らかに叔父さんって言いかけたのに……おっさんって、何でわざわざ言い換えたの?
あと、ちょこちょこ間に、容赦ない言葉が入ってるしね?
え、けど、待てよ? この話って……
「しかも、サトルは誰もが振り返る人気者。このままだと、サトルの親を殺した意味がなくなると焦ったおっさんは、何と頭が悪いのか! 今度はサトルのことを殺そうとして、現在に至ると……どうよ? あたしの推理は?」
まるで見てきたかのように、ゾーイは淡々と迷いなく話す。
そして話し終えると、ゾーイは笑顔でそうサトルに問いかける。
「ゾーイ……本当に君は何者で……何が見えてるんだ?」
サトルは震える声を絞り出して、そうゾーイに告げる。
ゾーイの笑顔の奥に何があるのか、俺にわかる時がくるのだろうか……
俺達は、サトルの何も映さない瞳を前にして、動けなくなった。
唯一零れたシンのその言葉に、本人は慌てて口を塞ぐ。
「そうだよ。三年前にね……」
すると、サトルは静かにどこか遠くを見つめながら、静かに呟いたが……
「三年前って……そんなニュース見た記憶ねえけど、俺の記憶違いか?」
「いや、俺も知らねえな……」
デルタが頭を捻りながらナサニエル組全員に問いかけるが、望の呟きを皮切りに全員が首を横に振る。
俺もそれは例外ではなく、どんなに記憶をたどっても、身に覚えがなかった。
「え、待ってよ。さすがに、それはおかしくない?」
すかさず、ソニアが力強くその状況を指摘する……俺も、ソニアの言い分には賛成だった。
唯一の王制をとるアイランド58の動向は、いつの時代でも注目を集めた。
そんなアイランド58の国王と王妃が亡くなった、ましてや殺されたなんてなれば、あちこちのメディアで数週間はその話題で持ち切りだろう。
けど、結果はどうだ? 今ここにいる誰もそのことを知らないなんて、奇妙を通り越して、これはもう不気味だとしか言いようがない状況だ。
「知らなくて、当然だよ。これは、どこにも漏れることはなかったから」
「漏れなかったって……雨野、どういう意味?」
そんな思考を読んだように、サトルは俺達を見ながら、言葉を紡ぐ。
真由は困惑したように、そのサトルの言葉の意味を問うた。
知らなくて当然って、まさか……?
「……揉み消したんだ。王国全体で」
普段は全く当たらないのに、こういう嫌なことはよく当たる。
サトルは、俺が予想した通りの残酷な答えを、無表情のまま吐き捨てた。
「ついでに言うと、僕は両親を殺した連中から命を狙われてる。だから、正体を隠して、状況が落ち着くまで、安全が保証されてるナサニエルに身を潜めることになったんだ」
さらに、サトルはまるでドラマの中のようなリアリティがない話を、俺達に話し始めた。
「は? 何だよそれ? 何で、サトルがそんな目に遭うんだよ!?」
「……昴、王国ってそんなとこだ」
思わず、叫んだ俺にサトルはとっくに諦めたというような、自虐的な笑顔を見せる。
俺には、まるでわからなかった。
どうして……両親を殺されて、さらに辛い目に遭うサトルが、その運命を受け入れてるのか意味がわからなかった。
自分の奥底から、何かがフツフツと湧き上がる感覚。
俺はすごく腹が立ってる……自分に。
サトルの気持ちをわかることは、多分一生できないだろう……けど、どうして俺は一番近くにいながら、何も気付いてあげられなかったのか。
隠していたからだと言ってしまえば終わりだが、俺は自分が情けなかった。
他のみんなも、それぞれ思うところがあるのか、何て声をかけたらいいのかを悩んでいると、君はまた空気を変えた。
「ねえ、質問なんだけど、サトルの親を殺した犯人ってさ、サトルの叔父さんだったりする?」
「……は?」
突然の犯人指定に、サトルはそれまでの無表情から、一気に間の抜けた顔に変わり、声が零れる。
「ちょっ、ちょっと、ゾーイ? 憶測でそんなこと……」
「何で、わかったの?」
さすがにそれは……と、ゾーイを止めようとした俺の声を、綺麗にサトルは遮って、そう返した。
すると、急に遮られ口を開けたままだった俺だけど、正解なのかと叫ぶ暇もなく、ゾーイはサトルの答えに大して驚くこともせず、話を進め出したのだ。
「これで納得だわ。殺しの理由って、その叔父……おっさんが、自分が国王を名乗りたいからでしょ?」
「え……あ、え?」
「サトルの親がいなくなれば、次の国王候補はおっさんかサトル。けど、まだサトルは成人していないから、当然自分が国王だと思っていたけど、まあ大変。おっさんは国民から人気皆無って……それぐらいわからなかったのかね?」
「ぞ、ゾーイ? ねえ……!?」
サトルが焦って……いや、怯えてる?
何度もゾーイの言葉を止めようとするサトルだが、あいかわらずまったく話を聞く気のないゾーイは、淡々と止まることなく話を進める。
てか、今明らかに叔父さんって言いかけたのに……おっさんって、何でわざわざ言い換えたの?
あと、ちょこちょこ間に、容赦ない言葉が入ってるしね?
え、けど、待てよ? この話って……
「しかも、サトルは誰もが振り返る人気者。このままだと、サトルの親を殺した意味がなくなると焦ったおっさんは、何と頭が悪いのか! 今度はサトルのことを殺そうとして、現在に至ると……どうよ? あたしの推理は?」
まるで見てきたかのように、ゾーイは淡々と迷いなく話す。
そして話し終えると、ゾーイは笑顔でそうサトルに問いかける。
「ゾーイ……本当に君は何者で……何が見えてるんだ?」
サトルは震える声を絞り出して、そうゾーイに告げる。
ゾーイの笑顔の奥に何があるのか、俺にわかる時がくるのだろうか……
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