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第三章-⑹ サトルと菜々美とモーリス
十時間は最早寝坊の域
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「……る……ば、る!」
「しっかりしろって、昴!」
「うおおおっ!?」
眼球が飛び出すのかと思うほど目を見開いて、俺は跳ねるように飛び起きた。
冴えきらない頭を懸命に回して、ぐるりと周りを見渡す。
まず目に入ったのは、心配そうに俺を覗き込む、真由と望。
そして次に目に入ったというより、視線を感じて振り向くと、他の全員が俺のことを苦笑いで見ていた。
は? 待て、何だよこの状況は……
「ようやく、全員お目覚めね?」
俺が絶賛で混乱の最中、やたらとその場に響いた声の主は、ゾーイだった。
「まったく、あれほどあたしが、しっかり寝とけって言ったのに、全員揃って寝不足って……どんだけ待たせれば、気が済むわけ?」
「えっと……え、ここどこ?」
さらにゾーイは、不満爆発という具合にまくし立ててくるが、俺には何も頭には入ってこなかった。
とりあえず、どこだと質問したが、リアルにここはどこだろう……
薄暗くて顔がよく見えないが、全員が揃っていることはわかる。
何だか、様々な臭いが混ざったような何とも言えない空間で……ここ部屋か?
まず、あれからどうなったんだ?
俺達はナサニエルに潜入するために別れたけど、急に視界が反転して……
「ちょっと待て! あの時、俺達全員で倒れなかったか!?」
「さすが天才ね? おめでとう、その末路がこれよ」
俺は最後の記憶を思い出し、みんなに叫ぶが、全員に顔を逸らされてしまう。
それどころか、なぜかゾーイには拍手とともにその言葉を告げられる。
しかし、その言葉にどこか刺があることに気付いて……てか、顔も明らかに怒ってて、俺は困惑するばかりだ。
「え……なあ、望? ゾーイ、何だか怒ってないか?」
そして、助けを求めるように俺はすぐ側にいた望に尋ねた。
「……昴。落ち着いて、聞けよ?」
「う、うん」
すると、望は薄暗いこの空間でも見てわかるほど真っ青な顔で、口を開く。
俺はそのただならぬ片割れの雰囲気に思わず、姿勢を正した。
「俺達は……あれから、ずっとただただ眠っていたらしい」
「……え?」
「おそらく、十時間以上」
「ええ!? そ、そんなこと……!!」
「あるのよね? ナサニエルの就寝時間を知らせるアナウンスが、まだ生きてたのよ。そのアナウンスからざっと五、六時間とか? もうすぐで、外は日が昇る頃かしらね?」
そして、望の口から語られたのは、にわかには信じがたい事実。
けど、俺の否定する言葉を遮ってまくし立てたゾーイの顔を見たら、たとえば嘘だろなんて言い返すようなことは、俺には命が惜しくてできなかった。
その時のゾーイの目はいろんな意味で本気だった……
ナサニエルには昔から起床時間の七時を知らせるアナウンスと、就寝時間の二十三時を知らせるアナウンスが、必ず自動音声で流れるようになっていた。
きっと、俺達がナサニエルに到着したのは日暮れ前の十八時頃で、その就寝時間のアナウンスをゾーイが聞いたのだとしたら、その時点でもう既に五時間が経過していたことになる。
さらに五、六時間だとすると、今はおそらく朝の五時とか?
「催眠ガスのおかげで、まんまと全員でお寝んね? 本当に爆笑よね?」
「え、催眠ガスって……」
笑っているが笑っていないという史上最強に恐怖なゾーイだが、俺はとある言葉を指摘せずにはいられなかった。
まあ、視界の端で望と真由が俺を止めようとしたのが見えたけど……
「言ったでしょ? 倒れる時は受け身をとれって」
すると、淡々とゾーイは俺に向かってそう告げた。
同時に全員がそれを聞いて、深いため息をついたこともわかった。
あの時は確かに、ゾーイは急に足を止めるとそんなことを言った気がする。
そして、そのすぐ後で全員で地面に倒れて……次の記憶がここで?
待てよ? それじゃ、ゾーイはあの瞬間、催眠ガスのせいで俺達全員が眠って倒れるってとこまで予想してた?
あ、それで受け身をとれ……そんなことわかるかあああ!!
遠回しにもほどがあるだろ!? というより、催眠ガスってどうやったらわかるのさ!? え、てか、催眠ガスって何!?
俺は心の中で、そんなことを絶叫しまくって、一人でパニックに陥っていた。
とにかく、聞きたいことはいろいろとあるけど……!!
「それじゃ、ここって……!?」
「そう、おそらく、ナサニエルの中で地下の檻の中。その檻の中で、いくら起こしても起きないあんたらのせいで、あたしは待ちぼうけってわけ。全員いい夢は見れたの?」
俺の質問を予想していたのか、ゾーイは食い気味に答え、さらに刺々しい言葉を、俺達に向かって吐き捨ててくる。
ぐるりと周りを見渡すと、それぞれ俯くか、そっぽを向くか、苦笑いか……
俺も似たようなもので、そのまま顔をゾーイから逸らし、明後日の方を見た。
「お返事願いませんかねええええ!!」
しかし、ゾーイの怒りは予想以上に爆発寸前だったようで、無言を貫く俺達に我慢ならなかったのか、ゾーイは檻の中に反響するほどの大声を上げた。
さすがにまずいと思って、もう謝り倒そうと思った時……
「ゾーイ?」
すごく聞き慣れた、凛とした声が聞こえた。
「は? この声って……」
すると、その声が聞こえたのとほぼ同時、俺が確かめるようにそう呟いていた間にも、君は走り出していた。
「クレア!」
ゾーイは、鉄格子を力強く掴み、そう檻の外に叫んだ。
「しっかりしろって、昴!」
「うおおおっ!?」
眼球が飛び出すのかと思うほど目を見開いて、俺は跳ねるように飛び起きた。
冴えきらない頭を懸命に回して、ぐるりと周りを見渡す。
まず目に入ったのは、心配そうに俺を覗き込む、真由と望。
そして次に目に入ったというより、視線を感じて振り向くと、他の全員が俺のことを苦笑いで見ていた。
は? 待て、何だよこの状況は……
「ようやく、全員お目覚めね?」
俺が絶賛で混乱の最中、やたらとその場に響いた声の主は、ゾーイだった。
「まったく、あれほどあたしが、しっかり寝とけって言ったのに、全員揃って寝不足って……どんだけ待たせれば、気が済むわけ?」
「えっと……え、ここどこ?」
さらにゾーイは、不満爆発という具合にまくし立ててくるが、俺には何も頭には入ってこなかった。
とりあえず、どこだと質問したが、リアルにここはどこだろう……
薄暗くて顔がよく見えないが、全員が揃っていることはわかる。
何だか、様々な臭いが混ざったような何とも言えない空間で……ここ部屋か?
まず、あれからどうなったんだ?
俺達はナサニエルに潜入するために別れたけど、急に視界が反転して……
「ちょっと待て! あの時、俺達全員で倒れなかったか!?」
「さすが天才ね? おめでとう、その末路がこれよ」
俺は最後の記憶を思い出し、みんなに叫ぶが、全員に顔を逸らされてしまう。
それどころか、なぜかゾーイには拍手とともにその言葉を告げられる。
しかし、その言葉にどこか刺があることに気付いて……てか、顔も明らかに怒ってて、俺は困惑するばかりだ。
「え……なあ、望? ゾーイ、何だか怒ってないか?」
そして、助けを求めるように俺はすぐ側にいた望に尋ねた。
「……昴。落ち着いて、聞けよ?」
「う、うん」
すると、望は薄暗いこの空間でも見てわかるほど真っ青な顔で、口を開く。
俺はそのただならぬ片割れの雰囲気に思わず、姿勢を正した。
「俺達は……あれから、ずっとただただ眠っていたらしい」
「……え?」
「おそらく、十時間以上」
「ええ!? そ、そんなこと……!!」
「あるのよね? ナサニエルの就寝時間を知らせるアナウンスが、まだ生きてたのよ。そのアナウンスからざっと五、六時間とか? もうすぐで、外は日が昇る頃かしらね?」
そして、望の口から語られたのは、にわかには信じがたい事実。
けど、俺の否定する言葉を遮ってまくし立てたゾーイの顔を見たら、たとえば嘘だろなんて言い返すようなことは、俺には命が惜しくてできなかった。
その時のゾーイの目はいろんな意味で本気だった……
ナサニエルには昔から起床時間の七時を知らせるアナウンスと、就寝時間の二十三時を知らせるアナウンスが、必ず自動音声で流れるようになっていた。
きっと、俺達がナサニエルに到着したのは日暮れ前の十八時頃で、その就寝時間のアナウンスをゾーイが聞いたのだとしたら、その時点でもう既に五時間が経過していたことになる。
さらに五、六時間だとすると、今はおそらく朝の五時とか?
「催眠ガスのおかげで、まんまと全員でお寝んね? 本当に爆笑よね?」
「え、催眠ガスって……」
笑っているが笑っていないという史上最強に恐怖なゾーイだが、俺はとある言葉を指摘せずにはいられなかった。
まあ、視界の端で望と真由が俺を止めようとしたのが見えたけど……
「言ったでしょ? 倒れる時は受け身をとれって」
すると、淡々とゾーイは俺に向かってそう告げた。
同時に全員がそれを聞いて、深いため息をついたこともわかった。
あの時は確かに、ゾーイは急に足を止めるとそんなことを言った気がする。
そして、そのすぐ後で全員で地面に倒れて……次の記憶がここで?
待てよ? それじゃ、ゾーイはあの瞬間、催眠ガスのせいで俺達全員が眠って倒れるってとこまで予想してた?
あ、それで受け身をとれ……そんなことわかるかあああ!!
遠回しにもほどがあるだろ!? というより、催眠ガスってどうやったらわかるのさ!? え、てか、催眠ガスって何!?
俺は心の中で、そんなことを絶叫しまくって、一人でパニックに陥っていた。
とにかく、聞きたいことはいろいろとあるけど……!!
「それじゃ、ここって……!?」
「そう、おそらく、ナサニエルの中で地下の檻の中。その檻の中で、いくら起こしても起きないあんたらのせいで、あたしは待ちぼうけってわけ。全員いい夢は見れたの?」
俺の質問を予想していたのか、ゾーイは食い気味に答え、さらに刺々しい言葉を、俺達に向かって吐き捨ててくる。
ぐるりと周りを見渡すと、それぞれ俯くか、そっぽを向くか、苦笑いか……
俺も似たようなもので、そのまま顔をゾーイから逸らし、明後日の方を見た。
「お返事願いませんかねええええ!!」
しかし、ゾーイの怒りは予想以上に爆発寸前だったようで、無言を貫く俺達に我慢ならなかったのか、ゾーイは檻の中に反響するほどの大声を上げた。
さすがにまずいと思って、もう謝り倒そうと思った時……
「ゾーイ?」
すごく聞き慣れた、凛とした声が聞こえた。
「は? この声って……」
すると、その声が聞こえたのとほぼ同時、俺が確かめるようにそう呟いていた間にも、君は走り出していた。
「クレア!」
ゾーイは、鉄格子を力強く掴み、そう檻の外に叫んだ。
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