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第三章-⑹ サトルと菜々美とモーリス
まさかの隣人だったとはね
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「ゾーイ……やっぱり、ゾーイなの!?」
「え、ゾーイ?」
「何だって……!?」
ゾーイの声に答えたクレアのものと思われる声に続いて、二人分のこれまた聞き慣れた声が響いてきた。
「その声、ジェームズとハロルドね?」
「ほっ、本当に……? 本当の本当にゾーイなの!?」
「夢のよう……ハッ! まさか、本当に夢なのでは!?」
姿は見えないけれど、声だけでも今の二人がどんな表情をしてるのかわかる。
きっと、ジェームズはもう既に目に涙をためていて、ハロルドは真っ青な顔で慌てふためいているだろう。
「ちょっと、仮にも半年以上寝食ともにした人間の声を忘れるわけ?」
「その強気な口調……」
「ああ、まさしくだ!」
すかさず、ゾーイが冷静に指摘すると二人は嬉しそうな、安心したような声を上げていた……俺は泣きそうだった。
「ゾーイ! どこ!? どこに……!!」
「落ち着いて。多分あたし達は、クレア達がいる隣の檻にいる」
「あたし達って……他にも?」
「全員いるわよ? ほら、そんなとこでぼさっとしてないで声かけなよ」
またさらに、クレアが縋るような声で叫んでいるのに対し、ゾーイはいたって冷静に状況を伝えていく。
そして、少しだけ落ち着きと驚きが交じったような声で尋ねたクレアを安心させるように、俺達に向かってゾーイは声をかけて、手を招く。
それに対して、放心状態だった俺達はそれぞれで我に返り、一目散で檻の鉄格子に張り付いて叫んだ。
「三人とも、本当に大丈夫なのか!?」
「飯とか食わされてるのか!?」
「殴られたりだとか、何かひどいことはされてない!?」
「私達は大丈夫だ! 食事はパンと水が一つずつとかなのだが、檻に入れられた後は、特に危害は加えられていない!」
俺、望、真由の言葉に、ハロルドは先ほどの不安が交じった声とは打って変わって、希望を取り戻したように大丈夫だとはっきり宣言する。
「本当に、全員よく頑張ったよ!」
「すぐ助ける! あと少しだけ、耐えてくれ!」
「……遅くなって、悪かったな」
「信じてよかった……もういくらでも耐えてみせるわ! ありがとう……来てくれて……!!」
サトル、シン、アランの励ましに、クレアは涙声で答えた。
安心して、涙腺が緩んだのだろう……
「よかった……本当によかった!」
「怖かったよね、不安だったよね、もう大丈夫だよ!」
「絶対に、みんなが助けに来るってわかってた! もう、怖いものはないよ!」
デルタ、ソニアの方が泣いてしまいそうな勢いの言葉に、ジェームズは明るく力強い言葉で返していた。
「そこに、兵士達も一緒にいるの!?」
「コタロウは!? 通信した時に、ケガをしたって言ってたけど……!!」
「大げさなんだよ、騒ぐなって」
そして、モカとレオが犬族と猫族、コタロウの安否を確認する。
すると、その二人の声に答えたのはこれまでと違ってクレア、ジェームズ、ハロルドではなく、コタロウ自身だった。
「コタロウ!? 大丈夫なのか!?」
「ケガって、何が……!!」
「レオ、モカ。だから、騒ぐなよ。他の兵士達もここにいて無事だし、俺も特に問題はねえから」
必死に鉄格子から頭を乗り出し、隣の檻の様子を探ろうとする、レオとモカ。
そんな二人とは対照的に、コタロウは冷静に宥めていた。
普通に会話できてるし、ケガも大したことはなかったのかな?
「ええ!? 問題大ありだよ!? 結構深く斬られて……イタッ!」
「ジェームズ! お前は、余計なことを言うな!」
いや、そんなことはどうやらなかったようだな……
心配をかけまいとして嘘をついたコタロウだったけど、あっさりとジェームズにバラされちゃって、今ジェームズの頭を小突いたってとこかな。
うん、それを見たクレアとハロルドの苦笑いまで、隣の檻の光景が目に浮かぶようだよ。
「斬られたのか!?」
「どこを!?」
「あー、少し脇腹をな? けど、もう血は止まったんだ。そもそも、こんなの傷のうちに入らねえよ」
すぐさまレオとモカが真っ青になって問いかけて、コタロウはまたもや冷静に宥める。
けど、二人は……というか、この場の全員が不安そうに顔を歪めていたが、君はやっぱり違う。
「それで、何があったの?」
「よく覚えてはいないんだけど……ナサニエルの前に来たら、突然大勢の見たことない犬族と猫族に囲まれて……」
「そう、そこで不意打ちだったからモーリスを盾にされて……!! それで、コタロウが反撃できなくて、ケガを……」
「モーリスね……?」
ゾーイのいつも通りの淡々とした口調の問いかけにつられるように、クレアとジェームズが重々しく話し出す。
しかし、そこでゾーイは出てきたモーリスの……裏切り者の名前を真顔で、繰り返す。
俺にはその一言が、まるで死の宣告のように思えた。
「あ、それが、モーリスのことで……本当に言い難いことがあってだな……」
「ああ、モーリスが裏切り者だったってことでしょ? 知ってるわよ?」
「は……?」
「知ってたの?」
「あと、菜々美まで誘拐されたし、状況察するに、ナサニエルはそいつらに占拠されてるわね」
「今、何て言った……?」
「ええ!?」
そのゾーイの呟きに対して、恐る恐るという感じで、ハロルドが話し出そうとした時に、話の内容を予想しただろうゾーイが先回りをしていた。
そして、驚く隣の檻の面々と言葉を無視して、さらに驚く事実を告げる。
本当に情報量過多すぎるよ、これ……
「詳しいことは後で聞いといて。とりあえず、このムカつく檻から出るわよ」
「え、ゾーイ?」
「何だって……!?」
ゾーイの声に答えたクレアのものと思われる声に続いて、二人分のこれまた聞き慣れた声が響いてきた。
「その声、ジェームズとハロルドね?」
「ほっ、本当に……? 本当の本当にゾーイなの!?」
「夢のよう……ハッ! まさか、本当に夢なのでは!?」
姿は見えないけれど、声だけでも今の二人がどんな表情をしてるのかわかる。
きっと、ジェームズはもう既に目に涙をためていて、ハロルドは真っ青な顔で慌てふためいているだろう。
「ちょっと、仮にも半年以上寝食ともにした人間の声を忘れるわけ?」
「その強気な口調……」
「ああ、まさしくだ!」
すかさず、ゾーイが冷静に指摘すると二人は嬉しそうな、安心したような声を上げていた……俺は泣きそうだった。
「ゾーイ! どこ!? どこに……!!」
「落ち着いて。多分あたし達は、クレア達がいる隣の檻にいる」
「あたし達って……他にも?」
「全員いるわよ? ほら、そんなとこでぼさっとしてないで声かけなよ」
またさらに、クレアが縋るような声で叫んでいるのに対し、ゾーイはいたって冷静に状況を伝えていく。
そして、少しだけ落ち着きと驚きが交じったような声で尋ねたクレアを安心させるように、俺達に向かってゾーイは声をかけて、手を招く。
それに対して、放心状態だった俺達はそれぞれで我に返り、一目散で檻の鉄格子に張り付いて叫んだ。
「三人とも、本当に大丈夫なのか!?」
「飯とか食わされてるのか!?」
「殴られたりだとか、何かひどいことはされてない!?」
「私達は大丈夫だ! 食事はパンと水が一つずつとかなのだが、檻に入れられた後は、特に危害は加えられていない!」
俺、望、真由の言葉に、ハロルドは先ほどの不安が交じった声とは打って変わって、希望を取り戻したように大丈夫だとはっきり宣言する。
「本当に、全員よく頑張ったよ!」
「すぐ助ける! あと少しだけ、耐えてくれ!」
「……遅くなって、悪かったな」
「信じてよかった……もういくらでも耐えてみせるわ! ありがとう……来てくれて……!!」
サトル、シン、アランの励ましに、クレアは涙声で答えた。
安心して、涙腺が緩んだのだろう……
「よかった……本当によかった!」
「怖かったよね、不安だったよね、もう大丈夫だよ!」
「絶対に、みんなが助けに来るってわかってた! もう、怖いものはないよ!」
デルタ、ソニアの方が泣いてしまいそうな勢いの言葉に、ジェームズは明るく力強い言葉で返していた。
「そこに、兵士達も一緒にいるの!?」
「コタロウは!? 通信した時に、ケガをしたって言ってたけど……!!」
「大げさなんだよ、騒ぐなって」
そして、モカとレオが犬族と猫族、コタロウの安否を確認する。
すると、その二人の声に答えたのはこれまでと違ってクレア、ジェームズ、ハロルドではなく、コタロウ自身だった。
「コタロウ!? 大丈夫なのか!?」
「ケガって、何が……!!」
「レオ、モカ。だから、騒ぐなよ。他の兵士達もここにいて無事だし、俺も特に問題はねえから」
必死に鉄格子から頭を乗り出し、隣の檻の様子を探ろうとする、レオとモカ。
そんな二人とは対照的に、コタロウは冷静に宥めていた。
普通に会話できてるし、ケガも大したことはなかったのかな?
「ええ!? 問題大ありだよ!? 結構深く斬られて……イタッ!」
「ジェームズ! お前は、余計なことを言うな!」
いや、そんなことはどうやらなかったようだな……
心配をかけまいとして嘘をついたコタロウだったけど、あっさりとジェームズにバラされちゃって、今ジェームズの頭を小突いたってとこかな。
うん、それを見たクレアとハロルドの苦笑いまで、隣の檻の光景が目に浮かぶようだよ。
「斬られたのか!?」
「どこを!?」
「あー、少し脇腹をな? けど、もう血は止まったんだ。そもそも、こんなの傷のうちに入らねえよ」
すぐさまレオとモカが真っ青になって問いかけて、コタロウはまたもや冷静に宥める。
けど、二人は……というか、この場の全員が不安そうに顔を歪めていたが、君はやっぱり違う。
「それで、何があったの?」
「よく覚えてはいないんだけど……ナサニエルの前に来たら、突然大勢の見たことない犬族と猫族に囲まれて……」
「そう、そこで不意打ちだったからモーリスを盾にされて……!! それで、コタロウが反撃できなくて、ケガを……」
「モーリスね……?」
ゾーイのいつも通りの淡々とした口調の問いかけにつられるように、クレアとジェームズが重々しく話し出す。
しかし、そこでゾーイは出てきたモーリスの……裏切り者の名前を真顔で、繰り返す。
俺にはその一言が、まるで死の宣告のように思えた。
「あ、それが、モーリスのことで……本当に言い難いことがあってだな……」
「ああ、モーリスが裏切り者だったってことでしょ? 知ってるわよ?」
「は……?」
「知ってたの?」
「あと、菜々美まで誘拐されたし、状況察するに、ナサニエルはそいつらに占拠されてるわね」
「今、何て言った……?」
「ええ!?」
そのゾーイの呟きに対して、恐る恐るという感じで、ハロルドが話し出そうとした時に、話の内容を予想しただろうゾーイが先回りをしていた。
そして、驚く隣の檻の面々と言葉を無視して、さらに驚く事実を告げる。
本当に情報量過多すぎるよ、これ……
「詳しいことは後で聞いといて。とりあえず、このムカつく檻から出るわよ」
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