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第三章-⑹ サトルと菜々美とモーリス
ああ言えばこう言う
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「わからないの!? ゾーイが、私達のことを振り回す度に言ってる言葉よ!」
「は?」
「私もそう! 菜々美を助けに行くのは自分のためで、これはわがままよ!」
真由のさっきとは打って変わっての剣幕に、ゾーイは思わず真顔で呟く。
そこで、ようやく俺はその真由の言葉をどこで聞いたのか、思い出した。
全部、自分のため……それはゾーイが誰かを救ったり、心配したり、大きなことをやり遂げようとする時に必ず告げる言葉。
普段正直すぎるゾーイが、なぜか遠回しに使う、言葉だ。
「それに、そこの三人のことを盛大に振った時も言ってたわ! お城で大人しく王子様が助けに来るのを待ってる、人任せのお姫様じゃないって!」
「そ、そうだよ! しっかり、はっきり言ってた! 自分の発言した言葉の責任を放棄するつもり!?」
さらに、勢いのままに発言する真由だったが、今確実に望、デルタ、アランの傷をえぐったぞ……
怖くて、三人は見れないけど、確実に隣の望からは、何か良からぬオーラが発せられていた……
まあ、今の勢いに乗っている真由にはそんなこと意識ないだろうけど。
そして、これはチャンスとばかりにソニアが、ゾーイにそう叫んでいた。
なるほど……ゾーイがいつもやってたり、言っていたことを引用して、それを本人にぶつけて説得しようってか。
すごくいい発想だとは思うけど……
「はあ……堂々巡りね? 疲れたし、時間の無駄だわ。すぐ出発するわよ」
「ゾーイ!」
「ねえ、待ってよ!」
深いため息をついて、ゾーイは足早に談話室を出て行こうとする。
そんなゾーイに、諦めずに食い下がる真由とソニア。
他のみんなは、再びどうしたものかとオロオロと慌て出す。
スタートに戻るか……やっぱり、この程度じゃ、ゾーイ様は頷かないよな。
「ゾーイ! 真由のこと連れて行ってくれないかな?」
「あ、俺からも頼むよ。ソニアの同行の許可くれないか?」
そんな立ち去るゾーイの背中に意を決して声をかけた、俺。
そして、そんな俺に続くように声をかけた、デルタ。
うん、やっぱりな、デルタならそう言ってくれると思ったよ?
「そこのバカップルとシスコン、自分が何言ってるかわかってるわけ?」
振り返って鋭い視線で辛辣なことを吐き捨てられた、俺とデルタ。
すかさず、デルタは俺に顔を見合せて苦笑いを零すけど、正直、俺はあまりダメージはなかった。
辛辣なことを言われるだろうとは予想してたし、何よりもゾーイなら、もっと再起不能になることを言われるだろうなとか思っていたから……
「うん、わかってるよ」
「はあ……そうだとしたら、ますます絶望的なんだけど? あんたらまで、この状況をわかってないわけ?」
ゾーイのその言葉を聞いて、デルタは俺をこれからどうするんだと言いたげな目で見てくる……他のみんなも同様に。
その時の俺はなるべく、ゾーイのペースに巻き込まれないように、落ち着けと必死に自分に言い聞かせていた。
心臓はずっと、早鐘を打ってたが……
「恋人と妹でしょ? 大切なら、一番に止めるべき立場なんじゃないの?」
「……大切だからこそだよ」
自分の質問に答えた俺に、ゾーイは途端に何言ってんだコイツと言わんばかりの顔をした。
俺は、正直真由がナサニエルに行くことは半分賛成で、半分反対だ。
もっと言ってしまえば、他のみんながナサニエルに行くこともあまり良くは思っていないのが本音だ。
けど、どんなに危険でも、大切な仲間を見捨てるなんてできないから……
それなら、本人が望む限り、俺達は危険だからこそ、一緒にいるべきだと、俺は思うんだ。
「ゾーイ、これは俺のためなんだ。近くに真由がいると、きっと、いざって時は守らなきゃって思って、火事場の馬鹿力的な感じで、いつもより戦闘力が増すと思うんだよね? デルタも同じで」
「え? あ……そ、そうだな!」
俺は、すぐにでも逃げ出したかった。
これじゃ苦し紛れの言い訳だ、乗ってくれたデルタもすごく不安そうだし……
君は何て言うだろう、バカバカしいと吐き捨てるだろうか……
きっと、ゾーイは俺が想像できないほど、たくさんのことを考えている。
俺達の身体能力とか、ナサニエルの状態とか、本当にいろんなことを考えて、ゾーイの中での最善の状態がこれなんだろう。
けどね、ゾーイ? 待つって、本当に気が狂いそうになるんだ。
望の気持ちがわからなくて、話そうとしてくれるまで、頼ってくれるまで、俺は待とうとしたけど、ダメだった。
苦しくて、もどかしくて、この胸が張り裂けてしまいそうだった。
あんな思いはさせたくないし、今回のことは、それとは比にならない大きな不安だから、橘さんや他のみんなのことはそりゃもちろん心配だけど……
そんな大きな不安に陥る真由とソニアのことも、俺は心配だった。
「本当にどいつもこいつも、頭の中お花畑なの? はあ……どうぞご勝手に」
「ごめん……え?」
それに、こんなこと理想論で丸投げなのかもしれないけれど、俺は君がいればどんなことでも上手くいってしまう気がしてしまうんだ……
ゾーイは、呆れたように、盛大にため息をついくと、俺達のことを手で払う仕草をした。
その言葉に俺は、ずっと俯いていた顔を上げて、ゾーイを見る。
「真由とソニアは前に出ないこと、常に誰かの後ろにいること。誓える?」
「そ、それって……」
「その代わり、死ぬ気で守るのよ?」
真顔で、面倒くさそうに言い放ったゾーイの言葉。
言い終わった瞬間に、俺の後ろや隣では歓喜の声が鳴り響いていた。
俺達は、ナサニエルに出発した――
「は?」
「私もそう! 菜々美を助けに行くのは自分のためで、これはわがままよ!」
真由のさっきとは打って変わっての剣幕に、ゾーイは思わず真顔で呟く。
そこで、ようやく俺はその真由の言葉をどこで聞いたのか、思い出した。
全部、自分のため……それはゾーイが誰かを救ったり、心配したり、大きなことをやり遂げようとする時に必ず告げる言葉。
普段正直すぎるゾーイが、なぜか遠回しに使う、言葉だ。
「それに、そこの三人のことを盛大に振った時も言ってたわ! お城で大人しく王子様が助けに来るのを待ってる、人任せのお姫様じゃないって!」
「そ、そうだよ! しっかり、はっきり言ってた! 自分の発言した言葉の責任を放棄するつもり!?」
さらに、勢いのままに発言する真由だったが、今確実に望、デルタ、アランの傷をえぐったぞ……
怖くて、三人は見れないけど、確実に隣の望からは、何か良からぬオーラが発せられていた……
まあ、今の勢いに乗っている真由にはそんなこと意識ないだろうけど。
そして、これはチャンスとばかりにソニアが、ゾーイにそう叫んでいた。
なるほど……ゾーイがいつもやってたり、言っていたことを引用して、それを本人にぶつけて説得しようってか。
すごくいい発想だとは思うけど……
「はあ……堂々巡りね? 疲れたし、時間の無駄だわ。すぐ出発するわよ」
「ゾーイ!」
「ねえ、待ってよ!」
深いため息をついて、ゾーイは足早に談話室を出て行こうとする。
そんなゾーイに、諦めずに食い下がる真由とソニア。
他のみんなは、再びどうしたものかとオロオロと慌て出す。
スタートに戻るか……やっぱり、この程度じゃ、ゾーイ様は頷かないよな。
「ゾーイ! 真由のこと連れて行ってくれないかな?」
「あ、俺からも頼むよ。ソニアの同行の許可くれないか?」
そんな立ち去るゾーイの背中に意を決して声をかけた、俺。
そして、そんな俺に続くように声をかけた、デルタ。
うん、やっぱりな、デルタならそう言ってくれると思ったよ?
「そこのバカップルとシスコン、自分が何言ってるかわかってるわけ?」
振り返って鋭い視線で辛辣なことを吐き捨てられた、俺とデルタ。
すかさず、デルタは俺に顔を見合せて苦笑いを零すけど、正直、俺はあまりダメージはなかった。
辛辣なことを言われるだろうとは予想してたし、何よりもゾーイなら、もっと再起不能になることを言われるだろうなとか思っていたから……
「うん、わかってるよ」
「はあ……そうだとしたら、ますます絶望的なんだけど? あんたらまで、この状況をわかってないわけ?」
ゾーイのその言葉を聞いて、デルタは俺をこれからどうするんだと言いたげな目で見てくる……他のみんなも同様に。
その時の俺はなるべく、ゾーイのペースに巻き込まれないように、落ち着けと必死に自分に言い聞かせていた。
心臓はずっと、早鐘を打ってたが……
「恋人と妹でしょ? 大切なら、一番に止めるべき立場なんじゃないの?」
「……大切だからこそだよ」
自分の質問に答えた俺に、ゾーイは途端に何言ってんだコイツと言わんばかりの顔をした。
俺は、正直真由がナサニエルに行くことは半分賛成で、半分反対だ。
もっと言ってしまえば、他のみんながナサニエルに行くこともあまり良くは思っていないのが本音だ。
けど、どんなに危険でも、大切な仲間を見捨てるなんてできないから……
それなら、本人が望む限り、俺達は危険だからこそ、一緒にいるべきだと、俺は思うんだ。
「ゾーイ、これは俺のためなんだ。近くに真由がいると、きっと、いざって時は守らなきゃって思って、火事場の馬鹿力的な感じで、いつもより戦闘力が増すと思うんだよね? デルタも同じで」
「え? あ……そ、そうだな!」
俺は、すぐにでも逃げ出したかった。
これじゃ苦し紛れの言い訳だ、乗ってくれたデルタもすごく不安そうだし……
君は何て言うだろう、バカバカしいと吐き捨てるだろうか……
きっと、ゾーイは俺が想像できないほど、たくさんのことを考えている。
俺達の身体能力とか、ナサニエルの状態とか、本当にいろんなことを考えて、ゾーイの中での最善の状態がこれなんだろう。
けどね、ゾーイ? 待つって、本当に気が狂いそうになるんだ。
望の気持ちがわからなくて、話そうとしてくれるまで、頼ってくれるまで、俺は待とうとしたけど、ダメだった。
苦しくて、もどかしくて、この胸が張り裂けてしまいそうだった。
あんな思いはさせたくないし、今回のことは、それとは比にならない大きな不安だから、橘さんや他のみんなのことはそりゃもちろん心配だけど……
そんな大きな不安に陥る真由とソニアのことも、俺は心配だった。
「本当にどいつもこいつも、頭の中お花畑なの? はあ……どうぞご勝手に」
「ごめん……え?」
それに、こんなこと理想論で丸投げなのかもしれないけれど、俺は君がいればどんなことでも上手くいってしまう気がしてしまうんだ……
ゾーイは、呆れたように、盛大にため息をついくと、俺達のことを手で払う仕草をした。
その言葉に俺は、ずっと俯いていた顔を上げて、ゾーイを見る。
「真由とソニアは前に出ないこと、常に誰かの後ろにいること。誓える?」
「そ、それって……」
「その代わり、死ぬ気で守るのよ?」
真顔で、面倒くさそうに言い放ったゾーイの言葉。
言い終わった瞬間に、俺の後ろや隣では歓喜の声が鳴り響いていた。
俺達は、ナサニエルに出発した――
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