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第三章-⑹ サトルと菜々美とモーリス
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「飼うって……!?」
「黙って聞いてりゃ……俺達人間のことをどうしようってんだ!!」
真由が震えながら呟いて、望が我慢の限界とばかりに吠える。
「また、こんなこと続けるのか! 人間とは共存できる! どうして、争うことしか選ばないんだ!」
「何で……!? 昔は昔で今は今! もう私達は、前に進むべきだわ!」
レオは悔しそうに悲しそうに、モカは訴えかけるように叫ぶ。
「私達の先祖達の過ちは事実だ! しかし、そこで同じ道を辿っては、何一つ変わらないではないか!」
「お願いだ! これからの僕達のことを見てから決めてよ!」
「もう私達は、あなた達の自由を奪うことはないわ! 約束よ!」
「……こんなことして、楽しいのか?」
隣の檻からは、ハロルドが悲痛な心が込められた言葉を、ジェームズは必死の懇願を、クレアは涙声の訴えを、それぞれに叫ぶ。
その後から、コタロウが何の感情も感じられないような言葉を吐き捨てる。
「また歴史を繰り返すのか……」
「ふざけんな!! どいつもこいつも、面倒くせえな!! そんな安全地帯で好き勝手に言いやがってよ!!」
「……犬っころ、殺されてえのか?」
サトルは失望したように呟き、シンは怒鳴り散らし、アランは静かに殺気を放った。
「ここ開けろ! 閉じ込めるよりも、話し合うのが先だろうが!」
「本当にムカつく! 頭固すぎよ!」
デルタは諭すように、一方でソニアは今の感情のままに叫んでいた。
「おー、おー、人間は野蛮だね。躾のなってねえペットだ。お前らは、その檻の中で、せいぜい飼い主が迎えに来るのを待ってるんだな? ククッ……!!」
口々にその犬族に罵詈雑言の限りを飛ばすが、そいつは俺達のことを見て卑屈に笑うばかりだ……
理不尽なこの状況に、怒りは滞りなく湧いてくるのに、俺は拳を強く握って奥歯を噛むことしかできなくて……
何でだよ……何で俺達が、こんな目に遭わなきゃならないんだ!
「あのさ、楽しそうなところを水さして悪いんだけど? あんた、モーリスって人間のこと知ってる?」
しかし、そんな状況で君だけは呆れるほどに、いつもと変わらなくて……
ゾーイは真顔でその犬族に、そう質問をするものだから、そいつはそれまでの憎たらしい顔とは打って変わり、急な間抜け面を晒す。
「はあ? モーリスだ?」
「知らない? 髪がセンター分けの、ネチネチ細そうな嫌味眼鏡の人間」
「……ああ! この前にフウタが連れて来た、駒のことか!」
ゾーイ、それ言い訳できないよ? 悪口でしかないよ?
全員の引くつく顔を背中に、ゾーイはご丁寧に、センター分けと眼鏡のジェスチャー付きで、質問を繰り返す。
しかし、それが功を奏したのか、その犬族は思い出したように声を上げた。
「……駒?」
「あの人間もバカだよな! 甘い言葉に乗せられたんだろうが、事が済んだら即効で廃棄に決まってるのによ! 完璧な世界がとかどうとか、宗教じみたことばっかり言いやがってよ? 不気味でしかねえぜ!」
そして、その犬族は、さらにモーリスへの中傷を、それは面白おかしそうに大笑いしながら得意気に話した。
モーリス……何があったにせよ、裏切り者だという事実は変わらないが、あまり気持ちのいい話ではなかった。
完璧な世界? 奴は何をしようと……
「あ、もしや、アイツってお前らの知り合いか? 本当に人間って、バカばっかりなんだな! ククッ……この千年で進化じゃなくて、猿に退化したのか?」
しかし、そんな考察もままならないほどに、その犬族は檻の中にいるの俺達のことを、これでもかと煽り続けた。
俺は久しぶりに、奥からせり上がってくる腸が煮えくり返る感覚に陥った。
何で、こんな安全圏にいる卑怯な奴にここまでコケにされるんだよ!
「このクソ野郎がいい加減に……!!」
「あ、ねえ、ブーツに毛虫乗ってるよ」
しかし、あと少しで堪忍袋の緒がブチ切れ寸前の望が前に出ようとした時、君はまた突拍子のないことを言う。
あまりに突然で理解するのに数秒かかったほどだ……え、毛虫?
「……あ? 何て言った?」
「だから、毛虫! あんたのブーツ!」
「はあ!? どこ……グアアア!?」
けど、やっぱりゾーイ、君は俺達の常識を軽く超えてくる。
ゾーイは、その犬族がブーツを見ようとして俯いた瞬間に首を掴み、そのまま鉄格子と鉄格子の間に無理矢理ねじ込むように、頭部を押し付けた。
そいつは押し付けてからそのまま悲鳴にもならないような、聞くに絶えない悲鳴を上げた。
「どうせ働き詰めでしょ。しばらく、眠っとけばいいわ」
「ガッ……!!」
そして、ゾーイはそいつの首の後ろに鋭い手刀を落とし、気絶させたのだ。
俺達はその瞬間は、誰も動くことができなかった……
「まんまと飼い犬に手を噛まれてくれたわね。犬だけに?」
「黙って聞いてりゃ……俺達人間のことをどうしようってんだ!!」
真由が震えながら呟いて、望が我慢の限界とばかりに吠える。
「また、こんなこと続けるのか! 人間とは共存できる! どうして、争うことしか選ばないんだ!」
「何で……!? 昔は昔で今は今! もう私達は、前に進むべきだわ!」
レオは悔しそうに悲しそうに、モカは訴えかけるように叫ぶ。
「私達の先祖達の過ちは事実だ! しかし、そこで同じ道を辿っては、何一つ変わらないではないか!」
「お願いだ! これからの僕達のことを見てから決めてよ!」
「もう私達は、あなた達の自由を奪うことはないわ! 約束よ!」
「……こんなことして、楽しいのか?」
隣の檻からは、ハロルドが悲痛な心が込められた言葉を、ジェームズは必死の懇願を、クレアは涙声の訴えを、それぞれに叫ぶ。
その後から、コタロウが何の感情も感じられないような言葉を吐き捨てる。
「また歴史を繰り返すのか……」
「ふざけんな!! どいつもこいつも、面倒くせえな!! そんな安全地帯で好き勝手に言いやがってよ!!」
「……犬っころ、殺されてえのか?」
サトルは失望したように呟き、シンは怒鳴り散らし、アランは静かに殺気を放った。
「ここ開けろ! 閉じ込めるよりも、話し合うのが先だろうが!」
「本当にムカつく! 頭固すぎよ!」
デルタは諭すように、一方でソニアは今の感情のままに叫んでいた。
「おー、おー、人間は野蛮だね。躾のなってねえペットだ。お前らは、その檻の中で、せいぜい飼い主が迎えに来るのを待ってるんだな? ククッ……!!」
口々にその犬族に罵詈雑言の限りを飛ばすが、そいつは俺達のことを見て卑屈に笑うばかりだ……
理不尽なこの状況に、怒りは滞りなく湧いてくるのに、俺は拳を強く握って奥歯を噛むことしかできなくて……
何でだよ……何で俺達が、こんな目に遭わなきゃならないんだ!
「あのさ、楽しそうなところを水さして悪いんだけど? あんた、モーリスって人間のこと知ってる?」
しかし、そんな状況で君だけは呆れるほどに、いつもと変わらなくて……
ゾーイは真顔でその犬族に、そう質問をするものだから、そいつはそれまでの憎たらしい顔とは打って変わり、急な間抜け面を晒す。
「はあ? モーリスだ?」
「知らない? 髪がセンター分けの、ネチネチ細そうな嫌味眼鏡の人間」
「……ああ! この前にフウタが連れて来た、駒のことか!」
ゾーイ、それ言い訳できないよ? 悪口でしかないよ?
全員の引くつく顔を背中に、ゾーイはご丁寧に、センター分けと眼鏡のジェスチャー付きで、質問を繰り返す。
しかし、それが功を奏したのか、その犬族は思い出したように声を上げた。
「……駒?」
「あの人間もバカだよな! 甘い言葉に乗せられたんだろうが、事が済んだら即効で廃棄に決まってるのによ! 完璧な世界がとかどうとか、宗教じみたことばっかり言いやがってよ? 不気味でしかねえぜ!」
そして、その犬族は、さらにモーリスへの中傷を、それは面白おかしそうに大笑いしながら得意気に話した。
モーリス……何があったにせよ、裏切り者だという事実は変わらないが、あまり気持ちのいい話ではなかった。
完璧な世界? 奴は何をしようと……
「あ、もしや、アイツってお前らの知り合いか? 本当に人間って、バカばっかりなんだな! ククッ……この千年で進化じゃなくて、猿に退化したのか?」
しかし、そんな考察もままならないほどに、その犬族は檻の中にいるの俺達のことを、これでもかと煽り続けた。
俺は久しぶりに、奥からせり上がってくる腸が煮えくり返る感覚に陥った。
何で、こんな安全圏にいる卑怯な奴にここまでコケにされるんだよ!
「このクソ野郎がいい加減に……!!」
「あ、ねえ、ブーツに毛虫乗ってるよ」
しかし、あと少しで堪忍袋の緒がブチ切れ寸前の望が前に出ようとした時、君はまた突拍子のないことを言う。
あまりに突然で理解するのに数秒かかったほどだ……え、毛虫?
「……あ? 何て言った?」
「だから、毛虫! あんたのブーツ!」
「はあ!? どこ……グアアア!?」
けど、やっぱりゾーイ、君は俺達の常識を軽く超えてくる。
ゾーイは、その犬族がブーツを見ようとして俯いた瞬間に首を掴み、そのまま鉄格子と鉄格子の間に無理矢理ねじ込むように、頭部を押し付けた。
そいつは押し付けてからそのまま悲鳴にもならないような、聞くに絶えない悲鳴を上げた。
「どうせ働き詰めでしょ。しばらく、眠っとけばいいわ」
「ガッ……!!」
そして、ゾーイはそいつの首の後ろに鋭い手刀を落とし、気絶させたのだ。
俺達はその瞬間は、誰も動くことができなかった……
「まんまと飼い犬に手を噛まれてくれたわね。犬だけに?」
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