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第三章-⑹ サトルと菜々美とモーリス
仲直りをしてみようか
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「無傷で帰って来れるなんて……これは奇跡だぞ?」
「え、そこまで言う?」
「ああ、言うよ! 正直、両足ぐらいの骨は覚悟してたぞ!?」
「それじゃ、昴的には大金星なわけだ」
俺は、今は真由の部屋でようやくの平和を噛み締めていた。
細かい処遇は後々決めるとして、あのゾーイの脅しという名の演説によって、これでようやくフウタを始めとした百鬼夜行、他のナサニエルの生徒、俺達王国側とのいざこざは収まった。
しかし、まだ完全に和解というわけではなく、フウタや百鬼夜行とはお互いがお互いに納得できるような結論を導き出せるように、もう明日から話し合いを進めることになる。
そして、他のナサニエルの生徒達には今の地上がどういう状況なのか、犬族と猫族とは何なのか、その他にもしっかりと説明していかなければならなくて……
まだやることは山積みだが、とにかくゾーイとコタロウ以外はほとんど無傷だとか、擦り傷程度で済んだ。
一方で、ゾーイとコタロウはなかなかボロボロな状態なのに、二人はさっそく明日からもう働くとの発言をして、真由に怒られていた。
「本当に、全員がお疲れ様だよね」
「俺的には、真由はトップスリーに入るくらい頑張ったと思うぞ?」
「そう? けど、そこで一番だよって言わないとこが、まだまだよね~?」
ここ最近は特に慌ただしかったからなのか、このゆったりと流れる時間に懐かしさすら感じてしまう。
そのことに安心するように、そう真由は言葉を零す。
俺はすかさず、嘘偽りのない本音を真由に告げるが、真由は少し目を見開いた後でからかうような口調で、俺の脇腹を突いてくる……いや、だってさ?
「お前な……あんだけ体を張ったゾーイとコタロウのことを差し置いて、真由が一番だとか言えるか!?」
「それは、私も絶対に無理!」
俺の訴えの言葉に、真由は即答で返事をしてきた。
そう、本人達がおかしいだけで、あのゾーイとコタロウのケガは普通に大ケガレベルだ。
下手したら、今回のことで一番血を流しているのはあの二人かもしれないな。
けど、その二人には敵わなくても、真由は俺の中では、橘さんのために勇気を振り絞ってかなり頑張ったと思うが……
「ほら見ろよ! それなのに、まだまだってどの口が言うんだ~!!」
「ちょっ、待って……あはははは!!」
俺は、真由の首を軽く絞めるように見せかけて、後ろから真由のことをガッチリとホールドする。
それを真由は笑いながら、離してよとしっかり抱き込まれてる俺の腕を軽く叩きながら、抗議をする。
世界一好きな子と笑い合う……すぐ隣にいてくれて、触れ合える。
こんなに幸せな瞬間はないであろうと俺が真剣に思っていた時……
「真由? 今、ちょっといい?」
真由の部屋のドアを叩く、さっきまでバズーカに負けないくらいの暴言を連射していた声が聞こえた。
「ゾーイ?」
「そう。菜々美が話があるんだってさ」
「え……? あ、わかったわ……」
真由に名前を呼ばれたゾーイは、すぐさま用件を告げる。
しかし、その出てきた名前に、真由は少しだけ間を空けて了承の返事を返したのだった。
「おっと、邪魔して悪いわね」
「あ、いや、それは全然だけど……」
ドアを開けて、まず姿を見せたのはゾーイで、ゾーイは真由と床に座る俺の姿を交互に見て、軽く謝罪を告げる。
それに真由がゾーイに戸惑いがちに首を振りながら返事を返すが、途中でその言葉は途切れる。
多分、ゾーイの後ろから伏し目がちの橘さんが顔を出したからだ。
そこから、変な沈黙の時間が続いた、
「それじゃ、あたしはしっかりと送り届けたから、これで」
「俺もそろそろ……」
すると、その沈黙に痺れを切らしたゾーイが踵を返して帰ると言う。
俺も立ち上がって、真由の横を通ろうとした時……俺は真由に腕を捕まれる。
驚いて立ち止まると、真由だけじゃなくて橘さんまで俺やゾーイのことをチラチラと懇願するような視線を送ってる。
ゾーイは気付いてるのに、完全に無視を決め込んでるけど……ここは二人で話した方がいいとは思う、けど……
「あー、ゾーイ? あの……もう少しだけここにいたりしない?」
「はあ?」
俺はゾーイに完全にダメ元で、そう話を振った。
案の定だけど、ゾーイは何言ってんだというすごい勢いで振り返る。
しかし、その振り返った先には俺、真由、橘さん三人分の懇願する瞳がある。
「……まったく! 手短にね?」
心底睨まれたけど、ゾーイはため息をこれでもかとつきながら、真由のベッドにドカッと座る。
それを合図にして、俺達はそれぞれに真由の部屋に入り直して、向き合う。
「……菜々美? 痛いとことかない?」
「えっ!? あ、うん……大丈夫」
長く重たい気まずすぎる沈黙の空気を破ったのは、真由だった。
突然話しかけられた橘さんは、体をビクッと跳ね上げながら、静かに頷いた。
「そっか。けど、本当によかった……!!」
「え、ちょっ、真由!?」
すると、真由はそんな橘さんを見て安心したのか、次の瞬間には両目から涙がポロポロと溢れ出していた。
「だって、菜々美の身にもしものことがあったりしたら……私は自分のことを許せないと思う……!!」
「……真由、ごめんね……!! 本当に……ごめぇんねぇ!! うあああああんんん!!」
「菜々美、泣かないで……菜々美に泣かれたら、わた、し……!!」
真由の一度溢れた涙はそこから止まるどころか増すばかりで、それを見ていた橘さんも堰を切ったように、泣き出してしまった。
そして二人は、お互いがお互いの存在を確かめるように、キツく、強すぎるほど抱きしめ合いながら、泣き続けた。
「これ、あたし達いる意味ある?」
まあ、その感動的な場面でそのセリフを放てる君には尊敬しかないけど……
「え、そこまで言う?」
「ああ、言うよ! 正直、両足ぐらいの骨は覚悟してたぞ!?」
「それじゃ、昴的には大金星なわけだ」
俺は、今は真由の部屋でようやくの平和を噛み締めていた。
細かい処遇は後々決めるとして、あのゾーイの脅しという名の演説によって、これでようやくフウタを始めとした百鬼夜行、他のナサニエルの生徒、俺達王国側とのいざこざは収まった。
しかし、まだ完全に和解というわけではなく、フウタや百鬼夜行とはお互いがお互いに納得できるような結論を導き出せるように、もう明日から話し合いを進めることになる。
そして、他のナサニエルの生徒達には今の地上がどういう状況なのか、犬族と猫族とは何なのか、その他にもしっかりと説明していかなければならなくて……
まだやることは山積みだが、とにかくゾーイとコタロウ以外はほとんど無傷だとか、擦り傷程度で済んだ。
一方で、ゾーイとコタロウはなかなかボロボロな状態なのに、二人はさっそく明日からもう働くとの発言をして、真由に怒られていた。
「本当に、全員がお疲れ様だよね」
「俺的には、真由はトップスリーに入るくらい頑張ったと思うぞ?」
「そう? けど、そこで一番だよって言わないとこが、まだまだよね~?」
ここ最近は特に慌ただしかったからなのか、このゆったりと流れる時間に懐かしさすら感じてしまう。
そのことに安心するように、そう真由は言葉を零す。
俺はすかさず、嘘偽りのない本音を真由に告げるが、真由は少し目を見開いた後でからかうような口調で、俺の脇腹を突いてくる……いや、だってさ?
「お前な……あんだけ体を張ったゾーイとコタロウのことを差し置いて、真由が一番だとか言えるか!?」
「それは、私も絶対に無理!」
俺の訴えの言葉に、真由は即答で返事をしてきた。
そう、本人達がおかしいだけで、あのゾーイとコタロウのケガは普通に大ケガレベルだ。
下手したら、今回のことで一番血を流しているのはあの二人かもしれないな。
けど、その二人には敵わなくても、真由は俺の中では、橘さんのために勇気を振り絞ってかなり頑張ったと思うが……
「ほら見ろよ! それなのに、まだまだってどの口が言うんだ~!!」
「ちょっ、待って……あはははは!!」
俺は、真由の首を軽く絞めるように見せかけて、後ろから真由のことをガッチリとホールドする。
それを真由は笑いながら、離してよとしっかり抱き込まれてる俺の腕を軽く叩きながら、抗議をする。
世界一好きな子と笑い合う……すぐ隣にいてくれて、触れ合える。
こんなに幸せな瞬間はないであろうと俺が真剣に思っていた時……
「真由? 今、ちょっといい?」
真由の部屋のドアを叩く、さっきまでバズーカに負けないくらいの暴言を連射していた声が聞こえた。
「ゾーイ?」
「そう。菜々美が話があるんだってさ」
「え……? あ、わかったわ……」
真由に名前を呼ばれたゾーイは、すぐさま用件を告げる。
しかし、その出てきた名前に、真由は少しだけ間を空けて了承の返事を返したのだった。
「おっと、邪魔して悪いわね」
「あ、いや、それは全然だけど……」
ドアを開けて、まず姿を見せたのはゾーイで、ゾーイは真由と床に座る俺の姿を交互に見て、軽く謝罪を告げる。
それに真由がゾーイに戸惑いがちに首を振りながら返事を返すが、途中でその言葉は途切れる。
多分、ゾーイの後ろから伏し目がちの橘さんが顔を出したからだ。
そこから、変な沈黙の時間が続いた、
「それじゃ、あたしはしっかりと送り届けたから、これで」
「俺もそろそろ……」
すると、その沈黙に痺れを切らしたゾーイが踵を返して帰ると言う。
俺も立ち上がって、真由の横を通ろうとした時……俺は真由に腕を捕まれる。
驚いて立ち止まると、真由だけじゃなくて橘さんまで俺やゾーイのことをチラチラと懇願するような視線を送ってる。
ゾーイは気付いてるのに、完全に無視を決め込んでるけど……ここは二人で話した方がいいとは思う、けど……
「あー、ゾーイ? あの……もう少しだけここにいたりしない?」
「はあ?」
俺はゾーイに完全にダメ元で、そう話を振った。
案の定だけど、ゾーイは何言ってんだというすごい勢いで振り返る。
しかし、その振り返った先には俺、真由、橘さん三人分の懇願する瞳がある。
「……まったく! 手短にね?」
心底睨まれたけど、ゾーイはため息をこれでもかとつきながら、真由のベッドにドカッと座る。
それを合図にして、俺達はそれぞれに真由の部屋に入り直して、向き合う。
「……菜々美? 痛いとことかない?」
「えっ!? あ、うん……大丈夫」
長く重たい気まずすぎる沈黙の空気を破ったのは、真由だった。
突然話しかけられた橘さんは、体をビクッと跳ね上げながら、静かに頷いた。
「そっか。けど、本当によかった……!!」
「え、ちょっ、真由!?」
すると、真由はそんな橘さんを見て安心したのか、次の瞬間には両目から涙がポロポロと溢れ出していた。
「だって、菜々美の身にもしものことがあったりしたら……私は自分のことを許せないと思う……!!」
「……真由、ごめんね……!! 本当に……ごめぇんねぇ!! うあああああんんん!!」
「菜々美、泣かないで……菜々美に泣かれたら、わた、し……!!」
真由の一度溢れた涙はそこから止まるどころか増すばかりで、それを見ていた橘さんも堰を切ったように、泣き出してしまった。
そして二人は、お互いがお互いの存在を確かめるように、キツく、強すぎるほど抱きしめ合いながら、泣き続けた。
「これ、あたし達いる意味ある?」
まあ、その感動的な場面でそのセリフを放てる君には尊敬しかないけど……
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