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第三章-⑹ サトルと菜々美とモーリス
言葉にできない不安が襲う
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「どういうことなの……?」
レオの言葉で、モカ、コタロウも俺達のことを振り返るが、俺を始めとして誰一人と目を合わせることはなかった。
「僕達も、同じように聞きたいよ……」
ジェームズが今すぐにでも泣きそうなほど声を震わせているが、絶対に涙を零さないと決めているような、悲しみに耐える顔でゾーイを見上げていた。
「動物や虫を殺すことはわけが違う。相手は恐怖に染まった顔であんたらの名前を呼びながら必死に懇願するのよ? 助けて、お願いだって」
ここからでは遠くて、ゾーイがどんな表情をしているのかはそんなに確認はできないけど、少なくとも話す残酷な内容とは裏腹に声はいつもと同じ、いたって冷静なものであった。
下にいる奴らは、ほとんどがそのゾーイの話す事実に動揺しているようで、自分が持っていた剣や銃を慌てたように地面に真っ青な顔で投げ捨てている。
すごく異様な光景だったが、何より異質だったのは、ゾーイだ。
聞いている俺達の方が、そのリアルだけど現実味のない話に耳を塞ぎたくなるほどだったというのに……
「……ゾーイの出身島ってどこだ?」
「確か、アイランド77だとか言ってた気がする……」
シンが助けを求めるように俺達のことを見回しながら問うた言葉に、ソニアが青ざめた顔でゾーイから目を離さずに答えた。
「アイランド77って、そんなに治安が悪い空島なのか……?」
「……その前に、そんな空島、表舞台にほぼ出てきていないんじゃないか」
「本当に自分のこと話さないよな……」
苦悩がにじみ出たような顔でデルタは呟くが、それに続くように放たれたアランと望の寂しそうな言葉に、激しく俺達は同意する。
地上時代にもあったとは思うが、空島にも先進と発展途上の空島が存在し、良くも悪くも話題に上がる空島はいつも決まってる。
どんなに記憶をたどっても、俺はアイランド77という空島が、空島の表舞台に出てきたのを聞いたことがなかった。
それはみんなの顔を見れば一目瞭然であり、アーデルで首席と次席のクレアとモーリスでさえ首を捻る始末。
人が死ぬところを何度も見たというゾーイの言葉が本当なら、ゾーイの出身の空島は、よほどの発展途上の空島だったと言えるのだが……
「俺達全員が、ほとんどゾーイのことを知らないって突きつけられたな」
俺のこの発言で、この場の空気が重苦しくなることは予想していた。
そして、それは予想通りのことで、四方八方から押し迫るようなとてつもなく息苦しい空気であった。
俺達のことを俺達以上に君は知ってるのに、俺達は君のことを知らないのだ。
「それが嫌なら、怖いと少しでも思うとこがあるなら、こんな茶番はさっさと終わらせて前に進んで。あたしはそうしたわ。てか、あたしにできて、あんたらにはできないってこと? カスなの? それとも雑魚とか? 悔しかったら、努力してみろって話よ」
ゾーイは再び、拡声器でそう淡々と訴えかける。
どこまでもいつも通りに、その場の全員を挑発するように……
「そもそもさ、人間か、犬族とか猫族だとかってことがそんな重要? 生物の最初は海から生まれたのよ? はっきり言って、あたし達は元をたどれば、全員が遠い親戚なの。腹の足しにもならないプライドとか意地は、さっさと捨てて。本当に邪魔なだけだから」
君の考えは時に無茶苦茶で、とても壮大で夢がある。
生物の母なる海から生まれた俺達が全員親戚だなんて、どうしたらそんなことを思いつけるのか。
君の言葉は魔法だ……だから、さっきまで血眼になって剣や拳をぶつけ合って戦っていた奴らが、今はこんなにも静かに君の言葉だけを聞いているのだ。
「戦争なんかでケガとか、ましてや死ぬとか……そんなことしてみなよ? このあたしがぶっ殺すから!」
その言葉の後に、君はもう弾が切れたと言ったバズーカを空に発射した。
案の定、油断をしていた俺達は、その場にひっくり返る始末。
君は笑う、不気味なほど美しく……
目を離すとどこかへ消えて、もう二度帰って来ないんじゃないかと君のことを見ていると、思うことがある。
留めることも、促すことも、きっと俺達にはできないけど……
その時に俺達は密かに思った、君の未練になりたいと――
レオの言葉で、モカ、コタロウも俺達のことを振り返るが、俺を始めとして誰一人と目を合わせることはなかった。
「僕達も、同じように聞きたいよ……」
ジェームズが今すぐにでも泣きそうなほど声を震わせているが、絶対に涙を零さないと決めているような、悲しみに耐える顔でゾーイを見上げていた。
「動物や虫を殺すことはわけが違う。相手は恐怖に染まった顔であんたらの名前を呼びながら必死に懇願するのよ? 助けて、お願いだって」
ここからでは遠くて、ゾーイがどんな表情をしているのかはそんなに確認はできないけど、少なくとも話す残酷な内容とは裏腹に声はいつもと同じ、いたって冷静なものであった。
下にいる奴らは、ほとんどがそのゾーイの話す事実に動揺しているようで、自分が持っていた剣や銃を慌てたように地面に真っ青な顔で投げ捨てている。
すごく異様な光景だったが、何より異質だったのは、ゾーイだ。
聞いている俺達の方が、そのリアルだけど現実味のない話に耳を塞ぎたくなるほどだったというのに……
「……ゾーイの出身島ってどこだ?」
「確か、アイランド77だとか言ってた気がする……」
シンが助けを求めるように俺達のことを見回しながら問うた言葉に、ソニアが青ざめた顔でゾーイから目を離さずに答えた。
「アイランド77って、そんなに治安が悪い空島なのか……?」
「……その前に、そんな空島、表舞台にほぼ出てきていないんじゃないか」
「本当に自分のこと話さないよな……」
苦悩がにじみ出たような顔でデルタは呟くが、それに続くように放たれたアランと望の寂しそうな言葉に、激しく俺達は同意する。
地上時代にもあったとは思うが、空島にも先進と発展途上の空島が存在し、良くも悪くも話題に上がる空島はいつも決まってる。
どんなに記憶をたどっても、俺はアイランド77という空島が、空島の表舞台に出てきたのを聞いたことがなかった。
それはみんなの顔を見れば一目瞭然であり、アーデルで首席と次席のクレアとモーリスでさえ首を捻る始末。
人が死ぬところを何度も見たというゾーイの言葉が本当なら、ゾーイの出身の空島は、よほどの発展途上の空島だったと言えるのだが……
「俺達全員が、ほとんどゾーイのことを知らないって突きつけられたな」
俺のこの発言で、この場の空気が重苦しくなることは予想していた。
そして、それは予想通りのことで、四方八方から押し迫るようなとてつもなく息苦しい空気であった。
俺達のことを俺達以上に君は知ってるのに、俺達は君のことを知らないのだ。
「それが嫌なら、怖いと少しでも思うとこがあるなら、こんな茶番はさっさと終わらせて前に進んで。あたしはそうしたわ。てか、あたしにできて、あんたらにはできないってこと? カスなの? それとも雑魚とか? 悔しかったら、努力してみろって話よ」
ゾーイは再び、拡声器でそう淡々と訴えかける。
どこまでもいつも通りに、その場の全員を挑発するように……
「そもそもさ、人間か、犬族とか猫族だとかってことがそんな重要? 生物の最初は海から生まれたのよ? はっきり言って、あたし達は元をたどれば、全員が遠い親戚なの。腹の足しにもならないプライドとか意地は、さっさと捨てて。本当に邪魔なだけだから」
君の考えは時に無茶苦茶で、とても壮大で夢がある。
生物の母なる海から生まれた俺達が全員親戚だなんて、どうしたらそんなことを思いつけるのか。
君の言葉は魔法だ……だから、さっきまで血眼になって剣や拳をぶつけ合って戦っていた奴らが、今はこんなにも静かに君の言葉だけを聞いているのだ。
「戦争なんかでケガとか、ましてや死ぬとか……そんなことしてみなよ? このあたしがぶっ殺すから!」
その言葉の後に、君はもう弾が切れたと言ったバズーカを空に発射した。
案の定、油断をしていた俺達は、その場にひっくり返る始末。
君は笑う、不気味なほど美しく……
目を離すとどこかへ消えて、もう二度帰って来ないんじゃないかと君のことを見ていると、思うことがある。
留めることも、促すことも、きっと俺達にはできないけど……
その時に俺達は密かに思った、君の未練になりたいと――
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