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第五章 ゾーイ・エマーソンの正体
一つの綻びが露になる
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「あー! やっとの思いで帰って来たと思えば、お次は監禁生活かよ!?」
「さすがに、こうも連日だとストレスが溜まりますね……」
「望、モーリス、お疲れって……え、全員で来たのか!?」
ゾーイが病室を出て行ってから、わりとすぐに望とモーリスが苦い顔で愚痴を零しながら、やって来たと思えば……その後ろから続く、見知った仲間の面々。
「ああ、そこで会ってな。今日は俺が検査の、モーリスが事情聴取の帰還組での最後だったんだ。病室いても暇なだけだし、全員連れて来た」
「了解。みんな、今日もお疲れ」
目覚めてからずっと、検査と事情聴取の繰り返しで、家族以外との接触は極力回避ときた。
入院しててもやることがなく、平たく言えば暇で、気付けば俺と望の部屋が俺達の集合場所になっており、どうやら望の言葉を聞くに、今日も早々に予定が終わった仲間達を引き連れて来たようだ。
「ねえねえ、昴! 外見た!? 今日も報道陣、全然引いてないよ! むしろ、増えてる疑惑!」
「え? あー、本当だ。俺達もすっかり有名人なんだな……」
迷惑オーラ全開の口調のソニアの言う通り、今日も俺達が入院する病院の前には報道陣が溢れ返っていた。
窓から見える光景に俺は言葉とともに苦笑いを零す。
仕事とはいえ、本当にしぶといな……
「つーか、そのことで警察の人から相談されたんだけどよ。この連日の騒ぎを鎮めるためにも、俺達で会見やってくれねえかってよ」
「うわあ、ついにそのレベル? 普通の生活に戻るには先は長そうだね~?」
すると、ソニアと俺の話題でデルタは警察からのまさかすぎる相談事を思い出したようで、俺達に苦笑いで提案する。
それにすかさず、菜々美は深いため息をつく……他のみんなも顔に、うんざりと隠すこともなく書いてあるようだ。
「まあ、会見ついては、また話し合いましょうか。ただ、私は会見当日に不測の事態が起きて、まともに喋れる人間はゾーイだけ……そんな状況だけは、何に変えても避けたいとは言っておきます」
しかし、その重苦しい空気を一新してしまうようなことを吐き出したのは、モーリスだった。
「冗談でも、そんな世にも恐ろしいことを言わないでよ! モーリス! 鳥肌と悪寒が一気に襲ってきたよ!」
「あいつに喋らせたら、空島の全国民を敵に回すぞ!?」
「そして、私達は全員で仲良く、帰って来たばかりで故郷を追われると……」
「いや、それか、あの無駄なカリスマ性に惹かれて、変な信者が増えるって可能性もあるぞ? まあ、そうなっても全員蹴散らしそうだけど……」
モーリス言葉を聞いた途端、まるで病室は蜂の巣をつついたような騒がしさに包まれる。
ソニアは自分の体を庇うような体制で喚き、望はほとんどキレて叫び、菜々美はどこか遠くを見つめ、デルタは最悪の未来を予想する。
おまけに、俺達全員の顔は、これまた仲良く真っ青に染まってる。
会見をやるのかやらないかすらまだ決まってないけど、もしもやるなら絶対にゾーイには喋らせないと誓おう。
事態がややこしくしかならないから。
「澤木望くんって……あらま? あなた達ってば、本当に仲良しね。またここに集合してたの?」
そんなまだ起こってもいない最悪に絶望していると、この病院でずっとお世話になっている看護師の人がやって来た。
看護師の人は、この病室の住人以外の存在に気付いた途端にクスリと笑う。
「すみません、騒々しくて……」
「大丈夫よ。このフロアは、あなた達の貸し切りだから」
「ありがとうございます……あ、望に用事ですか?」
「あ、検査の結果よ。いつも通りに、異常なし」
一応、俺がこの病室の住人だから、代表して謝罪をすると、それにみんなも続き、ペコリと頭を下げる。
しかし、看護師の人は笑って大丈夫だと言ってくれる……有難いな。
ここに来た用事はいつも通りの検査の報告だったようだが、当たり前に異常なしと……あ。
「そうだ! あの、今日新しく入院してきたナサニエルの生徒がいますよね?」
「え? 昴、それ誰のこと?」
「あ、ゾーイだよ。というか、さっき廊下で会わなかった? 望達が来る少し前に、ここを出てったんだけど……」
「待って!? ゾーイ、ここにいるの!?」
検査という単語から、俺はゾーイが検査を受けるからと、ここを出て行ったことを思い出して看護師の人に尋ねる。
すると、不思議に思った菜々美が質問をしてきたので、答えたのだが、菜々美の声を皮切りにして、途端にまた全員が驚きの声を上げる。
まあ、そりゃ、ゾーイとは十日ぶりの再会だしな……無理もないよ。
「驚いたわ……そのお友達、すごく人気者なのね?」
「あはは……それで、どこの病室で、何時に検査が終わるかわかりますか? 名前はゾーイ・エマーソンです」
「ゾーイ・エマーソンね? すぐ調べるわ。待ってね?」
すぐに看護師の人は、持っている電子カルテでゾーイの情報を探してくれた。
さっきはバタバタしてたから、話が全然できなかったし、検査が終わるまで病室で待ってよう……そう思ったのだ。
「あら、変ね……?」
しかし、聞こえたのは予想とは違う戸惑うような看護師の人の声だ。
「どうかしましたか?」
「その、ゾーイ・エマーソンっていう子の入院記録どころか、どこにもカルテが見当たらないのよ」
「……え?」
「手違いかしら? ちょっと調べてくるわね!」
そう言うと、バタバタと看護師の人は大慌てで病室を出て行ってしまった。
何だろ? 情報が行き渡ってなかったのかな?
「澤木昴くん、望くん! 繰り返しで申し訳ないね、聞きたいことが……」
すると、看護師の人と入れ替わりで病室にやって来たのは、警察だった。
「さすがに、こうも連日だとストレスが溜まりますね……」
「望、モーリス、お疲れって……え、全員で来たのか!?」
ゾーイが病室を出て行ってから、わりとすぐに望とモーリスが苦い顔で愚痴を零しながら、やって来たと思えば……その後ろから続く、見知った仲間の面々。
「ああ、そこで会ってな。今日は俺が検査の、モーリスが事情聴取の帰還組での最後だったんだ。病室いても暇なだけだし、全員連れて来た」
「了解。みんな、今日もお疲れ」
目覚めてからずっと、検査と事情聴取の繰り返しで、家族以外との接触は極力回避ときた。
入院しててもやることがなく、平たく言えば暇で、気付けば俺と望の部屋が俺達の集合場所になっており、どうやら望の言葉を聞くに、今日も早々に予定が終わった仲間達を引き連れて来たようだ。
「ねえねえ、昴! 外見た!? 今日も報道陣、全然引いてないよ! むしろ、増えてる疑惑!」
「え? あー、本当だ。俺達もすっかり有名人なんだな……」
迷惑オーラ全開の口調のソニアの言う通り、今日も俺達が入院する病院の前には報道陣が溢れ返っていた。
窓から見える光景に俺は言葉とともに苦笑いを零す。
仕事とはいえ、本当にしぶといな……
「つーか、そのことで警察の人から相談されたんだけどよ。この連日の騒ぎを鎮めるためにも、俺達で会見やってくれねえかってよ」
「うわあ、ついにそのレベル? 普通の生活に戻るには先は長そうだね~?」
すると、ソニアと俺の話題でデルタは警察からのまさかすぎる相談事を思い出したようで、俺達に苦笑いで提案する。
それにすかさず、菜々美は深いため息をつく……他のみんなも顔に、うんざりと隠すこともなく書いてあるようだ。
「まあ、会見ついては、また話し合いましょうか。ただ、私は会見当日に不測の事態が起きて、まともに喋れる人間はゾーイだけ……そんな状況だけは、何に変えても避けたいとは言っておきます」
しかし、その重苦しい空気を一新してしまうようなことを吐き出したのは、モーリスだった。
「冗談でも、そんな世にも恐ろしいことを言わないでよ! モーリス! 鳥肌と悪寒が一気に襲ってきたよ!」
「あいつに喋らせたら、空島の全国民を敵に回すぞ!?」
「そして、私達は全員で仲良く、帰って来たばかりで故郷を追われると……」
「いや、それか、あの無駄なカリスマ性に惹かれて、変な信者が増えるって可能性もあるぞ? まあ、そうなっても全員蹴散らしそうだけど……」
モーリス言葉を聞いた途端、まるで病室は蜂の巣をつついたような騒がしさに包まれる。
ソニアは自分の体を庇うような体制で喚き、望はほとんどキレて叫び、菜々美はどこか遠くを見つめ、デルタは最悪の未来を予想する。
おまけに、俺達全員の顔は、これまた仲良く真っ青に染まってる。
会見をやるのかやらないかすらまだ決まってないけど、もしもやるなら絶対にゾーイには喋らせないと誓おう。
事態がややこしくしかならないから。
「澤木望くんって……あらま? あなた達ってば、本当に仲良しね。またここに集合してたの?」
そんなまだ起こってもいない最悪に絶望していると、この病院でずっとお世話になっている看護師の人がやって来た。
看護師の人は、この病室の住人以外の存在に気付いた途端にクスリと笑う。
「すみません、騒々しくて……」
「大丈夫よ。このフロアは、あなた達の貸し切りだから」
「ありがとうございます……あ、望に用事ですか?」
「あ、検査の結果よ。いつも通りに、異常なし」
一応、俺がこの病室の住人だから、代表して謝罪をすると、それにみんなも続き、ペコリと頭を下げる。
しかし、看護師の人は笑って大丈夫だと言ってくれる……有難いな。
ここに来た用事はいつも通りの検査の報告だったようだが、当たり前に異常なしと……あ。
「そうだ! あの、今日新しく入院してきたナサニエルの生徒がいますよね?」
「え? 昴、それ誰のこと?」
「あ、ゾーイだよ。というか、さっき廊下で会わなかった? 望達が来る少し前に、ここを出てったんだけど……」
「待って!? ゾーイ、ここにいるの!?」
検査という単語から、俺はゾーイが検査を受けるからと、ここを出て行ったことを思い出して看護師の人に尋ねる。
すると、不思議に思った菜々美が質問をしてきたので、答えたのだが、菜々美の声を皮切りにして、途端にまた全員が驚きの声を上げる。
まあ、そりゃ、ゾーイとは十日ぶりの再会だしな……無理もないよ。
「驚いたわ……そのお友達、すごく人気者なのね?」
「あはは……それで、どこの病室で、何時に検査が終わるかわかりますか? 名前はゾーイ・エマーソンです」
「ゾーイ・エマーソンね? すぐ調べるわ。待ってね?」
すぐに看護師の人は、持っている電子カルテでゾーイの情報を探してくれた。
さっきはバタバタしてたから、話が全然できなかったし、検査が終わるまで病室で待ってよう……そう思ったのだ。
「あら、変ね……?」
しかし、聞こえたのは予想とは違う戸惑うような看護師の人の声だ。
「どうかしましたか?」
「その、ゾーイ・エマーソンっていう子の入院記録どころか、どこにもカルテが見当たらないのよ」
「……え?」
「手違いかしら? ちょっと調べてくるわね!」
そう言うと、バタバタと看護師の人は大慌てで病室を出て行ってしまった。
何だろ? 情報が行き渡ってなかったのかな?
「澤木昴くん、望くん! 繰り返しで申し訳ないね、聞きたいことが……」
すると、看護師の人と入れ替わりで病室にやって来たのは、警察だった。
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