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第四章-⑶ ラスボスとの直接対決
言われたことは必ずやる
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「作戦のオーダーを、変更するわね」
非常ドアを開いたことにより、自動的に現れた緊急脱出スライドで、俺達は飛行機を下り、そのまま拳銃を構えるゾーイを先頭にして、難なく首相官邸の地下室に侵入成功。
そして、満を持して放たれたゾーイの第一声というのが、それ。
悪びれる素振りすらもない整った容姿の目の前の少女に、俺は頭痛がした。
「変更だ……? ああ、とんでもない変更が必要だよな? 予定していた作戦は跡形もねえからなあああ!?!?」
俺が頭を抑える隣で、そう叫んだのは我が片割れ、望だった。
視界の端で、真由と菜々美とサトルが必死で望を抑えている姿が見えるが、それに混ざる気になれなかった俺をどうか許してくれ……
まあ、他のみんなもそれぞれの反応で絶賛で意気消沈していたが、俺が一番心配になったのは奥にいるハロルド、モーリス、ジェームズの三人だ。
不気味な祈りを捧げている……あれは末期だな、大丈夫だろうか。
まあ、そうもなるかな……当初の予定の平和的な話し合いってやつは、一気に叶わぬ夢になったわけだし。
というか、寝る間も惜しんで行われた作戦会議は何だったのだろうか……
「ていうか、ゾーイ! 地上から拳銃を持ってきちゃったわけ!? それ、普通に法律違反でしょ!?」
「はあ? あっははは……!! ソニア、真面目になったわね? 頭を柔らかくしなって、弾は入ってないのよ? 空砲しか出ない拳銃なんておもちゃでしかないでしょうよ」
情けないけど、まだ立ち直れない俺を他所に、ソニアはゾーイに無断の拳銃所持の件を問いただしていた。
しかし、当の本人は文字通り笑い飛ばしたのである。
案の定、ソニアはドン引きだった。
その言葉を聞いて、ゾーイにとっての世間の位置付けは、そこら辺に転がる石ころのごとくどうでもいいものなのかなと、改めて俺は自分とゾーイの価値観の違いを思い知っていた……
「はあ……もう起きたことを、どうこう言ってもしょうがねえな。ゾーイ、お前のことだから、どうせ、こんなことを仕出かしたのには理由があるんだろ? それを話してくれ」
全員が呆れ返っていると、デルタがため息とともにゾーイに問いかけた。
ゾーイの行動が規格外なのはいつものことだ、とにかく話を聞かないと……
全員が同じ意見なのだろう、すべての視線がゾーイに集中する。
「……時間がないのよ。十か月の間に空島での敵の手が、どこまで伸びているかわからないでしょ? そんな状況で、悠長に話し合いしてたら、あっという間にばあさんになる。そう考えての、さっきの強行突破よ。地上には、バカみたいに口開けて待ってる奴らもいるし」
すると、ゾーイが無表情で一見すると冷たく見えなくもない態度で吐き出した言葉は、また君の遠回りの優しさだ。
「もう……それならそうと、最初から言えばよかったじゃん!」
「話したら、あんたら全員、絶対に文句を言うでしょうよ」
また、別の意味で呆れた空気が流れたところで、それを破ったのは菜々美だ。
というよりも、その菜々美の言葉にはごもっともだと叫びたいほどだ。
ゾーイは最初から、一番の安全策だと言われた平和的な話し合いをするつもりは、微塵もなかったのだ。
それどころか、地上で待つ他の生徒達のことを考え、最短ルートで今回のことを解決しようとしていた。
少し、時間がないって言い方に妙な違和感が残るけど……俺達に話さなかった理由は、ゾーイが言った通りのことで嘘偽りないんだろうな。
きっと、ゾーイのことだから、俺達を事前に説得するより、いつもみたいに取り返しがつかなくなってから巻き込むこと方が一番いいと思ったとか、そんなとこなんだろうな。
けどさ、今回だけはゾーイは一つ、大きな勘違いをしているよ。
「そりゃあな!? 文句ぐらい言わせてくれよ!? けど……お前の考えを否定することは、もうねえよ」
「……は?」
叫んで反論したシンだったが、少しの間を置いた後に、ゾーイからそっぽを向き、不器用ながらも優しくその言葉を告げる。
それを聞いたゾーイは、珍しくというより、初めての怪訝な顔を見せた。
ああ、やっぱり、わかってないんだ。
俺と同じ心境だろうみんなも、ゾーイのそんな様子にやがてクスクスと小さく笑を零す。
その様子に、ますます眉間にはシワがよっていくゾーイ。
何だか、いつもと真逆な光景にさらに笑いが止まらなくなる。
「心外だぞ。十か月も過ごして、まだそこまで見くびられているなんてな。あの処刑台で言ったはずだ。俺達はもう、覚悟はできている」
そんなゾーイを見兼ねて、アランが愛しそうな顔をしながら、俺達を代表して言葉を紡ぐ。
そして、それを聞いたゾーイは、目が零れそうなほど見開き、ニヤリと笑う。
ゾーイ・エマーソン? 俺達は君のことを無条件で信じて、ついて行くって決めたんだよ。
まだまだ頼りないだろうけど、必ず君の隣に胸を張って立てるくらい大きな存在になるから……
それまでは、必死に君の背中を追うだけになっちゃうけど、必ず追いつくって決めたんだ。
「これはいい誤算ね。あんたら、いつの間に、そんなたくましくなったのよ」
「さあね? けど、どこかの嵐みたいな女の子のせいだよ」
ゾーイの嬉しそうに話す言葉に、俺は軽く茶化すような言葉を返した。
非常ドアを開いたことにより、自動的に現れた緊急脱出スライドで、俺達は飛行機を下り、そのまま拳銃を構えるゾーイを先頭にして、難なく首相官邸の地下室に侵入成功。
そして、満を持して放たれたゾーイの第一声というのが、それ。
悪びれる素振りすらもない整った容姿の目の前の少女に、俺は頭痛がした。
「変更だ……? ああ、とんでもない変更が必要だよな? 予定していた作戦は跡形もねえからなあああ!?!?」
俺が頭を抑える隣で、そう叫んだのは我が片割れ、望だった。
視界の端で、真由と菜々美とサトルが必死で望を抑えている姿が見えるが、それに混ざる気になれなかった俺をどうか許してくれ……
まあ、他のみんなもそれぞれの反応で絶賛で意気消沈していたが、俺が一番心配になったのは奥にいるハロルド、モーリス、ジェームズの三人だ。
不気味な祈りを捧げている……あれは末期だな、大丈夫だろうか。
まあ、そうもなるかな……当初の予定の平和的な話し合いってやつは、一気に叶わぬ夢になったわけだし。
というか、寝る間も惜しんで行われた作戦会議は何だったのだろうか……
「ていうか、ゾーイ! 地上から拳銃を持ってきちゃったわけ!? それ、普通に法律違反でしょ!?」
「はあ? あっははは……!! ソニア、真面目になったわね? 頭を柔らかくしなって、弾は入ってないのよ? 空砲しか出ない拳銃なんておもちゃでしかないでしょうよ」
情けないけど、まだ立ち直れない俺を他所に、ソニアはゾーイに無断の拳銃所持の件を問いただしていた。
しかし、当の本人は文字通り笑い飛ばしたのである。
案の定、ソニアはドン引きだった。
その言葉を聞いて、ゾーイにとっての世間の位置付けは、そこら辺に転がる石ころのごとくどうでもいいものなのかなと、改めて俺は自分とゾーイの価値観の違いを思い知っていた……
「はあ……もう起きたことを、どうこう言ってもしょうがねえな。ゾーイ、お前のことだから、どうせ、こんなことを仕出かしたのには理由があるんだろ? それを話してくれ」
全員が呆れ返っていると、デルタがため息とともにゾーイに問いかけた。
ゾーイの行動が規格外なのはいつものことだ、とにかく話を聞かないと……
全員が同じ意見なのだろう、すべての視線がゾーイに集中する。
「……時間がないのよ。十か月の間に空島での敵の手が、どこまで伸びているかわからないでしょ? そんな状況で、悠長に話し合いしてたら、あっという間にばあさんになる。そう考えての、さっきの強行突破よ。地上には、バカみたいに口開けて待ってる奴らもいるし」
すると、ゾーイが無表情で一見すると冷たく見えなくもない態度で吐き出した言葉は、また君の遠回りの優しさだ。
「もう……それならそうと、最初から言えばよかったじゃん!」
「話したら、あんたら全員、絶対に文句を言うでしょうよ」
また、別の意味で呆れた空気が流れたところで、それを破ったのは菜々美だ。
というよりも、その菜々美の言葉にはごもっともだと叫びたいほどだ。
ゾーイは最初から、一番の安全策だと言われた平和的な話し合いをするつもりは、微塵もなかったのだ。
それどころか、地上で待つ他の生徒達のことを考え、最短ルートで今回のことを解決しようとしていた。
少し、時間がないって言い方に妙な違和感が残るけど……俺達に話さなかった理由は、ゾーイが言った通りのことで嘘偽りないんだろうな。
きっと、ゾーイのことだから、俺達を事前に説得するより、いつもみたいに取り返しがつかなくなってから巻き込むこと方が一番いいと思ったとか、そんなとこなんだろうな。
けどさ、今回だけはゾーイは一つ、大きな勘違いをしているよ。
「そりゃあな!? 文句ぐらい言わせてくれよ!? けど……お前の考えを否定することは、もうねえよ」
「……は?」
叫んで反論したシンだったが、少しの間を置いた後に、ゾーイからそっぽを向き、不器用ながらも優しくその言葉を告げる。
それを聞いたゾーイは、珍しくというより、初めての怪訝な顔を見せた。
ああ、やっぱり、わかってないんだ。
俺と同じ心境だろうみんなも、ゾーイのそんな様子にやがてクスクスと小さく笑を零す。
その様子に、ますます眉間にはシワがよっていくゾーイ。
何だか、いつもと真逆な光景にさらに笑いが止まらなくなる。
「心外だぞ。十か月も過ごして、まだそこまで見くびられているなんてな。あの処刑台で言ったはずだ。俺達はもう、覚悟はできている」
そんなゾーイを見兼ねて、アランが愛しそうな顔をしながら、俺達を代表して言葉を紡ぐ。
そして、それを聞いたゾーイは、目が零れそうなほど見開き、ニヤリと笑う。
ゾーイ・エマーソン? 俺達は君のことを無条件で信じて、ついて行くって決めたんだよ。
まだまだ頼りないだろうけど、必ず君の隣に胸を張って立てるくらい大きな存在になるから……
それまでは、必死に君の背中を追うだけになっちゃうけど、必ず追いつくって決めたんだ。
「これはいい誤算ね。あんたら、いつの間に、そんなたくましくなったのよ」
「さあね? けど、どこかの嵐みたいな女の子のせいだよ」
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