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EP 13
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追跡、焦燥、血の匂い
霧の立ち込める山道で、坂上真一は足を止め、虚空に浮かぶウィンドウを操作した。
指先の動きに迷いはない。
今、この瞬間にも、ルナの身に何が起きているか。想像するだけで胃が焼けつくようだ。
「……金に糸目はつけん。頼むぞ、日本の技術力」
坂上はカテゴリー【精密機器】【偵察】【航空】を選択。
消費ポイントは『15,000P』。
これまでの活動で貯めたポイントの約4分の1を一瞬で溶かす。
ブオン……
低い駆動音と共に、坂上の手元に黒い物体が現れた。
四つのローターを持つ、軍用規格の『小型偵察ドローン』だ。
さらに追加で『暗視ゴーグル(NVG)』と『骨伝導ヘッドセット』を二つずつ召喚する。
「龍魔呂、これを着けろ」
坂上はヘッドセットとゴーグルを投げ渡した。
龍魔呂は無言でそれを受け取り、乱暴に頭に装着する。普段なら「なんだこのオモチャは」と悪態をつくところだが、今の彼にそんな軽口を叩く余裕はない。
「ドローンを先行させる。映像と音声はそっちのゴーグルにも共有する設定だ。……行くぞ」
坂上がコントローラーを操作すると、ドローンは霧を切り裂いて急上昇した。
上空からの視点。
ゴーグルのディスプレイに、サーモグラフィー(熱源探知)映像が映し出される。
青い世界の中で、赤く光る「生体反応」の道筋が、断崖の方角へと続いていた。
「……見つけた」
坂上が呟く。
だが、隣にいる龍魔呂の様子がおかしいことに気づいた。
龍魔呂は、走っていた。
いや、速度こそ坂上のペースに合わせて抑えているが、その一歩一歩が異常だった。
彼が足を踏み出すたびに、硬い岩盤が豆腐のように陥没し、ひび割れているのだ。
体から溢れ出す闘気が制御できていない。いや、制御する気がないのだ。
「……臭うぞ」
ヘッドセット越しに、龍魔呂の低く押し殺した声が響く。
「腐った血の臭いだ。……どんどん濃くなってやがる」
龍魔呂の脳裏には、最悪の想像が駆け巡っていた。
かつて弟が死んだ時も、こんな鉄錆のような臭いがしていた。
守れなかった記憶。無力だった自分。
もし、あいつ(ルナ)まで失ったら――。
「……間に合わせる」
龍魔呂が噛み締めるように言った。
ギリリ、と奥歯が鳴る音がマイクを通じて聞こえる。
「もし、あいつに指一本でも触れてみろ。……この山ごと、世界ごと壊してやる」
それは比喩ではなかった。
「DEATH4」の人格が、すぐそこまで浮上している。
坂上は背筋が凍るのを感じたが、今はその殺意すら頼もしい。
「反応あり! 距離800、断崖の中腹だ!」
ドローンのカメラが、巨大な洞窟の入り口を捉えた。
見張り役のオークが数体。
そして、洞窟の奥から、マイクが微かな音を拾った。
『いやぁぁぁ! やめてぇ!』
『ごめんなさい……ごめんなさい……』
女性の悲鳴。
そして、聞き覚えのある、ルナの泣き叫ぶ声。
プツン。
何かが切れる音がした。
それは通信の途絶ではない。龍魔呂の中で、理性の鎖が弾け飛んだ音だ。
「龍魔呂、待て! 突入ルートを確認す――」
ドォォォォォン!!
坂上の言葉は、爆音にかき消された。
隣にいたはずの龍魔呂の姿がない。
地面がクレーターのように爆ぜ、土煙だけが残されている。
「……あの大馬鹿者がッ!」
坂上は舌打ちをし、全力で走り出した。
作戦も連携もない。
音速を超えて直進する一発の弾丸。
鬼神龍魔呂が、物理法則を無視して断崖を駆け上がっていくのが見えた。
赤黒い彗星が、洞窟へと吸い込まれていく。
その先に待つのが、敵にとっての「地獄」であると確信しながら、坂上は叫んだ。
「死ぬなよ、ルナ! 今、最悪の救助隊が到着する!」
霧の立ち込める山道で、坂上真一は足を止め、虚空に浮かぶウィンドウを操作した。
指先の動きに迷いはない。
今、この瞬間にも、ルナの身に何が起きているか。想像するだけで胃が焼けつくようだ。
「……金に糸目はつけん。頼むぞ、日本の技術力」
坂上はカテゴリー【精密機器】【偵察】【航空】を選択。
消費ポイントは『15,000P』。
これまでの活動で貯めたポイントの約4分の1を一瞬で溶かす。
ブオン……
低い駆動音と共に、坂上の手元に黒い物体が現れた。
四つのローターを持つ、軍用規格の『小型偵察ドローン』だ。
さらに追加で『暗視ゴーグル(NVG)』と『骨伝導ヘッドセット』を二つずつ召喚する。
「龍魔呂、これを着けろ」
坂上はヘッドセットとゴーグルを投げ渡した。
龍魔呂は無言でそれを受け取り、乱暴に頭に装着する。普段なら「なんだこのオモチャは」と悪態をつくところだが、今の彼にそんな軽口を叩く余裕はない。
「ドローンを先行させる。映像と音声はそっちのゴーグルにも共有する設定だ。……行くぞ」
坂上がコントローラーを操作すると、ドローンは霧を切り裂いて急上昇した。
上空からの視点。
ゴーグルのディスプレイに、サーモグラフィー(熱源探知)映像が映し出される。
青い世界の中で、赤く光る「生体反応」の道筋が、断崖の方角へと続いていた。
「……見つけた」
坂上が呟く。
だが、隣にいる龍魔呂の様子がおかしいことに気づいた。
龍魔呂は、走っていた。
いや、速度こそ坂上のペースに合わせて抑えているが、その一歩一歩が異常だった。
彼が足を踏み出すたびに、硬い岩盤が豆腐のように陥没し、ひび割れているのだ。
体から溢れ出す闘気が制御できていない。いや、制御する気がないのだ。
「……臭うぞ」
ヘッドセット越しに、龍魔呂の低く押し殺した声が響く。
「腐った血の臭いだ。……どんどん濃くなってやがる」
龍魔呂の脳裏には、最悪の想像が駆け巡っていた。
かつて弟が死んだ時も、こんな鉄錆のような臭いがしていた。
守れなかった記憶。無力だった自分。
もし、あいつ(ルナ)まで失ったら――。
「……間に合わせる」
龍魔呂が噛み締めるように言った。
ギリリ、と奥歯が鳴る音がマイクを通じて聞こえる。
「もし、あいつに指一本でも触れてみろ。……この山ごと、世界ごと壊してやる」
それは比喩ではなかった。
「DEATH4」の人格が、すぐそこまで浮上している。
坂上は背筋が凍るのを感じたが、今はその殺意すら頼もしい。
「反応あり! 距離800、断崖の中腹だ!」
ドローンのカメラが、巨大な洞窟の入り口を捉えた。
見張り役のオークが数体。
そして、洞窟の奥から、マイクが微かな音を拾った。
『いやぁぁぁ! やめてぇ!』
『ごめんなさい……ごめんなさい……』
女性の悲鳴。
そして、聞き覚えのある、ルナの泣き叫ぶ声。
プツン。
何かが切れる音がした。
それは通信の途絶ではない。龍魔呂の中で、理性の鎖が弾け飛んだ音だ。
「龍魔呂、待て! 突入ルートを確認す――」
ドォォォォォン!!
坂上の言葉は、爆音にかき消された。
隣にいたはずの龍魔呂の姿がない。
地面がクレーターのように爆ぜ、土煙だけが残されている。
「……あの大馬鹿者がッ!」
坂上は舌打ちをし、全力で走り出した。
作戦も連携もない。
音速を超えて直進する一発の弾丸。
鬼神龍魔呂が、物理法則を無視して断崖を駆け上がっていくのが見えた。
赤黒い彗星が、洞窟へと吸い込まれていく。
その先に待つのが、敵にとっての「地獄」であると確信しながら、坂上は叫んだ。
「死ぬなよ、ルナ! 今、最悪の救助隊が到着する!」
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