『元イージス艦長、異世界でゴミを拾う 〜善行ポイントで現代兵器をガチャ排出。最強の傭兵団は金曜日にカレーを食べる〜』

月神世一

文字の大きさ
14 / 78

EP 14

しおりを挟む
DEATH4、再臨
 洞窟の中は、絶望と熱気で満ちていた。
 中央に据えられた巨大な鉄鍋からは、ぐらぐらと湯が沸き立ち、その横ではオークたちが「具材」となる村人たちの服を剥ぎ取ろうとしている。
「いやぁぁぁ! やめて! 誰か!」
「ブヒヒッ! 柔らかそうな肉ダ!」
 そして、洞窟の最奥。
 オーク・ジェネラルの太い指が、宙に吊るされたルナの白い肌に爪を立てていた。
 薄いローブが引き裂かれ、絹のような肌が露わになる。
「極上だ。まずはその四肢を一本ずつ……」
「ひぐっ……あぁ……」
 ルナの瞳から、光が消えかけていた。
 恐怖のあまり声も出ない。ただ涙だけが溢れ落ちる。
 その涙が、汚れた地面に落ちた、その瞬間だった。
 ドゴォォォォォォン!!!!!
 洞窟の入り口が、内側に向かって「爆発」した。
 岩盤が砕け散り、見張りをしていたオークの上半身が、砲弾のような速度で洞窟内へ弾き飛ばされてくる。
 ズシャァッ!
 肉塊が壁に激突し、血の花を咲かせた。
「な、なんだ!?」
 ジェネラルが振り返る。
 舞い上がる土煙の向こうから、ゆらりと「それ」は現れた。
 人影だ。
 だが、その背後には、松明の火をも飲み込むような、濃密で禍々しい赤黒い闇が渦巻いている。
「……あ……?」
 ルナが掠れた声を漏らす。
 その影が顔を上げた。
 鬼神龍魔呂。
 だが、その瞳に理性はない。あるのは、無限に広がる虚無と、凍てつくような殺意だけだ。
 龍魔呂の視線が、裸同然にされ、泣いているルナを捉えた。
 瞬間。
 彼の中で、過去と現在が完全に重なった。
 ――(兄ちゃん、痛いよ……助けて……)
 ――(ごめんなさい……龍魔呂さん……)
 弟の死に顔。ルナの泣き顔。
 守れなかった記憶。また繰り返されようとしている惨劇。
「……あぁ」
 龍魔呂が、壊れた機械のように首を傾げた。
「……泣くなよ。……俺が、全部、壊してやる」
 ブツン。
 龍魔呂の指にはめられた『闘気の指輪』に亀裂が入った。
 リミッター解除。
 DEATH4(死を呼ぶ四番)、完全覚醒。
「キサマ、何者だ! 我が軍団に……」
 ジェネラルが蛮刀を抜こうとした。
 遅い。
 あまりにも遅すぎる。
 パァン!
 乾いた破裂音が響いた。
 次の瞬間、ジェネラルの右腕――ルナを掴んでいた腕――が、肩から消失していた。
 切断されたのではない。ねじ切られ、引きちぎられ、壁に叩きつけられたのだ。
「グ……ガ……ァァァァ!?」
 ジェネラルが絶叫し、後ずさる。
 龍魔呂は既に、ルナを抱きかかえていた。
 汚れた手で触れぬよう、優しく地面に下ろす。
 そして、ジェネラルの方へ向き直った時、その優しさは消え失せた。
「……挽き肉にしてやる」
 それは戦闘ではなかった。
 龍魔呂が床を蹴ると同時に、ジェネラルの巨体が「くの字」に折れ曲がった。
 腹部に深々と突き刺さる拳。内臓が破裂する感触。
 吹き飛ぶジェネラルを、龍魔呂はさらに追撃し、空中で踵落としを叩き込む。
 ドグシャァァ!!
 地面に叩きつけられたジェネラルの頭部が、熟れた果実のように弾け飛んだ。
 最強の魔物が、わずか三秒で肉片と化した。
「ひ、ヒィィッ!!」
「将軍が死んだァ!」
「逃げろォォ!」
 残された数十匹のオークたちがパニックに陥り、出口へと殺到する。
 龍魔呂は、血まみれの顔で、ニヤリと笑った。
 その笑みは、ルナですら恐怖で震え上がるほどに邪悪だった。
「……逃がすかよ。ゴミ共が」
 殺戮の宴が始まった。
 逃げる背中に追いつき、背骨を引き抜く。
 四つん這いで逃げるオークの頭を踏み潰す。
 悲鳴と、肉が裂ける音だけが洞窟に反響する。
「ま、待っテ! 降参! 降参スル!」
 一匹のオークが、武器を捨てて地面に平伏した。
 戦意喪失。明確な降伏の意思表示。
 国際法上、殺してはならない「捕虜」だ。
 だが、龍魔呂は止まらなかった。
「……あぁ? 知るか」
 ズドン!
 龍魔呂の拳が、命乞いをするオークの顔面を垂直に貫いた。
 脳漿が飛び散り、動かなくなる体。
 それを見ていた村人たちが、恐怖のあまり嘔吐した。
 助けに来たのではない。
 ただ、嵐のように命を刈り取っているだけだ。
「全滅だ。一匹残らず殺す」
 龍魔呂は、血の海の中を歩き続ける。
 動くものがなくなるまで。
 呼吸するものが、自分とルナたち以外にいなくなるまで。
 その拳は止まることを知らなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

処理中です...